インドネシアの生産管理システム

2024/04/05

インドネシアの生産管理システムと製造業DXの関係を構造化した図解

インドネシアに限った話ではありませんが、製造業の至上命題は「生産性向上によるコスト削減」と「納期遅れせずきっちりと納品する」の2つであるとはよく言われることです。

経営側は市場の需給調整に基づいて事業の発展を最大化する事業計画を作成しますが、製造原価ギリギリの線で安売りして売上が増えても、予想外に販売管理費・営業外費用がかかって赤が出る、かといって販売単価は相場との兼ね合いで簡単には上げられないので、材料の購入から製品となるまでの生産性向上によるコスト削減を目的とした生産計画に基づく工程管理が重要になるのです。

勘定連絡図

製造業の勘定連絡図

製造業の原価計算でよく混乱するのは製造原価と売上原価、販売管理費の違いであり、製造原価は当月完成した製品の原価であり、売上原価は売った製品(月初在庫と当月完成分が混在)の製造原価であり、製品を売るときにかかった費用である販売管理費は売上原価の外にあるということです。

  • 月初材料在庫+当月購入材料-月末材料在庫=当月材料費
  • 月初仕掛品在庫+当月材料費+当月加工費-月末仕掛品原価=製造原価
  • 月初製品在庫+製造原価-月末製品在庫=売上原価
  • 売上-売上原価=売上総利益
  • 売上総利益-販管費=営業利益
  • 営業利益-営業外費用=経常利益

インドネシアの日系製造業は、常に需要変動が大きい環境に置かれており、生産性向上のために効率至上主義の生産をすれば納期遅れのリスクが上がり、逆に納期重視に偏重すると段取りが増えるなど生産効率が低下しがちになります。

私はこの相反するトレードオフの関係にある2つの至上命題を達成する最適値を、ITによって見つけ出すことが製造業のDX化最大の目的であると考えています。

日本での生産管理システム導入プロジェクトでは、高いコストをかけてでも自社の業務に合うような機能追加を行いがちですが、インドネシアでは限られた予算の中で、現場の作業者の入力のしやすさや、作業負荷の軽減のための画面修正や、外部データ取り込み機能の追加などの要望が多くなる傾向があります。

当ブログではインドネシアの製造業者様で生産管理業務のシステム化の必要性を感じているものの、具体的に何から手を付けたらいいのか分からないという方にとって、インドネシアに合った製造業システムとは何かをイメージするための一助となるような生産管理システムについての記事を書いています。

この記事でわかること

  • 製造業の至上命題は生産性向上と納期遵守です。
  • 製造原価、売上原価、販売管理費の違いを理解することが重要です。
  • 勘定連絡図は製造業の原価計算に役立ちます。
  • 生産性向上と納期遵守のトレードオフをITで最適化することがDXの目的です。
  • インドネシアでは限られた予算でのシステム導入が求められます。

インドネシアの製造業における計画生産の製造指図とかんばんの違い

「製造指図数」も「かんばん枚数」も内示に基づき所要量展開することで数が計算できますが、製造指図は生産計画に基づく作業単位の実体(プッシュ方式)で、生産管理部から現場に対する生産指示です。一方、かんばんは使った分だけ後工程が前工程から引き取った結果としての実体(プル方式)で、現場で需要と供給の関係によって自律的に流動します。

かんばん方式対応システムではMRP(資材所要量計画)によって以下の3つが可能です。

  1. 製造の視点:製造指図の発行、工程内かんばん枚数の計算
  2. 購買の視点:材料の所要量計算、材料かんばん枚数計算
  3. 設備の視点:ラインや機械の負荷計算

かんばんは前工程に対するBOX単位の生産指示であり、製造指図合計数量(総所要量-現状在庫+安全在庫)は当月の「かんばん枚数x箱の収容数」とほぼ同数で推移します。

kanban

かんばん方式の場合、部品置き場のBOXの数が0で、次に来る引取かんばん一枚分を加工現場の工程内かんばん(仕掛かんばん)一枚分でまかなうのが、在庫0かつ工程在庫のみ存在という究極の運用と言えます。

日によって後工程から要求される品種と量が変わると、現場の設備投資がコスト高になるため、かんばん方式運用では品種と量を日ごとに平準化する必要があります。

ロット生産では専門工が段取り回数を減らすために同じものをまとめて生産しますが、平準化生産では多品種を均等にばらして生産する必要があるので、内段取り(主資源段取)の外段取り化(副資源段取)や多能工化が必要となり、平準化を突き詰めると1個流しに行きつきます。

かんばん方式は急な需要変動に対応できないため、内示情報から所要量計算をして原材料・外注の手配をしたり、内示情報から工場資源の予測ベースの能力計画を立てるなど、適切な生産準備のために生産スケジューラの併用が考えられます。

インドネシアの製造業におけるかんばん方式とMRPの活用を構造化した図解

インドネシア日系製造業のかんばん方式とMRPの活用

インドネシアの日系製造業では、MRPを用いて製造オーダを生成し、かんばん方式で生産管理を行います。eかんばんは客先からの出荷指示として機能し、サプライチェーン全体の連動を促進します。かんばん方式はプル方式で、製造現場で使用された分だけ…

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スケジューラを使ったインドネシアにおける現場主導型システム

インドネシアの自動車市場では、トヨタ車が30%強を占めており、多くの日系製造業社がトヨタ生産方式の「かんばん」を運用しています。しかし、2020年のコロナ禍以降、製造工程の平準化が難しくなり、需要変動に対応した生産が求められるようになりました。これにより、欠品や過剰在庫を防ぐための施策が重要視されています。

需要変動が大きいと、月単位での平準化生産が困難になり、プル型で自律的に動くかんばん方式の運用に支障が出ることがあります。そのため、需要変動に応じたプッシュ型の生産指示が必要となり、工程毎の生産量をフレキシブルに指示できる生産計画が求められています。現場での作りすぎを防ぐための「かんばん」による生産調整と組み合わせたハイブリッド方式が有効です。

インドネシア製造業におけるかんばんとスケジューラ活用事例を構造化した図解

インドネシア製造業のかんばんとスケジューラ活用事例

インドネシアの製造現場では、かんばん方式とプッシュ型生産スケジューラの併用が効果的です。2020年4月、インドネシアの自動車生産台数は前年同月比で80%減少しました。株式会社小松精機工作所は、部門間のずれを無くし業務効率を向上させています。

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時間基準の稼働率とストローク基準の負荷率の計算方法

タクトタイム(T/T)は、トヨタが部品メーカーに対してオーダを消化するために設定する目標値で、『一日の稼動可能時間÷日当たりオーダ数量』で算出されます。これに対し、サイクルタイム(C/T)は部品メーカーの生産管理部が立案したもので、『一日の予定稼働時間÷目標生産数』で自社の生産設備の標準能力を算出します。

トヨタ生産方式(TPS)では、シングル段取りを推奨し、サイクルタイムをタクトタイムに近づけるよう指導されます。これにより、段取り時間を短縮し、生産効率を向上させます。

プレス加工製造では、負荷率を『1時間あたりのストローク数GSPH×一日の稼働時間』に対するオーダー消化に必要なストローク数の割合で計算します。例えば、車のドアのような左右セット品では、左右別々にオーダが入るため、MRP(資材所要量計画)によって左右の必要数は計算できるものの、負荷率は品目コードが異なる左右それぞれに負荷がかかり2倍に計算されます。

これはMRPが所要量の計算を目的としており、ラインの生産能力を考慮せず、無限能力で負荷を積み上げることを前提としているためです。負荷オーバ分はマニュアル調整で平準化します。

一方、生産スケジューラは資源能力100%を超えないようにオーダ数量に応じて所要量を展開し、作業をラインに割り付ける基本思想に基づいています。このため、左右セット取り品の製造についても正確な負荷計算が可能です。

時間基準の稼働率とストローク基準の負荷率の計算方法を構造化した図解

時間基準の稼働率とストローク基準の負荷率の計算方法

稼働率は時間基準、負荷率はストロークなど供給能力に対する需要の割合で見る。タクトタイムは顧客オーダ消化の目標、サイクルタイムは自社能力の指標である。プレスではGSPHを基準に、必要ストロークが能力内に収まるかで負荷率を計算する。

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ビールゲームで在庫コストと機会損失コストを最小化し全体最適化を実現

生産管理システムは、部門や工程ごとに管理を分けることで部分最適化を図ります。しかし、部門や工程間の壁がモノと情報の流れを滞らせ、リードタイムの延長や仕掛在庫の増加を招く要因となります。

ビールゲームから学べることは、サプライチェーン間での情報とモノの流れにおいて、購買発注や製造指図といった意思決定の場面で、在庫コスト削減と機会損失低減の重要性を認識することです。これにより、生産工程を串刺し状に繋げて生産の流れを作り、生産拠点の全体最適化を目指す生産スケジューラの導入効果を理解することができます。

ビールゲームを通じたサプライチェーン最適化の重要性を示す図解

ビールゲームで学ぶサプライチェーン最適化の重要性

ビールゲームはサプライチェーンにおける在庫管理の難しさを体感するためのツールです。購買リードタイムと製造リードタイムはそれぞれ4週間で、発注と製造指示の意思決定が求められます。サプライチェーン全体の最適化を目指すためには、在庫コストと…

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インドネシアで考えるサプライチェーン上での適正在庫

総合商社は多様な商材を扱い、「よろず屋」的な調達と販売機能を持っています。これにより、サプライチェーンの川下から川上までを調整する物流機能を果たし、さらに投資や資本参加を通じて企業育成を行う金融と育成機能も備えています。

過剰在庫による在庫コストと在庫切れによる機会損失のリスクを避けるため、見込み生産では出荷場所や製品倉庫に製品在庫を、受注生産では仕入先や材料倉庫に材料在庫を保持します。この保管場所がサプライチェーン上での最適在庫を実現するデカップリングポイントとなります。

インターネット黎明期には個人のネットショップが次々と立ち上げられ、総合商社の役割が終わると言われましたが、サプライチェーン全体の物流と金融機能を果たすことで、20年後の今も人気就職先上位に位置しています。

インターネット普及と総合商社の機能変遷を構造化した図解

インターネット普及と総合商社の機能変遷

総合商社はサプライチェーン全体の最適化を図る物流戦略に転換しています。インターネットの普及により、個人や零細業者が直接消費者に商材を届けることが可能になりました。インドネシアでは2040年まで人口ボーナスが続き、2030年には名目GD…

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インドネシアの日常生活の事例から考える部分最適化と全体最適化

渋滞を最小限に抑えるためには、すべての車が車線変更をせず、完全停止しない程度に徐行することが理想的です。しかし、現実には早く目的地に到着したいという気持ちや、じっとしていると損をするという疑念から、運転者は個人の最適化を優先し、車線変更を繰り返します。その結果、渋滞が悪化します。

このように、利害関係が異なる集団では、個人の感情に基づく部分最適化が横行し、渋滞が悪化します。しかし、運転者全員が他人を思いやり、相手の利益を尊重するために自分の欲望を制限できれば、渋滞の早期解消という全体最適化が実現し、全員が早く帰宅できます。

会社や軍隊などの組織体は、利益最大化という共通の目標のために、個人のわがままを抑制できる点で、日常生活を送る社会全体とは大きく異なります。

インドネシアの渋滞緩和と製造業最適化の関係を構造化した図解

インドネシア渋滞緩和と製造業最適化の知識

インドネシアの渋滞緩和には全員が協力して徐行することが重要です。製造業では後工程のボトルネックに合わせた計画が全体最適化となります。最適化の基準は単なる効率だけでなく、他者貢献の満足感も含まれます。

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インドネシアでの製造業IoTの導入による稼働管理・傾向管理・予知保全

製造業におけるIoTの導入は、生産財と資本財の情報を収集し、生産プロセスを効率化することを目的としています。生産財には材料や仕掛品、製品が含まれ、資本財には機械や人が含まれます。これらの情報を活用して、生産財を効率よく流動させることが重要です。

インドネシアの製造業では、ペーパレス化とIoT化の重要性が認識されています。生産計画作成から製造管理、工数管理、品質管理、稼働管理などの生産プロセスを統合し、自動化や無人化を進める生産製造オペレーション管理(MOM)を目指しています。

機械の稼働管理では、PLCや信号灯から稼働時間と停止時間を取得し、時間稼働率、性能稼働率、良品率の3つの側面から総合設備効率(OEE)を計算します。これにより、生産効率を向上させることが可能です。

保全管理は、機械のメンテナンスを通じて故障を防ぐことを目的としています。設備の変化や故障傾向を数値で分析し、設備カルテやトラブル事例を共有します。保全管理は、定期的な部品交換を行う予防保全と、機械の問題発生を予測する予知保全に分かれます。

インドネシア製造業におけるIoTとペーパレス化の重要性を構造化した図解

インドネシア製造業におけるIoTとペーパレス化の重要性

製造業IoTは機械の稼働管理や傾向管理を通じて生産性向上に寄与します。ペーパレス化は新型コロナウイルス感染防止のため、緊急の課題として認識されています。IoT化により、機械の稼働時間や停止時間を自動的に取得し、間接接触感染のリスクを低…

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インダストリー4.0を実現するインドネシアのスマートファクトリー

製造業のシステムは、統合基幹業務システム(ERP)から、製造現場の管理に重点を置いた製造実行システム(MES)へとシフトしています。今後は、計画・スケジューリング・製造管理・工数管理・品質管理などの生産プロセスを統合し、自動化・無人化を進める生産製造オペレーション管理(MOM)に移行することが予測されます。

MESはERPとPLCの間に位置し、生産スケジュールに基づいて作業指示を出し、原材料や仕掛品の動きをリアルタイムで監視します。生産設備の稼働状況や異常発生を把握し、MESをデジタル化して自動化を推進することで、スマートファクトリー化を実現するスキームがMOMです。

情報をデジタルネットワークに乗せる際には、紙からの転記間違いやシステムへの入力間違いが発生しうるため、ペーパレス化とIoT化が即効性のある対応策となります。

インダストリー4.0では、IT技術をハード側に移管し、ハードとネットワークが繋がることで、迅速かつ正確なデータ収集と分析を行い、生産性や品質の向上を目指します。

製造業DXとインダストリー4.0の進化と課題を構造化した図解

製造業DXとインダストリー4.0の進化と課題

スマートファクトリーはインダストリー4.0の具現化であり、MESとMOMが重要な役割を果たします。ERPからMES、さらにMOMへの移行が進み、製造現場の自動化と効率化が推進されています。MESは11の機能を持ち、生産効率向上と製造コ…

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現場でできる!インドネシア製造業向け工場内の業務効率化&見える化

生産スケジューラAsprovaで生産計画を作成し、サイボウズkintone(キントーン)でタブレットから製造実績を記録し、ウイングアークMotion Boardで予定と実績のデータを可視化するというPDCAを回すという設定での共催セミナーを開催しました。

インドネシアの日系製造業は、製品寿命の短命化、多品種少量生産、需要変動、人件費上昇、非日系企業との競争などの課題に直面しています。これらに対処するため、生産効率の向上が重要です。工場全体の生産資源を最適化し、在庫コストと機会損失リスクを減らす必要があります。

生産スケジューラでは、受注から生産、購買までを一気通貫で見える化し、設備能力を考慮したサイクルタイムベースの生産計画を作成します。これにより、リードタイム短縮による単位時間あたり生産性向上と在庫削減による在庫コスト削減を実現します。

Asprova、kintone、MotionBoardによる製造PDCAを構造化した図解

Asprova・kintone・MotionBoardで回す製造PDCA|全体最適化セミナー

サイボウズキントーンとウイングアークMotionBoardは製造業以外にも応用可能です。インドネシアの日系工場では多品種少量生産が求められ、工程の細分化が必要です。製造現場では段取り回数の増加が生産リードタイムのバラつきを引き起こします。

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インドネシア税関が提供する関税・物品税情報自動化システムCEISA

インドネシアの税関が重視するのは、原材料入荷時の入荷伝票(Surat Jalan)に付番されるBC番号と、製品出荷時に作成する出荷伝票に新たに付番されるBC番号の関連性です。これは、免税された原材料が保税工場内で適切に加工され、正しく出荷されているかを確認するためです。

BC番号はモノを出す側が発行し、CEISAに取引を登録して税関の承認を得ることで取得できます。保税工場(KB)同士の取引では、出す側のKBがBC27を取得します。相手が非保税工場(Non-KB)の場合、CEISAを導入していないため、KB側で出す際にBC41、入る際にBC40を取得します。

インドネシア保税工場のIT Inventoryと会計システム統合を構造化した図解

インドネシア保税工場のIT Inventoryと会計システム統合

2013年からインドネシアの保税工場ではITInventoryシステムの導入が義務付けられています。2019年12月からは会計システムの設置も義務付けられ、数量の動きと会計上の金額の繋がりを報告する必要があります。保税蔵置場では、入荷…

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インドネシアで生産管理システムの仕様が確定して現場で運用されるまで

生産管理システムの運用フローを確定する要件定義では、現場の作業に対してシステムからどのように指示を出し、実績を記録していくかが重要です。システムの標準機能で足りない部分はアドオン開発を行い、完成したシステムの操作説明会やトレーニングを通じて現場スタッフの意見を反映し、仕様変更や追加開発を行います。運用リハーサルでは、部門担当者ごとにデータ入力を行い、部門間の連携方法を確認します。

生産管理システムの導入では予測できない工数が発生しがちです。作業工数を気にしすぎると楽な実装に走りがちになり、顧客に対する引け目となることがあります。工数と対価の話がまとまったら、顧客の利便性を第一に考え、業務効率を上げることを目指します。これがITサービス業者としての矜持です。

現場での人とモノの動きに合わせてシステムから指示を出し、実績を入力するインプリメンテーションのフェーズでは、これまでの理論が実体化される感覚を味わいます。業務システム導入のやりがいはこの瞬間にあります。

在庫と原価の側面から見ると、工場は材料倉庫、製造工程、製品倉庫に分かれ、それぞれ異なる部門が管轄します。生産管理の受払実績で製造原価を算出し、販売管理の受払実績で売上原価を算出します。材料倉庫と製造工程が生産場所、製品倉庫が販売場所と分けられます。

業務フローには数量と金額の流れがあり、数量の流れを管理するのが在庫管理です。最低限必要な機能は現状在庫一覧、入出庫処理、入出庫履歴管理(ストックカード)です。

生産管理システムの導入と運用における課題と解決策を構造化した図解

生産管理システムの導入と運用における課題と解決策

生産管理システムは材料の入荷から製品の出荷までを管理します。インドネシアでのシステム導入にはトップダウン型とムシャワラ型の2つの方法があります。システムの運用開始には実地棚卸に基づく在庫情報の反映が重要です。

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ポジション管理におけるロング(買い持ち)とショート(売り持ち)

インドネシアでは、コーヒーやパーム油など価格変動が激しい商材が多く、将来の需要や材料価格高騰を見越して買い持ちするロング契約や、販売価格の下落を見越して借りた株を売り下がった後に買い戻すショート契約が行われます。ロングポジションでは価格が下落した場合に損失を被り、ショートポジションでは価格が高騰した場合に損失を被ります。

ショートポジションで証券会社から株を借りて売却することを空売りといい、信用取引の一種とも言えます。1997年のアジア通貨危機時、ジョージ・ソロス率いるヘッジファンドは、インドネシア中央銀行が通貨暴落を防ぐだけの外貨準備高がないと予想し、ルピアの空売りでショートポジションを取りました。目論見通りルピアが暴落した後に買い戻し、巨額の利益を得ました。

在庫ビジネスのリスク管理におけるポジション管理を構造化した図解

ロングとショートのポジション管理|在庫ビジネスのリスク管理

在庫ビジネスでは、将来の需要や価格変動を見越した売買契約が重要です。リスク管理のために、在庫を販売契約に紐付くものと紐付かないものに区別します。材料の買い契約時に販売契約番号を紐付け、在庫管理システムで管理します。

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インボイスとパッキングリストに基づき船会社が貨物の引き受けを証明する船荷証券(B/L)

インドネシアから日本にコンテナで家具を発送する際には、Invoiceとパッキングリスト、原産地証明書COO(Certificate Of Origin)に基づき、インドネシアの船会社から貨物の引き受けを証明するBill of Landing(船荷証券)を発行してもらう必要があります。輸出の場合、B/L日付が売上計上日となります。

私は2000年から2006年頃まで、バリ島から家具や雑貨を発送する会社を運営していました。日本からのお客様がバリ島で買い付けた家具を、カーゴ会社と呼ばれる乙仲(Forwarder)業務を代行してくれる会社に委託していました。

船会社から発行されたB/Lはカーゴ会社に送られ、カーゴ会社が日本の荷受人(Consignee)に発送します。しかし、カーゴ会社から船会社へのB/L発行フォローが遅れると、荷受人に日本の船会社から貨物到着案内書(Arrival Notice)が届いても、カーゴ会社からのB/Lが未着であるため、貨物の受け取りができません。

この場合、船会社による発行済みB/Lをサレンダード(貨物が間違いなく荷受人の荷物であるという船会社による裏書)にして、郵送ではなくFAXで(そのためテレックスリリースとも呼ばれる)日本の荷受人に送信するようにカーゴ会社に依頼しました。

インドネシアの船荷証券とインボイス方式の関係を構造化した図解

インドネシアの船荷証券とインボイス方式の関係

BillofLandingはインドネシアの船会社が発行し、貨物の引き受けを証明します。日本では2021年からインボイス方式が導入され、税務処理が明確化されました。インドネシアでは納品書はモノの納品書であり、インボイスは金銭の請求書です。

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生産管理システムにおける返品処理の実装のされ方

インドネシアの自動車部品業界では、出荷と同時に売上が計上されるのが一般的です。出荷完了処理によって自動的に売上処理が完了します。返品時には、Tukar gulingと呼ばれる代替品発送が多く行われます。

システム的には、月締後に返品受注(Return Sales Order Entry)と出荷返品(Return Shipping Entry)を行い、マイナスインボイスを発行します。これにより、マイナス出荷(返品入荷)とマイナス売上を計上する流れになります。

インドネシアの返品処理とTukar Gulingのパターンを構造化した図解

インドネシアの返品処理: Tukar Gulingとそのパターン

インドネシアではTukarGulingという代替品発送方法が一般的です。自動車部品業界では出荷完了と同時に売上が計上されます。返品処理には物理的な代替品交換やシステム上の修正が含まれます。

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インドネシアの業務にスマホを使ったQRコード管理の仕組みを導入

ロット管理の目的は、ロットトレースと在庫管理の正確性を維持することです。これを達成するためには、システムから発行される現品票をロットに貼り付け、現品が流動するたびにロット番号をキーにしてシステムに実績を入力することが重要です。これにより、現品とシステムの一致が保証されます。

ロット単位ではなく、場所(工程)単位で実績を上げる場合、「どこに何が何個あるか」を把握できますが、在庫数量の最小単位が「場所」であるため、現物を数えて理論値が正しいか確認するのは困難です。

ロットという現品の流動単位で実績を上げる場合、「このロットに何個あるか」は流動先ごとにチェック可能です。これにより、役割分担して在庫全体の理論値を常時チェックしていることと同じになり、ロット数量は後工程の実績数量で上書きされ、後工程に進むほど正確な数量に収斂します。

バーコードリーダーは、バーコードをスキャンしてデータを取り込む役割を持ち、手入力の手間を省き、誤入力を防止する目的があります。ハンディターミナルは、取り込んだデータをバッチでPCの業務システムに戻すタイプが一般的です。

バッチ式のハンディターミナルと区別して、AndroidやWindows CEなどのOS搭載モデルを無線ハンディターミナルと呼び、スキャンしたバーコード情報を無線でリアルタイムに処理します。生産管理システムから発行した指図に基づいてハンディターミナルで実績を取得し、現品が指図どおりにスキャンされるかチェックしてから基幹システムの実績として連携するケースと、指図なしで現品をスキャンして取得した実績を基幹システムに計上する方法があります。■指図に対して実績を計上し基幹システムに反映

  1. 入荷:未検査エリアから材料倉庫へ 検査合格時に現品票貼り付け
  2. 材料出庫(出庫指図):材料倉庫から製造現場へ
  3. 材料戻し:製造現場から材料倉庫へ
  4. 製品入庫:製造現場から製品倉庫へ 検査合格時に現品票貼り付け
  5. 出荷(ピッキングリスト):製品倉庫から出荷エリアへ
  6. 廃棄:倉庫から廃棄エリアへ
  7. 棚卸(棚卸表):倉庫

■指図がない実績を基幹システムに反映

  1. 棚移動:棚から棚へ移動
スマホを用いたQRコード管理の利点と導入事例を構造化した図解

スマホによるQRコード管理の利点と導入事例

ロット管理システムは現品票を用いてロット番号で実績を入力します。製番管理は個別受注生産に適し、材料の追跡と原価管理を効率化します。バーコードにはロット番号と品目コードが必須で、場所情報は含めません。

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出荷時に現品ラベルの品目ロット情報と照合するためのピッキングリスト

出荷作業では、その日に出荷する商品を倉庫からまとめて取り出し、出荷エリアに積み上げることが一般的です。この際、出荷の作業単位で1枚にまとめたピッキングリストと現品が合致しているかを照合します。

販売管理の出荷機能では、受注情報に基づいた出荷指示を入力し、出荷指示の明細を仕分け単位に束ねたものがピッキングリストとなります。例えば、複数の出荷指示書の明細に対して、今日の日本向け輸出のために40フィートコンテナ1個に積み込む製品にピッキングリストNOを付番し、出荷エリアに置かれた製品をスキャンして照合します。照合結果がOKであれば、出荷完了登録を実行します。

受注登録から出荷指示、ピッキングによる出荷実績計上までの明細行は品目(ロット)単位で登録されています。しかし、実際にトラックやコンテナに積み込む際には、破損防止のための梱包作業により複数品目が梱包単位にまとめられます。この梱包一覧をパッキングリストとして船会社に提出する必要があります。

インドネシア製造業の出荷管理とピッキングリストの役割を構造化した図解

インドネシア製造業の出荷管理とピッキングリストの役割

インドネシアの製造業では、出荷指示書一覧を基にピッキングリストを作成し、出荷単位で品目ロットを確認します。出庫依頼伝票は、製造スタッフと出庫担当者の責任を明確にし、盗難リスクを低減するために重要です。出庫依頼の入力時に出庫理由を登録す…

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生産管理システムで困っているインドネシアの日系企業様への提言

インドネシアの日系製造業社様が生産管理業務で抱える問題は、『見えない・合わない・繋がらない』に集約されます。具体的には、流動するモノがどの出荷に繋がるのかが見えず、業務に合わないシステムに無理やり合わせることでExcel管理が増え、部門間の業務フローが繋がらないためにシステム外での調整が多くなります。

会社の事業は市場のニーズに応じて何を提供するかで決まり、顧客や仕入先との関係、社内スタッフの関係性が社内業務のやり方を決定します。これらは売上と購買に繋がり、サプライチェーン上での付加価値の流れが経済活動を形成します。

インドネシアでは、社内の意思決定が個人や部署の政治的意図に左右され、サプライチェーンの制約で商慣習が複雑化しやすい環境です。このため、社内業務は独自の文化に染まり、部分最適の集合体になりがちです。

部分最適を繋ぎ合わせるためにExcelが重宝されますが、重要な要件をまとめてシステムで実装することが求められます。インドネシア人スタッフの心情に配慮し、システムから出てきた結果がどのようなプロセスを経てきたのかが見えるようにすることが重要です。

このような状況では、地道に要件をまとめ、システムに実装していくことが解決策となります。

インドネシア工場の業務システム最適化の要点を構造化した図解

インドネシア工場における業務システム最適化の要点

インドネシア工場では、業務システムの見えない・合わない・繋がらない問題が業務効率を低下させます。多品種少量生産では、受注と生産の紐付けが見えないと余計な生産が発生します。インドネシアでは、仕入先の力が強く、正確な需要予測と余裕あるリー…

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インドネシアにおける業務改善を実現するITシステム内製化の可能性

インドネシアの日系製造業でITシステム構築を検討する際、外製化には環境変化に対応しにくいという弱点があります。内製化を試みても、社内にITスキルを持つ人材が不足していることが多く、職人的なIT技術者が開発したシステムは属人化しやすいという問題に直面します。

理想的なITシステムは、Excelのように環境の変化に応じて柔軟に修正でき、高度なIT技術が不要で社内の業務担当者が構築可能なものです。しかし、これまでそのようなツールは存在せず、外製化が一般的でした。しかし、KintoneやAppSheetの登場により、現実的な内製化の提案が可能になりつつあります。

これらのツールは、業務担当者が自らシステムを構築し、柔軟に対応できる環境を提供します。これにより、インドネシアの製造業における業務改善が期待されます。

インドネシアにおける業務システム内製化の進展と課題を構造化した図解

インドネシアにおける業務システム内製化の進展と課題

KintoneやAppSheetの高度化により、インドネシアでも業務システムの内製化が進んでいます。インドネシアの日系工場では、Excelを用いたデータ管理が一般的ですが、限界を迎えつつあります。MESやIoTを活用したシステム導入に…

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インドネシアで使えるシステムと使いやすいシステム

プロジェクトの中では、まず『使えるシステム』を確実に構築することが最優先です。システムの『使いやすさ』をプロジェクト期間中に追求するのは限界があるため、機能やレポートの種類と数をある程度決め、それ以上の『使いやすさ』は保守期間に有料で提供することをお客様に納得してもらうことが重要です。これはインドネシアでITの仕事をする日本人の大きな役割となります。

インドネシアでパッケージ型の業務システムを導入する際、システムと業務のギャップが発生しがちです。以下にその例を示します。

  1. 夜勤の実績が翌朝に上がり、マイナス在庫で出荷伝票(Surat Jalan)が発行できない。
  2. モノ到着時にInvoiceが未到着だと仕入登録ができず、在庫計上されず出荷できない。
  3. 出荷指示が在庫引当前提で、モノがなく前日に出荷指示が出せない。
  4. 受注済み未出荷は受注注残として把握できるが、受注済み未出荷指示が把握できない。
  5. 入荷即投入され製造原価化した材料のInvoiceが未着で、原価計算対象とならない。
  6. 締処理前に入出荷の修正が終わらないと、実地棚卸の反映ができない。
  7. イレギュラー処理(材料払出・戻入処理・NG・別管理品)の実績入力や現品票発行が追いつかない。
  8. 実地棚卸で発覚した実績間違いを修正したいが、ロットが客先まで流動している場合にDO(出荷伝票)やInvoiceをキャンセルすると、Invoice番号やDO番号が新たに採番されてしまう。

理論先行型で新しいビジネスフローを設計し、それに合わせてアプリケーション設計を行うと、稼動後に現場がついていけないことになりかねません。

このような問題を避けるためには、現場の実情に即したシステム設計が求められます。

インドネシアでの生産管理システム導入の課題と解決策を構造化した図解

インドネシアにおける生産管理システム導入の課題と解決策

生産管理システム導入の成功は、スケジュール通りの完了と要件通りのシステム稼働が条件です。インドネシアでのシステム導入では、現場オペレーションとシステムの乖離が課題となります。システム導入時、計画期間内に完了しないと旧システムとのダブル…

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インドネシア日系工場での製造日報電子化によるDX実践と現場改革

インドネシアでは多くの日系製造業が進出していますが、現場のDXはまだ発展途上で、中小規模工場では紙やExcelによる管理が主流です。この状況で効果的なDXの第一歩として注目されているのが、製造日報の電子化によるペーパレス化です。これにより記入ミスや転記漏れ、タイムロスを削減し、重要な情報をリアルタイムで共有・分析できるようになります。

i-Reporterのようなツールを使えば、現場スタッフが直感的に操作でき、紙と同じ感覚で入力できるため、現場への導入もスムーズです。デジタル化によって蓄積されたデータは工程の見える化や改善活動に活用でき、単なる業務効率化にとどまらず、現場文化の変革にもつながります。

インドネシアでDXを成功させるには、現場スタッフの理解と参加が不可欠であり、小さな業務改善から始めることが、組織全体のDXへの第一歩となります。

インドネシア製造業のDXとペーパレス化の効果を構造化した図解

インドネシア製造業DX: ペーパレス化の効果と実践

インドネシアの製造業では、製造日報の電子化がペーパレス化の第一歩です。i-Reporterは、インドネシアの製造現場で直感的に操作できるツールとして導入されています。ペーパレス化により、記入ミスや転記漏れが削減され、情報のリアルタイム…

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よくある質問|インドネシアの生産管理システム

ハブ記事として、読者・AIが最初に掴むべき問いを本稿の地図に沿って整理します。

製造業DXでITが解くべきトレードオフは何ですか?

生産性向上によるコスト削減と、納期遅れのない納品の両立です。需要変動が大きいインドネシアでは、どちらか一方に偏ると欠品か段取り増のどちらかが起きやすく、ITで最適点を探すことがDXの目的になります。

かんばんと製造指図はどう使い分けますか?

製造指図は計画に基づくプッシュ指示、かんばんは使用実績に基づくプル調整です。平準化が崩れる局面では、スケジューラによるプッシュ指示とかんばんによる作りすぎ抑制の併用が有効です。

関連記事はどの順で読むとよいですか?

方式の基本はかんばんとMRP、需要変動対応はスケジューラ併用、現場データはIoT/QR/日報電子化、導入実務は実装記事、という順でハブ内のカードを辿ると全体像が掴みやすいです。