インターネット普及と総合商社の機能変遷

2020/08/28

インターネット普及と総合商社の機能変遷を構造化した図解

総合商社は、代理店業からサプライチェーン全体で付加価値に見合う利益を上げるビジネスモデルに転換しています。これにより、サプライチェーン全体の最適化を図る物流戦略を描き、時間短縮や規模の経済性による価格値下げを通じて消費者利益に寄与します。

インドネシアの生産管理システムと製造業DXの関係を構造化した図解

インドネシアの生産管理システム

製造業の至上命題は生産性向上と納期遵守です。製造原価、売上原価、販売管理費の違いを理解することが重要です。勘定連絡図は製造業の原価計算に役立ちます。

続きを見る

この記事でわかること

  • 総合商社はサプライチェーン全体の最適化を図る物流戦略に転換しています。
  • インターネットの普及により、個人や零細業者が直接消費者に商材を届けることが可能になりました。
  • インドネシアでは2040年まで人口ボーナスが続き、2030年には名目GDPで日本を追い抜くと予測されています。
  • デルコンピュータの受注組立モデルは、受注から出荷までの適正在庫管理が重要です。
  • インドネシアの二輪四輪業界では、ジャストインタイムに合わせた納品が求められています。

インターネットの普及による総合商社の機能の変遷

私は1997年10月にインドネシアに来ました。当時、インドネシア人からよく言われた「金貸して」と「一緒にビジネスしよう」という言葉が、最近ではめっきり減りました。その大きな理由の一つは、インドネシア人の収入が上がり豊かになったこと、もう一つはインターネットの普及により、コネを持たない個人や零細業者でも最終消費者に商材をリーチさせる商流ができたことです。

裏を返せば、日本人に対する期待感が下がったとも言えます。しかし、2040年まで人口ボーナスが持続し、2030年には名目GDPで日本を追い抜くと言われているインドネシアでの日本人の立場は、「金とコネを持っている使える外国人」から「商売上のライバル」に変わりました。

2000年前後、個人のネットショップが次々と立ち上げられ、インターネットの黎明期から成長期に入る時代に、将来起こりえるビジネスの大変革として以下の2つがよく言われました。

  1. 個人が大企業とネット上で対等に戦える時代が来る。
  2. 生産者が消費者と直接取引することで商社や卸業者の役割が終わる。

2020年の状況を見ると、TokopediaやInstagram経由でジャワの田舎やカリマンタン島のジャングル近くから、観葉植物やアロワナの幼魚の直販が可能になりました。中間マージンを載せるだけの小さい商社や卸業者による代理店ビジネスが衰退したことから、これらの予言は大枠で当たっていたと言えます。

ただ、日本の総合商社の存在感は依然として大きく、学生の就職先人気ランキングで上位を占め続けています。コロナ禍の影響で2020年3月の連結決算で丸紅商事が減損損失で過去最大の1974億円の赤字を計上したり、6月には時価総額で伊藤忠商事が三菱商事を逆転したりする動きはありますが、日系企業のインドネシアでの現地法人設立時の資本参加や、資材調達の面での仲介機能という側面での5大商社の存在意義は依然として大きいです。

中学の政経の授業で学んだ総合商社のイメージは「ラーメンからミサイルまで」という扱う商材の幅広さが強調されていましたが、その後、総合商社はサプライチェーンの川上から川下の全体で付加価値に見合う利益を上げるビジネスモデルに転換しました。

2019年2月には三菱商事によるGoJekへの大型出資が話題になったように、売却やIPOによるイグジットではなく、グループ内企業との連携を意識しながらのビジネスの継続を前提としたインキュベート機能を果たすようになっています。

  1. 扱う商材の幅広さから「よろず屋」的な調達と販売機能
  2. サプライチェーンの川下から川上までを調整する物流機能
  3. 投資や資本参加により企業育成を行う金融と育成機能

インターネットの普及で事業体が置かれる競争環境が対等になり、特定の事業体や地域内で商材の調達と製造が完結する場合には、生産者から消費者への直販ビジネスが成り立つようになりました。しかし、グループ内ネットワークや資金力を背景とした「規模の経済性」を生かすことができる総合商社は、サプライチェーン全体のオーガナイザー機能そのものをコアビジネスとして定義し直すことで、存在意義を益々高めています。

サプライチェーンの中のデカップリングポイント

製造業の生産形態は大きく分けて見込生産(Make To Stock)と受注生産(Make To Order)に分類されます。半製品在庫を持ち、顧客から注文があった時点で製品を組み立てて出荷するデルコンピュータの受注組立(Assemble To Order)は「デルモデル」とも呼ばれ、販売台数を伸ばしました。サプライチェーン上では、受注から出荷に至るまでに適正在庫が必要です。

工場内のデカップリングポイント

工場内で在庫が必要な理由は2つあります。これはサプライチェーン全体でも同様で、究極の「適正」とは在庫の補充と同時に出荷がなされる状態です。

  1. 製造(供給)リードタイムと受注(需要)リードタイムの差を埋めるための保険
  2. 工場全体の生産性(供給能力)を決定するボトルネック工程(主体)の流れを止めないため

サプライチェーン上での在庫を持つ場所はデカップリングポイントと呼ばれます。受注生産では「調達場所」が該当し、見込生産では「出荷場所」が該当します。サプライチェーンの中で事業体ごとに異なるデカップリングポイントを考慮した在庫コントロールは非常に難しいです。

インドネシアは国際物流価格の高騰や不安定さの影響を受け、需要変動が激しくなっています。アマゾンやアリババ、インドネシアのTokopediaなどのeコマースやオンラインマーケットプレイスと同様、日本の総合商社もサプライチェーン全体の物流を把握し、調整することで全体最適化を図る物流戦略を描くことができます。これにより、注文から発送までの時間短縮や規模の経済性による販売価格値下げが最終消費者の利益に繋がります。

よくある質問|総合商社とインターネットの影響

本稿の内容に沿って、繰り返し出る問いを短く整理します。

インターネットの普及は総合商社にどのような影響を与えましたか?

インターネットの普及により、個人や零細業者が直接消費者に商材を届けることが可能になり、商社や卸業者の役割が変化しました。これにより、商社はサプライチェーン全体の最適化を図る物流戦略を描く必要が出てきました。

インドネシアにおける日本の総合商社の立場はどのように変わりましたか?

インドネシアでは、インターネットの普及と経済成長により、日本人の立場が「金とコネを持っている外国人」から「商売上のライバル」に変わりました。しかし、総合商社の存在意義は依然として大きく、資本参加や資材調達の仲介機能で重要な役割を果たしています。

総合商社のビジネスモデルはどのように変遷していますか?

総合商社は、代理店業からサプライチェーン全体で付加価値に見合う利益を上げるビジネスモデルに転換しています。これにより、物流戦略を描き、時間短縮や規模の経済性による価格値下げを通じて消費者利益に寄与しています。