インドネシア政治・経済・社会

世代交代により不正浄化が進むインドネシア 【行政手続きが公明になることで民間の商習慣もクリーンになる】

2017/10/21

スハルト長期政権時代に日常化したKKN(Korupsi汚職・Kolusi談合・Nepotisme縁故主義)は、汚職撲滅委員会KPK(Komisi Pemberantasan Korupsi)により浄化が進められており、行政機関の透明化に並行して民間企業間の商習慣もクリーンになることが期待されています。

インドネシアの政治・経済・社会まとめ
インドネシアの政治・経済・社会

日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しています。

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Komisi(口銭)とMarkup(上乗せ)の違い

KKNといえばKorupsi(汚職)とKolusi(談合)とNepotisme(縁故主義)の頭文字をとったもので、在住日本人が最初に耳にするインドネシア語ベスト100くらいには入るネガティブな単語ですが、これは本来のKKNが意味するところのKuliah Kerja Nyata(学生インターン仕事)を自虐的にひねった短縮語です。

先日10年前に購入したマンガドゥアのKIOSを、付き合いのあるエージェントを通して売却したのですが、エージェントのモチベーションを高めるために以下のような依頼の仕方をしました。

  • 自分にはXXXjutaネットで入ればいいので、あなたはいくらで売ってもOKですよ。

通常は不動産エージェントは売却額の5%がwajar(標準的・フェア)なコミッションとされていますが、彼女は僕の希望価格XXXjutaに対して5%のコミッションに加えて、さらに8%ほどのマークアップを加えた金額で購入者と合意していました。

要は彼女は原価に対して13%利益を乗せて購入者に販売したわけですが、購入者は購入価格に何%が上乗せされているか知らないのは普通のことですし、売買取引契約書にはキチンとXXXjutaと正しく記載されているので、取引の中でグレーな部分はありません。

結局はモール内の商業用区画の売却に際してのコミッションについての規定が、どこまで明確で拘束力のあるものなのかによって、彼女がマークアップした8%の白黒が分かれると思いますが、売買契約書に正しく記載されているグロス金額を、どのようなテクニックで処理するのかが気になるところです。

コミッションは取引前にお互いがパーセンテージについて合意があるもので、マークアップは事前合意のない上乗せになりますが、コミッションについての規定が明確でなく、購入者にコミッションのパーセンテージを開示する義務がない以上、マークアップが違法であるとは言えないはずです。

Markup(上乗せ)とKorupsi(汚職)の違い

今話題になっている築地市場の豊洲移転問題で、市場建設を担当したゼネコンが標準的な金額よりも法外に高い金額で落札していたとしても、これ自体をKorupsiと判断することは法的に難しいと思いますが、落札するに当たっての謝礼としてゼネコンから東京都議にお金が渡っていればKorupsiになります。

原価にMarkup(上乗せ)して販売するのが商売とすれば、交通警察署SAMSAT(Sistem Administrasi Manunggal Satu Atap 運転免許証SIMや車両証明書STNKなどを発行する場所)前で客引きする運転免許取得代行エージェントが、正規の費用にMarkupした金額をお客に提示するのは違法ではありませんが、エージェントが手続きを簡素化するために、SAMSAT職員(交通警察)に謝礼を渡すのはKorupsiになります。

ただしエージェントに手続きの簡素化を依頼する場合、客本人が裏でお金が動いていることを知らないというのは無理があるので、本来依頼であるお客も何らかの罪に問われる可能性があります。

先日嫁さんのKTP更新のためにkantor kelurahan(町役場)に行ったのですが、以前と違ってエージェントの姿もなく、「職員へのお金の授与NO!」のポスターがデカデカと貼ってあったのを見て、インドネシアも少しずつクリーンな方向に変わりつつあることを感じました。

汚職撲滅を推進するインドネシア

2011年から始まったe-KTP(Kartu Tanda Penduduk 住民登録証)電子化予算Rp 5.9 triliumのうちのRp 2.3 triliun(2.3兆ルピア=200億円)が横領されたのではないかというKolupsi(汚職)疑獄の4番目の容疑者として、2009年から2014年までの国民議会議長(Ketua Dewan Perwakilian Rakyat)だった現ゴルカル党議長(Ketua Umum Partai Golkar)であるセティア・ノファント氏が、汚職撲滅委員会KPK(Komisi Pemberantasan Korupsi)から個人資産の調査を受けています。

今年4月にはこのインドネシア史上最大級汚職事件を担当するKPK捜査官が酸攻撃を受けて失明したり、今年8月にはe-KTPの登録時の本人確認で使用する指紋識別装置を製造するバイオモール社の社長がアメリカで不審死したりと、この事件の闇はまだまだ深そうですが、身近なところで嫁さんのKTPの角部分が1年も経たないうちに裂け始めているのは、この200億円分紙質を落としたせいではないかと疑っております。

1998年までのスハルト政権時代には権力者が汚職で捕まることは考えにくく、当時のインドネシア在住日本人が、下ネタ以外のインドネシア語で最初に覚える単語の一つに必ず含まれていたKKN(Korupsi汚職・Kolusi談合・Nepotisme縁故主義)という短縮語は、近年ではめっきり存在感が薄くなりました。

なじみの按摩屋のお姉さんが「最近は上客だった公務員達がKolupsiができなくなってお金に余裕がなくなったせいで商売あがったりだわ」と嘆いていたくらい、インドネシアの汚職撲滅活動は一般大衆レベルにまで浸透しています。

普通自動車免許(SIM A)取得代行ブローカーが激減

インドネシアで運転免許書SIM(Surat Izin Mengemudi)を取得するにはフェーズIIIで学科試験、フェーズIVで実技試験がありますが、日本の試験ほど厳しくはないとはいえ、知人のインドネシア人が学科で2回落とされたというくらいですからそこそこの難易度はあるようです。

そのため忙しいジャカルタ人達は、仕事の合間をぬって学科試験の勉強をしたり、西ジャカルタのDaan MogotにあるSAMSAT(Sistem Administrasi Manunggal Satu Atap 運転免許証SIMや車両証明書STNKなどを発行する場所)に何回も通う暇はないので、以前は適当にCalo(ブローカー)にお金を積んで試験を回避するということが普通にありました。

SIM

学科試験と実技試験合格の証明書

自分は先月、人生で初めて運転免許を紛失するという痛恨のミスを犯してしまったため、今回は更新ではなく新規で免許を取り直す必要があり、久々にSAMSATに行ってきたのですが、以前は駐車場から入り口周辺までうっとおしいくらい客引きしてきたブローカーを、今日は一人も目にしませんでした。

完全にブローカーは駆逐されてしまったのかと思いきや、実際のところSAMSATの目の前とか駐車場とか、人目に付くところでの客引きが禁止されているだけらしく、現在でもSAMSATの外でちゃっかり免許取得手続き代行業務は行われているようですが、以前のようにブローカーが堂々とSAMSATの中にコネを使って入り込むという光景は見られません。

SAMSATの受付窓口の前にも「Caloを使うよりも自分で手続きするようにしましょう」という啓蒙の張り紙がありました。

交通警察職員の対応も随分フレンドリーになり、日本人と判ると「シモン」とか「ジュウショ」とか日本語でコミュニケーションしようと気を使ってくれるのには若干ありがた迷惑でしたが、ブローカーが居なくなったせいか以前あった「せわしなさ」が影をひそめて若干明るくなったSAMSATの雰囲気から、インドネシア全体が一丸となってクリーンな国に生まれ変わろうとしていることを強く感じました。

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