インドネシアのビジネス環境

年配者が若者と対等に戦う戦術【本格派から技巧派への転向】


歳を取ると行動するより先に言い訳を考え出す

インドネシアで日本人がビジネスチャンスを探すとき、通常は日本になくてインドネシアにあるものを輸出するか、流行のタイムラグを利用して日本での成功例をインドネシアで実践するかのどちらかになるのは、日本からインドネシアへの輸入は関税や検疫の問題でハードルが高く、日本の流行がインドネシアに来ることはあってもインドネシアの流行が日本にも押し寄せる事例が少なかったからでした。

最近はITプロダクトでインドネシア国内市場で勝負したり、日本向けにインドネシアの人口の47%にあたる1.5億人のスマホユーザーをターゲットとしたデジタル広告の代理店サービスを提供したり、日本文化のエバンジェリスト的立ち位置からインドネシア人のSNSユーザーの間でインフルエンサーとして活躍する個人も出てきました。

僕も1997年にインドネシアに来てすぐに本業の傍ら日本向けにバティックやイカットの輸出ビジネスを始めたので、今でも街で面白いものを見かけると「これ日本で売れるんじゃないかなあ」とか考えるのですが、20年前と違って「でも送料考えるとビジネスに乗せるのは厳しいかなあ」とか「しかしすぐ大手が参入してきて市場は根こそぎ占有されちゃうんだろうなあ」とか「でも」と「しかし」で始まる言い訳を考え出すようになってしまいました。

送料と関税、その他諸経費を考えると日本の沖縄や奄美大島あたりからバナナの葉を調達して売るほうがコスト的には見合うのかもしれませんが、インドネシアででそこらじゅうに生えているバナナの木に囲まれて生活していると、こういう空気がお金に化けるような話には理屈抜きで夢が感じられ、「植物の葉のHSコードは「0604」でASEANの一員であるインドネシアからの輸入関税は無税であり、検疫証明書を取れば輸出できるだろうけど、日本の商流が必要だし今はコロナで大変だろうなあ」とか想像するだけで楽しいものです。

ちなみに日本とインドネシアは自由貿易協定・経済連携協定(FTA/EPA)批准済みなので、二国間の輸入では原産地証明書が発給されれば、HSコードと基づきEPA(経済連携協定)税率が適用されます。

今回のバナナの葉は間違いなく原産性は認められると思いますが、インドネシアから日本に輸出したい商材に原産性が認められるかどうかは、付加価値基準(付加価値が40%以上なら原産性ありなど)、関税分類番号変更基準(輸入材料と完成品の関税分類番号基準が異なれば原産性ありなど)、加工工程基準(2工程以上の製造工程を経ていれば原産性ありなど)を満たすか否かで判定されます。

年配者が若者と戦う戦術

一般的に新しいことを始めようとする時に情熱や度胸で行動するより先に言い訳を考え出すのが年配者であり、自分はそうならないようにしようと意識するのはもちろん、年配者ならではの戦術を持たないと若者の勢いに負けてしまうと思います。

MLBミネソタ・ツインズの前田健太投手は、今日のミルウォーキー・ブルワーズ戦で、8回0安打0失点の好投で惜しくもノーヒットノーランを逃しましたが、広島カープ時代は伸びのある150キロ超のストレートで押す本格派だったのが、今ではキレのある変化球と抜群の制球力で三振と凡打の山を築く技巧派です。

今日8連続奪三振の球団新記録を更新した前田選手のストレート(4シーム)のスピード自体は広島時代に比べて落ちているかもしれませんが、キレのあるスライダーとチェンジアップとのギャップが大きいため、打者目線からは実際のスピード以上にストレートが伸びてくるようです。

2011年に芸能界を引退した島田紳助が、吉本NSCで講義する様子をまとめた「紳竜の研究」で、新人の時に既に売れっ子だった海原千里・万里の漫才を研究すると、ネタの8割がフォークボールで残りの2割がストレート、しかもそのストレートもめちゃくちゃ速いストレートというわけではないが、8割の遅いフォークボールに慣れた客にとってストレートがすごく速く感じると言っていました。

元巨人の桑田投手も「間違いだらけの野球の常識」の中で「スピードガンは粗大ゴミでいい」と緩急のピッチングの重要性を説いているように、情熱と度胸というスピードで勝負できなくても、広く浅い経験と知識をフル活用して仕事をする中で、時折混ぜる自分の得意分野があれば、例えそれが大したものでなくても十分戦える必殺技として機能するわけです。





おすすめ記事一覧

大統領選挙で考えたギャップにハマるということ 1

ギャップにキュンとするというのは人間の本能みたいなもので、ジョコウィの私利私欲のない素朴なおじさん像と、その実強力なリーダーシップを発揮する実務派という内面が、一見普通の人だが実はスゴイというギャップ好きのインドネシア人に大ウケして、大衆は一種の集団催眠状態にあるようです。

情報の質のレベル 2

見える化された結果を共有化することで問題点が共通認識されますが、共有化が進むことで情報の持つ希少価値が薄れて困る人間がいる場合、有益な情報を独占することでポジションを高めようという政治力が働きます。

インドネシアのスタバの店員にありがたい人生の教訓を教わった件 3

いつものスタバでいつものアイスコーヒーを注文していると、だいたいなじみの店員が「今日は珍しい時間に来たねー」とか「今日もいつものアイスでいいのかなー」とか馴れ馴れしくフレンドリーに話しかけてきます。

宗教によって異なる「死んだらどうなる」の考え方 4

キリスト教もイスラム教もともにユダヤ教から派生した宗教であり、それぞれイエス・キリスト(本人が神)またはアッラーという唯一無二の神を信じます。

株価操作なんてインドネシア株では当たり前 5

株価は売り注文と買い注文により変動し、大量の売り注文を買う注文がたくさん入れば、他の投資家達は「俺も俺も」と続くことで株価が上がります。

心臓に毛が生えたインドネシア人のずうずうしい転職活動を応援してみた 6

インドネシア人は秘密の話は誰かに暴露しないと精神の安定を保てない人が多いため、内緒の話に情報の希少性は少なく信憑性も低いことが多いので、「ここだけの話」という枕詞付きで聞かされる話は話半分に聞いておいたほうがいいかもしれません。

日系企業のインドネシアでの存在意義 7

今のまま日本の人口減が続けば、内需は縮小の一途をたどるわけで、そうなると日本国内市場だけで生き残るのは難しいと判断する国内企業が、海外市場に活路を見出そうとするのは必然です。

チャンスはあるが勝てる分野を見つけるのが難しい 8

実際にインドネシアに住んでみて、自分で動いて人と話しをして、現地の事情を少しずつ理解していくにつれて、インドネシアで起業することが意外と手強いことに気づき、その難しさの原因は、高い送料と関税であったりローカル企業との競争であったり、就労ビザ(IMTA)や外国人技能開発基金(DPKK)などのランニングコストの高さであったりします。

インドネシアのシステムインテグレーション業界 9

先日JETRO(日本貿易振興機構)さんと、インドネシアの中小企業のIT投資について意見交換させていただく機会をいただいたのですが、そこで「システム投資のコストメリットはどのように説明できるのか」という、システムインテグレーターの存在価値にも関わる重要な問題提起がありました。

肉体と精神と心と魂 10

「Body and Soul」といえば、昨日の内閣改造に伴う人事で内閣府政務官に内定した自民党の今井絵理子参議院員がメンバーだったSPEEDのデビュー曲であり、インドネシアの老舗女性ファッションブランド名でもあります。

ジャカルタのラーメン市場 11

僕がインドネシアに初めて来たのが1997年10月、インドネシア語は分からないし、仕事は辛いし、周囲の人間は理不尽だし、一時期日本に帰りたくて仕方がない時期がありましたが、当時自分をかろうじてインドネシアに繋ぎ止める心の支えとなっていたのが、協栄プリンスビル(今のWisma Keiai)の日本食レストラン「五右衛門」であり、ここでキムチラーメンを食べることが唯一の楽しみと言っても過言ではありませんでした。

ブランド力、技術力、資金力の3要素 12

1998年のジャカルタ暴動後、ルピアが暴落し海外からのドル建て債務を抱えた国内企業が利子の支払いに苦しんでいた頃、僕は外貨が獲得できるインドネシアでの新しいビジネスを探していました。

日本とインドネシアの間でのタイムマシン経営が通じなくなっている件 13

先進国と後進国との間にある流行のタイムラグを利用して、先進国での成功例を後進国で実践するビジネスモデルをタイムマシン経営といいますが、インターネットの普及に伴い情報がフラット化してしまい、モノと情報のタイムラグが限りなく小さくなった今、先駆者である中小零細同業他社が乱立し市場が出来上がったところに、後発の大手が参入し先発零細を駆逐していく、という典型的な負けパターンにはまります。

サリナデパートとマクドナルド 14

本日5月10日を最後にインドネシアのマクドナルド第1号店であるサリナデパート店(Sarinah)が閉店になりますが、ジャカルタのショッピングモールが新しいコンセプトでモダンにリニューアルされ続ける中で、僕がインドネシアに来たばかりの20数年前には、若者の待ち合わせ場所の定番でもあったサリナデパートやブロックMのパサラヤ(Pasaraya)などは完全に時代に取り残されてしまいました。

不景気の歴史 15

僕がインドネシアに来てからこれまで何度か経済不況を見てきましたが、今回の新型コロナウィルスの感染拡大により、間違いなく景気後退しますので、数年後にはこれがコロナショックとかコロナ不況とか呼ばれるようになるのかもしれません。

日本のバブル経済崩壊後とインドネシアの通貨危機後 16

自分が大学に入学したのがバブル経済末期の1991年、土地も株価もMAX爆上げして、三菱地所がアメリカの象徴であるロックフェラーセンタービルを買収し、ジュリアナ東京でワンレンボディコン(登美丘高校ダンス部のバブリーダンスみたいなやつ)のお姉さん達が扇子振って踊っている時期でした。

内需と外需の自国経済に及ぼす影響 17

公共事業投資を行っても、お金が企業内や個人の貯蓄に滞留してしまい国内消費が増えないのが日本の状況であり、国内消費は増えても消費材の輸入品比率が高く、国内資産が海外に流出しているのがインドネシアの状況です。

2019年の総選挙を前にインドネシア政治史のおさらい 18

来年の大統領選挙(Pemilu Pilpres Pileg Indonesia 2019)に向けての選挙運動(Kampanye)を解禁するにあたり、投票用紙に印字される順番はジョコウィ現職大統領・マフル副大統領候補組が1番、プラボウォ大統領候補・サンディアガウノ副大統領候補組が2番と決まりました。

コーヒーをもっと楽しくもっと美味しく 19

インドネシアは北回帰線と南回帰線をはさむコーヒーベルトに位置するコーヒー栽培に適した国で、1602年の東インド会社の進出を契機にオランダの植民地支配が300年以上続き、その間アラビカ種のコーヒーが持ち込まれ、気候のいい高原地帯で栽培が開始されました。

インドネシア人の悪魔祓い 20

人間誰しも自分の中に悪魔が潜んでおり、それが何らかのきっかけで表面に出て来るという考え方自体には、背景に宗教が有るか無いかの違いだけで、基本的に理解できる話であり、それを信じるか信じないかは別として、そういう考えがあることを認めることは大切なことだと思います。

-インドネシアのビジネス環境

© 2020 バテラハイシステム Powered by STINGER