インドネシアで受注請負形式の労働集約型も悪くない

インドネシアのビジネス環境

インドネシアで受注請負形式の労働集約型も悪くない【サービスの絶対的価値と相対的価値】


労働集約型と資本集約型の違い

労働集約型と聞くと、なんかエジプトのピラミッドで奴隷がピシッピシッっとムチでしばかれながら石を運ばされているイメージが浮かぶのですが、経済学の定義では売上の大半を人件費が占めるという意味です。モノ作りをしないので材料費がかからないが人手がかかるサービス業がこれです。

これに対して資本集約型というのは最初に思いっきり設備投資して時間をかけて回収していくやり方です。まず最初に思い浮かぶのは製造業ですが、テック系サイトで華々しく「○×億円資金調達成功!」と報道されるベンチャー企業のWEBサービスやスマホサービスも資本集約型です。

僕らのような業務システムの受注開発導入業者の仕事は間違いなく労働集約型のIT土方に分類されるのですが、すこし発展して一人あたりのサービスの知識や経験の付加価値を高めたり、仕組みを分析して理解してチートメニューを生み出してレバレッジを効かせたりすることにより、生産性を飛躍的に高める手法は知識集約型と言われます。時間あたり単価が強烈に高い総研系コンサルや外資系コンサルなんかがそうですが、ある意味稼いでいるアフィリエーターとかユーチューバーなんかもここに入るんじゃないかと思っています。

小さく起業する場合は資金繰りの問題で労働集約型になる

正直、インドネシアで小資本の外国人が起業して、いきなりGO-JEKみたいなスマホアプリやSaaSなどの自社サービスで大当たりを引き当てようとしても、ベンチャーキャピタルの強大な資金提供を受けたローカルユニコーン企業に対抗するのは難しいですよ。

初期投資が大きい分、どんどん数を売っていかないと損益分岐点に到達しないのが資本集約型のWEBサービスの特徴であり、仮に資金と技術力が十分あってその時代の需要には適合したイケてるサービスをリリースできたとしても、消費者の嗜好の変化や経済状況に合わせたサービスのアップグレードを怠ると、衰退するのはあっという間です。

モノと情報が溢れる環境では人間は飽きっぽくなるのであり、不特定多数の消費者向けB2Cビジネスは短命化する運命にあり、投資回収期間が短くなればなるほどハイリスクになります。

一方で小さく起業する人は、最初は少ない初期投資で売りが立ちやすく、今日明日の食い扶持を稼ぎやすい受注生産、受注開発型の労働集約型の形態を取ることになるわけですが、そうすると今度は「受託開発型は人月計算される以上、人を増やさないと発展の余地がないビジネスモデルなので、自社プロダクトを持って不特定多数をターゲットにスケールしていくよう転換しなよ」と言われる。

おっしゃるとおり一般的には「労働集約型は人を増やさないと売上は伸びないが、安易に労務費(固定費)を増やすと不況のときに解雇できないので大変だ」と言われます。ましてやインドネシアはご存知のとおり労働法(UU No 13 Tahun 2003)で雇用関係の終了(要は解雇)時の退職手当(uang pesangon)、勤続功労金(uang penghargaan masa kerja)、受け取るべき権利の損失補償金(uang penggantian hak yang seharusnya diterima)などなど、労働者の権利がガッチリ守られている国。

だからインドネシアで個人資本で小さく企業しようとすれば、労働集約型の案件ベースで仕事を請け負いながら、簡単には人は増やせない中で、少ない人員で効率よく身の丈以上にスケールするにはどうすればよいだろうかと考えるわけです。

サービスの相対的価値を上げて工数積み上げにレバレッジを効かせる

「○×億円資金調達」系の資本集約型は、新しい市場を創造するための圧倒的な技術力と独創的なアイデアがあって、その絶対的価値に将来性を感じたベンチャーキャピタルが、市場で先行者優位を取るために投資をすることで成立するのであって、選りすぐりの戦士達だけが立てる特別な舞台である一方で、成功するまで時間も金もかかり、失敗のリスクもロスのインパクトもでかいハイリスクハイリターンの世界です。

一方で労働集約型で小さく起業する場合は、経験と専門知識を駆使して既存の市場の中で自分の相対的価値を発揮できさえすれば、小さい初期投資でとりあえず毎月の固定費回収だけを考えていくことで生き残ることが可能で、まちがった判断をしても柔軟に修正が効くローリスクローリターンの世界です。

一般的に営業利益を売上で割った売上利益率(Sales Profit Ratio)が10%あれば上出来であり、15%以上なら超優良とも言われますが、受注型の労働集約型サービスでも市場で自社サービスの価値が高いと認知されれば、それ以上の売上利益率を出すことは実際に可能です。

そのためには工数積み上げ型の見積もりに加えて相対的価値というレバレッジを効かせること。絶対的価値を生み出すほどの才能はなくとも、例えばきつくて面倒くさい他人がやりたがらない仕事をするとか、ニッチな分野での専門技能を発揮させるとかして相対的価値を生み出すことは可能です。

前提として売上利益率の分子であるプロジェクトコスト(売上原価)はほぼ人件費のみで占められることが重要であり、オフィスの賃料はタダ同然の安いところにして、少ない人数で大きな金額のプロジェクトを回す必要があります。

インドネシアのビジネス環境は今後良くなるしかない。

2018年の世界銀行による「世界のビジネス環境ランキング」で、インドネシアは栄えある第73位を獲得しましたが、ライバルのタイが27位、シンガポールに至っては第2位ですから、インドネシアの投資環境がどの程度のものかが判ろうというものです。

幸いなことに投資環境については官民の努力によって時代とともに改善できるものですから、2億6千万人の巨大市場と2030年まで続く人口ボーナス(生産年齢人口15~64歳が従属人口0~14歳と65歳以上の2倍以上の状態)というメリットを考えると、今後インドネシアの投資環境は改善はするものの後退することはないという明るい未来が想像できます。
ジャカルタの渋滞現在のジャカルタ経済圏の生産性非効率の諸悪の根源は間違いなく渋滞です。20年以上前にタイのバンコクに旅行に行った時、乗ったバスが30分間で10mほどしか動かないほどの酷い渋滞に心折れて、そのまま下りて歩いてホテルまで帰ったことがあるのですが、現在はBTS(スカイトレイン)や地下鉄のMRT(メトロ)のおかげで随分状況が改善されました。ジャカルタMRTの地下道スディルマン、タムリン通りの下にこんな大穴が開いていると想像すると胸熱ですが、味噌煮込み状態の帰宅ラッシュの半分くらいの人々にMRTを利用してもらって、交通渋滞が分散化されれば、ジャカルタで働く人のストレス軽減にもなり、渋滞によるガソリンの浪費や大気汚染の解消、時間価値の創出などによる経済効果は絶大なものになると考えられます。

今年2019年4月17日は大統領選挙が控えており、日系企業のほとんどがジョコウィ大統領再選を願っていると推測されますが、仮に再選してもユドヨノ政権の2期目のように大統領周辺に汚職疑惑が上がりレームダック化するのではないかとも言われています。一方でプラボウォ大統領誕生となれば、アメリカのトランプ大統領のようなインドネシアファーストの掛け声の下に、外資規制がより厳しくなるんじゃないかと、どっちに転んでも政治的な側面からは悲観的な声が強い状況です。

受注開発型のビジネスは古代ローマ時代から存在する息の長いビジネス形態であり、ゴーイングコンサーンという継続企業の前提からすれば、インドネシアのビジネス環境が良くなろうと悪くなろうと、工数に相対的価値のレバレッジを効かせた労働集約型ビジネスも捨てたもんじゃないと考えます。





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