インドネシアのビジネス

成長市場と成熟市場での起業の違い【オンラインとリアルの融合を意識したビジネス】

2022/12/23

非対面取引が中心になりつつある現在、インドネシアで成長市場または成熟市場で事業を行う場合、商材や対象市場の性質が異なったとしても、基本的にはWEBが営業活動の主戦場となり、オンラインとリアルの融合を意識していくことには変わりません。

インドネシアのビジネスまとめ
インドネシアのビジネス

インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。

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成長市場と成熟市場での起業体験

1997年10月に「独立して事業をやりたい」という形のない期待感だけを持ってインドネシアに来ましたが、インターネット黎明期の当時よく言われていた「ネットの普及で個人が大企業と対等に戦える時代が来る」という言葉に興奮し、期待値MAXだったことは確かで、これをきっかけに自分がやりたい事業を勝手に「WEB based Business(ウェブベースビジネス)」と呼んでいました。

ポストコロナ禍のオンラインとオフラインの使い分け【非対面取引時代に重要になるバイヤーイネーブルメントという営業活動】

ポストコロナ禍でサービス業者のすべての企業活動が完全オンライン化されるとは考えにくく、今回の在宅勤務で見えた負の側面を反省したうえで、オンラインに置き換えられる業務が絞られると思います。

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これはオンラインで広告、集客してオフラインのビジネスに繋げるという趣旨であり、当時インドネシア現地から家具や雑貨などの商材を紹介するWEBサイトがなかったことから、多くの日本のお客様に興味を持っていただいたのは幸運としか言いようがなく、WEBベースの副業収入が就職先からの本業収入を超えるようになったことを機に、2001年9月にバリ島に引っ越して輸出会社を立ち上げました。

このようにブームに乗って成長市場で起業した以上、本来ならブームが過ぎ去った後のピポット戦略を想定しておく必要があるわけですが、当時若干30歳手前の若造にはそんな知恵はなく、日本の長期デフレに伴うアジア家具ブームの終焉を迎えると、売上が落ち経営状態が苦しくなる状況に対して何ら打開策を見い出せずうろたえるのみでした。

国営企業Telkomが運営するblanja.comの閉鎖【事業方針の路線変更を行うピボット戦略】

インドネシアテレコムはオンラインマーケットプレイスを閉鎖し、零細業者のEコマース参加を推進し業種の垣根を越えて社会の課題を解決するビジネスエコシステム構築のためのプラットフォーム開発に注力するという事業方針の路線変更を行うピボット戦略を取りました。

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顧客だった日本の家具屋さんや飲食店さんが続々と閉店したことで、僕の会社も2007年8月で清算して這う這うの体(ほうほうのてい)でジャカルタに出戻りましたが、バリ島で中途半端で挫折したWEB based Businessをやりたいという欲求だけはどうしても消すことが出来ず、将来の来るべき時のための準備として始めたのが、このサイトの原型となる「ジャカルタのシステム導入備忘録」というインドネシアのIT情報を発信するブログでした。

ブログを10年以上続けられる秘訣【達成感ではなく爽快感や学習感が得られるかどうか】

ブログを書く目的が多くの人に読まれることで発生するアフィリエイトやアドセンスの収益の場合、思うように成果が出ないと継続意欲が失われます。長く続ける秘訣は達成感を求めるのではなく、書いたことで頭の中が整理されたという爽快感と学習感が得られるかどうかです。

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そういう経緯から言えば、2018年2月に今の会社を立ち上げるまでの準備期間として11年もかかったことになる訳ですが、その原因は対象が成長市場ではなく、インドネシアの日系製造業という煮詰まった成熟市場に対するシステム営業であり、そこで勝負するには十分な経験と知識を身に着ける必要があると感じていたからです。

アジア家具・雑貨ブームに後押しされた成長市場では常に商材が不足している需要過多な状態であり、そこでは短期間で新しい商材を発掘し日本に紹介することでライバルを出し抜く必要がありましたが、インドネシアの日系製造業向けの法人営業の場合は市場の規模が小さく相対的に供給過多の状態であり、そこでは技術力や知名度などの信頼性や権威性を担保する要素が求められます。

コロナ禍後のネット戦略

バリ島から日本向けの家具・雑貨の輸出ビジネスも、ジャボデタベック圏でのインドネシア国内製造業向けシステム導入ビジネスも、商材や対象市場の性質が異なるとはいえ、ビジネスモデルがWEB based Businessであることは同じですが、当初はこのオンライン中心の営業が、比較的IT化の遅れた製造業という古い業界、かつインドネシア国内法人営業という特殊なビジネス環境で通用するかどうかは未知数です。

ところがこのビジネスモデルの有効性の評価をする時間もないまま、突然やってきたコロナ禍で否が応でも非対面取引を前提としたインサイドセールスを中心とした営業活動に転換せざるを得ず、そこでは信頼性と権威性の低い独立系スタートアップにとって、営業活動において致命的に不利な状況であり、生き残り戦略として業種を問わず横の繋がりを重視し、単発の小さな案件をこなすことで最低限のキャッシュフローを確保するだけで精一杯でした。

インドネシアローカル市場向け事業で重要なこと【同業種異業種問わず横の繋がりを意識すること】

インドネシア進出よりも事業継続が難しい理由は、日本のブランド力の優位性の低下や市場拡大を阻害する価格問題であり、ローカル市場向け事業に人脈が重要であるとすれば、趣味やボランティア活動などの本業以外の集まりの場で自分の付加価値をアピールするのは効果的です。

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コロナ禍の2020年から2021年にかけて、GoogleアップデートによりSEOの基準がExperience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)をまとめたE-E-A-Tを重視するようになったこと、SNS全盛時代を迎える中でネットユーザーのブログ離れが顕著となったことで、WEBサイト本体への集客力を高めるプル型の努力よりも、定期的なオンラインセミナーの開催や、TwitterやFacebookなどのSNSで情報発信などのプッシュ型の努力のほうが、より大きな時間対効果を生み出します。

そして市場でE-E-A-Tの点で認められるために、上述の横の繋がりを重視して自社よりも知名度の高い企業との共催セミナーやプリセールスなどでコラボをしてもらうことで、将来独自営業による利益率の高い案件を獲得するために、まずは市場での自社の価値を引き上げてもらうことに注力しました。

そのためには、相手に自分をコラボする価値のある存在だと認めてもらう必要があり、技術力が必要であることは言うまでもありませんが、それ以上に以下のような気合と根性を伴う自己犠牲の精神が必要であることは間違いないです。

  • いただいた仕事は断らず何でも受ける。
  • 相手のためなら自分の時間はいくらでも費やす。

2022年に入って、ようやく悪夢のようなコロナ禍下でのひらすら耐えるビジネスが終わり、少しずつ本来描いていたWEB based Businessの形が見えそうになった状態ですが、如何せんインドネシアの日系製造業という市場は将来的には縮小していくことが予想され、非日系市場への販路拡大や、現在の請負契約型とは異なる新しいビジネスモデルへの再構築が必要であり、そうしないとバリ島での家具ビジネスで速やかにピポットできず、敢え無く撤退した苦い経験の二の轍を踏むことになりそうです。