インドネシアの日系製造業では、業務システムを運用する中でデータの不一致が発生することがあります。これは、債権債務残高とGL上での残高の不一致や、債権一覧と売上の不一致など、業務システムの機能間連携の問題であることが多いです。
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インドネシアの会計システム
インドネシアの会計システムはSaaS化が進んでいるが、導入率は8%以下です。新しいSaaS型会計システムが市場でローンチされ続ける理由は、シェア拡大の潜在性が高いからです。会計システム普及により自動仕訳が一般化し、経理担当者の簿記テス…
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この記事でわかること
- インドネシアの日系製造業では、業務システム間でデータの不一致が発生しやすいです。
- G/L上の債権債務残高とAging Reportの不一致は、デビットノートやクレジットノートの仕訳が原因です。
- 前受金が工事完成基準で処理される場合、A/RとSalesの不一致が生じます。
- 締め処理後のデータ調整では、為替評価替処理のキャンセルが必要です。
- インドネシアのPMAは外部監査を受ける義務があり、会計コンサルタント会社がサポートします。
部門間でデータの不一致が発生するケース
業務システムは各部門の担当者が必要な機能を利用し、情報が上流から下流にリレーされますが、その過程でデータの不一致が発生することがあります。これらの不一致はシステムの不具合ではなく、各部門の入出力の方法やタイミングの違いによるものがほとんどです。解析すると、以下のような原因に集約されます。
元帳(G/L)上の債権(A/R)債務(A/P)残高と年齢表(Aging Report)上の残高が異なる
理論上、G/Lで繰り越される月初A/R科目とA/P科目残高と、Aging Report上での前月末残高は一致するはずですが、実際には一致しないケースが多いです。
- A/PとA/RをG/Lから直接入力している
⇒値引きのためのデビットノートや値増しのためのクレジットノートの仕訳をG/L上で入力することで発生します。 - A/PとA/Rの仕訳生成が転記前の承認時に行なわれる仕組みになっている。
⇒締め処理時にA/PとA/Rの承認済み未転記取引をチェックする必要があります。
複数部門にまたがるA/RとA/Pが発生しているとき
データの不一致は、A/PとA/R残高とG/L残高が合わないことで発覚することが多いですが、合計金額自体が合わない場合と、取引先単位の集計金額が合わない場合があります。A/PとA/Rを取引先ごとの金額を調整して合わせるには、資産の部門別振替と同様に、勘定科目を分割し、特定の月末時点にカットオフして相殺仕訳を作成します。
- (借) A/P(取引先コードA) 10 (貸)A/P(取引先コードM) 30
- (借) A/P(取引先コードB) 10
- (借) A/P(取引先コードC) 10
前受金が工事完成基準で処理される場合のA/Rと売上(Sales)の不一致
営業担当者は、当月のSalesがどのA/Rから発生しているかを照合しようとしますが、G/L上に表示されるSales一覧は、該当月のA/R一覧と必ずしも一致しません。
返品処理や値引処理はCredit NoteでA/R情報から修正できますが、外貨建てA/Rの為替差損益や税務差額の調整仕訳は会計担当者がG/Lの振替伝票で行なうため、ここでA/R情報とG/L上のA/R科目残高の差異が生じます。
また、サービスが工事完成基準で処理される場合、前受金はSales勘定ではなくDown Payment勘定で処理され、翌月にSales化する場合には、月ベースでSalesとA/Rを比較しても一致しません。
- 前受金受領時
(借) A/R 100 (貸) Down Payment 100 - 工事完成時
(借) A/R 40 (貸) Sales 40
(借) Down Payment 100 (貸) Sales 100
締め処理後のデータ調整
月末に為替評価替処理を行い、締処理まで実行した後に「このInvoice、支払い済みなのに入力し忘れてたー」というのはよくあることです。この場合、締処理をキャンセルして為替評価替処理をキャンセルしてから、Invoiceの決済処理を行い、改めて為替評価替して締処理を行う必要があります。この運用手順が明確でないために、為替評価替処理をキャンセルせずにInvoiceの修正を行うと、修正入力が為替評価替に反映されないことになります。
- 11月末のドルA/Rのルピアベース残高:100
- 11月末の為替評価替え後ルピアベース残高:110
- 本来なら100に対して修正をかけるべきところ110に対して修正をかけることになる。
締処理がズレ込みA/RとA/P決済処理をフライング入力
月末時点でのA/P残高を月末レートで再評価するのが為替評価替ですが、締処理は翌月までズレるのが普通です。その間に消し込み処理を行うと、月末A/P残高が変わってしまいます。
- 11月末のルピアベース残高:100
- 12月1日の決済処理入力後残高:90
- 本来なら100に対して為替評価替えすべきところを90に対して行うことになる。
考えられる対策
実現と未実現の勘定科目を分ける
為替差損益は、決済時に発生する実現損益と、月末評価替時に発生する未実現損益の2種類があります。これらを勘定科目で分けておかないと、為替差損益の原因となる取引をトレースバックする際に絞り込みが難しくなります。
- Forex Gain-Realized
- Forex Loss-Realized
- Forex Gain-Unrealized
- Forex Loss-Unrealized
システム上では、為替差損益仕訳が決済で発生したものか、為替評価替で発生したものかの区別は可能ですが、一般会計上では勘定科目や取引先でしかフィルターできないのが普通です。そのため、科目自体を上記のように分割することが推奨されます。
イレギュラー処理の運用手順の明確化
締処理後のA/RとA/Pのデータ修正は、為替評価替もキャンセルした上で行わないと、修正分が月末評価額に反映されなくなります。したがって、イレギュラーな修正処理の運用手順を明確にしておく必要があります。
外部監査人による会計監査
一般的に監査と言えば、会計監査法人による会計監査を指すことが多いですが、法定監査が義務付けられているのは会社法で規定されている大会社のみです。この大会社の定義は「資本金5億円以上または負債200億円以上の会社」とされており、会社の成長や衰退に伴って監査義務の対象に入ったり外れたりします。
非公開会社であっても、会計監査人(監査法人や公認会計士)の監査を受けなければならない(会社法328条)という法律があるため、対象となる大会社が法定監査を行わない場合、法律違反で罰金の対象となります。しかし、現実にはグレーな運用がされていることもあります。
インドネシアでは、外国資本会社(PMA)はすべて大企業扱いされ、日本では中小企業に該当する場合でも、PMAである限り外部監査を受ける義務があります。
事例:ピータードラッカー的に言うと、企業は社会の公器であるとはいえ、財務諸表の悪化は銀行審査や株価、入札条件などに影響を及ぼします。そのため「如何にブラックボックス化するか」「如何にキレイに見せるか」というグレーゾーンで無理を重ねて財務諸表を作成する習慣ができ、東芝問題のように表面化したときには不適切会計という言葉が生まれました。
外部業務監査と内部監査
本来、監査とは外部監査人による会計監査を指すことが多いですが、2006年に成立した金融商品取引法の内部統制に関するルールであるJSOX制定以来、内部統制による社内コンプライアンスの遵守を評価する業務監査も重要視されています。業務監査は企業の会計業務以外の業務活動(購買・生産・物流・販売など)や組織・制度に対する監査ですが、最終的には財務諸表の適正性の保証による株主保護に結びつきます。
- 会計外部監査: 直接的に財務諸表の健全性を保証します。
- 業務外部監査: ISOやJSOXに照らして内部統制による社内法令の遵守が適切であることを保証します。
- 内部監査: ISOやJSOXに照らして内部統制による社内法令の遵守が適切であることを保証します。
業務がシステム化された現在、内部統制の評価にはIT統制が必須です。インドネシアでも業務監査の際にERPシステムについて質問を受けるポイントは以下の3つに絞られます。
- 承認フローが適正かどうか
- システムへのアクセス権限が適正に設定されているかどうか
- オペレーションマニュアル、運用マニュアル等のドキュメントの有無
インドネシアの会計コンサルタント会社の仕事
インドネシアの日系製造業では、会計コンサルタント会社と記帳代行契約や会計アドバイザー契約を結ぶことが一般的です。会計システムを導入する際には、月末の締め処理後に出力される財務諸表が正しいかどうかを、会計コンサルタント会社が作成する財務諸表と照合します。また、会計システム利用開始時に必要な期首残高は、会計コンサルタント会社が作成する試算表(Trial Balance)に基づいてシステムにインポートまたは振替伝票で入力します。
インドネシアの会計コンサルタント会社は、規模の大小にかかわらず、以下のような業務内容に大別されます。
- 外部監査(会計監査・業務監査)
- 会計記帳代行・給与計算代行
- 税務サポート(PPh、PPN、関税など)
- ビザ・会社設立支援
日系企業にとって馴染み深いのが通称JAC(Japan Asia Consultant)です。私もここの代表の方の著作3冊(会社経営・税務・会計)を座右の書として常にデスクの上に置いています。
会計システム導入時に必要になる会計コンサルタント会社のデータ
会計コンサルタント会社と契約している客先に会計システムを導入する際には、必ず発生する問題があります。私はこれを3つのアンマッチと呼んでいます。
- 期首残高のアンマッチ: 提出後に手元データを修正するとこうなります。
- 勘定科目のアンマッチ: 月中のデータ入力時にオペレータを悩ませます。
- 期首残高が揃うタイミングのアンマッチ: システム導入スケジュールに影響します。
会計コンサルタント会社にデータを提出した後、社内で迷子Invoiceが発覚する場合があります。この場合、会計コンサルタント会社に対してデータの修正依頼が間に合わず、社内のInvoiceベースの債権債務残高と会計コンサルタント会社から送られてくるGLの債権債務科目残高が合わなくなり、原因究明に時間がかかります。
また、会計コンサルタント会社はインドネシアの会社法に基づいて正しい財務諸表を作成することが任務です。多くのクライアントを抱える以上、管理負荷を抑えるためには、なるべく共通の勘定科目を使用することが求められます。これは仕方のないことだと思います。
ただし、手元の勘定科目とのマッピングが不十分な場合、会計入力担当者がグレーな取引をどの勘定に入れるべきか分からなくなり、月末に科目別残高の照合ができなくなります。結果として、締め処理もできなくなります。
さらに、前月の締め処理後の確定データが届くのが早くても翌月の20日前後になるため、システム導入プロジェクトを作成する管理者のスケジュール管理が難しくなります。
よくある質問|インドネシア製造業の会計問題
本稿の内容に沿って、繰り返し出る問いを短く整理します。
なぜインドネシアの日系製造業でデータの不一致が発生するのですか?
インドネシアの日系製造業では、業務システムの機能間連携の問題が原因でデータの不一致が発生することがあります。特に、債権債務残高とGL上での残高の不一致や、債権一覧と売上の不一致がよく見られます。これらはシステムの不具合ではなく、各部門の入出力の方法やタイミングの違いによるものです。
為替評価替処理の際に注意すべき点は何ですか?
為替評価替処理を行う際には、締処理後のデータ修正が必要な場合、為替評価替もキャンセルした上で行わないと、修正分が月末評価額に反映されません。締処理がズレ込み、A/RとA/P決済処理をフライング入力すると、月末A/P残高が変わってしまうため、注意が必要です。
インドネシアでの会計監査の義務はどのように定められていますか?
インドネシアでは、外国資本会社(PMA)はすべて大企業扱いされ、外部監査を受ける義務があります。大会社の定義は「資本金5億円以上または負債200億円以上の会社」とされており、法定監査が義務付けられています。非公開会社でも、会計監査人の監査を受けなければならない法律があるため、対象となる大会社が法定監査を行わない場合、法律違反で罰金の対象となります。

