インドネシアの税法は性悪説の上に成り立つ【税務署がダメ元で納税させる傾向】

土地建物賃貸料にかかる源泉分離課税PPH4(2)

元インドネシア駐在員の方から先日伺った話ですが、自社工場を他社に賃貸することになったものの、借主は分割払いするにもかかわらず、賃貸収入に対してかかる源泉所得であるPPH4(2)は契約金額全額に対して納税する必要があると言われたとのこと。

  1. A社が90億で工場用地をB社に賃貸
  2. B社はA社に対して30億を3年かけて3回に分けて支払う⇒賃貸契約書には90億を3年払いであることを記載
  3. A社は90億に対して10%のPPH4(2)納税の義務があるが、これはB社が源泉し納税する義務がある。
  4. B社は初年度は30億しか払わないので10%の3億を納税しA社に27億支払うはず。
  5. ところがB社は全額90億の10%の9億を納税しA社には21億しか支払わないという。

B社が初年度に90億を負債として一括計上し、毎年30億ずつ償却する会計処理をしてしまう場合、税務署は初年度に全額90億の10%である9億の源泉を求める可能性がありますが、A社にとってみれば初年度の取り分が27億と21億ではキャッシュフロー上大きなインパクトがあります。

PPH4(2)は土地建物の賃貸収入や銀行預金の利子収入などにかかる分離課税(Final Tax)であり、スタートアップ企業が、経営成績である利益に対してかかる法人所得税制ではなく、事業主に対して一律公平にかかる外形標準課税PP23も含まれ、基本は支払う側が源泉し納税します。




インドネシアの税法は源泉してなるべく返さない性悪説に基づく

日本の税制が正しく申告することを前提とする性善説に基づいているとすれば、インドネシアの税法は源泉先取りで出来るだけ返さないという性悪説の上に成り立っていると言えます。

輸入時に売上計上時の税金を前払いするPPH22や、海外からサービス提供を受けた場合に海外の会社からinvoice支払う側が別途納税(日本には支払えないから)するVATオフショア、日本からの営業支援(サービス、ロイヤルティ支払い、金利)に対するPPH26など、インドネシアの税金は基本は源泉方式であり、税務署はダメ元で納税させるので、異議申し立ての税務裁判までいった場合、5割から6割の確率で納税側が勝つということです。

この性悪説はインドネシア人の納税意識の低さに対するものであり、2016年7月に実施された租税特赦法(タックスアムネスティ)にて過去の税務申告(SPT Tahunan)における申告漏れをチャラにし、国民の納税意識の高めようという取り組みがなされましたが、それ以降に自分がアパートや家を借りた際に、大家さんが賃貸からの所得を申告しているような気配を感じたことはなく、そもそも賃貸収入に税金がかかることすら知らない人もいました。

日本からインドネシアにモノを送る際にかかる関税も性悪説の元で理不尽な税金を掛けられる最たるもので、ちょうど先週日本から発送された、12月の製造業フェアで無料配布する予定の製品パンフレット500冊が現在郵便局留めになっており、販売しようがしまいが「疑わしきは罰する」の精神で、数万円の関税の請求書を出してくるであろう郵便局常駐の税関職員とどのように交渉しようか、戦線恐々としているところです。

インドネシアの税務リスク

先月参加した税務セミナーで、インドネシアの日系企業が注意すべき税法に関するリスクとは申告漏れのリスク、遅延のリスク、税務調査のリスクの3つであると税理士の先生がおっしゃられていました。

外国資本投資会社(PMA)の場合、すべての企業がインドネシアでは大企業扱いされるため、会計外部監査を義務付けられた上で税務調査対象となりますが、国内投資会社(PMDN)の場合はよほどの大企業でない限り税務調査に戦々恐々とすることもないようです。

所得税(PPH)と付加価値税(PPN)の納税と申告の申告漏れと遅延に関しては、現行では以下のように比較的厳しい罰則になっていますが、2021年を目途に罰則の緩和の方針で税法の改正が行われるようです。

  • PPHは翌月10日までに納税し遅れたら2%の罰金で、翌月20日までに報告し遅れたらRp.100,000の罰金。
    ⇒つまり納税は間に合って報告だけ遅れたらRp.100,000の罰金のみ。
  • PPNは翌月末までに納税し報告する義務があり、納税が遅れたら2%の罰金で報告が遅れたらRp.500,000の罰金。
    ⇒つまり納税は間に合って報告だけ遅れたらRp.500,000の罰金のみ。