投入実績ベースの発生費用が直接材料費、製造数量ベースの発生費用が製造原価、出荷ベースの発生費用が売上原価であり、投入実績と生産実績が月またぎする場合は当月分の投入実績は月末仕掛品として滞留し、翌月末に生産実績が上がっていなければ発生費用なしで仕掛品が滞留します。
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原価管理システム
マスプロダクションの総合原価計算と受注生産の個別原価計算の違いは、労務費や製造間接費などの固定費を所定のルールで品目に配賦するか、標準の賃率や配賦率に実績工数を掛けて品目に積み上げるかの違いであり、集計した原価の差異分析や経営判断のための予実分析が重要です。
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原価管理の重要性
企業会計では収益(売上)と費用(仕入)は、入荷基準(出荷基準)であれ検収基準であれ、取引が発生した時点で認識されるため、一ヶ月間の収益から費用を引いた利益は実際の現預金の残高とは一致せず、例え材料を買う仕入先と製品を売る先の顧客との取引条件が翌月末払いという同じ条件であったとしても、以下の条件が会社によって違うため、月末の材料仕入に対する支払い(キャッシュフロー)の重圧も変わってきます。
- 売上または資本金を源泉とする現預金残高
- 利益を小さく見せる要因となっていた減価償却費
- 月中に都度発生する材料費以外の製造固定費の支払い
- 販売管理費・営業外費用の支払額
- 顧客からの入金前にやってくる給料の支払額
販売管理上安売りして売上が増えても、売上総利益が小さくなると販管費・営業外費用で赤が出る、かといって販売単価は市場価格を考慮する必要があり簡単に上げられないので、社内で努力の余地がある生産管理段階でのコスト削減という話になるのですが、製造原価は細かく管理しすぎても管理負荷が増えるだけなので、「その結果を生産管理に役立てることができるかどうか」が原価管理レベルの目安になります。
- 財務会計的側面(原価管理から会計へ) 現場の生産数量ベースの実績を金額ベース(製造原価報告書)に変換し会計(P/L)に繋ぐ。
- 管理会計的側面(原価管理から生産管理へ)
標準原価や予算原価に対する実績を比較することで生産性を分析する。
発生費用と製造原価と売上原価
材料は購入した時点ではなく投入した時点ではじめて発生費用化し、製品の生産実績が上がるまでは仕掛品在庫として滞留し、生産実績が上がった時点で製造原価化し、出荷した時点で売上原価化します。
- 出荷ベースの発生費用
三分法:売上原価=月初製品繰越+製造原価-月末製品残高
総平均法:売上原価=製品総平均単価x出荷数量 - 製造実績ベースの発生費用
三分法:製造原価=月初仕掛品繰越+当月発生費用-月末仕掛品残高
総平均法:投入品目の総平均単価x投入数量+加工費 - 投入実績ベースの発生費用
三分法:材料発生費用=月初材料繰越+当月仕入費用-月末材料残高
総平均法:材料発生費用=材料の総平均単価x投入数量
投入実績と生産実績を必ずセットで記録する場合、すべての発生費用はなんらかのSKU(Stock Keeping Unit)品番の中に集約されるはずであり、月初在庫が0で当月発生費用が100の場合には以下が成立し、受払表上で製品の生産実績は受入のタイミングで総平均単価あります。
- 月初仕掛品0+当月発生費用100ー月末仕掛品0=当月製造原価100
投入実績のみ上がったものと生産実績まで上がったものの違い
月末の生産で当月に投入実績も生産実績も上がれば、生産実績は製造数100として計上されますが、生産実績が翌月に月またぎする場合、生産実績の製造数は0で仕掛品数が100として計上され、これは投入した100が月末仕掛品として滞留したままの状態か製造原価にまで計上されたかの違いになります。
投入実績と生産実績が月またぎする場合は当月の月末仕掛品に必ず発生費用が滞留し、翌月末に生産実績が上がっていなければ発生費用なしで仕掛品が滞留します。
- 月初仕掛品0+当月発生100―月末仕掛品100=当月製造原価0
品目別の製造原価レポートを作成する場合、仕掛品在庫に品番があれば品目単位に原価を集計するだけですが、品番がないものも発生費用として原価レポート上に表示する必要があり、これは月末仕掛品として計上されます。
標準原価では月末仕掛品在庫は発生しませんが、実際原価計算を行う際に仕掛品の月末残高(月初繰越高も)には以下の2つが計上されます。
- 月末在庫:仕掛品で品番があるもの
- 月末仕掛品在庫:投入実績のみ上がっているもの