インドネシアにおける生産管理システム導入の課題と解決策

2015/06/16

インドネシアでの生産管理システム導入の課題と解決策を構造化した図解

生産管理システム導入プロジェクトの成功とは、スケジュールどおりにプロジェクトが完了し、当初の要件どおりに『使えるシステム』が動くことです。『使えるシステム』に盛り込めなかった機能や帳票、UI/UXの変更は、導入後サポートとして有料で行い、より『使いやすいシステム』に改良していきます。

インドネシアの生産管理システムと製造業DXの関係を構造化した図解

インドネシアの生産管理システム

製造業の至上命題は生産性向上と納期遵守です。製造原価、売上原価、販売管理費の違いを理解することが重要です。勘定連絡図は製造業の原価計算に役立ちます。

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この記事でわかること

  • 生産管理システム導入の成功は、スケジュール通りの完了と要件通りのシステム稼働が条件です。
  • インドネシアでのシステム導入では、現場オペレーションとシステムの乖離が課題となります。
  • システム導入時、計画期間内に完了しないと旧システムとのダブルインプットが必要になります。
  • パッケージシステムは80%のフィットがあっても、20%のギャップが業務の根幹に影響を与える可能性があります。
  • インドネシアの商慣行や税制に対応するためには、システムのカスタマイズが必要です。

システムと現場オペレーションの乖離(GAP)

システムと現場オペレーションの乖離(GAP)は、生産管理システム導入プロジェクトにおいて避けて通れない課題です。特にインドネシアでの業務システム導入時には、以下のようなGAPが発生することがあります。

  • 事例1: 工場での製造実績の入力は生産管理部スタッフが翌日朝10:00に行いますが、夜勤の現場では完成品が即出荷されるため、システム上で製品在庫不足となり出荷伝票(Surat Jalan)が発行できません。
  • 事例2: 商社が商品を仕入れる際、モノは到着していてもインボイスが未着であればシステム上仕入登録ができず、入荷済みの商品が在庫化されず出荷処理ができません。
  • 事例3: 現場では翌日出荷分の出荷指示を前日に出力して準備しますが、システム上では在庫引当を前提としているため、在庫不足で出荷指示が出せません。
  • 事例4: 受注100個に対して20個の出荷指示を出した時点で、受注済み未出荷指示残として80個を把握したいですが、システム上は出荷完了処理が終わるまで受注残0個の状態です。
    • 受注:出荷指示=1:1
    • 受注:出荷完了=1:N

    「受注 > 引当 > 出荷指示 > 出荷完了」というシステム処理の流れの中で、受注と出荷指示が1対1の分割しかできないのは、システム上正しい動きですが、運用上不都合が生じます。

  • 事例5: 工場で材料を仕入れる場合、仕入先から月まとめでインボイスが翌月に到着するため、当月内にインボイスNOが判明せず、入荷即投入されて当月製造原価化している材料に対するインボイス登録ができず、原価計算対象受払が生成されません。
  • 事例6: 受注登録から出荷処理してインボイス発行という一連の処理をシステムで行う中で、月末締処理前に各種の修正作業が必ず発生しますが、この修正作業が終わらないと実地棚卸をシステムに反映できません。
  • 事例7: 現品票のバーコードを読ませることで材料払出と戻入処理を行い、NGや別管理品発生のたびに実績入力し現品票貼付けるなど、システム上で想定したフローに現場が付いていけないケースがあります。
  • 事例8: 実地棚卸で実績入力に間違いが発覚し、月中の生産実績に遡って修正を行おうとしても、ロットが既に客先まで流動している場合には、川下のインボイスや出荷伝票から順番にキャンセルする必要があり、それに伴いインボイス番号や出荷伝票番号が新たに採番され、その結果客先や取引先のドキュメント管理に影響を及ぼすため修正ができません。

『使えるシステム』と『使いやすいシステム』

インドネシアの日系製造業は、中国やタイに比べて業務フローのシステム化が遅れており、Excelによるマニュアル運用を業務システムに置き換える動きがようやく進んでいます。生産管理システム導入プロジェクトでは、『使えるシステム』にすることが基本ですが、『使いやすいシステム』にするには限られた期間と予算の中での工夫が必要です。

  1. 使えるシステム=業務がシステムで回る。
  2. 使いやすいシステム=操作しやすく便利な機能が揃っている。

『使える』があってはじめて『使いやすい』があるため、プロジェクトではまず『使えるシステム』を確実にすることが重要です。『使いやすい』にこだわり過ぎると、プロジェクト成功の条件である『スケジュール内に完了』が難しくなります。

  • お金を払ってシステムを導入したのだから使えるのは当たり前ではないか

このような声もありますが、業務がシステムで回るレベルに到達するには、導入する側にもされる側にも多くのエネルギーが必要です。

システムを使えるように導入するには?

システムを導入する際、誰もが「プロジェクトが成功するだろうか」と不安を感じます。プロジェクトの成功は、以下の2点に集約されます。

  1. プロジェクトが計画期間内に完了する。
  2. 『使えるシステム』が完成する。

システムの使いやすさをプロジェクト期間中に追求するのは限界があるため、機能やレポートの種類と数からある程度の線引きをし、それ以上の『使いやすさ』は保守期間に有料で対応することが重要です。特にインドネシアでITの仕事をする日本人にとっては大きな役割です。

計画期間内に完了するか

システム導入時の問題として、計画期間内に完了するかどうかがあります。システムのカットオーバー(インドネシアではGo Liveと呼ばれる)は年度初めの1月や4月に合わせることが多いですが、間に合わないと旧システムとのダブルインプットが必要になり、業務のための時間が奪われ機会損失を生みます。スケジュールが遅延する原因としては、以下の点が挙げられます。

  1. タスクに対する見積もり工数が甘い。
  2. タスク洗い出しが不完全で予期せぬタスクが発生し工数が食われる。

パッケージソフトの場合、タスクがほぼ決まっているため計上漏れは少ないですが、開発中心のプロジェクトでは工数見積もりミスが発生し得ます。システム導入のステップとしては、情報提供依頼書(RFI)を通して業者を絞り込み、提案依頼書(RFP)を基に提案書と見積もりを作成しますが、この段階でユーザーのリクエストを100%ヒアリングできていないのが普通です。

『使えるシステム』が完成しているか

システム導入後の問題として、『システムで業務がキチンと回るか』があります。パッケージソフトを採用する際、「自社業務とパッケージがマッチするか否か」を慎重に検討することでリスクを回避できます。システムがキチンと動かない原因は以下の通りです。

  1. 稼動後に業務とシステムのギャップが発覚して入力が滞る。
  2. 業務がシステムについていけず入力が遅れる。

パッケージシステムは多くの会社で使えるように設計されているため、80%がフィットしても20%はギャップが出ます。この20%が業務の根幹にかかわる場合、大きな投資損失を生む可能性があります。

事例:ある会社では、移動平均単価計算と先入先出法にしか対応していないシステムを導入しましたが、実際の業務は総平均法を使用することになり、システムがそのまま使えなかったケースがあります。

要点:評価方法(総平均・移動平均・FIFO等)が業務と合わないと、導入後にシステムが使えなくなることがあります。

リスク回避のためには

システム導入スケジュールの中で遅延を発生させやすいポイントと要因は予測がつきます。スケジュールを作成する際、マスタースケジュールとして月次から週次、日次までブレイクダウンし、縦軸にタスクを細かく分解することで、タスクと時系列が縦横で見られ、イメージが湧きやすいです。

リスク回避のためには
スケジュール遅延の要因は、導入サイドの問題とお客様側の問題があります。
  1. 導入側のリソース不足
  2. 工数見積もりミス
  3. タスク計上漏れ
  4. 非稼働日考慮漏れ
  5. マスタ確定が遅れる
  6. 実績入力が遅れる
  7. リクエストが揃わない

全体スケジュールの中の青い部分が、ユーザーリクエストとシステムの標準仕様の間でフィットする部分とギャップのある部分を洗い出し、業務フローとアプリケーションフローを定義する要件定義の部分です。また赤い部分が、遅延が発生しやすく次フェーズのタスクを押し出してしまう部分です。

リスク回避のためには

システムを導入するお客様の状況は、工場の新規立ち上げ、Excelによるマニュアル運用中、既存システム運用中の3パターンがあります。新規工場立ち上げ時のまっさらな状態が一番導入しやすく、難度が高いのは単体のシステムが部署ごとに散らばっている工場です。既存システムが動いている状況に新しいシステムを持ち込むと、プロジェクト進行中に摩擦が発生します。

既存のERPシステムがある工場なら総入れ替えなので、全部門条件は同じであり、不公平はないため入力を行うと思いますが、購買用P/O発行システム、ローカルの安い会計パッケージなど特定業務に特化した単体システムが分断されているケースが一番難しいです。

これらを事前に意識し、プロジェクトを進めることで、週次ミーティング時に現状についての予実を共有し、遅延リスクを減らすことができます。

『使いやすいシステム』を導入するには?

ここまでの幾多の苦難を乗り越えて、システムで業務が回るようになれば、エンドユーザー側から新たな要求が必ず出てきます。特に、もっと使いやすくして欲しいという声が多く聞かれます。

  • もっと使いやすくして欲しい。

使いやすいとは「操作しやすく便利な機能が揃っている」ということですが、まずは「やりたい操作」がすぐ見て分かる優しい画面構成であることが大前提です。

  1. メニューが少なく(必要最小限)
  2. ボタンが大きく(視覚に訴えるのは大事)
  3. 階層が浅い(最大2階層)

私はこの3つがインドネシアでは必須の仕様だと思っているのですが、これらを備えた上でさらにインドネシア独自の商慣行や税制に対応できる機能を揃えるには、それなりのカスタマイズが必要になります。

  1. 輸入品の船上管理を会計にも反映させたい。
  2. 入荷ベースで仮買掛(未払費用)を計上したい。
  3. 輸入申告書(PIB)や物品搬出承認書(SPPB)の税金や費用を原価へ参入したい。
  4. バーコードでロット単位の現品票をスキャンし簡単に実績入力したい。
  5. 税関用(保税区)・社内用にWEB上で情報共有したい。

事例:これらはインドネシアの日系企業のエンドユーザーにとってはあったら使いやすい機能例ですが、逆に言うとなくても使える訳です。

要点:便利な機能をどこまでシステムに実装して、どこをマニュアル対応するかの線引きが必要になりますが、この線引きのためには「カスタマイズには工数がかかる」ということをエンドユーザーにキチンと理解してもらう必要があります。

事例:インドネシアでは断食期間中、スタッフは早めに帰宅するため、無理な残業を強いることができません。また、労働者によるデモで工場が稼働できなくなることもあります。

要点:断食やデモなど現場稼働を制約する要因を前提に、無理な残業前提の導入計画は立てられません。

よくある質問|インドネシアの生産管理システム

本稿の内容に沿って、繰り返し出る問いを短く整理します。

インドネシアでの生産管理システム導入の主な課題は何ですか?

インドネシアでの生産管理システム導入の主な課題は、システムと現場オペレーションの乖離(GAP)です。具体的には、製造実績の入力タイミングやインボイスの未着による在庫管理の問題、出荷指示と在庫引当の不一致などが挙げられます。これらのGAPが業務の流れを妨げることがあります。

『使えるシステム』と『使いやすいシステム』の違いは何ですか?

『使えるシステム』とは、業務がシステムで回ることを指します。一方、『使いやすいシステム』は、操作しやすく便利な機能が揃っていることを意味します。プロジェクトではまず『使えるシステム』を確実にすることが重要で、『使いやすい』はその後の改良で追求します。

システム導入プロジェクトの成功条件は何ですか?

システム導入プロジェクトの成功条件は、計画期間内にプロジェクトが完了し、『使えるシステム』が完成することです。スケジュール内に完了しないと旧システムとのダブルインプットが必要になり、業務効率が低下します。