計画生産の製造指図とかんばんの違い 【内示に基づく所要量展開で算出される「製造指図合計数≒かんばん枚数x収容数」】

本記事の概要

生産管理システムでは内示情報と確定受注からMRPの所要量展開機能によって製造オーダを生成しますが、トヨタ系自動車部品メーカーではかんばん枚数を計算し、現場に流通しているかんばん枚数に対する過不足を調整します。

製造指図もかんばんも内示に基づき所要量展開するところは同じですが、製造指図が生産管理部から現場に対する生産指示であるのに対し、かんばんは現場で需要と供給の関係によって自律的に流動します。

工場内で流動する工程内かんばんは、出荷ではずれて現場に戻されるまでの間滞留している分(かんばんL/T)、製造現場で加工点に達するまで滞留している分(加工L/T)、現場や倉庫にある在庫ロットに挿してある分(安全在庫)があり、現場を流動する引取かんばん(移動実績)と、生産指示となる仕掛かんばん(生産実績)に役割分担されることもあります。

「かんばんで動いています」と客先で耳にする場合のかんばん

インドネシアの日系商社さんや製造業さんを訪問して、システム導入のための業務要件をヒアリングする際に

うちの製品の一部かんばんで動いています

という場合のほとんどが客先から毎朝メールで届く「かんばん」のことであり、これは月初にまとめてもらう確定受注に対する分納のための納入指示に該当しますが、かんばんによる出荷合計数が確定受注数に満たない場合には、システム上受注オーダをクローズする必要があります。

そして自社も仕入先に対して商品や材料を月まとめて発注して、入荷は客先からのかんばんの動きに合わせて分納してもらうことで、客先と自社と仕入先とのサプライチェーンが連動して動くのが理想です。

商社の受発注で登場するかんばんは

  1. 客先からかんばん到着。
  2. 仕入先にかんばん分の納品を依頼。
  3. 当月の客先からのかんばんを消化した後、受注オーダと発注オーダをクローズ。

のように受発注オーダに対する分納時のBOX単位に発行されますが、製造業の加工現場で登場する工程内かんばんは

  1. 出荷ではずれて出荷エリアで滞留
  2. 加工エリアに戻されて加工エリアで滞留。
  3. 加工点に達したら加工を開始してBOXに挿される
  4. 2に戻る

のように引取と加工のBOX単位に発行され、工程内かんばんは現場を流動する引取かんばん(移動実績)と、生産指示となる仕掛かんばん(生産実績)に役割分担されることもあります。

  1. 出荷ではずれて出荷エリアで滞留(引取かんばん)
  2. 加工エリアに戻されて(引取かんばん) 、BOXが引き取られ(引取かんばん)、加工エリアで滞留(仕掛かんばん)
  3. 加工点に達したら加工を開始してBOXに挿される(仕掛かんばん)
  4. 2に戻る

MRPで製造指図を発行するかかんばん枚数を計算するか

製造指図もかんばんも、生産管理部が内示情報に基づいてMRPをまわした結果である実所要量がベースとなりますが、製造指図は生産計画を作業単位に実体化(プッシュ方式)したものである一方で、かんばん方式は製造現場にて使った分だけ後工程が前工程から引き取ったことにより(プル方式)、事後の結果として作業単位の実体となったものです。

  • 製造指図合計数=実所要-現状在庫+安全在庫
  • かんばん枚数xBOXの収容数=加工数+日当たり必要数x(かんばんL/T+加工L/T+安全在庫日数)

kanban実所要量から現状在庫をマイナスした正味所要量に安全在庫をプラスした製造指図合計数量は、実所要量を稼働日で割った日当たり必要数に(かんばんL/T+加工L/T+安全在庫日数)を掛けた結果に、加工数(加工ロット)を足したものとは、出荷エリアで外されて溜まっているかんばんL/T分と、加工エリアで加工点に達するまで溜まっている加工L/T分だけ差異が出ることになります。

そして工場内を流動するかんばんは以下の3つの場所に滞留することになります。

  1. 出荷エリアで外されて溜まっている分(かんばんL/T)
    出荷でかんばんがはずれて現場に戻るまでの遊休期間
  2. 現場で加工点に達するまで溜まっている分(加工L/T)
    現場横のかんばんが加工点に達するまでの期間+加工ロット分を完了させるべき期間
  3. 現場や倉庫にある在庫ロットに挿してある分(安全在庫)
    切ってはいけない在庫水準N日分であり、安全在庫=0なら「納期遅れせずに在庫なし」で運営できるベストな状態だが、これだと不安だから余分に持つのが安全在庫であり、過去のある期間の使用実績から平均使用量とバラツキを計算し、統計的に欠品を起こさないだけの量を持っておく。

よって理論上の月間かんばん枚数は

  • 変数
    A = 1回あたりの加工数(別途計算要)
    B=1日あたり必要数
    x = 安全在庫日数
    y = かんばんリードタイム日数
    z = 加工リードタイム日数
    p = 入数
  • 月間かんばん枚数
    Roundup[{A + B x (x + y + z)} / p]

で計算され、製造指図の手番ずらし日数はかんばん計算の(安全在庫日数+かんばんリードタイム日数+加工リードタイム日数)と理論上同じになるはずです。

内示の日ばらしが所要量展開と負荷計算に及ぼす影響

客先から貰った月次の内示データを、日ばらしせずに月末日付を納期としてMRPを実行しても、日ばらしにして実行しても、所要量展開によって算出される所要量合計は同じになります。

mrp

負荷計算を月末日付を納期として行う場合、月末日付のライン能力に対する負荷が計算されますが、月単位で見れば月の稼働日合計に対する負荷が確認でき、これは日ばらしして計算される負荷の合計と同じになります。

ただし週次の内示に基づいて負荷計算する場合は、月初の週で前月にかぶっている分だけ負荷が過少になり、月末の週では翌月にかぶっている分だけ負荷が余分になりますので、週次の内示に基づいて計算された負荷を単純に合計しても月次の負荷にはなりません。

かんばん方式と平準化

かんばん方式は必要なものを必要な数量だけ欲しいという要求に対応することであり、ASSYや溶接など小ロット対応可能な工程ではうまくまわりますが、成形、プレスなどのロット生産を前提とした工程にかんばんを適用するには中間在庫を積み上げて消費していき、一定水準を下回ったら信号かんばんにて生産依頼を行うという方法をとらざるを得ません。

かんばん方式を機能させるための条件として以下の4つが挙げられます。

  1. 引き取られた分だけ必ず前工程で生産
  2. 生産量と品種の平準化
  3. 100%良品
  4. かんばんが現品と一緒に動く

後工程の人が一定枚数(平準化によって計算された枚数)単位で引取りかんばんを戻し仕掛かんばんを残留させますが、これを安定して賄えるように生産するということは、どの工程においても、常に必要な時に必要なものを必要なだけ造れる体制を要求されます。

そのためには、生産量のバラツキと、品物の種類のバラツキをなくすことが必要であり、今日100個、明日1個という感じの生産では生産体制をキープ(生産準備)するのに無駄が多くてコスト高になります。

これがかんばん方式は平準化生産を前提とする理由です。

平準化と1個流し

平準化は色々な種類の製品を均等にばらして生産することで、同じものをまとめて生産するロット生産と対比されますが、これを実現する方法として

  1. シングル段取(内段取の外段取化・段取の標準化)により段取り替え時間を短縮(10分以内に金型交換)
  2. 多能工化(複数ポジションをこなせるユーティリティプレーヤー)
  3. ラインは色々な種類の製品を混在(混流生産)

よって平準化を突き詰めれば必然的に1個流しになります。

かんばん方式とスケジューラー

MRP(Material Requirement Planning)は生産指示がPPIC(Production Planning and Inventory Control)から各工程に同時に押し出されるプッシュ型であり、一方でかんばん方式は平準化生産を基礎として後工程からの必要量(かんばん)をもとに、最終工程から前工程へと必要数量の生産指示が流されていくので引っ張り方式(プル方式)と呼ばれます。

トヨタ生産方式(Toyota Production System)を採用する工場では、後工程は顧客からのeかんばんをトリガーに、後工程から前工程の工順で引取りかんばんを運用しており、製造数量の増減、開始時期はかんばんポスト(平準化ボックス)からの引取りかんばんの出し入れ加減で管理します。

こうしたかんばんの後引きが確立している工場で生産スケジューラーからDaily Master Production Scheduleを発行して現場に渡して「リストにある品目をロットに従って製造してくれ」と言っても、後引きに慣れきっているオペレーターは拒絶反応を起こし対応できません。

必要なものを必要なだけ作るというかんばん方式の基本要求に対応できるのは小ロット生産が可能なASSYや溶接などの後工程であり、段取り負荷が高く必要なものを必要な数量だけ欲しいという後工程からの要求に応えることができない、大ロット生産が前提となる成形やプレスでは、中間在庫を一定水準まで積み上げて、後工程から消費していくという方法を取らざるをえません。

よってかんばん方式で生産現場が動いている工場でも、後引きに細かく対応できない前工程にはスケジューラーを導入し中間在庫をコントロールするという選択がありえます。