業務システムがタイで売れてインドネシアで売れない理由

インドネシアのビジネス環境

業務システムがタイで売れてインドネシアで売れない理由 【負荷と効果のどちらに注目するか】


業務システム導入において負荷と効果はトレードオフの関係

IT業界で仕事をする人間が忘れがちなことに、お客さんにとってITとは効率よくデータを収集し、情報を加工して分析材料とすることにより、本業でより大きな成果を出すための手段であって目的ではありません。

仮にインドネシアでITの仕事をしている我々に少しでも付加価値があるとすれば、以下のような引き合いが来ると思います。

  1. インドネシアに駐在する日本人は忙しい。
    日々の忙しい会社の業務の中でITまで手が回らないので手伝って欲しい。
  2. インドネシア現法の日本本社の情シスには言葉の壁がある。
    インドネシア語も英語も苦手なのでシステム導入のため意思の疎通のための通訳的役割を果たして欲しい。
  3. 日本のソフトウェアメーカーはコスト削減したい。
    インドネシア市場に商品を売りたいが現地に社員を駐在させるとコストがかかるので変わりに営業活動や導入支援をして欲しい。

日本人がインドネシアにIT担当として派遣されるケースは稀でしょうから、ほとんどの人にとってITは本業を達成するための手段であり、その手段を導入する案件の担当者に任命されることは、ある意味本業以外にお荷物を背負わされた感がぬぐいきれず、正直貧乏くじを引かされたような感じになる、というのが本音ではないでしょうか?

システムのプリセールスにおいて、お客さん側がIT導入による負荷よりも効果に注目している場合は、導入決定までこぎつけやすいですが、そうでない場合は負荷の面が強調されすぎて「IT導入以前にもっと先にやるべきことがあるんじゃないか」という雰囲気になり、途中で立ち消えることがしばしば起こります。

この場合のIT導入以前に先にやるべきこと、と言われることは、おおよそ以下の内容です。

  • IT導入にアサインする人材の確保
  • そのために会社の利益が十分上がっていること
  • 従業員の基本教育
  • 日常の業務フローの確立
  • 業務上必要になるデータの整備

付加価値と時間軸

かつてインドネシアは日本の10年遅れなので、日本で10年前に流行ったものをインドネシアに持ってきて売れば儲かる、という時間軸上でのタイムラグを利用したタイムマシン経営という言葉がありましたが、インターネットの発達に伴う情報のフラット化のおかげで、今ではすっかり通用しなくなりました。

インドネシアにはないもので将来的に需要が見込めるものを、ブルーオーシャンである今のうちに販売する、という方針は正しいと思うのですが、思惑どおり需要が高まったとしても、新規参入が相次ぐことで必然的にレッドオーシャンになるわけで、その時にも生き残っていけるかどうかは、そこに継続的な付加価値を提供できるかどうかにかかっています。

市場には、今はブルーオーシャンでも将来的にレッドオーシャンになっていく成長市場と、市場規模は小さいが将来的にもブルーオーシャンであり続けるニッチ市場の2種類があり、ビジネスが難しいのは時代の先読み能力と付加価値を付ける能力の両方が備わっていないと、どちらの市場でも成功できないからです。

タイとインドネシアの業務システム市場の違い

同じ東南アジアの国ですが、日系のIT市場の規模は圧倒的にタイのほうが大きく、システムを提案する側であるIT会社も「タイでは商談が決まるのに何でインドネシアではなかなか決まらない、一体何が違うんだ」というモヤモヤ感があります。

タイの日系企業の場合、全般的にシステム化が比較的進んでおり、自動的にIT市場全体が分厚く成熟しており、どんな商材でも少なからずニーズを掘り起こしやすいため、商談がまとまるかどうかは別として、比較的引き合いだけは得られやすいのは確かなようです。

これはIT導入に際しての負荷よりも、得られる効果のほうに着目される傾向が強いとも言えるわけで、逆にシステム化が遅れているインドネシアの場合は、タイのようにどんな商材でもある程度のニーズがあるとは限らず、商材自体を市場に合わせる努力をより一層強くしないと、引き合い自体の発掘に苦労します。

基幹業務システムは実績系と計画系に分類されますが、在庫管理システム、会計システム、現場での実績収集システムなどは、実績というスタティックな情報を収集するという目的があり、これはインドネシア現法に派遣された駐在員にとっての使命である税務報告、本社への業績報告に直結するものなので、負荷よりも目に見える効果の証拠が得られやすいと言えます。

タイとインドネシアの業務システム市場の違い

一方で計画系システムの場合、実績に応じて変化する生産計画はダイナミックな情報であるため、上の税務報告、本社への業績報告に直結しないので効果が形として表れにくく未知数であり、ただでさえ多忙な現状では後回しにならざるを得ず、とても自分の任期中にやるには負荷が高すぎる、という判断を下すのが自然です。

あくまでもインドネシアと比べた場合の話ですが、タイ現地法人の場合は、赴任した時点で税務報告や、本社への業績報告は既に確立済みであり、実績系のITインフラはある程度固まっているので、むしろ何か新しいネタを探して赴任中の成果を上げよう、という発想に繋がりやすく、IT会社にとっては計画系システムやBIツール、IOTなど、一歩先のシステムの提案がし易くなります。

さて、この状況は2017年9月現在のものですから、5年後にこの文章を読み返したときにどんな感想を持つか、自分でも楽しみです。

(2019年8月追記)2年前の2017年当時に比べて、引き合いの数と質ともに上がっていますが、如何せんインドネシアの自動車産業が不況であり、IT投資には慎重な企業が多いようです。





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