インドネシアで働く・ビジネスする人のための税金の知識|会計・システム・実務対応まで

2024/04/06

スカルノ大統領

「インドネシアの税金」と聞いて思い浮かぶのは、2023年10月から日本でも始まったインボイス制度とそれに添付される付加価値税PPNの詳細を記載したFaktur Pajak(Tax Invoice)、従業員採用時にNETの金額で契約し所得税分を税額控除として会社が負担するグロスアップ方式などです。

1945年8月にインドネシアを独立国家に導いだスカルノ初代大統領時代は、建国五原則であるパンチャシラの下で建国イデオロギーを確立しましたが、当時はまだ国家歳入を賄うだけの税収がありませんでした。

1967年から30年以上に渡って独裁政権を敷いたスハルト大統領はインドネシアを「ASEANの盟主」と呼ばれるほど経済発展させましたが、その財源は外国援助や海外借款が主であり、本格的に税収を財源として国家運営することを目指したのはメガワティ大統領時代が2003年に創設した汚職撲滅委員会KPK(Komisi Pemberantasan Korupsi)の活動が本格的になった頃ではないでしょうか。

かつてシンガポールが行政面で汚職の蔓延をクリーンにすべく、初代首相リークアンユーが公務員給与を3倍に引き上げると同時に、汚職に対して厳罰を設けたのと同じように、インドネシアもスハルト政権時代に醸成されたKKN(Korupsi汚職・Kolusi談合・Nepotisme縁故主義)という負の遺産をクリーンにするために、税務署職員の給与を上げ、KPKの厳しい監視の下で企業との裏交渉がやりにくい環境づくりをしてきました。

残念なことに2019年10月の法改正でKPKは権限を大幅に縮小され、政治的圧力もあり弱体化が指摘されています。

当ブログでは私と同じようにインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、日常生活やビジネスの現場で出会うさまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるような税金についての記事を書いています。

インドネシア税法の基本的知識

業務システム導入時に役に立つ税法の知識

インドネシアでの会計システム導入時には多少の税務の知識が必要になります。

  • 給与計算システムに関連するのが所得税PPh21
  • インボイス発行または受領に関係してくるのが付加価値税PPN(VAT)
  • 会計システムの債務A/P決済に関係してくるのが国内サービスに対する源泉所得税PPh23
  • 関税Bea MasukやPPh22は会計システムの振替伝票からマニュアル仕訳
  • その他はシステムになじみ薄のPPh25, PPh24, PPh4-2, PPh26, PPh29

国内サービス販売にかかる源泉税PPh23が月次の税務報告SPT(Surat Pemberitahuan)時にまとめてポンの総合課税(Non-Final Tax)であるのに対し、銀行利子などPPh4-2は取引単位で課せられる源泉分離課税(Final Tax)です。

付加価値税PPNの納税に必須のタックスインボイス(Faktur Pajak)は、2019年から2024年まではデスクトップアプリケーションのe-Fakturシステムから発行していましたが、2025年以降はオンライン税務管理システムcoretaxから発行していますので、生産管理システムや会計システムでフォームのレイアウト調整する必要はなくなり、データ連携のための取り込みフォーマットがCSV形式からXML形式に変更されています。

インドネシアで付加価値税PPNと所得税PPhを負担する主体

PPN(付加価値税)は末端消費者が購入時に掛かった11%(IN)を控除できない(消費者は販売をしないから)という意味で実質消費税と同じで、サプライチェーンの中の事業者が利益(付加価値)に対して負担(売値に乗せる消費税と仕入時に払った消費税の差額=仕入税額控除)する税という意味でも同じなので、付加価値税の日本版が消費税と言えるかもしれません。

ちなみに2025年1月からPPNは12%となりましたが、12%そのまま適用対象となるのは一部高級品・ぜいたく品のみであり、通常取引では取引に基づく課税金額DPP(Dasar Pengenaan Pajak)に対して11/12を掛けることで、PPN12%を適用するための課税金額DPP nilai lainを算出し、これに対して12%の税率を適用するため、実質税額は11%と同じになります。

事業者の場合、事業年度内に売上時の11%(OUT)を購入時の11%(IN)で控除するので、売上がないと払い負けすることになります。例えば100万円の売上時に111万円請求し11万円納税すべきところ、60万円分の仕入時に66.6万円請求され税金6.6万円負担してあげているので、差額の4.4万円だけ払えばよいという考え方です。

消費者の場合、60万円の商品を購入するとき66.6万円支払って6.6万円のPPN(IN)を負担してあげているのに、販売の機会がないので11%分を相手から徴収できず、マイナス6.6万円まるまる払い負け損するという意味で、PPNはサプライチェーンの末端にある消費者が実質負担していると言えます。

言い換えれば事業者が仕入金額に付加価値(利益)40万円を載せて売上100万円を計上する際の税金は、付加価値40万円に対する11%分4.4万円だけであり、仕入時に負担した6.6万円は40万円の利益を上げるための必要経費だったとも考えられる一方で、消費者は同じ金額の経費6.6万円を払ったにもかかわらず、何も利益を上げられないという意味で払い損と言えます。

Wisma BNI46

インドネシアのサプライチェーンの中で付加価値税PPNと所得税PPhを負担する主体

サプライチェーンの中で前払された付加価値税VATは、販売活動によってVAT11%を請求しない末端の消費者が負担していることになり、消費者から税務署への支払いを各事業者が代行している結果になります。

続きを見る

中小個人事業主向けの分離課税PPh Finalとしての外形標準課税

法人税PPh25 bulananは課税所得に対して22%かかりますが、年度末の当期課税所得(13月調整後の税引前利益)が翌期の3月に確定してから一括納税というのは認められず、前年度課税所得の22%の12等分を翌月15日までに前払いします。

前年度課税所得は、前年度収入から前年度の前払PPh22(輸入時に売上計上時の税金を前払い)と前年度に源泉されたPPh23(国内サービス販売時にお客から回収した源泉徴収票に基づく)とPPh24(日本からの収入のうち日本で源泉された源泉徴収票に基づく)を控除したものであり、その22%を12等分を毎月の予定納付額として前払いし、年度末に確定した当期課税所得を元に算出した確定法人税額から12ヶ月分の累積額と当期のPPh22、PPh23、PPh24を控除し、予定納付額の合計金額との差額をPPh29として納税します。

ただし年間売上4.8Milyar以下の中小零細事業主UMKMは、会社設立後3年間は売上の0.5%を納税するPPh4-2(PP23 Tahun2018)が適用できます 。

ジャカルタの夜景

インドネシアの中小個人事業主に対する外形標準課税制度

年間売上高が4.8Miliyar未満の中小企業が選択することができる売上高に対する1%の分離課税制度(PP46)が改定され(PP23)、税率が0.5%と引き下げられる一方で、適用期間は3年間に限定されます。利益率が4%以下の場合には通常の法人所得税率が得です。

続きを見る

グロスアップ方式によるインドネシアの個人所得税PPh21の計算

所得税PPhの種類

総合課税(Non-Final)はPPh23(サービス源泉税2%)、PPh26(出張者給料、ロイヤリティ20%)、PPh22(輸入時に売上計上時の税金前払)、PPh25(法人税 22%)は年度末にPPh29で調整し、分離課税(Final)はPPh4-2(賃貸料10% 銀行利子20% PP23 0.5%)などが該当します。

  • PPh23:国内サービス提供者側の税金2%を決済時に源泉(他社の税額)した上で翌月10日までに納税する義務があり、サービス提供者側に源泉徴収票(Bukti potong)をe-Bupotから発行する。
  • PPh4-2:国内サービスのうちオフィスの賃貸料の場合、支払うとき10%を源泉し翌月納税。銀行利子は口座に入金されるときに銀行側に20%源泉される。
  • PPh23がまとめてポンの総合課税(Non-Final)であるのに対し、PPh4-2は取引単位で課せられる源泉分離課税(Final)になる。
  • PPh26:海外サービス(本社支援、ロイヤリティ・ライセンス購入)料に対する源泉はPPh26で、支払い時に源泉の上自国で二重課税されないよう、日本の管轄税務署から承認を受けた居住者証明書(DGT)をインドネシア側の税務署に提出し承認を受ける必要がある。
  • PPh24(海外での所得に対する所得税=駐在員の日本の給料)
    • インドネシアで年間183日以上滞在する居住者はインドネシアで全世界所得に対して納税義務が発生するが(183日ルール)、日本の収入に対しては2重課税を防ぐために日本で源泉されたときの源泉徴収票でもってインドネシアで控除を受ける。
    • リタイアメントビザと呼ばれる319ビザでインドネシアに居住する場合は日本での年金収入などがあることを前提としているので、このPPh24の控除手続きが必要

個人所得税(国内)であるPPh21

課税所得(所得 - 非課税所得)ごとの個人所得税税率は以下のとおりで、年間所得が非課税所得限度額PTKP(Penghasilan Tidak Kena Pajak)である54juta以下であればPPh21は免除されます。

  1. 50jutaまで: 5%
  2. 50jutaから250jutaまでの間: 15%
  3. 250jutaから500jutaまでの間: 25%
  4. 500juta以上: 30%

個人の所得税PPh21は日本と同じく「超えた分のみ税率が上がる」超過累進課税で、基本給(Gaji Pokok)と手当(Tunjangan)を足した金額(Gross)から各種控除(Potongan/Subsidi pajak)を差し引いた金額が課税所得となります。

従業員の給料を決める際に、Netなら所得税は会社負担、Grossなら個人負担、Gross-upなら個人負担だが会社が手当でカバーするという意味です。Gross-upではPPh21の差し引き後をぴったりNet給料額にするよう所得税手当(Tunjangan PPh21)を足してGross給料を決めるます。

毎年3月に前年度の所得税申告Pelaporan SPT Tahunanをする必要がありますが、Bukti potong pajak上でUpah Minimum Propinsi (UMP)を下回っていると銀行で住宅ローンKPA(Kredit Pemilikan Rumah)が組めないリスクがあります。

税務申告用の源泉徴収証明書A1フォーム

以前は、1年分の個人所得税源泉について、会社は1721 A1(民間企業従業員用フォーム 通称A1)に必要事項記入の上、翌年3月末までに最寄の税務署(KPP=Kantor Pelayanan Pajak)にまとめて申告を行う義務があり、税務署(KPP)でEFINを申請して、郵送されてきたEFINとNPWPにてDJP Online利用のパスワードを生成して、はじめてE-Filingで所得税申告が利用できるようになりましたが、2026年から税務申告SPTはDJP Onlineからcoretaxに移行されます。

NPWPを夫婦で分けるか一つにまとめるかの違い

NPWPを夫婦で分ける場合は夫と妻の収入の合計が課税所得として累進課税計算されますが、NPWPを1つにまとめる場合は夫の収入のみがPPh21の累進課税計算対象となり、妻の所得は年末のSPT-Tahunanで1770Sフォームで申告する分離課税のみになります。

財産を夫婦で別管理することを前提としている場合は、NPWPも別々に取得する必要がありますが、そうでない場合はNPWPを分けることは税務署の管理を煩わしくし、所得税の計算上も不利になります。

Wisma BNI 46

グロスアップ(GROSS-UP)方式によるインドネシアの個人所得税PPh21の計算

インドネシアは日本と同じく超過累進課税制度であり、多くの会社は雇用契約時の給料は手取り金額で締結し、個人所得税分は税額控除として会社が負担するグロスアップ方式を採用していますので、所得税の計算に当たっては控除額は収入とみなして総収入で計算します。

続きを見る

インドネシア入国時の免税限度額・関税・税金計算方法

インドネシア国外で買い物して国内に持ち込む物品に対する免税限度額$500であり、「免税限度額を超える額+関税」に対してPPNとPPh22がかかります。

関税(Bea Masuk)、PPN、PPh22の送金後、フォワーダーに輸入申告書PIB (Pemberitahuan Impor Barang)を作成してもらい、輸入申告・審査・許可という手続が開始し、最終的に物品搬出承認書SPPB (Surat Persetujuan Pengeluaran Barang)が発行されて荷物の搬出が可能になります。

関税は4区分に分けられ多くは5%~20%の範囲に入ります。

  1. 最必需品:0~10%
  2. 必需品:10~40%
  3. 一般品:50~70%
  4. ぜいたく品:最高:200%

将来の販売時の法人税の前払い源泉税がPPh22であり、計算上はBea Masuk(事業者負担)→PPh22(製造業者負担)→PPN(消費者負担)の順番に課税されます。

■輸入時

  • (借)Freight charge       (貸)A/P Forwarder
  • (借)関税Bea Masuk(5%~20%)
  • (借)Prepaid PPh22(2.5%)⇒7.5%に値上げ
  • (借)PPN(11%)

PPh23は決済時に相手の所得税を源泉(前受)してあげるpayable負債ですが、PPh22は債務発生時に所得税を前払するprepaid資産です。

Air Asia

インドネシア入国時の免税限度額・関税・税金計算方法

インドネシア入国時はE-CD (Electronic Customs Declaration)から一人ずつ税関申請する必要があり、入国時の持込荷物に対してかかる税金は関税Bea Masukと付加価値税PPNと輸入税PPh22の3種類ありますが、免税限度額を超える分に関税を足した額に対して、付加価値税PPNと輸入税PPh22がかかります。

続きを見る

インドネシア自動車税とSTNK更新|計算方法・5年ごとの手続き・車検制度

インドネシアの自動車税PKB(Pajak Kendaraan Bermotor)は、毎年の車両証明書STNK(Surat Tanda Nomor Kendaraan)の更新時に支払う自動車税と、5年に一回ナンバープレート(pelat nomor kendaraan)の交換とエンジンの登録番号チェック時に支払う自動車税があり、毎年発生する自動車税は車両売却評価額NJKB(Nilai Jual Kendaraan Bermotor)に対して税率2%(1台目の車の場合)です。

日本で車を所有する場合は自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)への加入と2年に1度国土交通省が定める車検(自動車検査登録制度)が義務付けられていますが、インドネシアにはそもそも国が定める車検制度自体がなく、保険も民間保険会社が提供する保険サービスへの任意加入になります。

車を購入する際の車庫証明書も必要ないため、車庫を持たない住宅街の中や、車が通れないくらい細い道の奥にある家などは、側溝すれすれに路駐してサイドミラーを折りたたむのですが、当然ながら夜間の盗難も多く発生し、車一台ギリギリ通れる程度に残された道幅はボトルネックとなり、劣悪なジャカルタの渋滞の一因となっています。

ジャカルタ

インドネシア自動車税とSTNK更新|計算方法・5年ごとの手続き・車検制度

インドネシアの自動車税は、毎年の車両証明書の更新時に支払う自動車税と、5年に一回ナンバープレート交換とエンジンの登録番号チェック時に支払う自動車税があり、国が定める車検制度自体がなく、保険も民間保険会社が提供する保険サービスへの任意加入になります。

続きを見る

インドネシアの付加価値税PPNとレストラン税PB1の違い|ホテルや飲食店の税率・サービス料・経費控除の実態

もともとPPNだったものが2010年からPB1に変わったもので、消費者が違いを意識するものではありませんが、徴収する主体がPPNは国税総局(Direktorat Jenderal Pajak)でAPBN国家予算(Anggaran Penerimaan dan Belanja Negara) に入る中央税Pajak Pusatだったものが、PB1の場合は地方政府(Pemerintah Daerah)でAPBD自治体予算(Anggaran Pendapatan dan Belanja Daerah)に入る地方税Pajak Daerahに変わりました。

インドネシアのホテルでは「サービス料+税金で21%取られる」というのは『サービス料10%込みの食事代に対して10%のレストラン税がかかっている(All prices are subject to 10% service charge and 10% government tax.)』つまり『Rp.100,000×10%x10%=Rp.21,000(実質21%の加算)』ということです。

ちなみに中央税APBN該当するのが所得税PPh、固定資産税PBB(Pajak Bumi dan Bangunan)、印紙税Bea Materai、付加価値税PPN、奢侈品販売税PPnBM(Pajak Penjualan atas Barang Mewah) などで、地方税APBDに該当するのがレストラン税Pajak Restoran、ホテル税Pajak Hotel、広告税Pajak Reklame、エンターテイメント税Pajak Hiburanなどです。

インドネシア税法の性悪説と源泉徴収リスク|PPh4-2や関税で日系企業が直面する落とし穴

固定資産の減価償却について、企業は短期償却してより多く損金計上したいが、税務署は長期の耐用年数を求め損金否認して課税所得を増やしたいのが一般的です。

  1. 会計と税務の違いとは一言で言うと税金を減らしたい企業と増やしたい税務署の立場の違い
  2. 会社の儲けた金は企業会計上は利益で、税務会計上は所得であり、P/Lに計上した交際費が必ずしも経費として落とせる(損金計上する)とは限らない。費用のうち法人税を計算するときに、税制上掛かる税金を減らせるものが損金
  3. 企業は早々に費用計上して税金を減らしたい。一方で税務署は費用化されて利益を圧縮されると課税対象の所得が少なくなるため長い耐用年数を求める。これが会計と税務が違うということ。
  4. 連結会計ではIFRS(国際会計基準)に基づく財務報告が必須になる一方で、税務については引き続き各国独自の基準で財務報告を作成すべき

日本の税制が正しく申告することを前提とする性善説に基づいているとすれば、インドネシアの税法は源泉先取りで出来るだけ返さないという性悪説の上に成り立っていると言えます。

ジャカルタの夕暮れ

インドネシア税法の性悪説と源泉徴収リスク|PPh4-2や関税で日系企業が直面する落とし穴

日本の税法は事後に正しく申告するされることを前提とした性善説に基づいていますが、インドネシアの税法は源泉で事前に徴収した上で出来るだけ返さないという性悪説に基づいていると言えます。

続きを見る

インドネシアの付加価値税PPNと海外EC課税ルール|NetflixやAmazonも対象

インドネシアで一定期間以上の事業活動を行うためには、国内の個人、法人問わず恒久的施設(PE=Permanent Establishment)のいずれかとしてNPWP(納税者番号)を登録し、納税する義務があります。

PEが意味するのはインドネシア国内の「物理的な場所」のことであり、会社の事務所、個人事業主の家、商品を保管する倉庫などですが、本来インドネシア国内に居住しない個人または法人がPEを使用することは、納税せずして事業を行うことになり税法違反になります。

例えばインドネシアに拠点を持たない海外企業が商品の在庫をインドネシア国内の貸倉庫に置いて、受注を受けてから国内代理店に出荷を委託するケースでは、倉庫がPEに該当するので税法違反となり、海外企業はPE登録をしてNPWPを取得し納税しなくてはなりません。

もしPEという課税の根拠がなかったら、日本本社は出張者に現地法人または現地代理店をスポンサーとして6か月の労働ビザ(C312)を取得させ、NPWP取得が免除される183日間以内で営業活動を行わせて、直接本社へ売上を上げれば、理屈上では出張者個人としても本社として納税の義務は発生しません。

このような税逃れを防ぐために、インドネシア国内に物理的拠点がないまま事業活動を行う海外企業を、課税の根拠となるPE登録し、NPWPを取得させるのですが、B2Bとは異なりNetflixなどのB2Cの個人向け海外EC事業者が、海外のサーバーを通じてインドネシア国内の個人契約者を獲得することで売上を上げる場合、売上の実態が把握しにくくPEと認定することが難しく税法違反にはなりませんでした。

2020年から、海外の大手デジタルサービス会社が強制徴収事業者WAPU(Wajib Pungut)に指定され、付加価値税PPNの納税義務が発生し、海外からの越境ECについてもオンラインマーケットプレイス側がVAT徴収役(pemungut PPN)として国税に直接納税することになりました。

ジャカルタのビル群

インドネシアの付加価値税PPNと海外EC課税ルール|NetflixやAmazonも対象

支払いがアメリカのサーバーを通してアメリカ法人になされるために、インドネシアで付加価値税(PPN)を支払っていないと指摘されており、インドネシア国内で売上を計上する以上、その会社は恒久的法人(BUT=Bentuk Usaha Tetap)であり、課税事業主(PKP)として納税の義務が発生することになります。

続きを見る

インドネシアのタックスアムネスティ(租税特赦法)|対象者・罰金・海外資産と移転価格の実態

2016年に世界的に話題になったパナマ文書(パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブンに関する内部文書)に載っていたインドネシアの個人・法人の資産総額は2,300兆ルピア(国家予算の1.5倍)から天文学的な税収が見込まれることから注目されるようになりました。

タックスアムネスティ(ギリシャ語で『忘れ去る』の意味)では海外の「隠し資産」という言葉が用いられますが、隠し資産とは「隠し利益」で簿外取引(オフバランス)として購入された資産であり、個人の場合はSPT tahunan PPhで申告していない資産であり、「隠し利益」とは一般的に所得税を納めていない利益隠しを指し、これがタックスヘイブンの合法的な節税の根拠が疑われている理由です。

所得税申告に財産リストを申告する必要があるかといえば、所得に不相応な財産を持っているかどうかをチェックするためであり、一般企業の財務状態はP/LだけでなくB/Sもチェックする必要があることからも理解できます。

ビジネスでは売上を上げた国で納税するのがフェアだと思うのですが、その前提だと大した節税方法がないので、もっと大きな節税をするために、売上を上げた国以外の税率の低い国に、移転価格税制で訴追されない方法で利益を還流させようとします。

「合法であれば何をしてもよいわけではない」という世間の反発を食らうようになるのは、巨額な利益を上げている国に納税していないことは社会インフラへのタダ乗りでアンフェアと解釈されるからです。

このケイマン諸島やパナマなどのタックスヘイブンに設立した現地法人は実質的にはペーパーカンパニーであり、そこで直接売上を計上するか、もしくは無形固定資産(商標権や知的財産権)を購入することで移転(利益を移す)し、自国からロイヤルティとかセールスコミッションという科目を通して費用を支払うことで、自国の利益を圧縮することが可能であり、資本主義経済システムの抜け穴を賢く利用した合法的な節税と言われてきました。

タックスヘイブンに利益を溜め込むことによる社会への弊害として、自国の所得税収が減り国家財政を圧迫、大資本の内部留保が肥大化し資金が市場に流入しないことによるデフレと格差拡大が挙げられ、資本主義社会においても完全自由競争が果たして人類の平和にとって最善なものなのか、という大きな問題意識を投げかけています。

為替管理とは、国が外貨の流入・流出や外国との送金・決済を規制・管理する制度で、外貨の急激な流出を防ぎ、自国通貨の暴落を防ぐだけでなく、昨今では不正資金の国際移動を監視する目的が強くなっています。

日本の場合、戦後間もない頃の厳しい為替管理法の下にあった時代とは違って、今では海外送金は基本自由に行えるとはいえ、100万円以上の海外銀行送金の場合は、銀行から口座名義人住所の所轄の税務署に連絡が行き、贈与税対象ではないか、マネーロンダリング資金ではないかという税務調査の対象になりえます。

インドネシア

インドネシアのタックスアムネスティ(租税特赦法)|対象者・罰金・海外資産と移転価格の実態

タックスアムネスティで問題視されているのは簿外取引で購入された海外資産であり、国内ビジネスで得た利益で海外資産を購入し現地法人のB/Sの資産として計上していれば問題はありません。

続きを見る