インドネシア政治・経済・社会

SNSを通じた情報戦が重要なインドネシアの大統領選挙【ジョコウィ現大統領がプラボウォ氏を抑え優勢】

2019/04/17

2019年インドネシア総選挙の開票状況

正副大統領とにDPR-RI(国会)、DPD(地方代表議会)、DPRD I(州議会)、DPRD II(県議会)の5つの議員を決める選挙です。タバコと同じように汚職も悪いことだと判っていても止められないので、クリーンな政治のためには世代交代が必須だと言われます。

インドネシアの政治・経済・社会まとめ
インドネシアの政治・経済・社会まとめ

日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しており、ビジネスという観点から押さえておくべき政治・経済・社会について記事を書いています。

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ジョコウィ現大統領2期目突入の可能性高まる

本日4月17日(水)の大統領選挙で、調査会社(Libang Kompas, Indo Barometer, LSI Denny JA, Median, Kedai Kopi)のクイックカウントによると10ポイントほどの差をつけてジョコウィ現大統領が優勢、DPR-RI(国民評議会)も与党第一党のPDI-Pが優勢の状況です。

直前でのMRT正式開通、選挙戦終盤の公開討論会でのジョコウィ氏の優勢、今回はジョコウィ大統領が終始押し気味に選挙戦を進め、プラボウォ氏は5年前の一騎打ちで6ポイント差まで詰め寄った終盤のまくりがまだ見られていません。

2014年10月
ジョコウィ新大統領パレードを控えたHI広場前

ジョコウィ祭りのためHI前歩道橋渡れず。。。 pic.twitter.com/Y16Gcxm7y8

5年前の一騎打ちでは、ジョコウィ氏の持つ「私利私欲のない普通のおじさん」のイメージと「その実強力なリーダーシップを発揮する実務家」というギャップにキュンときた一般大衆が一種の集団催眠に陥ったことによる勝利だったと思います。

大統領選挙で考えたギャップにハマるということ
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ギャップにキュンとするというのは人間の本能みたいなもので、ジョコウィの私利私欲のない素朴なおじさん像と、その実強力なリーダーシップを発揮する実務派という内面が、一見普通の人だが実はスゴイというギャップ好きのインドネシア人に大ウケして、大衆は一種の集団催眠状態にあるようです。

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そして今回は催眠の解けたインドネシアの有権者の支持を得るために、前回の投票結果を踏まえて、双方の副大統領候補は非常に戦略的に選ばれました。

ジョコウィ氏側の副大統領候補は、インドネシア最大のイスラム組織ナフダトゥル・ウラマー(NU Nahdlatul Ulama)の元議長マルフ氏で、これは5年前の大統領選挙で予想に反して僅差の接戦になった最大の原因である、イスラム主流派の影響力が強い地域、有権者の78%が住むジャワ島とスマトラ島で票を伸ばすことが目的です。

一方のプラボウォ氏はいくら軍出身のコワモテとはいえ、今年で御歳67歳になるわけで、女性や若年層の支持を得るためには元ジャカルタ州副知事で『イケメンの若い事業家』であるサンディアガ・ウノ氏の爽やかイメージが必要で、投票前のニュースを見るとプラボウォ氏の支持層は狙いどおり若年層に集中しました。

1998年ジャカルタ暴動当時に子供だった20代~30代のインドネシア人有権者にとっては、プラボウォ氏の昔のダークサイドの印象、スハルト大統領の娘シティと結婚し、陸軍特殊部隊コパスス(Komando Pasukan Khusus=Kopassus)のトップとして、スハルト政権に批判的なイスラム指導者(Kyai キアイ)の連続失踪事件や、暴動時の略奪の煽動に関与した疑惑などのマイナスイメージよりも、排外的保護主義でナショナリズム色が強いとはいえ強力な指導者という面に惹かれるのだと思います。

選挙期間中に3回行われた討論では、ジョコウィ氏は5年間の実績を強調し、プラボウォ氏は力強さと情に訴える戦略をとりましたが、民主的な直接選挙が始まって20年ほど経った今回、有権者はインドネシアの今後5年間のリーダとしてふさわしい人物が誰なのかを冷静に考えて投票を行っているように感じます。

インドネシア在住日本人の9割9分多くは、表立って口に出さずとも心の中でジョコウィ現大統領の再選を願っていたと推測されますが、その理由はプラボウォ氏が大統領になった場合の過剰な国内企業優遇政策による日系企業の投資環境の制限など、ビジネス環境の悪影響を心配してのものでした。

正式な選挙結果(リアルカウントに基づく)は来月に判明するとのことですが、仮にこれから5年間、またジョコウィ政権が続く場合には、懸案事項として考えられるのは、SBY大統領の2期目に見られた政権周辺人物の汚職に引きずられる形での政権のレームダック化や、ジョコウィ政権1期目で見られた労働組合への忖度による最低賃金の暴騰、そして特定宗教組織への過度な配慮による人権問題への対応不足などです。

インドネシア人の選挙に対する関心の高さ

今回大統領選挙が注目されますが、同日に国会DPR(Dewan Perwakilan Rakyat)議員選挙、地方代表議会DPRD(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah)議員選挙、州議会DPRD kelas I(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah Provinsi)議員選挙、県市議会DPRD kelas II(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah kabupaten/kota)議員選挙があり、日本で言えば首相指名選挙と衆参ダブル選挙と県会議員選挙、市会議員選挙を一気にやってしまったようなもので、インドネシアで民主的な選挙が行われるようになった1999年以降で初めてのことでした。

今日は大統領と副大統領以外にDPR-RI(国会)、DPD(地方代表議会)、DPRD I(州議会)、DPRD II(県議会)の5種類もあり多すぎて訳わかめ意味とろろなので、うちのスタッフの選択の基準は年齢40代までのイケメン、美人に限るとのこと。
来年4月17日のインドネシアの総選挙Pemilu Pilpres Pileg Indonesia 2019では、大統領とDPRとDPDとDPRDの議員全部決めるということは、日本で言えば首相指名選挙と衆参両院ダブル選挙と地方議会選挙を同日にやるようなもの、だから今から盛り上がるのね。

1999年に政党活動が自由化され、多くの政党が乱立する中で行われた総選挙は、インドネシア全土での一大お祭り騒ぎとなり、オフィスでもタクシーの車内でも夜のブロックMでも、話題はいつも『どの政党押し』かと言っても過言でありませんでした。

DPR RI(国民代表議会)は議員数560人から成る立法府であり、日本の衆議院に近いもので、DPD(地方代表議会)は35州のDPRDから各4名ずつ選出された議員数132名からなる日本の参議院に似て非なるものであり、DPRD(地方国民代表議会) はkelas I(州)とkelas II(県)ごとの地方議会であり日本の地方議会みたいなものです。

インドネシアは上から下まで直接選挙であるため、国民の政治に対する関心は非常に強く、しかも平日の今日4月17日(水)を選挙のため公休日にしてまで、国民に選挙に行かせようとする努力は日本も見習うところもありますが、これだけ多くの人物の中からマニフェストに基づいて選ぶことは難しいため、芸能人やスポーツ選手など知名度の高い人が圧倒的に優位になります。

タバコは体に悪いと判っていても止められないのと同じように、汚職も悪いことだと判っていても止められない、だから政治家は汚職の甘い蜜を知らない若い人に世代交代することでしかインドネシアから汚職はなくならないんだ、というように、国民が政治家に最も期待するのはクリーンな政治であるようです。

大統領選挙関連でソーシャルメディア活動家を逮捕

先日5月26日、プラボウォ氏陣営の選挙対策委員会(Badan Pemenangan Nasional=BPN)のIT支援コーディネーター(Koordinator Relawan IT)で、ソーシャルメディア活動家(Pegiat media sosial)でもあるムストファ・ナフラワルダヤ氏が、Twitterでフェイクニュース(Hoaks 英語のHoax)を流布したとして情報・電子商取引法違反などの容疑で逮捕されました。

西ジャカルタのクボン ジュルックのモスク内で15歳の少年が治安部隊による殴打で亡くなったというツイートをしましたが、実際に動画に写っていた治安部隊に殴打されている人物は少年ではなく選挙監視庁(Bawaslu=Badan Pengawas Pemilihan Umum)前の暴徒の一人であり、事件現場もモスク内横の駐車場だったというもので、治安部隊(Aparat Keamanan)を貶め、抗議デモに対する国民の同情を買おうという情報戦の一環であると言われています。

この人は昨年10月にスカルノハッタ空港を離陸してジャワ海に墜落したLion Air 610が「ハリム空港(Halim Perdana Kusuma)に無事着陸した」というフェイクニュースを流したとしてサイバー犯罪捜査庁(Direktorat Tindak Pidana Siber Badan Reserse Krimina=Bareskrim)に取調べを受けていた人で今回もさもありなんという感じですが、前回2014年大統領選挙に比べても情報戦、というよりフェイクニュースによる足の引っ張り合いが多かったと思います。

開票作業中に550人以上のスタッフが亡くなったことに対する陰謀説

また今回の開票では550人以上の投票運営委員会KPPS(Kelompok Penyelenggara Pemungutan Suara)の開票スタッフが亡くなっていますが、これについてもさまざまな憶測、陰謀説が流れました。

亡くなった開票スタッフの死因は心不全、脳卒中、呼吸不全、髄膜炎、敗血症などで、死者のうちどれくらいに病歴があったのかは不明ですが、選挙スタッフの中で疲労やストレスを訴えて入院した人のうち、ほとんどは24時間以上続けて働いていたと言われており、開票作業の中で過労死や病死多く出てしまったというのが真実だと思います。

今回の選挙では正副大統領以外にも、国会DPR(Dewan Perwakilan Rakyat)議員選挙、地方代表議会DPRD(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah)議員選挙、州議会DPRD kelas I(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah Provinsi)議員選挙、県市議会DPRD kelas II(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah kabupaten/kota)議員選挙があり、日本で言えば首相指名選挙と衆参ダブル選挙と県会議員選挙、市会議員選挙を同時に選ぶような史上最大規模の選挙を、全国約81万カ所の投票所で9人ずつ、計約730万人の投票運営委員会で行ったため、高い気温の中で時間に追われながらの開票作業で過酷を極めた中での殉職であり、根拠もなく陰謀論を唱えることは亡くなった方に対しての冒涜であると思います。

大統領選挙にからむフェイクニュース

インドネシアのSNS上で飛び交ったフェイクニュースでは、ジョコウィ氏陣営側を貶める内容のものが多いようですが、プラボウォ氏が大統領に当選したらインドネシアがイスラム急進化しカリフ制国家(イスラム法によりイスラム共同体から選任されたカリフ=元首の下、支配に服する全ての領域が単一の法によって治められる)になるといったデマも流れました。

いずれにせよ今回の大統領選挙を機会にインドネシアでHoaks(英語のHoax)という言葉がすっかり定着してしまいました。

  • Metro TVのクリックカウント(民間機関による選挙速報)の計算でプラボウォ-サンディ組が勝利している。

これは技術的なミスで生じた画面上のグラフの間違いがフェイクとして流布したもののようですが、Metro TVが報じたクイックカウント結果ではジョコウィ-マルフ組優勢であるにもかかわらず、グラフではプラボウォ-サンディ組優勢のように表示されていました。

ちなみにMetro TVのオーナーであるスリャ パロ氏は最大のジョコウィ氏支持者であるのですが、このプラボウォ-サンディ組優勢のグラフを映した画面がSNSで拡散されました。

  • ブカシ県にある6,000箇所のTPS(投票所)ではプラボウォ-サンディ組が勝利している。

Twitter上でプラボウォ-サンディ組がブカシ県の6,000箇所以上の投票所で70%以上の得票を得て地すべり的勝利を収めた、というデマが拡散されましたが、ブカシ市選挙管理委員会の公式な報告によると、ブカシの投票所の総数は6,000ではなく3,030です。

  • スラバヤのKalimasの投票用紙は候補者1番(Paslon=Balon=Bakal Calon ジョコウィ-マルフ組)に既に穴が空けられている(Tercoblos)。

1分近くの動画の中で投票運営委員会KPPS(Kelompok Penyelenggara Pemungutan Suara)の役人が語った内容ですが、実際スラバヤの投票所に配布された投票用紙の5枚ほどが破損しており、監督官によって適切に対処されました。

  • 副大統領候補サンディアガウノ氏は宣言に同意しなかったためプラボウォ氏から追放された。

4月17日の投票後のプラボウォ候補による勝利宣言時にサンディアガ副大統領候補が同席しなかったことに対して数々の憶測が飛びました。勝利宣言に反対したので追放された、5年後の大統領選挙を見据えてクリーンなイメージを保つためにわざと欠席したなどですが、実際には体調不良のためだったと発表されています。

  • クイックカウント(民間機関による選挙速報)は選挙詐欺の一種です。

民間調査会社(Libang Kompas, Indo Barometer, LSI Denny JA, Median, Kedai Kopi)によるクイックカウント(出口調査に基づく選挙速報)が意図的に特定の候補をカウントし、カウントの対象となった投票所も意図的に選択された場所のみ使用されたというもので、これが詐欺にあたるという主張です。

もちろん実際の開票では総選挙委員会(KPU)は、インドネシアのすべての投票所から集められた投票をカウントしますが、 アリフ ブディマンKPU委員長はクイックカウントの結果は選挙の公式結果ではなく、民間調査機関は、提起された数値から採取されたサンプルの割合を明確に発表する必要があると述べました。

  • マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイでの海外在住者投票の投票所(TPS)出口調査結果ではプラボウォ-サンディアガ組が圧倒的が勝利。

実際の海外在外投票所の出口調査(Hasil Exit Poll TPS2 di Luar Negeri)ではジョコウィ-マルフ組が勝っているところも、プラボウォ-サンディアガ組が買っているところもあるようで、圧倒的勝利というのはフェイクだったようです。

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