インターネットにより情報がフラット化され、誰もが平等にチャンスが得られるようになったことは、インドネシアでは勝てる分野を探すのが難しくなったことを意味します。日本人の優位性を生かしながらライバル会社がコスト的に再現できない分野を探すのが現実的だと考えます。 インドネシアのビジネス インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
日本人がインドネシアで事業をやるハードルが上がった
起業する際には面倒な事務手続きと並行して、会社の不変の基本的価値観である「企業理念」を起草し、これを実現するためにどのように利益を上げて成長していくかという「ビジネスモデル」を描き、最後に具体的な「事業計画」を作成するというのが教科書的な手順です。
「企業理念」というのは実務を行う上で意識するものではないので、いざ自社のブランディング(企業理念を分かりやすく発信すること)を行いたいという企業からの「企業理念」を言語化したいというニーズは多く、これが世の中で「理念構築(≒ブランディング)」をサービスとするビジネスが成立する理由だと考えています。
正直なところ、今の時代は環境の変化が速く、不変の基本的価値観を文章化したところで形骸化するだけだと思っていましたが、事業が継続していく中で会社の存在価値自体にかかわる悩みが出てくる場面があり、そのときに「企業理念」を見直すことで我に返る、ということが実際にありましたので、やはり「企業理念」は考えたほうがいいと思いました。
「ビジネスモデル」については、革新的なプロダクトを武器にインドネシアでユニコーンを目指そうというような会社であれば、根本的にストーリーが異なるのかもしれませんが、普通の人にとっては空目感しかありません。
- エンジェルから資金調達
- ⇒累積赤字と引き換えに市場シェアを拡大
- ⇒現預金が極端に少ない状態でさらなる資金調達または上場し現預金ゲット
- ⇒キャッシュフロー改善のためプロダクトの価格を値上げ
- ⇒インカムとキャピタルのゲインで数年後累積赤字解消
こういう「資金調達オメデトー」系の話はtechcrunch(テッククランチ)とかBRIDGE(ブリッジ)の記事の中の世界だけであり、普通の人が起業する際には、当座預金に入金した現金から人件費や家賃などの固定費が払えなくなる前に売上を上げるビジネスモデルを描いておかないと死亡します。
そしてようやく具体的な「事業計画」になりますが、インターネットの普及で情報がフラット化されたことで、企業の規模を問わず平等にチャンスが得られるようになる一方で、インドネシアでは勝てる分野を探すのが難しくなったと感じます。
1998年頃、インターネット黎明期にはオンラインマーケットプレースもなく、ネットショップも少ない時代で、ジャカルタのIT会社で勤務する傍らインドネシアの家具やバティックなど伝統工芸品を日本に発送するWEBサイトを立ち上げたところ、ものの数か月で本業からの給料を逆転するほどの収益が出るようになり、2001年にはバリ島に引っ越して専門会社を立ち上げるまでになりました。
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日本とインドネシアの間でのタイムマシン経営が通じなくなっている件
かつて有効だった日本とインドネシアの間の情報格差を利用したビジネスであるタイムマシン経営は、インターネットが普及し情報がフラット化されたことにより、タイムラグ短縮してしまった現在では通用しなくなりました。
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当時はまだまだインドネシアの商材の金銭的価値が日本では知られておらず、エスニックな雰囲気と物珍しさだけでモノが高く売れる時代でしたが、インターネットの普及により情報格差がなくなった今、同じようなビジネスを立ち上げるためには、よりレアで付加価値の高い商材を発掘する必要があり、後発で参入してくるライバルとの価格競争を覚悟しなければなりません。
2023年6月現在、言葉は悪いですが情報格差を利用した他人の無知に付け込むビジネスがやりにくくなったのです。
東南アジアは新規事業のチャンスが多いと言われてきましたが、勝てる分野を見つけるのは年々難しくなっており、ローカル市場向けビジネスのみならず、日本人相手の事業をやるにも自分が日本人という優位性が発揮しずらくなっていますが、逆に日本語を話し日本文化に精通しているインドネシア人にとっては、日系市場で活躍するチャンスが広がっていると思います。
実際にインドネシアに住んでみて、自分で動いて人と話しをして、現地の事情を少しずつ理解していくにつれて、インドネシアで起業することが意外と手強いことに気づき、その難しさの原因は、高い送料と関税であったり、ローカル企業との競争であったり、就労ビザ(IMTA)や外国人技能開発基金(DPKK)などのランニングコストの高さであったりします。
これから日本人がインドネシアで事業をやるための戦略
日本人であることの優位性を生かして、インドネシア国内の日本人または日系企業相手にサービス展開しようとすれば、ローカル企業や他国の海外企業との価格競争に直面する。
インドネシアの物産品を日本へ輸出しようとすれば、デフレと消費者人口の減少で日本でモノが売れなくなっているし、日本のコスメを輸入してローカル市場で売ろうとすれば、高い関税と送料が原価を押し上げ採算に合わず、そのうちローカルの大資本が参入し価格破壊でジエンドとなるのです。
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インドネシア市場で安売り競争を回避するためのランチェスター戦略
インドネシア市場の難しさはコストであり、先駆者は後発の大資本の安売り戦略に駆逐されるので、ターゲットとなる分野と顧客層を限定して(局地戦)、生産能力を極限まで向上させ(武器効率)、安易な多角化はせずに愚直に得意分野を攻め続ける(局所優勢)のが有効だと考えます。
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しかしインドネシアで新規事業をはじめたいという人は、僕も含めてみんな同じ参入障壁にぶつかって、日々悩んで知恵熱で爆発しそうな状態であるため、良いアイデアが出ないことが普通であり悲観する必要は全くなく、何かボーっと過ごしていたら自然とアイデアが出てくるというのは幻想です。
既にすばらしいクラウドベースの自社プロダクトを持っており、インドネシアにサービス展開して多くの顧客を持つ友人ですら、ローカル企業が同等のサービスを5分の1程度の価格で次々にリリースしてくる安値攻勢に苦しんでいる、これが今のインドネシアのスタートアップ界隈の現状です。
20年前のインターネット黎明期には、日本とインドネシアの間にある情報格差と時間格差を利用したタイムマシン経営が有効でしたが、令和の今から日本人がインドネシアで事業をはじめるために有効な戦略とは何なのか。
私見ですが、小資本でキャッシュフローを回していく上では、インドネシアで日本人であることのメリットを最大限生かしながらも、既存日系ライバル会社やローカル大資本がコスト的に再現できない分野を探す方向がいいと考えます。
まずはインドネシアでのブルーオーシャン市場を探すこと
あんまり斬新なアイデアを思いつこうとして消耗するよりも、他人にとって面倒臭くてコスト的に採算が合わなさそうな分野を探すという方向が、生存戦略として一番現実的ではないでしょうか。
これは言い換えれば、インドネシアでの起業の際にはまず最初にブルーオーシャンを探すべしということであり、ここ数年の日系サービス業の進出の業態を見ると、あまりにも多くの人がレッドオーシャンで勝負しようとしているように感じます。
現在インドネシアでもショートテール(単一キーワード)のブルーオーシャンを探すのは大変ですが、ショートテールでレッドオーシャンでも他のキーワードを組み合わせたロングテール(複数キーワード)でのブルーオーシャンは、市場規模は狭まるとはいえ十分見つかる可能性があると思います。
注意すべきことはブルーオーシャンかどうかは市場規模に対する事業者の数で相対的に決まるのであって、例えば同じ業種のサービスがインドネシアに興味を持つ日本人という小さな市場に対してはレッドオーシャンでも、日本に興味を持つインドネシア人という大きな市場に対してはブルーオーシャンである可能性は高いわけです。
他人がやりたくない仕事は得てしてキツイし手間がかかるし自分もやりたくない仕事である、という根本的問題がありますが、この壁を突き抜けないと事業化するのは難しい。
私は面白いアイデアを思いつくよりも、みんなが面白くないと思っていることをポジティブシンキングで面白くするほうが近道だと考える派です。
独立してビジネスをやりたいというのは人間の基本的欲求の一つであり、自らの意思でインドネシアに来た人の大半が、将来自分で事業を起こすことを出口戦略にしているかと思いますが、同じ悩みをかかえる日本人同士として、インドネシアで頑張っていけたらいいなあと考えています。
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好きなことだけやって生きるのと嫌いなことを好きに変えるのはどちらが簡単か?
自分が面白くないと感じることは、他人にとっても面白くないことであり、逆に面白くないことを敢えてやってしまえば競合の少ないブルーオーシャンで勝負できると、思考そのものを変えることによって、いつの間にか面白くないことが面白いに変わっているという発想です。
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