原価管理システム

インドネシアの原価管理システムまとめ

インドネシアに多い二輪四輪部品メーカー様などのマスプロダクション型の工場には製造工程が複数あり、各工程ごとに工程費を求め、累加法で製品に集計するやり方を総合原価計算といい、この場合労務費や製造間接費は月末に会計側で計上された金額を棚卸資産に振り替えて配賦していくことになります。

一方で一品一様の個別受注生産の工場では受注番号やプロジェクト番号ごとに原価を集計していく個別原価計算が採用され、この場合労務費や製造間接費は事前に決められた賃率や配賦率に工数を掛けることで計上することになります。

2020年12月現在、インドネシアのコロナ禍の中での製造業の生産設備の稼働率は激変しており、稼働率が低下すると人件費、設備費などの固定費の配賦金額が出来高の少ない製品の原価に大きく載って原価が上昇してしまいますので、製造計画・実績の変動を反映した原価計算と、利益が計算できる仕組みが必要になり、そのためにはIoTを用いた精度の高い実績データ収集や、実態に即した配賦ルールが設定できる仕組みが必要になります。

そして根本的な問題としてどんなに細かく原価を把握しても利益は増えないわけで、具体的に収益改善に繋げるためには原価差異の分析や経営判断のための予実分析が必要となり、そのためには部門ごとの目標設定と月次ウォッチや、収益改善に最も効果のあるターゲットが見える仕組み作りが必要です。

当ブログではインドネシアの製造業様で原価管理業務のシステム化の必要性を感じているものの、具体的に何から手を付けたらいいのか分からないという方にとって、インドネシアに合った製造業システムとは何かをイメージするための一助となるような原価管理システムについての記事を書いています。

総合原価計算

継続記録法と三分法による原価計算と会計仕訳

受払の都度仕訳が発生し会計と在庫管理の棚卸資産評価額が同期する継続記録法を採用するシステムと、月初在庫と当月発生費用から月末在庫の差し引きで製造原価を算出する三分法(棚卸計算法)を採用するシステムの原価計算方法の違いと会計仕訳について変動費と固定費に分けて説明します。

業務システムごとに異なる原価計算方法
業務システムごとに異なる原価計算方法【継続記録法システムでは実績原価、三分法システムでは実際原価と標準原価】

受払の都度仕訳が発生し会計と在庫管理の棚卸資産評価額が同期する継続記録法を採用するシステムと、月初在庫と当月発生費用から月末在庫の差し引きで製造原価を算出する三分法(棚卸計算法)を採用するシステムの原価計算方法の違いについて変動費と固定費に分けて説明します。

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原価計算の累加法と非累加法

製造工程が複数ある場合には、各工程ごとに工程費を求めるが、製品に集計する方法には累加法と非累加法があります。

  1. 累加法(Rolling costing)通常は累加法
    各工程の完成品は前工程費と当工程費を背負って次工程へ振り替えられていくこととなる。(俗に言う「ころがし計算」=Rolling Costing)
  2. 非累加法
    前工程費を含めずに各工程費を計算し、それらを直接合計して製品原価を求める方法
製造原価の積み上げ計算に必要な投入品目の総平均単価と自工程加工費
前工程費に自工程費を積み上げて製造原価を求める累加法 【材料の総平均単価が投入実績の単価】

月初在庫があっても当月投入実績がない品目は、B/S上資産として計上されたままで、当月製造原価として費用化しません。投入済み未出来高(工程内在庫)は存在しない前提で言えば、実際原価計算の本質は総平均単価の費目別積上げによる投入品目の製造原価の計算と、自工程加工費の品目配賦です。

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生産数量ベースの非累加法と投入数量ベースの累加法

非累加法は生産数量ベースの当月発生費用、累加法は投入数量ベースの当月発生費用と言えます。
前工程の生産実績ベースの発生費用が自工程の投入数量ベースの発生費用となるので、材料発生費用が仕掛品への投入数量ベースの発生費用となり、仕掛品の生産数量ベースの発生費用が製品への投入数量ベースの発生費用となります。

原価管理システムの生産実績ベースと投入実績ベースの発生費用
原価管理システムの生産実績ベースと投入実績ベースの発生費用 【投入数量ベースの発生費用は仕掛品製造原価】

材料入荷があっても投入されなければ当月発生費用も0という意味で、当月発生費用は「当月投入した材料の原価=投入ベースの発生費用」と言えます。製造がなければ製造原価も0という意味で、製造原価は「当月製造出来高があるものの原価=生産実績ベースの当月発生費用」と言えます。売上がなければ売上原価も0という意味で、売上原価は「当月売れたものの原価=出荷実績ベースの当月発生費用」と言えます。

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投入実績と生産実績が月をまたぐ場合の製造原価

実際原価計算を行う際に仕掛品の月末残高(月初繰越高も)には仕掛品で品番があるものと、投入実績のみ上がっているものの2種類があります。

低価法による在庫評価替え

評価単価自動設定で前月末評価単価を月末評価単価マスタに自動設定してあるので、今月末に新単価を自動設定または一定比率にて一括変更し、「評価単価-新単価」を計算し、理由に応じた評価損仕訳を生成し、翌月の繰越在庫評価額を更新します。

在庫受払による原価振替と低価法による在庫評価替え
在庫受払による原価振替と低価法による在庫評価替え 【三分法では棚差が製造原価に含まれるため販管費や特別損失に振替えることで売上総利益・営業利益・計上利益を正しくする】

決算時の売上原価算定を三分法で行っている場合では、他勘定振替による原価振替(仕損費・試作品費・冶具備品・棚卸減耗費)をしないと、損益(売上総利益>営業利益>経常利益)のいずれかのレベルで実情にそぐわない偏りが出てきます。

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標準原価計算

製品の実際原価と標準原価の差異

  1. 実際原価も標準原価も、賃率(配賦率)と工数(能率)という概念で固定費を変動費と同じように扱うことで差異分析することができます。
    1. 直接材料費(モノ)=単価x数量(製品1個あたり何KG)
    2. 直接労務費(ヒト)=賃率(1分あたりの金額)x能率(製品1個あたり工数)
    3. 製造間接費(機械)=配賦率(1分あたりの金額)x稼働率(製品1個あたり何分)←作業時間配賦
    4. 製造間接費(共通機械)=配賦率(製品1個あたりの金額)←製造数量配賦
  2. 製品の実際原価と標準原価の差異分析
    1. 直接材料費の価格差異=(実際材料単価-標準材料単価)x実際使用数
    2. 直接材料費の数量差異=(実際使用数-標準使用数)x標準材料単価
      価格差異と数量差異
    3. 直接労務費の賃率差異=(実際賃率-標準賃率)x実際工数
      実際賃率=実際直接労務費÷実績作業時間
    4. 直接労務費の作業時間差異=(実際工数-標準工数)x標準賃率
      賃率差異と作業時間差異
    5. 製造間接費の差異
      • シュラッター図上で、標準稼働時間(目標)、実際稼動時間、基準稼動時間(計画)を元に、固定費も変動費と同様に配賦率x稼働時間と考え、この枠組みの中で実績製造間接費が発生する。
        • 配賦率x標準稼動時間=標準変動費と標準固定費
        • 配賦率x実際稼動時間=実際変動費と実際固定費
        • 配賦率x基準稼動時間=基準変動費と基準固定費
      1. 能率差異(XYグラフ上の差異)
        • 能率差異(変動費部分)=実際変動費-標準変動費
        • 能率差異(固定費部分)=実際固定費-標準固定費
      2. 予算差異
        • 実績変動費-実際変動費(実際稼動時間に基づく理論値)であり、材料費や賃率(変動費配賦率)上昇により、実績製造間接費が実際製造間接費(配賦率x実際稼働時間)をオーバーした分。
      3. 操業度差異(XYグラフ上の差異)
        • 基準固定費-実際固定費であり、基準稼動時間(フル稼働)と実際稼動時間の差による損失分

シュラッター図

実際原価計算と標準原価計算の差異分析
実際原価計算と標準原価計算の差異分析 【直接材料費(モノ)だけでなく直接労務費(人)と製造間接費(機械)も変動費のように扱う】

標準原価は直接材料費(モノ)・直接労務費(人)・製造間接費(機械)について固定費も変動費のように扱い、材料費は価格差異と数量差異、労務費は賃率差異と作業時間差異、間接費は能率差異、操業度差異、予算差異に分析されます。

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実際原価と標準原価の配賦率

標準原価計算では製品の予定生産数(販売数)を元にした数量展開計算(必要数)によって、仕掛品の予定生産数量と材料の予定購入数量を算出し、製品1個あたりの直接材料費を算出します。

また時間展開計算(必要数x能率)によって予定直接作業時間を算出し、共用設備の減価償却費等をコストセンターに按分するための一次配賦比率を計算します。

コストセンターに集約された直接労務費や製造間接費の予算を、生産数量比率または直接作業時間比率で按分することで賃率(配賦率)を計算し、製品1個あたりの直接労務費や製造間接費を算出します。

実際原価計算では総平均単価と配賦計算にて実際配賦率が計算されます。

  • 標準配賦率(予定配賦率):品目別の予算費用と勘定科目別または部門別の予定データから計算
  • 実際配賦率:実際発生費用と実績データから計算

実際原価計算の変動費を計算するための総平均単価や、固定費を計算するための実際発生額をコストセンターに配賦(集約)したあとに品目按分する配賦比率は実際配賦率で、標準原価計算の変動費である標準単価(単価マスタ)や、固定費を計算するための予算をコストセンターに配賦(集約)したあとに品目按分する配賦比率は標準配賦率です。

標準原価と実際原価を同じ仕組みで理解する
標準原価と実際原価を同じ仕組みで理解する 【一次配賦比率の計算、一次配賦、配賦率の計算、原価費目の積上計算という流れ】

勘定連絡図に沿って受払実績を管理するのが生産管理システムであり、原価管理システムで材料の総平均単価が算出できれば、累加法で工程ごとに加工費を積み上げることで、P/L作成に必要な当月発生材料費、当月製造原価、当月売上原価が算出できます。

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個別原価計算

受注NOごとにコストを集計する個別原価計算では高い精度で製造原価を算出できますが、大量連続生産による見込み生産工場で採用することは難しいので、IFRS(国際会計基準)では在庫評価基準として先入先出法、移動平均法、標準原価法、総平均法の4つが認められています。

費用と原価

購入費用⇒発生費用⇒製造原価⇒売上原価という流れ

買ったときは購入費用で使った時点で発生費用となり、製品になった時点で原価(製造原価)になり、売れた時点で売上原価となります。

製造がなければ製造原価は0で、売上がなければ売上原価は0

製造が0なら製造原価も0になります。製造原価は当月製造出来高があるものの原価=生産実績ベースの当月発生費用です。
売上0なら売上原価も0になります。売上原価は当月売れたものの原価=出荷実績ベースの当月発生費用です。

製造がない月の固定費の扱い。生産があろうとなかろうと機械の減価償却費が発生し、本来そのうちの当月の製品になった分が当月製造原価になるが、生産がない月に製造原価があるという矛盾が発生します。税務上は毎月減価償却費を計上させる必要がある以上は、販売管理費または仕掛品に振替える。

三分法で計算できない共通材の発生費用

共通材全体の発生材料費は三分法によって月初材料在庫と当月材料購入金額と月末材料在庫から差し引きで計算できますが、品目別の発生材料費用はどの製品に何キロ使用されたか把握できない限り三分法では計算できないので、投入実績の親子関係から計算します。

当月発生費用と仕掛品製造原価の関係
当月発生費用と仕掛品製造原価の関係 【B/Sに仕掛品を計上するには加工費を仕掛品に配賦する必要がある】

B/Sに仕掛品を計上するには加工費を仕掛品に配賦する必要がありますので、工程に投入された直接材料または加工費は当月発生費用は仕掛品と製品のどちらかに積み上げられます。

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限界利益率で損益分岐点売上を計算

製造原価を変動費(金額が数量に比例/単価は一定)か固定費(金額が固定/単価は数量に反比例)かに分類または費目別(直接材料費・直接労務費・製造間接費)に分類するかの2通りあり、生産管理システムの受払いから連携する直接材料費と外注加工費が変動費で、会計システムから連携し配賦ルールに従い作業時間按分するのが固定費となります。

  1. 製造原価を変動費か固定費かにより分類
    • 変動費は主に生産の受払実績から得られる直接材料費と外注加工費であり、固定費は会計から得られる費用である
  2. 製造原価を直接費か間接費かにより分類
    • 直接材料費、直接労務費、製造間接費

    マインドマップ

  3. 製造間接費と同じ費用が販売管理費で発生する。
  1. 原価=変動費+固定費であるので、同じように単価=変動単価+固定単価も成立し、変動単価は売上に無関係に一定だが、固定単価は売上に反比例して小さくなります。
  2. 粗利でいかに固定費を回収するか
    6で仕入れ(変動費)て10で売るというのは原価の6掛け(メーカー希望小売価格の6割)、つまり利益率0.4ということであり、これで家賃と人件費30(固定費)を回収するにはいくら売ればいいかという小売店の発想の場合、利益率0.4(粗利/売上)が限界利益率(粗利率)であり、売上-仕入(変動費)=4が限界利益、固定費30/限界利益率0.4で損益分岐点売上75を算出できます。
実録!バリ島でのブティック経営体験から学ぶ限界利益と損益分岐点 【粗利率(限界利益率)で固定費を回収できる売上】

「原価=変動費+固定費」であるので、同じように「単価=変動単価++固定単価」も成立し、変動単価は売上に無関係に一定ですが、固定単価は売上に反比例して小さくなります。

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製造原価と売上原価と販管費の違い

製造原価は当月に製品倉庫に入庫した製品の原価であり、そのうち変動費は月初材料在庫と当月購入材料から当月投入された当月発生材料費で製品化した部分が該当し、固定費は当月発生した直接労務費と製造間接費で製品に対してかかった部分が該当します。

売上原価は月初製品在庫と当月製品倉庫に入庫した製品のうち、当月のうち出荷した製品の原価であり、売上から売上原価を差し引いた売上総利益から、出荷に至るまでにかかった販売管理費(期間原価)を控除することで営業利益が算出されます。

  • 月初材料在庫+当月購入材料-月末材料在庫=当月材料費
  • 月初仕掛品在庫+当月材料費+当月加工費-月末仕掛品原価=製造原価
  • 月初製品在庫+製造原価-月末製品在庫=売上原価
  • 売上-売上原価=売上総利益
  • 売上総利益-販管費=営業利益
製造原価と売上原価と販売管理費の関係
製造原価と売上原価と販売管理費の関係 【企業会計の枠組みの理解の仕方】

製造現場でかかった材料費や加工費が当月発生費用であり、生産した製品そのものを作るためにかかった費用が製造原価で、販売した製品そのものを作るためにかかった費用が売上原価です。販売するためにかかった販売管理費は売上総利益から控除します。

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原価管理システムの予算原価と会計システムの予算管理

予算とは「予」=あらかじめ「算」=けい算するという意味であり、売上と費用の予定見積もり金額を算出し利益を予測します。

経理の仕事で重要な作業が決算と予算であり、決算は会社が1年間の営業活動を終えた後に行い、予算策定は会社が1年間の営業活動を始める前行います。

原価管理システムの予算原価と会計システムの予算管理
原価管理システムの予算原価と会計システムの予算管理 【決算と予算という経理の仕事】

標準原価では製品生産予定とBOMから予定生産数量、予定生産数量と標準原価作業能率マスタから予定直接作業時間を計算し、製造間接費予算と予定生産数量から配賦率、直接労務費予算と予定直接作業時間から賃率を計算します。

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賃率(1分あたりいくら)と工数(1個あたり何分)

固定費である労務費も、材料費(単価x数量)のように賃率x能率(工数)で計算するのは、工数計算(単価x人日)で支払加工賃を見積もるためです。

  1. コストセンター(直接部門)の賃率計算
    • コストセンター作業員の出退勤データ(退勤時間-出勤時間)から作業日報の間接作業(直接製造に関わった時間以外)時間を引いた直接作業時間合計をコストセンター別に集計し、製品別直接作業時間=
      コストセンター別直接作業時間合計x{(標準工数x生産数)/SUM(標準工数x生産数)}で製品別直接作業時間(直接工数)を算出。直接作業時間合計を製品に按分する比率として、それぞれ工数の違う製品の生産数だけを使うのは乱暴なので、標準工数x生産数を使う。
  2. 直接作業時間比率を上げる
    • 成果を生み出すのは直接作業であり、営業・総務・経理・管理者もすべては直接作業の生産性を高めるための支援部隊。
      「賃率=総コスト/稼動時間」なので同じ賃率でも直接作業時間比率が高ければ成果が大きく、間接作業比率が高ければ成果が小さい
      「直接人員比率UP」は工場経営の基本の基本
    • 賃率とは時間コストであり、縫製直接人員は最低70%は確保しないと賃率を押えることも加工高を上げる事も苦しい。
1個あたり何分かかるかが工数、1時間あたりいくらかかるかが賃率
1個あたり何分かかるかが工数、1時間あたりいくらかかるかが賃率 【経営指標としての「配賦率x能率」という考え方】

工数(1個あたり何分)と賃率(1時間あたりいくら)の関係は、かつて発注先と外注先との合意の下で支払加工賃=標準工数x標準賃率が適用されましたが、現在は経営指標の意味あいが強いようです。

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在庫評価方法によって在庫評価額が確定するタイミングが異なる

在庫管理にも数量と金額という二面性があり、在庫管理の金額は、最遅でも月末時点で会計の在庫勘定と同期している必要があります。

在庫評価方法と実績データ入力のタイミング
在庫評価方法と実績データ入力のタイミング 【移動平均法での仕入計上は入荷基準が前提】

移動平均法でInvoiceが月まとめで到着する場合でも材料を出庫する必要があるため、入荷時に仮債務をP/O価格で計上し(借方はテンポラリー勘定)移動平均単価を更新することで出庫を可能とします。

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実績入力間違いの製造原価に及ぼす影響

実績入力を間違うと管理会計上の製品の製造原価を正しく修正することはできませんが、三分法に基づく財務会計上から過大計上された9個分の直接材料費を販管費に振替えることはできます。

2020/12/01

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