インドネシア政治・経済・社会

インフラ整備と都市開発が進むジャカルタ【MRT第2期区間工事が着工】

2020/09/01

ジャカルタではMRT地下鉄第2期工事が開始され、2024年の首都移転に伴い沿線の大統領宮殿を含む政府関連施設が保護区や博物館になり、ジャカルタの歴史的魅力を押した世界的観光地になる可能性があり、都市開発による経済発展を現在進行形で体感できます。

インドネシアの政治・経済・社会まとめ
インドネシアの政治・経済・社会

日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しています。

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MRT地下鉄第2期工事が開始

ジャカルタでは、2019年4月にMRT地下鉄の第1期区間(総延長15.7km)が正式開通しましたが、コロナ禍の中にあった今年6月に、現在の始発駅であるPlaza Indonesia前のBendaran HI駅から、北ジャカルタのKotaまでの6.3km、西ジャカルタのAncolの車両基地までの5.2kmの総延長11.5km(10個の新しい駅)を第2期区間として工事が開始されました。

ジャカルタMRTが正式開通しました!【見まごうばかりのジャパンクオリティ】

ジョコウィ現大統領がジャカルタ州知事時代に、副知事のアホック氏と一緒に政治的に建設開始を決断した大量高速交通MRTが正式開通しました。地下駅舎を先に作って、シールド採掘で駅の間を地下トンネルで繋げていく工事は日イ共同事業体で行われました。

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ホテルサリパンパシフィック前に建設される予定のThamrin駅周辺の地質が柔らかく、地盤沈下のリスクが高いため第1期工事よりも難しいといわれており、駅建設工事にあたってタムリン時計塔(Tugu Jam Thamrin)がバンテン公園(Taman Banten)に移されるなど、ルート沿線には文化遺産(cagar budaya)が多数あるため、破損等の影響が出ないように地下鉄建設前に十分なシミュレーションが必要だとされています。

ホテルサリパシの北でMRT第2期のThamrin駅工事が始まっている。tugu jam Thamrinはtaman Bantenに移設されるそうです。

既に開通している第1期ルートは中央ジャカルタから南ジャカルタという都市開発が進んでいた地域ですが、第2期の北ジャカルタと西ジャカルタ方面は昔の街並みの面影を残す旧市街地を通るため、古いものと新しいものを融合させた公共交通指向型都市開発(Transit Oriented Development=TOD)が期待されている地域です。

MRTジャカルタ第2期工事ルート(MRT Jakartaのサイトから)

そしてインドネシアは首都ジャカルタを2024年に東カリマンタン州に移転する作業を開始する予定となっていますが、これにより第2期ルート沿線の大統領宮殿を含む政府関連施設が保護区や博物館になり、ジャカルタの歴史的魅力を押した世界的観光地になる可能性もあるわけです。

インドネシアの首都ジャカルタの移転計画【2024年には東カリマンタン州へ政府機関の移転を開始予定】

インドネシアは東カリマンタン州バリクパパンまたはサマリンダ近郊のクタイカルタネガラ県と北プナジャムパスル県の両県にかかる地域への政府機関の移転を2024年中には開始する予定です。自然災害が少ない、国土の中央に位置する、地方都市近郊に位置するなどが選定の理由です。

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現在進行形で経済発展を体感できるのがジャカルタの魅力

インドネシアは世界第4位の人口2億7,000万人を抱え、そのうち若年層が50%近くを占める潜在的経済成長率が最も高い国の一つであり、なかでもジャカルタ近郊を含む都市圏人口は3,120万人と、東京都市圏に次いで世界第2位のメガシティを形成しています。

MRT Fase2A(HI広場前~Kota Tua)のSegment1(モナスまで)の進捗16.5%。
■2021年10月ボーリングパネルが日本から到着
■2022年掘削開始
■2025年5月Segment1完了
■2027年8月Fase2A完了
2024年に首都移転開始後にルート沿線の政府関連施設が保護区や博物館になりモナス駅周辺は世界的観光地になる可能性あり。

数年前までは日本人にインドネシアについて聞いても、デヴィ・スカルノ元大統領夫人くらいしか知名度がありませんでしたが、今では東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という、経済面でも注目されるようになったことはインドネシアで仕事をする身としては嬉しい限りです。

LRT Jabodebekの始点駅Dukuh Atas付近の工事の状況(2019年4月)

MRT工事以外にも高層ビル建設、幹線道路の高架化とアンダーパス化が急ピッチに進んでおり、将来は東南アジア経済の中心ハブ都市に成長する可能性を秘めており、何か歴史が日々刻々と動いていくダイナミズムを肌で感じているようでもあり、この現在進行形でアジアの経済発展を体感できることがジャカルタの魅力と言えるかと思います。

MRT Blok A駅って降りたことないけど、周辺は日本の街の雰囲気に似ているそう。駅舎と商店街の距離感からそう感じるのかな。「海外と似ているジャカルタの8つの場所」の一つとしてここを選ぶセンスは渋いと思うけど。

MRTが駅舎も含めて三井住友建設・清水建設・大林組などの日系ゼネコンを中心として建設されたことも影響しているものと思われますが、MRT駅周辺からはなんとなく関東近郊の私鉄(個人的には東武東上線のイメージ)の駅の雰囲気を感じてしまいます。

そんなジャカルタが社会、環境、経済の空間のまとまりとして、機能的で住みやす都市空間に発展するための重要課題と言われているのが渋滞解消と洪水防止です。

洪水防止と渋滞解消を実現するジャボデタベック-プンジュール地域空間計画【機能的で快適な都市生活ためのインフラ整備】

ジャボデタベック-プンジュール地域を社会、環境、経済の空間のまとまりとして、機能的で住みやす空間構造に整備するというインドネシアの長期国家計画で検討すべき課題として洪水、水源の利用可能性、衛生とゴミ問題、沿岸および島の埋め立ての問題 、渋滞、首都移転の6つが挙げられています。

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都心部と郊外住宅地域を結ぶ慢性的な渋滞解消のために、電車KRL(Kereta Rel Listrik)、軽量軌道交通LRT(Light Rail Transit)、大量高速交通MRT(Mass Rapid Transit)、空港鉄道KA(Kreta Api Bandara)などの鉄道ベースの大量輸送インフラ整備が行われており、地盤沈下による洪水問題はジャカルタ近郊の上流山岳部の水源エリア、中間の集水域としての緩衝エリア、下流のエ耕作地エリア、沿岸部の養殖保護エリアとしてそれぞれ役割を持たせ、貯水地を整備することによる治水を強化しています。

ジャカルタ市内と郊外を結ぶLRTとKRL Commuter Line【MRTフェーズ1後のジャカルタ首都圏の新交通網】

ジャカルタ中心部ドゥクアタスから南のチブブールと東のブカシを結ぶ軽量軌道交通LRTと、西ジャカルタのコタ駅からチカランまでを汽車ではなく電車(Kereta Rel Listrik)で結ぶKRL Commuter Lineの建設プロジェクトが進行中です。

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交通インフラ整備が刻一刻と進行し、首都移転を控え変化し続ける現在の首都ジャカルタでITビジネスを展開(拠点は西ブカシ)できるのは大変貴重な経験であり、日本の名目GDPを追い抜くと言われている10年後の2030年あたりが、官民一体となって経済発展に邁進するインドネシアの国家政策の答え合わせが出来る時期ではないでしょうか。