インドネシアにおけるERPシステムの原価計算手法

2019/07/20

インドネシアのERPシステムにおける原価計算手法を構造化した図解

受払の都度仕訳が発生し、会計と在庫管理の棚卸資産評価額が同期する継続記録法を採用するシステムがあります。また、月初在庫と当月発生費用から月末在庫を差し引いて製造原価を算出する三分法(棚卸計算法)を採用するシステムもあります。これらの原価計算方法の違いについて、変動費と固定費に分けて説明します。

インドネシアの原価管理における標準原価・実際原価と勘定の流れを構造化した図解

インドネシアの原価管理システム

インドネシアのマスプロダクション型工場では総合原価計算を採用。個別受注生産工場では個別原価計算を採用。IoTを用いた実績データで配賦ルールを設定。

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この記事でわかること

  • Microsoft DynamicsやSage Accpacは継続記録法を採用し、会計仕訳を自動生成します。
  • 継続記録法では、直接材料費は先入先出法または移動平均法で計算されます。
  • 三分法では、月初在庫と当月発生費用から月末在庫を差し引いて製造原価を算出します。
  • 標準原価計算では、製品生産予定数をBOM展開し、材料単価を掛けて変動費単価を算出します。
  • 原価管理システムは、管理会計と財務会計の両方に利用でき、売上原価の算出仕訳を行います。

業務システムの原価計算機能について

インドネシアでよく導入されるMicrosoft DynamicsやSage Accpacなどの業務システム(ERP)は、生産実績や投入実績が計上される際に会計仕訳を自動生成する継続記録法を採用しています。この場合、変動費である直接材料費は先入先出法または移動平均法で取得された単価に、投入実績数量を掛けた結果を直接材料費として計上します。

また直接労務費や製造間接費などの固定費も、標準値としての配賦率を部品構成表(BOM)に設定し、実績工数や実績稼働時間を掛けた結果を直接労務費や製造間接費として計上します。そして月末に確定する実際発生額との差額を、当月製造原価分(直接労務費と製造間接費)と月末在庫にマニュアルで按分する必要があります。

このようにリアルタイムに在庫と会計が連動する速報性を重視する原価計算方法は本来は実績原価計算と呼ばれるものですが、運用の現場では標準原価を採用していると言われることが多いです。

一方で生産実績や投入実績の計上時に会計仕訳を発生させず、月初在庫と当月発生費用から月末在庫の差し引きで製造原価を算出する三分法を採用するシステムでは、総平均法で算出される変動費単価に、固定費の実際発生額をコストセンター別に集計し、実際直接作業時間または実際製造数量のコストセンター別集計値で割って実際賃率(または実際配賦率)を算出し、積み上げ計算を行います。

  • 1個あたり実際直接労務費=実際配賦率(実際賃率)x能率(実際工数)
  • 1個あたり実際製造間接費=実際配賦率

標準原価計算の場合、製品生産予定数をBOM展開することで材料所要量を算出し、マスタ値である材料単価を掛けることで製品の変動費単価を算出します。コストセンター別に集計された固定費予算を、BOM時間展開により算出された予定直接作業時間または予定製造数量のコストセンター別集計値で割ることで標準賃率(または標準配賦率)を計算します。

  • 1個あたり標準直接労務費=標準配賦率(標準賃率)x能率(標準工数)
  • 1個あたり標準製造間接費=標準配賦率

製品の費目別原価の算出方法

製品は第一工程、第二工程、第三工程という3つの製造工程を経て生産されます。これらの製造原価が、原価計算方法ごとにどのように原価費目別に積み上げられるかを解説します。

継続記録法のシステムでは、リアルタイムに原価計算を行う実績原価計算が行われます。一方、三分法のシステムでは会計月締処理の終了後にバッチで実行される実際原価計算と、翌期の製品生産予定と固定費予算を元に、管理会計の一環として実行される標準原価計算が想定されています。

原価費目 計算方法 計算手順 内訳
直接労務費 継続記録法
BOMの品目別賃率x実績工数
三分法(実際・標準)
会計仕訳金額・予算金額を工程直課に配賦計算
実際
工程別に集計された直接労務費を実際直接作業時間で割ることで賃率を算出。
標準
1.製品生産予定からBOM展開で生産予定数を算出し、能率をかけて予定直接作業時間を算出。
2.工程別に集計された直接労務費予算を予定直接作業時間で割ることで賃率を算出。
第三工程直接労務費
第二工程直接労務費
第一工程直接労務費
製造間接費 継続記録法
BOMの品目別配賦率x実績工数
三分法(実際・標準)
会計仕訳金額・予算金額をコストセンターに一次配賦後、コストセンターから配賦計算
実際
1.実際直接作業時間をコストセンター別に集計した合計値を一次配賦比率とする。
2.コストセンターの製造間接費を直接作業時間または製造数量で割ることで配賦率を計算。
標準
1.製品生産予定からBOM展開で生産予定数を算出し、能率をかけて予定直接作業時間を算出。
2.予定直接作業時間をコストセンター別に集計した合計値を一次配賦比率とする。
3.コストセンターの製造間接費予算を予定直接作業時間または予定製造数量で割ることで配賦率を計算。
第三工程製造間接費
第二工程製造間接費
第一工程製造間接費
減価償却費 継続記録法
BOMの品目別配賦率x実績稼働時間
三分法(実際・標準)
会計仕訳金額・予算金額をライン直課に配賦計算
実際
ライン別に集計された製造間接費を実際機械稼働時間で割ることで配賦率を算出。
標準
1.製品生産予定からBOM展開で生産予定数を算出し、能率をかけて予定直接作業時間を算出。
2.ライン別に集計された製造間接費を予定稼働時間で割ることで配賦率を算出。
第三工程機械減価償却費
第二工程機械原価償却費
第一工程機械減価償却費
直接材料費 継続記録法
移動平均法で計算される最新の材料単価x投入実績
三分法(実際・標準)
月末に算出する総平均単価またはBOM展開で算出される製品あたり使用数に標準材料単価を掛けて算出
実際
所要量は投入実績と生産実績の親子関係から取得される。
標準
所要量はBOMの親子関係の中での子必要量から取得される。
第一工程直接材料費

一次配賦とは、間接部門の固定費やライン共通費を、直接作業時間や人員数などで、部門やラインなどのコストセンターに按分することです。これにより、コストセンターに集計された固定費を、直接作業時間や製造数量で割ることで配賦率(賃率)が算出されます。

具体的には、配賦率とは1分あたりの直接労務費または製品1個あたりの製造間接費や減価償却費を指します。

在庫受払に関する仕訳

原価管理システムは、管理会計と財務会計の両方に利用できます。特に「業務システムによる会計仕訳生成」では、売上原価(COGS)の算出仕訳を決算整理仕訳として行い、月初残高、月末残高、当月仕入をCOGS勘定に手動で振替える三分法を前提としています。

一方で、「原価管理システムを財務会計として使用する」場合は、棚卸資産の受払仕訳を生成し、売上原価算出までのプロセスに必要な仕訳をすべて会計システムにインターフェースします。これにより、材料入荷、材料消費、製品完成、製品販売、売上原価化といった一連の受払プロセスの仕訳を順次生成し、三分法のために月初残と月末残を振替える必要がなくなります。

在庫受払に関する仕訳

材料購入

材料購入の実績金額は、原価計算結果の受払表から取得できますが、通常は会計システムで管理されています。

  • (借) RAW MATERIAL    (貸) ACCOUNTS PAYABLE (R) - IDR

材料消費

材料消費は、原価計算結果の受払表に基づく材料投入実績金額の合計です。

  • (借) MATERIAL COST (MF)    (貸) RAW MATERIAL

製品出来高

購入した主原料費、直接労務費、製造間接費の合計が当月の製造費用合計となり、これを製品に振替えます(仕掛品がないと仮定)。

  • (借) FINISHED GOODS    (貸) Material Cost (MF) - Offset
  •                (貸) Labor Cost (MF) - Offset
  •                (貸) FOH (MF) - Offset

売上

売上実績金額は、原価計算結果の受払表から取得可能ですが、通常は会計システムで管理されています。

  • (借) ACCOUNT RECEIVABLE - IDR    (貸) SALES

売上原価

売上原価は、原価計算結果の売上照会における総原価金額です。

  • (借) COGS from F/G    (貸) F/G

月末の調整仕訳

他勘定振替仕訳

  1. 製造原価の控除(製造原価間の振替)

    製造工程で発生する仕損を製造原価から控除し、他勘定振替を通して仕損費に振替えます。これは製造原価の中で振替を行っています。製造原価=月初仕掛+当月製造費用-(他勘定+月末仕掛)

    • (借) Loss due to spoiled work 2    (貸)Transfer to other account 2
  2. 売上原価の控除

    製造原価化した後の製品の仕損は他勘定振替を通して販管費に振替えて売上原価から控除します。売上原価=月初製品+当月製造原価-(他勘定+月末製品)

    • (借) Stock losses and shrinkage 2    (貸)Transfer to other account 2

直接労務費と製造間接費の部門間配賦振替仕訳

会計システムから原価管理システムへインターフェイスされた直接労務費と製造間接費は、原価管理システム側で部門間配賦された後、会計システム側で部門別損益を見るために部門間配賦振替仕訳をインターフェイスします。

  • (借) Direct labor-Press Dept 5    (貸)Direct labor 1
  • (借) Direct labor-Assy Dept 5    (貸)Direct labor 1
  • (借) FOH-Press 4    (貸)FOH 4
  • (借) FOH-Assy 3    (貸)FOH 3

よくある質問|原価計算方法の違い

生産管理が採用する計算方式の選び方です。

個別原価と総合原価の違いは?

個別は案件単位、総合は期間・工程単位で集計します。受注生産と見込み生産で基本の向きが分かれます。

累加法は何を積み上げますか?

前工程費に自工程費を加えて、工程を進むごとに製造原価を積み上げます。

方式選定で失敗しやすい点は?

現場のロット・製番の実態と合わない方式を選ぶと、実績入力と原価評価が噛み合いません。