インドネシア人の悪魔祓い

インドネシアの宗教

インドネシア人の悪魔祓い 【心の中に潜むサタンを除霊のような方法で退散させるクリスチャンの儀式】


嫁さんの妹がサタン(悪魔)に取り憑かれた

しばらく連絡してこなかった嫁さんの妹から、昨年末12月上旬に泣きの電話が入りました。

  • サタン(悪魔)に取り憑かれたよー

それ以来3週間に渡って彼女に居座ったサタンは、3回の悪魔祓い(Pelepasan setan )を経て、ようやくどっか別の場所に立ち去って行きました。

自分もこの手の話には半信半疑な平均的日本人なので、最初は彼女に対して「オマエは何を言っているんだ」的な冷たい態度を取りましたが、国費でドイツ留学するくらい優秀な彼女が、何かに取り憑かれたように意味不明な言葉を口走ったりするのを見ると、

  • 世の中には科学で解明できない事象がまだまだ存在するかも

などと考えはじめ、終いには何もできないながらも気持ちだけは一緒にサタンと戦っていましたw。

彼女はちょうど今長期休暇でドイツからインドネシアに戻っているところで、このままサタンを連れたままドイツに戻すわけにはいかないので、教会へのアクセスのよい僕のアパートでしばらく引き取ることになりました。

悪魔に取り憑かれた人と一緒に生活するということ

そもそもいままで何十年も普通に生活していた彼女に突然サタンが取り憑いた理由ですが、宗教的な内容は僕もよく理解していませんが、要約するとこういうことらしい。

  • 誰しもの心の中にサタンは存在するが、本人が神に近づかない限りサタンも出てこない。
  • クリスチャンとして神に近づいたときサタンは出てきて邪魔しに来る。

確かに名ばかりクリスチャンだった彼女が去年くらいから随分熱心に聖書読んだり教会に行った話しをしていたのは覚えていますが、でもそれくらいで悪魔に取り憑かれるかよ、普通。。。

どうにも胡散臭く信じがたいので、試しに彼女の中に居るサタンに日本人である僕に取り憑ついてはもらえないだろうか、とお願いしましたが

  • 神を信じない人間には取り憑つかない。

とあっさり拒否されました。そうですか。。。

サタンにしても黙って彼女の中にじっと取り憑いてくれていればいいのですが、いちいち

  • ケッケッケッケッケッ、カッカッカッカッカッ

と彼女の口と声帯を通して奇声を発するものですから、うっとおしいことこの上ない。

また彼女自身が

  • あなたは何が目的なの、何で私にとりついたの?

とサタンと会話する様子は、傍から見ていてなかなか不気味です。

最初はわざとやっているんじゃなかろうかと疑いましたが、さすがに3週間も冗談であのサルマネは肉体的にも精神的にも無理でしょうし、僕自身も3週間一つ屋根の下でサタンに取り憑かれた人間と生活することの大変さを身をもって感じました。

このサルのサタンは辛いもの熱いもの全般が嫌いなので、ガスコンロの火を点火して見せると嫌がって

  • Tidak mau, tidak mau(嫌だ嫌だ)

と、何故かインドネシア語で訴えますw。

毎日のようにわさび入りの寿司とかキムチ鍋とか食べさせて追い出そうとしましたが、サルは「ケッケッケッケッ」と嫌がるそぶりを見せるものの出て行くまでには至りません。

教会で悪魔祓い

これはもうプロに任せるしかないということで、最寄の教会に連れて行きPelepasan setan(悪魔祓い)をやってもらいました。

悪魔祓いといえば「エクソシスト」という有名なホラー映画がありますが、あの映画に出てくるカラス神父みたいなかっこいい人が登場するのかと思いきや、今回サタンと対決するのはポロシャツを着たその辺にいそうなPendoa(お祈りしながらサタンを追い出す人)のおじさんです。

彼女の背中を押さえて呪文を唱えながら

  • 出ろ、出ろ

みたいな感じでサタンを追い出そうとする様子は、カラス神父というよりも織田無道の除霊シリーズに近いものがありますが、パワー不足なのか判りませんが残念ながらなしのつぶてです。

悪魔祓いが失敗に終わった後、そのPendoaのおじさん曰く、教会にもいくつか種類があって、この教会は温和な教会で悪魔払いには向いていないので、サタンと対決することに慣れたガチの武闘派教会を紹介してもらいました。

後日、その教会を訪問して受付にいたスタッフの方に

  • あのー、サタンに取り憑かれたんですけどー

と言うと

  • そうですか、こちらへどうぞ

と蚊にでも刺されたかのような薄い反応で、普通に悪魔祓いの部屋に通されました。

ここの悪魔祓いのプロは30歳前後のお姉さんとお兄さん達で、いずれもサタンと戦うことに慣れた歴戦のツワモノばかり、さっそく彼女を取り囲み神を讃えるクリスチャンの歌を歌いながらサタンを呼び出します。

体を前後左右にゆすりながら泣き叫ぶ彼女(怖

約2時間のサタンとの格闘の末判明した事実は、彼女に取り付いているのはサル一匹でなく、その他大勢のサタンであること、しかも4世代前の祖先の時代からのサタンも引き継いでおり、これは一枚一枚たまねぎの皮をむくようにはがしていく必要があり長い戦いになりそうだということ、マジかよ・・・。

で、1週間後に2回目の悪魔祓い、午前11時から夕方の4時まで5時間ぶっ通しでサタンと格闘。

腹減りすぎてよっぽど中座して近くのマックに一人で昼飯食べに行こうかとも思いましたが、雰囲気的に無理、、疲れたよー、腹減ったよー。

ただ今回は出るわ出るわ、サル、龍、トラ、トカゲ、おばあさん・・・

最後に彼女の口から聞き慣れないジャワ語で、なにやら悪魔がつぶやいたときにはさすがに鳥肌全開でしたわ。。。

悪魔祓いの後処理

悪魔祓いが終わってからPendoaのお姉さんは、その場でソロの実家のお母さんに電話を掛ける様指示し、電話口の向こうでお母さんはPendoaのお姉さんの言葉に従って、4世代前までの過去のシガラミを断ち切る呪文を復唱しました。

70歳近い母親が、悪魔に取り憑かれた娘を助けるために、教会のPendoaの呪文を電話口で復唱する、というのは信仰心の厚いインドネシアならでは成立する光景であり、こんなこと日本人であるうちの母親にお願いしたら、その場で親子の縁を切られるかもしれませんw。

そして最後にPendoaのお姉さんがこんなことを言いました。

  • ソロの実家に滅多に開かない部屋がありますよね?そこにある鏡台の鏡を割って、クリス(剣)を焼却してください。そしてまわりにある家具を赤い糸で縛ってください。

ウソだろ、と思いましたが・・・本当にありました。

中部ジャワのソロのへの旅

昨年末に嫁さんと妹と3人でソロの実家に行き、開かずの部屋を見せてもらったところ、悪魔祓いのプロが指摘したとおりそこには鏡台と木剣がありました。

さっそく鏡台を裏庭に運び出し鉄の棒で叩き割り、木剣を数時間かけて焚き火にくべましたが、硬い木を灰になるまで焼くことはできず、最後は原型をとどめないくらい黒焦げにした後で粉々に叩き割りました。

ソロで有名なNasih Gudeg Cekerのワルン

ソロで有名なNasih Gudeg Cekerのワルンにて

娘が自宅の鏡台を叩き割るためにわざわざジャカルタからソロに帰省する、というのもすごい理由ですが、お母さんはすべてを理解している様子で鏡を叩き割るための鉄棒と、木剣を焼却するために火にくべる紙まで準備していてくれました。

日本人的には受け入れがたい話や出来事もありましたが、人間誰しも自分の中に悪魔が潜んでおり、それが何らかのきっかけで表面に出て来るという考え方については、背景に宗教が有るか無いかの違いだけで、基本的に理解できる話であり、それを信じるか信じないかは別として、そういう考えがあることを認めることは大切なことだと思います。





おすすめ記事一覧

大統領選挙で考えたギャップにハマるということ 1

ギャップにキュンとするというのは人間の本能みたいなもので、ジョコウィの私利私欲のない素朴なおじさん像と、その実強力なリーダーシップを発揮する実務派という内面が、一見普通の人だが実はスゴイというギャップ好きのインドネシア人に大ウケして、大衆は一種の集団催眠状態にあるようです。

情報の質のレベル 2

見える化された結果を共有化することで問題点が共通認識されますが、共有化が進むことで情報の持つ希少価値が薄れて困る人間がいる場合、有益な情報を独占することでポジションを高めようという政治力が働きます。

3

日本人がインドネシアに来ると、インドネシア人ののんびり加減にイライラするというのは昔からよく聞く話で、インドネシア在住日本人にとってのバイブル的小説である深田祐介著「ガルーダ商人」の中でも、インドネシア宗教省の高官が日本人とインドネシア人を自宅に招待する際に、インドネシア人向けの招待状には、遅刻することを前提にパーティ開始時間を三十分早く書いておくという記述があるほどです。

宗教によって異なる「死んだらどうなる」の考え方 4

キリスト教もイスラム教もともにユダヤ教から派生した宗教であり、それぞれイエス・キリスト(本人が神)またはアッラーという唯一無二の神を信じます。

株価操作なんてインドネシア株では当たり前 5

株価は売り注文と買い注文により変動し、大量の売り注文を買う注文がたくさん入れば、他の投資家達は「俺も俺も」と続くことで株価が上がります。

心臓に毛が生えたインドネシア人のずうずうしい転職活動を応援してみた 6

インドネシア人は秘密の話は誰かに暴露しないと精神の安定を保てない人が多いため、内緒の話に情報の希少性は少なく信憑性も低いことが多いので、「ここだけの話」という枕詞付きで聞かされる話は話半分に聞いておいたほうがいいかもしれません。

日系企業のインドネシアでの存在意義 7

今のまま日本の人口減が続けば、内需は縮小の一途をたどるわけで、そうなると日本国内市場だけで生き残るのは難しいと判断する国内企業が、海外市場に活路を見出そうとするのは必然です。

チャンスはあるが勝てる分野を見つけるのが難しい 8

実際にインドネシアに住んでみて、自分で動いて人と話しをして、現地の事情を少しずつ理解していくにつれて、インドネシアで起業することが意外と手強いことに気づき、その難しさの原因は、高い送料と関税であったりローカル企業との競争であったり、就労ビザ(IMTA)や外国人技能開発基金(DPKK)などのランニングコストの高さであったりします。

インドネシアのシステムインテグレーション業界 9

先日JETRO(日本貿易振興機構)さんと、インドネシアの中小企業のIT投資について意見交換させていただく機会をいただいたのですが、そこで「システム投資のコストメリットはどのように説明できるのか」という、システムインテグレーターの存在価値にも関わる重要な問題提起がありました。

肉体と精神と心と魂 10

「Body and Soul」といえば、昨日の内閣改造に伴う人事で内閣府政務官に内定した自民党の今井絵理子参議院員がメンバーだったSPEEDのデビュー曲であり、インドネシアの老舗女性ファッションブランド名でもあります。

ジャカルタのラーメン市場 11

僕がインドネシアに初めて来たのが1997年10月、インドネシア語は分からないし、仕事は辛いし、周囲の人間は理不尽だし、一時期日本に帰りたくて仕方がない時期がありましたが、当時自分をかろうじてインドネシアに繋ぎ止める心の支えとなっていたのが、協栄プリンスビル(今のWisma Keiai)の日本食レストラン「五右衛門」であり、ここでキムチラーメンを食べることが唯一の楽しみと言っても過言ではありませんでした。

ブランド力、技術力、資金力の3要素 12

1998年のジャカルタ暴動後、ルピアが暴落し海外からのドル建て債務を抱えた国内企業が利子の支払いに苦しんでいた頃、僕は外貨が獲得できるインドネシアでの新しいビジネスを探していました。

日本とインドネシアの間でのタイムマシン経営が通じなくなっている件 13

先進国と後進国との間にある流行のタイムラグを利用して、先進国での成功例を後進国で実践するビジネスモデルをタイムマシン経営といいますが、インターネットの普及に伴い情報がフラット化してしまい、モノと情報のタイムラグが限りなく小さくなった今、先駆者である中小零細同業他社が乱立し市場が出来上がったところに、後発の大手が参入し先発零細を駆逐していく、という典型的な負けパターンにはまります。

サリナデパートとマクドナルド 14

本日5月10日を最後にインドネシアのマクドナルド第1号店であるサリナデパート店(Sarinah)が閉店になりますが、ジャカルタのショッピングモールが新しいコンセプトでモダンにリニューアルされ続ける中で、僕がインドネシアに来たばかりの20数年前には、若者の待ち合わせ場所の定番でもあったサリナデパートやブロックMのパサラヤ(Pasaraya)などは完全に時代に取り残されてしまいました。

不景気の歴史 15

僕がインドネシアに来てからこれまで何度か経済不況を見てきましたが、今回の新型コロナウィルスの感染拡大により、間違いなく景気後退しますので、数年後にはこれがコロナショックとかコロナ不況とか呼ばれるようになるのかもしれません。

日本のバブル経済崩壊後とインドネシアの通貨危機後 16

自分が大学に入学したのがバブル経済末期の1991年、土地も株価もMAX爆上げして、三菱地所がアメリカの象徴であるロックフェラーセンタービルを買収し、ジュリアナ東京でワンレンボディコン(登美丘高校ダンス部のバブリーダンスみたいなやつ)のお姉さん達が扇子振って踊っている時期でした。

内需と外需の自国経済に及ぼす影響 17

公共事業投資を行っても、お金が企業内や個人の貯蓄に滞留してしまい国内消費が増えないのが日本の状況であり、国内消費は増えても消費材の輸入品比率が高く、国内資産が海外に流出しているのがインドネシアの状況です。

2019年の総選挙を前にインドネシア政治史のおさらい 18

来年の大統領選挙(Pemilu Pilpres Pileg Indonesia 2019)に向けての選挙運動(Kampanye)を解禁するにあたり、投票用紙に印字される順番はジョコウィ現職大統領・マフル副大統領候補組が1番、プラボウォ大統領候補・サンディアガウノ副大統領候補組が2番と決まりました。

コーヒーをもっと楽しくもっと美味しく 19

インドネシアは北回帰線と南回帰線をはさむコーヒーベルトに位置するコーヒー栽培に適した国で、1602年の東インド会社の進出を契機にオランダの植民地支配が300年以上続き、その間アラビカ種のコーヒーが持ち込まれ、気候のいい高原地帯で栽培が開始されました。

インドネシア人の悪魔祓い 20

人間誰しも自分の中に悪魔が潜んでおり、それが何らかのきっかけで表面に出て来るという考え方自体には、背景に宗教が有るか無いかの違いだけで、基本的に理解できる話であり、それを信じるか信じないかは別として、そういう考えがあることを認めることは大切なことだと思います。

-インドネシアの宗教

© 2020 バテラハイシステム Powered by STINGER