インドネシアでの不特定多数への広告と対面での販促活動

2017/03/05

ジャカルタの夜景

不特定多数への広告は、予算に比例して集客効果が上がりますが、サービスや商品の魅力を上手く伝える広告を掲載したとしても、到達率が低く対象とする顧客に見られていなければ、逆に費用対効果は下がります。

不特定多数への広告の到達率と反応率

日本からインドネシアに営業拠点、開発拠点を立ち上げるとき、なにはともあれ自社サイトを開設して、名刺やメールの署名フォームにURLを載せたり、FacebookやTwitterなどのSNSで販促記事に誘導したりするところから始めると思います。

そして会社設立や本人の就労ビザの手続きが一通り落ち着いた頃から、日系企業リストの上から順番に電話を掛けまくるテレアポをしたり、工業団地内の日本食レストランのカウンターに会社案内や商品のチラシを置いてもらうなど、普通は金をかけずして今すぐにできることをまずやります。

その上で日本語メディアであるじゃかるた新聞へのプレスリリース掲載や有料広告、JICAやハローインドネシアが発行する日系企業リストへのディレクトリ登録、Lifenesiaやplus 62(プラス62)などのフリーペーパーへの有料広告、NNA(News Net ASIA)などのメール配信型メディアのメール広告など、数ある有料広告のうち最も費用対効果の高い組み合わせを検討します。

このような不特定多数を対象とした営業活動は誰もが当然のようにやりますが、総じて広告費の予算額に比例して集客効果が上がりますが、サービスや商品の魅力を上手く伝える広告を掲載したとしても、広告を掲載した媒体が対象とする顧客に見られていなければ、逆に費用対効果は下がります。

チラシ反応率の指標としてよく挙げられるのがリフォームと住宅とスーパーの数字です。

  1. リフォームのチラシ:0.02%
  2. 住宅のチラシ:0.01%
  3. 食品スーパー:1%

サービス業態にもよりますが、じゃかるた新聞やフリーペーパーの有料広告の場合、在留日本人村という濃度の高い母集団の中ですら、サービスや商品に興味を持ってくれそうな潜在顧客が見てくれる確率は、0.1%(1,000回に1回)くらい、更にその中から具体的に引き合いが来る確立は更に10分の1くらいではないでしょうか?

とはいうものの開設したばかりの自社WEBサイトやSNSによるオンライン広告では、反応率以前の問題として集客力が圧倒的に不足しているため、既存有名メディアに有料で広告を掲載することで、お客の目に届くまでの到達率をお金で買い、反応率で広告費用を回収するということになります。

結局人からの紹介が一番コスパが高い

このように有料広告で高いお金を払って到達率を買ったとしても反応率は保障されていないため、広告からの引き合いが1件も来ない日が続くと、あせりが出てくると同時に「本当にこのメディアの広告、効果あるのかねー」と広告媒体に対して猜疑心が湧いてきます。

これはインドネシアに限った話ではないと思いますが「1,000件の不特定多数の広告よりも1件の友達の紹介」であり、お金払って効果が保障されていない広告を1,000件出すよりも、1件の友人知人の紹介なら相手も義理がある以上とりあえずは会って話は聞いてくれます。

よって友達からの紹介が一番効率良くコスパが高く、ジャカルタの昼の顔でも夜の顔でも、とにかく顔が広い人は自分のネットワークで潜在顧客を取ってくるし、ネットワークのない人は顔の広い人のネットワークを使って「お客さんを紹介してくれたらコミッション支払います」というビジネスが成立するわけです。

1,000件のテレアポで取れるかどうかわからない1件のアポを、知人の紹介だとあっさり取れるという厳然たる事実に対して若干の不条理を感じますが、このあたりに顔の見えない不特定多数の広告やオンライン広告の限界を感じるのは、2次元のバーチャル世界が広がるほど競合他社も増えると同時に、対象となる潜在顧客の情報収集の仕方に合わせた広告の打ち方が非常に難しく、どうしてもコスパが落ちるからです。

最後は必死さしかない

最近CIMB NIAGA銀行の担当のお姉さんが、現在年利5.5%の定期預金を、3年縛り7%の金融商品に移させるため、電話とWhatsAppでしつこいくらい連絡してきます。

いつもは電話の勧誘は有無を言わせず切るのに、たまたま会社で銀行の金融商品の話をした後だったから、つい相手の話に乗ってしまい、それ以降こっちの仕事に支障がでるくらいのしつこいアプローチが来ています。

  • あなたのオフィスにいつでも行くから一度会って話をしましょうYO.
    あなたの担当になったからどうしても直接会って挨拶がしたいのYO.
    今週ダメならいつなら時間あるのYO?

あまりのしつこさに正直ゲンナリしていますが、その一方で「そこまで言うのなら話くらい聞いてやろうか」という気持ちに傾く一歩手前くらいにいるのも事実です。

今回CIMB NIAGAという銀行名の安心感と、お姉さんの声がかわいいという事情も影響しているとはいえ、人間何度も熱くお願いされると

  • わかった、わかった、話聞いてやるYO

となるのは、アプローチされる側も日々客商売の大変さを身をもって十分分かっているからだと思います。

金融系の営業よりもさらに激しいのがインドネシア国内市場はもはや戦国時代にあると言っても過言ではないSaaSスタートアップの営業で、今回システム評価のために会計クラウドサービスJurnalに試用登録したところ、複数の電話番号からの営業電話攻勢を受けて参りました。

インドネシアSaaS営業には直販型と代理店型があって、前者は完全の押しの営業で「いま会議中だから」「いま運転中だから」と断っても「ちょっとだけ時間頂戴」と言われて絶対に電話を切らせてくれません。後者は何度もいろんな資料を送ってくるものの、基本は客側でじっくり検討させる引きの営業です。

Jurnalはインドネシアの急成長SaaS企業であるMekariグループが提供するクラウドERP(会計)サービスであり、インドネシア国内ではクラウド税務サービスKlikpajakやクラウド人事労務管理サービスTalentaなどをM&Aしながら対象業務を急拡大してきましたが、そこに日本のSaaS企業であるマネーフォワードが2017年の東証プライム上場以降、非連続的成長を目的とした海外M&A戦略の一環としてMekariグループへ出資を行っています。

女子力はあなどれない

余談ですが、残念ながら彼女はWhatsAppのプロフィール写真に彼氏とのツーショットを設定するという痛恨のミスを犯していました。

なるほど、電話口の男心をくすぐるキュートな声どおりに相当な美人でしたが、横に育ちの良さそうな彼氏が一緒に写っている写真を見た瞬間、完全に会う気が失せましたw。

おそらく彼女は入行間もないため男性客の心理が分かっていないか、僕自身がよっぽどひねくれ者かのどちらかと推察されますが、独身男性だろうと既婚者だろうと、仮に一切の下心がないと言えども、動物行動学的見地から見てもオスの生態はそういうものなので仕方がないです(偏見)。

逆に言うと、駐在員は基本おじさんばかりのインドネシアの日系企業では、男の営業からのアプローチに対しては「忙しいのにまた何かの勧誘が来たよ」とマイナスからスタートするにもかかわらず、女性の営業の場合は最悪でもゼロからスタートできる点で、非常に女性が活躍できる可能性がある思います。

身近な話では、最近開発チーム内の男性メンバーから紅一点プログラマー女子に対して「彼女は向上心がなく戦力として十分じゃない」とかいう不満が噴出してチーム内に不穏な空気が流れているのですが、客先でのハードなミーティング時におじさんであるお客さんからの攻撃を和らげるのにどれだけ彼女が貢献してきたかを、残念ながら野郎達には理解できません。

インドネシアでのおじさん相手の客商売では、女性スタッフはその場に居るだけで女子力で大きな貢献をしているわけであり、そもそも男と女ではスタートラインが違う、というのは否定できない事実だと思います