インドネシアにおけるDX化推進による製造業のスマートファクトリー化

2022/02/28

ジャカルタのコタ地区

2018年の会社設立以来、今年2022年の2月で5期目を迎えたことを機に、製造業システムという分野で事業を行う根本的な理由と、アフターコロナ―のインドネシアIT業界で何を実現したいのかを、DXの観点から改めて整理しました。

スナヤン競技場(Gelora Bung Karno)

インドネシアの政治・経済・社会

日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しています。

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インドネシアの未来は製造業がけん引する

おかげさまで弊社も2022年2月で5期目を迎えました。

2018年の会社設立以来、その半分がコロナ禍にかかってしまい、無名の独立系スタートアップ企業としては資金的にも営業的にも何かと苦しいことが多かったわけですが、一方でオンライン中心の非対面型取引が当たり前の世の中になり、ITによって仕事がもっと効率よくやれるようになれるんですよという提案に対して、多くの人々からのご理解が得られやすくなったという側面もあります。

ある程度予想は出来ていたことですが、コロナ禍でオンライン中心の商取引の中では、企業の信頼性や権威性が市場で益々有利に働くことを痛感させられ、インドネシアのIT業界でも大手と中小の二極化がさらに進んだことは想像に難くなく、そういう逆風の中でも中小企業は大手には対応できないような、要件がはっきりしない不確実性が高く調査コストのかかる案件に対してでも、なんらかの仮説を積み上げて一定の形にして泥臭く提案していくことで前に進んでいくしかありません。

1997年にインドネシアに来て以来、多くの時間を製造業システムの開発と導入に費やしてきましたが、インドネシアは年率平均5%程度の緩やかな経済成長を遂げてきたとはいえ、国内での付加価値産業の育成がうまくいかなかったことにより輸出競争力が伸びず、スハルト独裁政権時代に20%を占めていた製造業のGDP寄与率は16%にまで落ち込んでいます。

インドネシア国内に付加価値産業が少ないということは、世界的サプライチェーンの中で川上側の原材料や低付加価値汎用部品の供給基地に位置付けられることになり、これは製品自体の収益力が低いということだけでなく、モノと情報が溢れ続ける川下側の最終消費者による需要変動を、乗数的な波及効果をもって被ることになり、ビジネス環境のリスクをハンディとして背負うこととなります。

インドネシアは2030年頃まで人口ボーナスが続くと言われ、あと10年は何もしなくても経済は発展していくと推測されますが、ベトナムやフィリピンなど同じように人口増を続け国内市場を拡大している国々がある中で、コロナ禍にあって20年以上緩やかな成長を続けてきたインドネシア経済に陰りが見えており、国民の所得の伸びが停滞して経済成長が足踏みする「中進国の罠」に陥る可能性も指摘されています。

人間の頭の中もアウトプットばかり続けてインプットを怠るとやがて先細りしていくように、今後益々厳しくなる競争環境で内需一辺倒の経済構造では先細りが免れず、インドネシアの製造業は輸出競争力を高め外需主導型に転換し、国富の蓄積に貢献する必要があるのです。

インドネシアの製造業のDX化推進

弊社はインドネシアの製造業様向けのITサービス会社であり、製造業のお客様に提案していることは大きく分けて以下の2本立てです。

  1. 工場の管理レベルの向上
  2. お客様が抱える問題に対するソリューション

そして過去4年間の実績を持って、この2つのほとんどは業務システム開発テンプレートHanafirstと生産スケジューラAsprovaというITツールを駆使して実現できるという自信を益々強くしているところですが、コロナ禍を経る中でこれらITツールによる業務のシステム化の先には、生産資源を最適化し業務改革を実現するという、よりITツール主体のDX化(デジタルトランスフォーメーション)という概念があります。

台湾のマスク管理みたいにITで業務改革して新しい成果を生み出すのがDX化という前提で話をすることが多いのですが、だいたいRPAかBIツールを想起されることが多いようですね。

簡単に言うと業務をITに置き換えるのではなく、ITで業務を変革する、新しい付加価値を生み出す、このようなITツール主体の改革を意味するDX化の実例は、インドネシアの身近なところで起きており、GoJekアプリのなかった時代を知っている人であれば、今はスマホで食事の手配も場所の移動もその他あらゆるサービスが手軽に受けられるようになったことで、どれだけ生活習慣が効率化され便利になったかを実感できるのではないでしょうか?

移動や発送、その他雑務などをお金を払って外注することで、自分本来の仕事に集中できるようになったおかげで業務効率が飛躍的に向上し、同時に市中にお金が流れ富の再配分が活性化され、とどまることのないGoJekサービスに対する需要を賄うために次々と仕事が生まれたことで失業率が低下し、それが犯罪率の低下に繋がるという、経済と社会のあらゆる面で革命的な変化が起こりました。

IoTなどのIT技術を使い、生産性向上や品質向上を実現し、第四次産業革命を起こそうというインダストリー4.0を具現化したものがスマートファクトリーという概念です。

弊社が目指すところもDXによる工場のスマートファクトリー化であり「現場の努力を会社の競争力に変えることで地域経済の活性化と付加価値化に貢献する」という企業理念に基づく、工場の生産資源の最適化による生産性改革は、ジョコウィ政権が推進するMaking Indonesia4.0が目指す、高度人材の育成、生産性向上による製造業の高度化、産業構造の改革に寄与するものと信じるところです。

ジョコウィ大統領

インダストリー4.0に対応するインドネシア産業の川下化と製造業の高度化

IT技術を使い生産性と品質の向上に繋げ、経済成長率を現在の5%から6~7%まで押し上げることを目標として、2018年にジョコウィ大統領より発表されたメーキングインドネシア4.0は、産業構造を変える国家優先取り組み事項であり、産業の川下化により原料輸出を禁止し国内で付加価値を付けることによる産業の高度化を目指します。

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