革新的な自社製品を持たなくても、面倒でコストがかかり誰もやりたがらない仕事を敢えてやるだけで差別化は達成できるわけで、新たな差別化の方法を生み出しながら、環境の変化に合わせて事業戦略を柔軟に適合させていくのがビジネスの基本だと考えます。 インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
インドネシアのビジネス
逆張りによる差別化の方法
弊社はインドネシアの製造業という絞られた業界にITサービスを提供しているのですが、営業活動はコールセンター経由のテレアポ、ダイレクトメール、セミナーによる集客などのアウトバウンド、そしてこのブログへのお問い合わせというインバウンドの2つです。
ようやくコロナ禍による活動制限が段階的に解除されつつある2021年10月現在、サービス業ではSNSマーケティングが主流となりつつあるようですが、業界の風土が比較的古い製造業という分野にあっても、TwitterやFacebook経由で仕事のお話をいただくようになり、実際に案件にまで繋がることも増えてきました。
とはいえ基本的には営業活動の柱は電話をするか、メール書くか、セミナーをやるかであることには変わりなく、最近SNS上ではインバウンドだけでOK、非対面のまま案件が成約する時代とかいう話を聞くと、自分が違う世界線上にいるのではないかと不安になることもあります。

インドネシアは2020年4月頃から1年半以上の間、コロナ禍のためZOOMやTeamsを通した非対面のミーティングが増え、当初は渋滞による移動コストを考慮すると、ビジネスがオンライン中心へ移行することに対して肯定的な意見が多かったと思います。
しかし弊社のケースでは結果的にオンライン中心の商談では仕事が取りにくくなっており、新型コロナに関する保健アプリPeduliLindungi (2023年3月1日からSATU SEHATへ移行)によるワクチン接種証明書の提示を条件に、外来客を受け入れる企業が増えている中で、極力直接訪問して対面で話をするよう心掛けています。
結局はコロナ禍以前と状況は同じ、渋滞による移動コストを受け入れることにはなるのですが、正しいかどうかは別として、他社が在庫リスクを嫌うから敢えて在庫を持つ、利幅が薄い割に工数が多いため敬遠される仕事を敢えてやる、渋滞で時間と体力を消耗しガソリン代やドライバー代がかかるため敬遠される移動を敢えて積極的に受け入れるなどが逆張りによる差別化です。
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コスト計算とオフバランス資産【オンライン化が進むほどオフラインでの差別化が可能になる】
渋滞の中現場を訪問する行為はライバルが「渋滞が酷いから訪問は止めよう」と考えることに対する差別化になりうる。金銭的な見返りだけでなく、新しい技術の習得や実績のためなど、満足度や期待値といったオフバランスの資産にどれだけ価値を見出し蓄積できるかどうかが重要。
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事業活動で軸がブレないことと柔軟性を持つこととの関係
「事業を行う際には軸はブレてはいけないが柔軟性を持つことは必要」というのは、意味が分かるようで分からない言葉で、企業の場合であれば企業理念はブレずに、環境の変化に応じて、ビジネスモデルや事業戦略は柔軟性を持たせるということかと思います。 設備投資によるコストメリットは、出来高や歩留などの数量を根拠に定量的に説明することができますが、システム投資の場合は数値データを根拠に評価するのは難しいと言われます。メーキングインドネシア4.0の後押しでインドネシアのSI業界に活気が戻ることを期待しています。 続きを見る
インドネシアのシステムインテグレーション業界【2020年代はメーキングインドネシア4.0の追い風あり】
一言で言えば目標を達成するためなら手段は変化してもよいということなんでしょうが、一個人が脱サラする際には壮大な企業理念ありきというよりも、どのように収益を上げていくかというビジネスモデルがある程度明確になり、食べていける目処がついた時点で小さく起業するパターンがほとんどではないでしょうか?
例えば弊社の場合「現場の努力を会社の競争力に変えることで地域経済の活性化と付加価値化に貢献する。」という企業理念がありますが、それ以前に独立して食べていくためのビジネスモデルがあり、そもそも収益を出して食べていけなければ目標の達成など出来ません。
収益を出すためにいかに売上を上げるかは、革新的な絶対的価値を持つ製品を生み出せる場合は別として、サラリーマン時代に培ったコネがあるとか、業界内で基盤のしっかりした企業とコラボするとかが多いですが、面倒だったり難易度が高かったりするため誰も手を出さない分野を得意分野とすることで、相対的価値を生み出すという戦略もありえるわけです。 売上の大半を人件費が占める労働集約型に対して、設備投資や資金調達を元手にするのが資本集約型で、受注開発は売上から運転資金を捻出する形になります。絶対的価値を生み出す才能はなくとも、ニッチな分野での専門技能を発揮することで相対的価値を生み出すことは可能です。 続きを見る
インドネシアで受注請負形式の労働集約型も悪くない【サービスの絶対的価値と相対的価値】
インドネシアではワクチン接種率が進んだこと(2021年10月現在1回以上接種35.3%、2回以上接種20.5%)で1日の死者数も新規陽性者数も激減している中で、1年半に及ぶ活動制限下でのオンライン中心としたビジネスから、どの程度までコロナ禍以前まで戻すかという調整期間に入っています。
インドネシアには弊社も含めて6,400万件の中小零細業者UMKM(Usaha Mikro Kecil dan Menengah)が存在すると言われており、コロナ禍下で飲食業やサービス業を中心に事業閉鎖の話を聞くたびに気が重くなる日々ですが、暇な時間が増え将来の先行きに不安を感じながらも、規模は小さくともブレてはいけない理念や戦略を再確認する機会になりました。