コロナ禍によるインドネシアでの貧困率と犯罪率の増加【物理的な移動制限がもたらす経済へのマイナス影響】

2020/07/16

ジャカルタの線路際の家

新型コロナウィルス感染拡大防止のために発動された、大規模社会制限PSBBによる物理的な移動制限は、経済活動へマイナス影響を及ぼすと同時に、貧困率と犯罪率の増加を招いています。

移動制限がもたらす貧困層の拡大

インドネシア中央統計庁BPS(Badan Pusat Statistik)によると、新型コロナウイルスの流行拡大の影響で、2020年3月の貧困率(1カ月の消費額がRp410,670うち食費Rp302,022それ以外の支出Rp108,648以下)が9.78%と2019年9月の9.22%から上昇し、貧困ライン以下で暮らしている人の数は、3月時点で2,642万人いると言われており、PSBB(大規模社会制限)下での移動制限で経済活動が阻害されたことが貧困層の増加につながったと考えられます。

インドネシア中央統計局

物理的な移動制限が経済に及ぼすマイナス影響の大きさはコロナ禍で証明されており、日本でも連日東京で200人近くの新型コロナウィルスの新規感染者が確認されているにもかかわらず、政府が国内観光需要喚起を目的とした旅行費用割引のGo Toキャンペーン(さきほど東京在住者は本制度から除外されました)を国民の大反発の中でも強硬しようとしているのは、既に地方で大量の雇用を支えていた観光産業での倒産や失業者が増加しているからです。

先日7月14日にジャカルタ州運輸局は、州境を出入りするための条件となる出入域許可証(SIKM=Surat Izin Keluar Masuk)のチェックを廃止し、州が作成した携帯電話向けアプリケーションJAKIからCorona Likelihood Metric(CLM)と呼ばれるシステムにアクセスし、個人情報の入力や自己診断票への回答を行う方式に簡素化したことで、国内の州をまたいだ移動制限は実質的に大幅に緩和されたと言えるわけで、国内旅行の観光セクターにとっては朗報かと思います。

インドネシアの貧困層の多くは地下経済、課税されない現金労働などGDP統計に表れない経済部門である非公式経済(Sektor Informal)に従事していると言われており、現金収入が不安定であるため、2019年9月から2020年3月の期間中、9つの生活必需品スンバコ(Sembilan Bahan Pokok)価格の上昇(米1.78%、鶏肉5.53%、食用油7.06%、砂糖13.35%、卵11.1%)の影響を最も受けたものと推測されます。

貧困率上昇に伴う犯罪率の上昇

インドネシアは印象ほど犯罪率は高くなく、殺人発生率は174か国中163位(日本:168位 タイ:82位 フィリピン:42位)で、他の東南アジア諸国と比べての治安の良い国と言えますが、何年か住んでいればスリや置き引きなどの窃盗、タクシー強盗などは身近で見聞きする機会もあり、僕も20年以上前ですがPlaza Indonesia前の歩道橋を降りたバス停で集団強盗にあったことがあります。

当時のインドネシアは通貨危機(Krisis Moneter 略してクリスモン)にの真っただ中で、急速に進むインフレの中、民間企業が倒産し銀行の大型合併が相次ぎ、失業者(1999年失業率6.3%)が増えるにつれ貧困層が広がる中で犯罪率が高い状況にありました。

ジャカルタ

政治・宗教・金融・病気という異なる要因が絡むインドネシアの不景気

インドネシアは定期的に不景気になりますが、通貨危機に端を発した暴動(1998年)は政治的要因、爆弾テロ(2002年-2004)は宗教対立、リーマンショック(2008年)は金融問題、そして今回2020年のコロナ禍は病気と、主要因は毎回異なります。

続きを見る

コロナ禍の日本でも在宅勤務が増えるにつれて、DVや児童虐待のニュースが増えたように、平時は朝は会社に行って夜に帰ってくるというリズムが崩れ、家族間でお互いの嫌な部分が見えたことによる感情のもつれが原因だと言われますが、その根本的な原因はお金の問題ではないでしょうか?

インドネシアでも4月までに解雇PHK(Pemutusan Hubungan Kerja)された従業員の数は700万人に達すると言われ、失業者数が増えると貧困層が増え、その結果犯罪が増えるという悪循環に陥っており、7月第2週の犯罪発生数が第1週から10.37%も上昇し、その内容は麻薬関連が最も多く、次いで空き巣など侵入窃盗、横領、四輪車・二輪車の盗難、強盗などです。

麻薬関連が多いのは意外かもしれませんが、インドネシアでは毎日50人の若者が麻薬がらみで死んでいくという世界でも有数の麻薬汚染地帯であり、Ekstasi(合成麻薬エクスタシー)の世界最大生産国、Ganja(大麻)の世界最大の流通国で、Mariyuana(マリファナ)の品質世界一、現在刑務所の受刑者の60%がNarkoba関係で、毎年15,000人がNarkobaがらみで死亡しているという危機的状況です。

空港入国検査

インドネシアにおける麻薬撲滅の啓蒙活動

インドネシアへの麻薬の持ち込みは重罪で、オーストラリア人が死刑判決を受けた際には国際問題にもなりましたが、世界有数の麻薬汚染国家の汚名返上のために麻薬取締庁BNN(Badan Narkotika Nasional)を中心として、草の根レベルでも麻薬撲滅の啓蒙活動が行われています。

続きを見る

最近はWhatsAppや電話でのオンラインでの詐欺未遂が多く、僕のGoPayアカウントから残高を引き出そうとする詐欺電話が終日かかってきた時期があり、そのせいでアカウントが一時期凍結されてしまいました。

Gojek詐欺電話来ました。

1.Gojek本社を称した電話
2.アプリの使い勝手を聞かれる
3.アンケート回答のお礼に1.5juta振り込むらしい
4.SMSでOTPを送り確認させる(ブラフ)。
5.1.5juta送金するために6桁の暗証番号を聞いてくる⇒詐欺確定

不景気になると金を餌にした詐欺話が来るのでご注意を。

GoJekは、昔は街角で暇していたオジェック(バイクタクシー)をオンラインで繋いで、時間とコストばかりかかって生産性の低い移動や配送という作業を、スマホの操作だけで彼らに外注してしまうことで、業務効率の向上と富の再配分をいっぺんに実現し、新しい所得再配分の流れをIT技術によって構築すると同時に失業率下げることによる犯罪率低下という経済と社会の両面に貢献した革命的サービスですが、情報リテラシーの低い若年層や老年層の利用者は不法アクセスによる詐欺の対象となりやすいため、未だ最大残高Rp.2,000,000(アップグレード後Rp.5,000,000)に制限されています。