ジャカルタ-チカンペック高速道路の高架化事業【Tolの慢性的渋滞の緩和】

高架化工事の影響による渋滞

高速道路ジャカルタ-チカンペック高架(Tol Jakampek Elevated インドネシア語Jalan Tol Layang Jakarta-Cikampek)は、Cirebon, Bandung, Semarang, Surabayaなどの遠方からジャカルタへのcommuter(インドネシア語komuter 通勤者)が高架を利用し、近場であるJakarta東部、Bekasi、Cikarangからの車は既存の高速道路を利用することで、交通の流れを上下に分散し慢性的な渋滞緩和を目指すことを目的として2017年に建設工事が着工され、当初は2019年4月に開通予定とされていました。

2019年6月のレバラン休みの際の帰省(Mudik)渋滞の緩和に間に合わせる計画でしたが、現在までの進捗状況は60%とも70%とも言われているにもかかわらず、実際に現場を見てみると場所によってはまだ橋梁すらかかっていないところもあり、このまま24時間体制で突貫工事を行っても、今年のレバラン休み期間に間に合わないことは一目瞭然であり、それどころか工事の影響で例年以上に渋滞を悪化させそうな勢いです。

弊社のある西ブカシ(Bekasi Barat)のオフィスから西カラワン(Karawang Barat)の工業団地まで30km程度の距離ですが、橋梁の側面や下面の作業をするために、クレーン車が追い越し車線をふさぐことで一時的な渋滞を頻繁に発生させ、Cikarang Utama料金所を越えた先の道幅が狭くなっているボトルネック部分に起因する慢性的渋滞もあって、夕方の西カラワンからの帰りは3時間くらいかかるのが普通で、最悪で5時間以上かかったことも1度や2度ではありません。

朝から夜まで続く高架工事の渋滞

突然発生する追い越し車線(jalur cepat=lajur kanan)の封鎖により前の車が急停止するのが怖いので、自分の場合、夕方の渋滞時には追い越し車線は避けて、低速車線(jalur lambat=lajur kiri)と真ん中車線(lajur tengah)を車線変更しながら進み、前の車が急ブレーキをかけてこっちがオカマ掘るリスクが高い追い越し車線には、極力入らないようにしています。

これに加えてどんなに渋滞しようとも、警察車両やTNI(Tentara Nasional Indonesia 軍)、またはRFナンバーの国家公務員(Pegawai negeri sipil)の車は、クラクション鳴らしながら道をかき分けるように強引に突っ込んできますので、そのたびに右へ左へ寄って道を空けなければなりません。

RFナンバーはEselon II(階級のクラスが2番目)以上の役人がもらえる。

  • RFS : Reformasi Sekretariat Negara
  • RFP : Reformasi Polisi
  • RFD : Reformasi Darat
  • RFL : Reformasi Laut
  • RFU : Reformasi Udara

警察や政治家などの役人がReformasi(改革)の名の下に、あたかも既得権のようにクラクションを鳴らしながら我が物顔で割り込みをかけることを苦々しく思っている国民が大半だと思われますが、高架が完成したあかつきには、チクニール(Cikunir KM9)から西カラワン出口(Gerbang Tol Karawang Barat KM48)までの39km区間が片側2車線、最高速度は100kmになり快適でストレスレスな高速道路になることを期待して高速道路利用者は我慢しています。

建設中KM9km地点のCikunir入り口。左はLRTの支柱。

最終の西カラワン出口は既存のTol出口よりも1kmほど東に出来るので、西ブカシにオフィスのある弊社にとっては、東カラワン以東の客先を訪問する場合に、Cibitungから高架に上って西カラワンで降りることになり、これまで渋滞が阻んでいた遠方の工業団地へのアクセスが良くなるものと期待しています。

高架建設工事は、国営建設会社PT Waskita Karya(WIKA)とAstraグループのPT Acset Indonusa(ACST)が請負い、コンクリートはWaskitaの子会社であるPT Waskita Beton Precast、鉄筋は副大統領ユスフ・カラ(Jusuf Kalla)の親族会社PT Bukaka Teknik Utamaから調達されます。よく見ると橋梁の1本1本にBUKAKAのロゴが入っているのが確認できます。

PT Waskita Karya(全体の51%区間)

  • Cikunir -Bekasi Barat :2.99 km
  • Bekasi Barat -Bekasi Timur : 3.63 km
  • Bekasi Timur -Tambun : 4,34 km
  • Tambun – Cibitung : 3.30 km
  • Cibitung – Cikarang Utama : 4.46 km

PT Acset Indonusa(全体の49%区間)

  • Cikarang Utama – Cikarang Barat :2.72 km
  • Cikarang Barat- Cibatu : 3.16 km
  • Cibatu – Cikarang Timur : 2.45 km
  • Cikarang Timur – Karawang Barat : 9.79 km

高速道路を高架にすることのメリットとデメリット

Sosrobahu法では支柱の上にアームを一旦道路に並行に置いてからクルっと90度回転させる。

今回の高架では左の写真のように上りと下りの片側2車線ずつ合計4車線を中央に設置して1本の支柱とアームで支える部分と、下の写真のように上りと下りの片側2車線ずつを別の支柱とアームで支える部分があります。

工事はまず支柱を先に作ってその上にアームを置いて、その後橋梁を載せるという手順になりますが、4車線をまとめる部分ではアームのサイズが4車線分の長いサイズのものになり、左右に幅があるアームを置く作業では下の交通の妨げになるので、アームは一旦道路に平行に置くことで中央分離帯の中だけで作業を行い、その後90度回転させます。

KM39休憩所(Rest Area)付近は上りと下りが左右別になっている。建設会社ACSETの文字が見える

東京の首都高が土地の所有権の問題を回避するため、川に沿って建設されているのと同じように、Tolジャカルタ-チカンペック高架も既存高速道路の上に建設されることで、新たな土地の取得は必要ありません。

高速道路が高架化されるメリットは、新たな土地取得の必要がないこと、既存交通事情を妨げないで工事が進められることであり、デメリットは 巨大災害が発生した場合の脆弱性に起因する倒壊や寸断等の大事故のリスク、建設コストが上がることで開通後の利用料が高くなる、それをまかなうための税金が必要になるなどです。

インドネシアは2030年までに世界の10大経済国に入ることを目標として、インダストリー4.0に対する取り組みとしてメーキング・インドネシア4.0(Making Indonesia 4.0)という10個の国家優先取り組み事項を発表しています。

メーキングインドネシア4.0によって製造業を再活性化させ、2030年までに製造業のGDP寄与率を現行の16%から25%まで引き上げることで、経済成長率を現在の5%から6~7%に引き上げる目標を立てています。

その中の具体的な政策として高速道路沿いの工業団地を東ジャワまで延長した北部ジャワ自動車産業ベルト構想があり、現在進行中の高架化工事以外にも2023年には西ジャワのスバン(Subang)にパティンバン(Patimban)新港の開港が予定されており、工業団地からタンジュンプリオク港へのロジスティックスの一極集中の解消が見込まれますので、5年後のジャカルタ近郊の交通事情は劇的に改善されていることが期待されます。