インドネシア製造業におけるIoTとペーパレス化の重要性

2020/02/11

インドネシア製造業におけるIoTとペーパレス化の重要性を構造化した図解

製造業IoTでは、製品や機械の実績数量や保全情報を収集し、予知保全のために稼働管理や傾向管理を行います。これにより、データを活用して機械停止の防止や性能劣化の原因分析を行うことが、生産性向上に直結します。

インドネシアの生産管理システムと製造業DXの関係を構造化した図解

インドネシアの生産管理システム

製造業の至上命題は生産性向上と納期遵守です。製造原価、売上原価、販売管理費の違いを理解することが重要です。勘定連絡図は製造業の原価計算に役立ちます。

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この記事でわかること

  • 製造業IoTは機械の稼働管理や傾向管理を通じて生産性向上に寄与します。
  • ペーパレス化は新型コロナウイルス感染防止のため、緊急の課題として認識されています。
  • IoT化により、機械の稼働時間や停止時間を自動的に取得し、間接接触感染のリスクを低減します。
  • インドネシアでは、製造業の競争力を高めるためにIoTを活用し、生産性向上を図ることが重要です。
  • 総合設備効率(OEE)は時間稼働率、性能稼働率、良品率の3つの側面から機械の生産貢献度を評価します。

担当者同士の物理的接触を最小限に抑えるペーパレス化

弊社では、インドネシアの日系企業の業務改善において、ペーパレス化が最初に取り組むべき課題であると主張してきました。紙の節約によるコストダウンだけでなく、実績データの紙への転記間違いを防ぐことが最大の理由です。しかし、これまでの顧客の反応は「今すぐには難しいが、次の予算で取り組みたい」というもので、緊急の課題とは見なされていませんでした。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、ペーパレス化は緊急の課題として扱われるべき事案となりました。

事例:ペーパーレス化は20年以上前から言われていることですが、「業務の効率化、紙の節約」だけでは「予算がないのでまた今度」となることが多かったです。しかし、感染防止のために物理的接触機会を下げる必要がある局面では、ペーパーレス化が強力に後押しされました。

要点:効率化や紙の節約だけでは後回しになりやすいペーパーレス化も、物理的接触を減らす必要性があると優先度が上がります。

製造指図や生産日報を担当者に手渡すためには、物理的に相手の席まで接近する必要があります。工場内で飛沫感染や接触感染によるクラスターが発生した場合、ライン停止や操業一時ストップも考えられるため、物理的接触を最小限にする対策の優先度は上がります。

インドネシアでは、モスクや病院でのクラスター感染が多く、PSBB(大規模社会制限)とMudik(帰省)が禁止されているものの、親族や知人との接触機会はあります。レバラン休暇明けの工場稼働再開時の感染拡大の不安は残っています。

紙やPCなどモノを介した間接的な接触を最小限に抑えるIoT化

工場内での物理的接触を最小限に抑えても、紙や鉄などのモノに付着したウィルスは数時間生存する可能性があります。他人が触れた紙や共用PCにウィルスが付着していると、間接接触感染のリスクが残ります。そのため、物理的な作業や機械の操作を最小限にし、作業過程を自動化する仕組みが求められます。

具体的には、生産管理システム上での在庫管理のための生産実績収集を、機械のカウンターからシーケンサーを通して情報を自動的に連携させます。また、これまで生産管理システムの外で管理されていた機械の稼働管理は、パトライト(あんどん)にIoTゲートウェイとセンサーを付けることで稼働時間や停止時間を取得するなど、IoT化を推進します。

しかし、コロナ禍の影響で減産と売上減少が続く中、来年度の予算で最初に削減されるのはIT投資分野である可能性が高いです。IoT投資の予算が下りない場合でも、モノを介した間接的な接触の機会を減らす目的に特化するなら、情報の入力を個人のAndroidスマートフォンから行う仕組みを導入するだけでも、間接接触感染のリスクを抑えることができます。

感染症拡大局面はインドネシア製造業のペーパーレス化とIoT化を後押ししました。今後は生産計画からスケジューリング、製造・工数・品質・稼働管理までを統合し、自動化・無人化を進める生産製造オペレーション管理(MOM)への動向が、生産効率と接触リスク低減の両面で注目されます。

インドネシアで製造業IoTが必要な理由

インドネシアでシステム営業を行う際、工業団地の顧客からよく聞かれるのは「うちの社長(会長)は機械には積極的に投資するがシステムへの投資は消極的」という言葉です。これは、日本への輸出やインドネシアの日系企業向けに特化した中小オーナー会社が、生産能力増強に注力してきた背景があります。

事例:Cibitungで設備稼働管理IoTソリューションのプリセールスを行いました。製造業の現場では物理的接触を最小限にしつつ、稼働状況をパトライトやPLC経由で自動取得し、OEE(設備総合効率)を評価する需要が増えています。家からも稼働確認ができるという点が受け入れられるかは相手次第です。

要点:稼働状況の自動取得とOEE評価への需要は、接触を減らす現場運用と生産性可視化の両面から高まっています。

しかし、現在のように大口顧客からの安定した受注が保証されない時代には、複数の顧客から小ロットの受注を積み上げる必要があります。製造業の至上命題である生産性向上によるコスト削減が競争力を高める鍵となります。これはインドネシアの国内産業全般にも当てはまり、輸出競争力を高めることが国富を増やすために不可欠です。

インドネシア政府はインダストリー4.0のインドネシア版であるメーキングインドネシア4.0を提唱していますが、具体的なガイドラインはまだ示されていません。2020年2月現在、「機械には投資するがシステムへの投資はちょっと」という時代から「やらないと世界で戦えない」という認識に変わりつつあります。製造業でIoTを導入する目的は、材料・仕掛品・製品などの生産財を効率よく流動させるための機械や人など資本財の情報を収集することです。

事例:インドネシア国内の自動車生産能力は300万台以上あるにも関わらず、生産は100万台弱で停滞しています。これは輸出競争力がないことが最大の理由です。

要点:輸出競争力の不足が稼働率の低迷につながり、生産性向上のためのIoT投資判断の背景になります。

製造業IoTの内容

製造業におけるIoTは、「モノとインターネットが繋がる」ことを指し、ここでのモノとは「生産財(industry goods)」と「資本財(capital goods)」です。生産財には材料、仕掛品、製品が含まれ、資本財には機械や人が含まれます。生産財に関しては、投入数、生産数、歩留まり数、NG数などの成果情報が収集されます。

一方、資本財に関しては、稼働時間や作業時間といった直接時間、停止時間などの間接時間、温度や回転数などの状況情報が収集されます。

  1. 成果:生産財の実績情報⇒投入数・生産数・歩留まり数・NG数
  2. 成果:生産財の品質管理情報⇒NG理由・NG画像情報
  3. 状況:機械の保全情報⇒直接時間(稼働時間)・間接時間(停止時間)・温度・回転数・ストローク数
  4. 状況:人の保全情報⇒直接時間(作業時間)・間接時間(休憩時間)

これらの情報は製造業IoTによって生産財や資本財から収集されます。1と2は従来のERPシステムで管理されていましたが、3と4は製造実行システム(MES)の管理対象です。これにより、生産効率を向上させるための判断材料が提供されます。

設備機械のメンテナンス(保全)管理

保全とは、機械が壊れないように日頃からメンテナンスを行うことです。保全部(maintenance)の仕事は、プレス機のショット数や稼働時間に基づいて定期的にスペアパーツを交換する「予防保全」と、機械に問題が発生する兆候を予測する「予知保全」に分かれます。

弊社では、既存のパトライトやアナログメーターを数値データに変換し、予知保全のためのデータ解析を行っています。これにより、機械の稼働率や性能変化を「見える化」し、稼働管理と傾向管理を実現するIoTシステムを提案しています。

  • 稼働管理⇒パトライトに設置した光センサーから点灯情報を取得し、稼働時間を収集します。
  • 傾向管理⇒温度計、電流計などのアナログメーターを画像分析し、数値データに変換します。

収集されたデータは、将来の機械停止の防止や性能劣化の原因分析、因果関係分析に役立ち、生産性向上に直結します。

事例:左図はパトライトの信号色を光センサーで感知し、機械の稼働時間や停止時間を数値データに変換しています。右図はアナログメーター画像を監視カメラで取得し、数値データに変換するIoTシステムです。

要点:既存のパトライトやアナログメーターを数値化すれば、機器の買い替え前でもIoTをスモールスタートできます。

IOTインドネシア

ポイントは、既存のアナログ機器をIoT対応機器に買い替えることなく、IoT導入をスモールスタートできることです。本格的な機器の買い替え時期まで、中継ぎ的に安価なIoTの導入が可能です。

SIGNAL CHAIN

インドネシアにおける設備稼働管理と保全(メンテナンス)管理

Signal Chainにより製造設備の稼働状況を様々なデバイスから正確に自動的に取得するIoT技術で、PCやモニタから稼働履歴や稼働傾向をリアルタイム把握できます。

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総合設備効率(OEE)

機械の稼働率を評価する指標として、総合設備効率OEE(Overall Equipment Effectiveness)があります。これは生産管理システムから算出され、生産効率を時間稼働率(Availability factor)、性能稼働率(Performance factor)、良品率(Yield)の3つの側面から計算する総合的な指標です。

  • OEE=時間稼働率x性能稼働率x良品率
  1. 時間稼働率=Net稼動時間÷Gross稼働時間
    稼動予定時間のうち実際に設備が稼動している時間の割合
  2. 性能稼動時間=(サイクルタイムx出来高)÷Net稼動時間
    製造速度(本来の能力)に対する実際の製造速度の比率
  3. 良品率=良品数÷生産数
    全生産数に対する良品数の割合

要するに、機械がどれだけ計画通りに動き(時間面)、本来の能力を発揮し(速度面)、正確に生産したか(良品率)の3つの側面から、機械の生産への貢献度を測る指標です。

事例:メンテナンス管理やスペアパーツ管理の相談を受けることがありますが、価格感を伝えると諦められることが多いです。設備に数千万円を投資できても管理予算が取れないのは、コストイメージの共有不足が原因です。

要点:保全・部品管理の投資判断には、削減額を金額ベースで示すことが有効です。

よくある質問|IoTとペーパーレス

接触機会の削減と稼働の見える化について、本稿の論点がそのまま答えになる質問をまとめます。

ペーパーレス化が後回しにされやすい理由は何ですか?

効率化や紙の節約だけでは「予算がないのでまた今度」になりやすいからです。物理的接触を減らす必要性が加わると、優先度が一気に上がります。

製造業IoTで収集する情報は何ですか?

生産財(投入・生産・歩留まり・NGなど)の成果情報と、資本財(稼働・停止・温度・回転など)の状況情報です。前者は従来ERP、後者はMES側で扱うことが多いです。

OEEはどのように分解しますか?

OEE=時間稼働率×性能稼働率×良品率です。計画どおり動いたか、能力どおりの速度か、良品を出せたかの3面から設備の貢献度を見ます。