計画と実績をリンクさせる製造指図の必要性

生産スケジューラー

計画と実績をリンクさせる製造指図の必要性 【生産管理部が作成する内示に基づく生産計画を現場の作業にブレイクダウンするために実体化したものが製造指図】


これまでインドネシアで生産管理システム・在庫管理システム・生産スケジューラー等のプリセールスからインプリメンテーションまでの現場で「どうやったら売れるのか」「どうやったら導入がうまくいくのか」について試行錯誤してきましたが、それに対する提案として「サブシステムのパッケージ化」が有効だと考えるようになりました。

本論に行く前にこの問題意識に対する分析視角として重要なキーワードとなる「生産計画と製造実績のリンク」の話をしたいと思います。

バリ島時代の思い出

話が少しずれますが、以前バリ島で家具製作&輸出の仕事をやっていた時、お得意様から定期的に入る受注オーダとレストランやカフェの開店または改装に伴う特注オーダをに基づき、中部ジャワのJeparaに家具製作工場を持つ会社のバリ島営業所に発注書を出しました。

マスプロダクションとは異なり受注生産ですからお客からの進捗確認や新規見積もり依頼が頻繁に入り、納期回答に対応する必要があります。

進捗状況とは当然ながら受注に対する製作実績の割合ですが、家具製作の初工程には木材を乾燥させるオーブン工程があり、製作側である程度ロットまとめでバッチ処理されます。

こちらから納期指定しているとはいえ、インドネシア人の中でも中部ジャワの人は特におおらかな性格なので、同じ納期指定でキャビネットを発注していたとしても、製作側の独自裁量でまとめやすい品目単位で翌月の未発注分のバタビアチェア用の木材を強引に突っ込んできたりします。こいつら。。。

  • 日本のお客(発注)⇒バリ島の僕(受注)⇒バリ島の家具会社営業所(営業)⇒家具会社中部ジャワ工場(製作)

更に最悪なのは製作側の都合に合わせて勝手に木材の材料手配(生産準備)をされてしまい、直近の納期分を賄うために必要なチーク材が十分確保されておらず、納期の遅い発注分のマホガニー材が確保されていたりすることです。

そうなると何が起こるかと言えば、ある日突然悪魔のような連絡を受けることになります。

  • チーク材の価格が上がったので見積もり金額が上がったYO

木材価格が上がれば当然こちらの見積もり金額を圧迫しますから。非常に高品質の家具を良心的価格で製作してくれる唯一の工場なので、こっちも強く言えないんですね。

この流れの中で家具会社のバリ島営業所が製作側のオーブン工程に、品目と納期を考慮した受注に紐付いた製作指図を出していれば、製作側は製作指図を元に材料手配を行い、オーブン工程で適切なロットまとめが行われたはずです。

後工程は流れ作業で自動的に回りますので、僕はお客の受注に対する進捗回答が容易になったはずです。

発注書が製作側からすると間接的な指示でしかないため自分の裁量で材料準備やオーブンまとめを決めてしまうのと同じように、生産計画からブレイクダウンされた製造指図がないと製造側は現場の裁量で製造しがちです。

営業から生産管理部を経ずに製造現場直結で情報が流れる弊害だと思いますが、今となって思えばいい経験しました(遠い目)。

これが製造指図の重要性を実体験した身近な例ですが、受注に基づく計画に対して製造しないと(または製造実績を上げないと)受注と製造が結びつかないのです。

これがないと工場の最大の使命である「品質の高い製品を納期遅れせず出荷すること」に悪影響を及ぼします。

計画と実績のリンク

受注情報を受け取った後にはそれを生産計画、製造指図に落とし込み製造実績の入力という流れになりますが、ここをシームレスにシステム化することが製造業システム導入にあたっての最大の難関になります。

現実の業務では生産計画から生産実績まで意識せずに運用されているとしても、システム化するとなると間に生産計画というクラスの実体である製造指図を介在させ、製造指図に実績を入力する必要があります。

理想

  • 受注(システム)⇒計画(システム)⇒製造指図(システム)⇒製造実績(システム)⇒出荷(システム)

現実

  • 受注(システム)⇒計画(Excel)⇒製造指図(Excel)⇒計画外製造実績(システム)⇒出荷(システム)

工場では生産管理システムを導入済みであったとしてもMRPは未使用のケースがほとんどであり、MRPを使っていないということは計画外製造指図から工程ごとに1つずつ製造指図をマニュアルで登録する必要があります。

ただこの方法は運用としては判りやすいですが、簡単に指図を発行できる仕組みがないと逆に工数ばかりがかかります。

生産管理部としてもシステムで指図を工程ごとに1つずつマニュアルで発行するのは手間ですし、製造現場でも製造指図に対して実績を入れるというのは負担です。

ここで両者の思惑が一致しますので、生産管理部は製造現場から上がってくる日報を見ながら計画外製造実績でシステムに直接実績入力したほうが手っ取り早いということになります。

基本は生産管理部がExcelで作成した計画に基づいて製造を行った上で、日またはシフトごとに日報が上がっていますので、毎月の受注数量が安定していれば出荷には大きな問題はないかもしれません。

ただ多品種少量生産で受注数量が安定しない場合は以下の理由で納期遅れのリスクが高まります。

  1. 受注と製造の紐付きを管理するのが難しい。
    ⇒進捗・納期回答が難しい。
  2. 製造指図が現場で軽視され独自裁量で月次生産計画の帳尻を合わせがち。
    ⇒生産管理と製造現場の乖離
  3. そのため設備能力計画が現場に反映されない。
    ⇒生産設備のやり繰りが難しくなる。

以上が僕が日頃「生産計画があまり重要視されていないのではなかろうか」と感じる理由であり、製造指図は受注情報に基づく生産計画を製造現場にブレイクダウンする上で重要な意味を持つことを言いたかったワケです。

総括

  1. 「どうやったら売れるのか」「どうやったら導入がうまくいくのか」という問題意識に対する分析視角として重要なキーワードとなるのが「生産計画と製造実績のリンク」である。
  2. 受注情報に基づく生産計画を製造現場にブレイクダウンする上で重要な意味を持つのが製造指図であり、製造指図に対して実績を入れることが生産管理システムの運用上の最大の難関であると同時に、生産管理システムの導入の成否の大きな判断基準となる。
  3. 製造指図を発行し実績を入れるためには、システムのMRP機能を運用することが必須である。Excelでの製造指図発行は現場との乖離を招きやすく受注とのリンクが不明確になりやすい。
  4. MRPの運用のためには正しいBOMの設定が必須である。
  5. 正しいBOMの設定を実現させるにはサブシステムのパッケージ化が有効である(理由は次エントリー「システム導入時に判るインドネシアの環境的特性」)。





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