インボイスと在庫管理における会計処理の詳細

2014/12/03

インボイスと在庫管理における会計処理の詳細を構造化した図解

船上在庫やインボイス未到着在庫を業務システムで管理する際、船が輸入国から出航した時点で資産を未着品勘定に計上します。委託販売のために発送された商品は積送品勘定に計上されます。インドネシアでは、これらはすべてGood In Transit(積送品)として扱われ、債務は仮買掛勘定に計上されます。

インドネシアの会計システムと仕訳・財務三表の関係を構造化した図解

インドネシアの会計システム

インドネシアの会計システムはSaaS化が進んでいるが、導入率は8%以下です。新しいSaaS型会計システムが市場でローンチされ続ける理由は、シェア拡大の潜在性が高いからです。会計システム普及により自動仕訳が一般化し、経理担当者の簿記テス…

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この記事でわかること

  • 船が輸入国から出航した時点で資産を未着品勘定に計上します。
  • インボイスが先に到着する場合、未入荷のインボイスを会計システムの債務A/Pから計上します。
  • 建設仮勘定は工事の完成までの費用を管理するための一時的な勘定科目です。
  • 在庫移動時にプロジェクトコードを付番できない場合、直接材料費のプロジェクト単位でのコスト管理ができません。
  • 債権債務年齢表は未来のキャッシュフローの予定を立てるために重要です。

輸入では貨物よりもインボイスが先に到着する

海外からの輸入では、通常インボイスが先に到着し、その後に荷物が到着します。しかし、生産管理システムでは未入荷のインボイス登録ができないため、未入荷のインボイスを会計システムの債務A/Pから計上します。この際、自動仕訳により輸送中の荷物は未着品(Good-In-Transit)勘定に計上されます。

インボイス到着時に会計のA/Pから自動仕訳

  • (借) Good-InTransit    (貸) A/P trade

翌月以降、荷物が到着した際に生産管理システムで入荷処理とインボイス登録を行い、入荷実績が会計システムにインターフェイスされます。インターフェイスシステムは生産管理システムの入荷実績を基に、会計システムのA/Pインボイス登録履歴を確認し、インボイスが登録済みであれば、Good-In-TransitをGoodsに振替える仕訳を生成し、会計システムの元帳(G/L)に登録します。

荷物到着時に入荷・インボイス登録処理よりG/Lに自動生成

  • (借) Goods    (貸) Good-InTransit

最終的な決済処理は、通常通り会計システムのA/P消込機能で行います。

国内取引でインボイスが遅れて到着するケース

仕入先からの荷物が到着し、インボイスが月内に届く場合は、通常の入荷処理とインボイス登録処理を行います。インターフェイスシステムを使用して、生産管理システムの入荷実績を基に会計システムのA/Pインボイス登録履歴を確認し、インボイスが登録済みであれば、会計システムのA/Pに登録します。

  • (借) Goods    (貸) A/P trade

しかし、インボイスが月をまたいで到着する場合は複雑になります。入荷した材料はすぐに入庫し投入したいので、入荷処理を行いますが、システム上インボイス登録は月締め処理のために入荷と同月に行う必要があります。原価計算上も入荷即投入した材料は当月の製造原価に反映させたいので、月末にインボイスが届いていない場合でもテンポラリーのインボイスを登録し、締め処理と原価への反映を行う必要があります。

荷物到着時に入荷・テンポラリーインボイス処理より元帳(G/L)に自動生成

  • (借) Purchase expense    (貸) A/P-In-Transit (A/P Accrued)

インボイスの到着をもって経過勘定A/P AccruedはA/Pに振替られます。

インボイス到着時に会計のA/Pから自動仕訳

  • (借) A/P-In-Transit (A/P Accrued)    (貸) A/P trade

経過勘定(時間の経過とともに費用となったり収益となったりするもの)の代表として未払費用がありますが、A/P-In-Transit (A/P Accrued)は費用ではないため、未実現債務、前計上債権、仮買掛など適切な訳を付けるのが難しいです。

建設仮勘定と仕掛品勘定

建設仮勘定(Construction in progress)は、有形固定資産の建設や製作のために、工事の完成や建物の引渡しまでに仮払い、または前払いした工事費、材料費、労務費、経費を管理するための一時的な勘定科目です。

工場の設備を日本から輸入する際、FOBの本船渡し契約の場合、出港した時点で自社の資産となりますが、送料(Freight charge)やPIB(輸入申告書Pemberitahuan Impor Barang)に記載される関税(Bea Masuk)、PPh21などの税金、

SPPB(通関許可書Surat Persetujuan Pengeluaran Barang)費用などのCIF費用(Cost, Insurance and Freight)が事後にかかるため、金額確定前段階では固定資産に組み入れず、建設仮勘定に一時計上します。

建設仮勘定は「自社で使う予定の固定資産」に限定され、「販売する商品」としての固定資産の建設途中のものは未成工事支出金(Cost of uncompleted contracts)として区別されますが、インドネシアではこれが分かれているケースはあまり見られません。そして、将来販売する棚卸資産であれば仕掛品勘定(Work In Process)に計上します。

  • (借) 建設仮勘定      (貸)当座預金
  • (借) 有形固定資産    (貸) 建設仮勘定

在庫移動と在庫振替

非製造業向けERPパッケージシステムでは、在庫移動処理は存在しても在庫振替処理がないことが多く、これが製造業に適用する際の制約となります。製造業では、購入品が様々なプロセスを経て形を変え、最終的に製品として出荷されます。特にサブコン(外注)への在庫移動に伴い、材料が仕掛品に変わる要件を満たすためには、会計モジュールとリンクした非製造業向けシステムに以下の制約があります。

  1. 在庫移動でプロジェクトコードを付番してコスト管理することができません(費用が発生しないため)。
  2. 在庫移動で在庫管理上品目コードを変更することはできません(場所の移動のみのため)。

材料(R/M)のサブコンへの移動時にプロジェクトコードを付番し、プロジェクトごとに仕掛品(WIP)として管理する要件は、在庫移動時に自動仕訳を発生させ、元帳(G/L)上でプロジェクトごとに管理することです。しかし、在庫移動ではシステム上費用は発生しないため、プロジェクトコードを付番して仕掛品勘定に費用として積み上げることができません。

サブコンへの物の移動時にプロジェクトコードを付番し、元帳でプロジェクトごとにコストを管理し、品目コードを変えるには、在庫振替により受けと払いの実績をセットで発生させる必要があります。ただし、払いと受けの2ステップの処理が必要で、以下の2つの仕訳で振替を行います。

  • (借) Temporary    (貸) R/M
  • (借) WIP       (貸) Temporary

購入品を入荷する際にプロジェクトコードが決まっていれば、入荷時にプロジェクトごとに材料勘定に計上することが可能です。これにより、元帳上でプロジェクトコードを持たせ、プロジェクト単位のコスト管理が可能になります。しかし、現実的には材料購入時にプロジェクトコードや製品グループ等の社内用途が確定できるケースは少なく、一般的には受払いの過程で用途が確定するのが普通です。

費用・収益発生のタイミング

業務システムにおける費用や収益の発生タイミングは、以下の4つに分類されます。

  1. インボイス発行時(資産プラス、売上プラス)
  2. 材料消費(R/M Usage)時(売上原価プラス、資産マイナス)
  3. インボイス受領時(のちに売上原価化する費用プラス、債務プラス)
  4. その他費用計上時(費用プラス、債務プラス)

これらのタイミングでプロジェクトコードを付番することが可能です。しかし、在庫移動時にプロジェクトコードが付番できない場合、出荷時まで直接材料費のプロジェクト単位でのコスト管理ができません。サブコンで製造加工中に管理できるのは、期間中に発生する製造間接費(Factory Overhead=FOH)や労務費のみです。

出荷時に初めて直接材料費を含めた全体のコスト管理表が完成します。サブコン側で別途発生する材料費等は、サブコンからのインボイス到着時にプロジェクトコードを付番し、売上原価に振替えることが可能です。

  • (借) Expense work 100    (貸) A/P 100
  • (借) COGS 100    (貸) Expense work 100

事例:出荷時の仕訳例として、Shipping ClearingとInv. Itemの振替があります。

  • (借) Shipping Clearing 100    (貸) Inv. Item 100

事例:Invoice発行時には、A/RとSales、COGSとShipping Clearingの振替が行われます。

  • (借) A/R 100    (貸) Sales 100
  • (借) COGS 80    (貸) Shipping Clearing 80

相対勘定による相殺処理

輸送費やその他の費用はプロジェクトコードを付番され、仕掛品に積み上げられます。そして、売上計上時に仕掛品の累積が売上原価化します。

  • (借) Biaya transportasi 100    (貸) Petty Cash 100

このように取引時点では費用プラス資産マイナスの仕訳が発生しますが、この費用は仕掛品として、将来売上原価に反映されるべきものです。言い換えると、費用の発生と同時に仕掛品の評価額が上がることを意味します。

  • (借) WIP 100    (貸) Transportasi Payable 100

相対勘定(Contra account)は特定の勘定をオフセット(相殺)するものであり、Biaya transportasi(費用)をTemporary account(P/L科目)を用いて仕掛品に振替えています。しかし、試算表(T/B)にはBiaya transportasiの残高が残っているため、そのままP/Lに掲載できます。

Temporary accountというContra accountがないとT/BからP/Lの明細が作れません。

contra

Contra accountの代表例が貸倒引当金(Allowance for Doubtful)と減価償却累計額(Accumulated Depreciation)です。これらはマイナス資産勘定で、間接的に資産を減らすことによって、インボイス発生額に合ったAR金額を管理し、固定資産の取得額を維持しながら、B/S上では差引き後のNetの金額を把握できます。

  • (借) 貸倒引当金繰入額(プラス費用)    (貸) 貸倒引当金(マイナス資産)
  • (借) 備品減価償却費(プラス費用)      (貸) 備品減価償却累計額(マイナス資産)

費用のプロジェクトへの配賦方法

直接材料費は出庫のたびにプロジェクトコードをキーに元帳上で自動的に管理されますが、労務費や製造間接費等は金額が判明した時点(月末など)にプロジェクトにコストを振り分けます。労務費は従業員マスタに設定してある「時間単価x作業時間」でプロジェクトに対するコストを計上します。ただし、時間単価は標準単価として1つしか設定できないので、休日出勤や残業時の単価の増加には、コスト計上時に手修正して反映させます。

  • (借) Salaries 200,000    (貸) Bank 200,000
  • (借) WIP 200,000    (貸) Payrol payable (contra a/c) 200,000

労務費も同じく仕掛品に振り分けるためのContra accountが必要になります。月中に製品原価を確定するために労務費と経費を標準原価で計算する場合、月末に実際原価との差額を修正する仕訳が必要になります。

工事案件のキャッシュフローへの影響

インドネシアの工場では、製品の出荷後にお客さんで検品完了報告を受けてからインボイスの発行が可能になるまで通常1週間ほどかかります。しかし、長期の工事案件では、進行基準で分割請求が可能な場合でも、出荷からインボイス発行まで数ヶ月空くことがあります。これは受注登録が完了しているものの、売上が立たないため受注残が溜まる状態です。

売上(収益)にならないため、P/L上の利益が上がらず、インボイス発行を待ちながら赤字のP/Lを眺めることになります。

利益があろうとなかろうと、固定費は毎月一定額かかります。固定費支払いのために融資を受けることは避けたいので、経営者は営業にインボイス発行を早めるよう促します。営業は顧客から分割請求の許可を取り付けて安心します。

債権債務年齢表(Aging Report)は、未来のキャッシュフローの予定を立てるために経営者にとって重要です。しかし、受注残が多いと正確なキャッシュフローの動きが把握できなくなるため、受注登録時にインボイス発行スケジュールを入力する仕組みが必要な場合があります。

よくある質問|インボイスと在庫管理の会計処理

本稿の内容に沿って、繰り返し出る問いを短く整理します。

船上在庫はどのように会計処理されますか?

船上在庫は、船が輸入国から出航した時点で未着品勘定に計上されます。委託販売のために発送された商品は積送品勘定に計上され、インドネシアではこれらはGood In Transitとして扱われます。債務は仮買掛勘定に計上されます。

インボイスが遅れて到着する場合の処理は?

インボイスが月をまたいで到着する場合、入荷した材料はすぐに入庫し投入したいので、テンポラリーのインボイスを登録します。これにより、締め処理と原価への反映を行います。インボイス到着時に経過勘定A/P AccruedはA/Pに振替られます。

建設仮勘定はどのように使用されますか?

建設仮勘定は、有形固定資産の建設や製作のために一時的に使用される勘定科目です。工場の設備を輸入する際、金額確定前段階では固定資産に組み入れず、建設仮勘定に一時計上します。将来販売する棚卸資産であれば仕掛品勘定に計上されます。