インドネシア政府は、国内中小零細企業をeコマースに乗せることで、インドネシア製品の販売機会を広げようとしています。これは、外国製品を買うことで国富を流出させるのではなく、国内付加価値の付いた製品を購入することを奨励し、国内でのお金の循環を良くする自国優先主義と言えます。
-
-
インドネシアはなぜ発展するのか?政治・経済・社会を支える構造と成長戦略
スカルノ大統領時代は共産主義政策が推進され、西側諸国からの投資が減少しました。スハルト大統領は西側諸国との関係を強化し、工業化を進めましたが、石油依存から脱却できませんでした。1998年のアジア通貨危機後、インドネシアは民主主義国家と…
続きを見る
この記事でわかること
- インドネシア政府は中小零細企業をeコマースに乗せることで国内製品の販売機会を広げようとしています。
- 2020年、コロナ禍でインドネシアでは700万人が解雇され、企業の経営破綻が相次ぎました。
- ジョコウィ大統領は#BanggaBuatanIndonesia運動を推進し、国内製品の購入を奨励しています。
- BRI銀行は中小零細企業に低利子融資を提供し、GrabKiosはワルンをオンライン化しています。
- ジョコウィ大統領の外国製品を憎めという発言が国際的に物議を醸しました。
コロナ禍による経営破綻と大量解雇、逆境を乗り越えたインドネシア中小企業の対応策
2020年、コロナ禍の影響で企業の経営破綻や事業売却が相次ぎました。特に印象的だったのは、5月15日にレナウンが民事再生法の適用を受け、5月19日にタイ航空が経営破綻し、政府系大手航空会社として初の更生手続きに入ったことです。さらに、6月18日には外食チェーン大手のペッパーフードサービスが「ペッパーランチ」事業を売却し、6月29日にはカナダのサーカス劇団シルク・ドゥ・ソレイユが会社更生手続きを開始しました。そして、7月8日にはアメリカの歴代大統領も愛用した最古の紳士服ブランド、ブルックス ブラザーズが連邦破産法11条の適用を申請しました。
インドネシアでは、2020年4月までに解雇された従業員の数が700万人に達しました。Toravelokaは全従業員の10%にあたる100人を解雇し、Grabはインドネシアオフィスを含む全従業員の5%にあたる360人を解雇しました。GojekもGolife事業閉鎖に伴い、全従業員の9%にあたる430人を解雇しました。このように、コロナ禍での従業員解雇や事業縮小の動きが続きました。
当時、弊社も技術者との契約更新停止や従業員の給料削減、外注サービスの内製化など、固定費削減に苦心しました。しかし、従業員の立場を第一に考え、新しいビジネスを生み出してコロナ禍を乗り越えた企業もありました。
- 店を続けて従業員も勤務継続または店を閉めて自宅待機で給料30%~50%補償(解雇しない)の選択肢を提供し、全員が勤務継続を選びました。
- 冷凍食品の販売を開始し、売上を増加させました。
- オンラインで購入するとドライバーにsembakoを寄付する仕組みを導入し、利用者が自動的に社会貢献できるようにしました。
このコーヒーショップは2020年2月に売上が30%減少しましたが、2月当時はインドとインドネシアでコロナ感染者がまだ確認されていませんでした。しかし、3月2日にインドネシアで初めて陽性患者が確認され、マレーシアで日本人と接触したことが原因と大統領が発表しました。このことで在住日本人の立場が悪化しました。
その後、4月にPSBB(大規模社会制限)が施行され、店内イートインができなくなり、売上が60%減少しました。このコーヒー店を含む多くの飲食店がデリバリーに生き残りを賭けました。
事例:寄付文化が庶民レベルで根付くインドネシアでは、オンラインで商品を購入すると自動的にドライバーへのsembako(生活必需品)の寄付が行われるプロモーションが行われました。消費が自動的に社会貢献につながるという発想は、社会なくしては個人は存在しえないという人間の社会的動物性に訴える高度なマーケティング戦略と言えます。
インドネシア国産品を支援する#BanggaBuatanIndonesia運動とジョコウィ大統領の自国優先政策
2020年5月14日、ジョコウィ大統領はコロナ禍による世界的不況の中で、インドネシアの国内経済を強化するための方針を打ち出しました。彼はインドネシア国民のクリエイティブで高品質な製品を製作する才能を強みと捉え、国内製品を優先的に購入することで経済危機を乗り越えようとしました。この運動が#BanggaBuatanIndonesiaです。具体的には、200万件の国内中小零細企業UMKM(Usaha Mikro Kecil dan Menengah)をeコマースなどのデジタルプラットフォームに乗せ、インドネシア製品がより大きなマーケットで販売機会を得られるようにすることを目指しました。
#BanggaBuatanIndonesia運動には既存のオンラインマーケットプレイス、モバイルプラットフォーム、銀行などが協力しています。例えば、BRI銀行は中小零細企業に対して低利子での融資を提供し、GrabKiosは全国のワルン(屋台)をオンライン上に出店させ、GrabMartではアンボン島の漁師から新鮮な魚を購入できるようにしました。また、GrabExpressに登録することで、立地の悪い零細商店の商品を都市部の家庭まで配送できるようにし、小規模なオフラインビジネスをオンライン化することで販売機会を拡大しようとしました。
通常、国家の経済発展のためには輸出促進で外貨を稼ぎ、国力を強化した後に国内産業を強化するのが一般的です。しかし、コロナ禍不況のインドネシアでは、国内消費が増えても消費材の輸入品比率が高く、国内資産が海外に流出している状態でした。そのため、外国製品を買って国富を流出させるのではなく、国内付加価値の付いた製品を買うことを奨励し、国内でのお金の循環を良くするという自国優先主義が採られました。
ただし、ジョコウィ大統領が国産品の購入を促すために「外国製品を憎め(benci)」と公式の場で発言したことが、日本を含む海外でも報道され、行き過ぎた自国優先主義を大統領自ら煽るような言動として物議を醸しました。