コーヒー栽培と観光ビジネスが融合したインドネシアのバリ島キンタマーニ(Kintamani)のコーヒーは、スマトラのアチェ・ガヨやミナン・ソロックのようなフルーティーさに若干スパイシーなアクセントを加えたようなさらっとした飲みやすいコーヒーです。 「インドネシアのコーヒー」と聞いて思い浮かぶのはオランダ植民地時代に持ち込まれたコーヒーノキを起源とするプランテーション、北回帰線と南回帰線の間に東西に連なるコーヒー栽培に適した地理的風土、多数の高原地帯で栽培され風味も味わいも異なるご当地コーヒーなどです。 続きを見る
インドネシアのコーヒー
観光地としてのバリ島のコーヒー農園
バリ島ウブドゥから家具屋や木彫り屋が並ぶJl. Raya Andongに入り、そのままトゥガララン(Tegallalang)のライステラスを越えてひたすら北上するとキンタマーニ高原が見えてきますが、その途中に道すがらコーヒーを栽培する農園っぽいものが点在しており、近年の世界的なスペシャリティコーヒーブームに便乗して、観光客用に見学設備を設けたり試飲させてくれたり、うまく観光スポットに組み込むあたりは、いかにも観光地としてのバリ島でビジネスをする人々のしたたかさを感じます。
自分は2001年から2008年までバリ島で家具やハンディクラフトの輸出を行っており、日本のお客さんがバリ島に買い付けに来たついでに、キンタマーニ高原を観光したいというリクエストがあるたびに、もぐりの観光ガイドっぽい真似をしていました。
しかしキンタマーニ高原が一望できる展望スポットに到着するやいなや、物売りのおっちゃんやおばちゃんがそぞろ集まってきては、木彫りだのパレオ布だのペンだのを売りつけようとするのに辟易していました。
長時間の運転で疲れているときはおもわず怒気を含んで追い払ったりしていましたが、今考えるとあのおっちゃんおばちゃんたちは、世界的観光地であるバリ島に流入する観光ビジネスのピラミッドの最底辺を構成する人々であり、あのくっ付き虫のようなしつこさは、どんなビジネスをやるにあたっても見習うべきものだと、いまさらながら懐かしく思い出します。
コーヒー界の「松茸的存在」であるルワック(Luwak)コーヒーは、東南アジア、インド、ヨーロッパまで広く生息する、ジャコウネコ科の哺乳類の糞の中にある、未消化かつ発酵済みの豆から作られますが、森の中でルワックさん自身が自分の食べたいコーヒーチェリーのみ厳選した結果として排出される糞と、人間がチョイスした餌として与えられるコーヒーチェリーを食べた結果排出される糞とでどんな味の違いが出てくるのかよくわかりません。
近年はケージの中で飼育して糞を集める「養殖」ものが大半であり、バリ島のコーヒー農園でもケージで飼われているルワックが見学できるようです。
ほろ苦さとフルーティーな触感が特徴的なバリ島キンタマーニのコーヒー

ウブドゥから北上すること約1時間、トゥガラランのライステラスを経てしばらく田舎道を走ると見えてくるバリ島のキンタマーニ高原です。
よくいわれる「バリコピ」とか「コピバリ」というのは、コーヒーの粉がカップの上を漂流した状態でスプーンでかき混ぜて、粉が沈殿するを根気強く待ってから飲むtubruk(トゥブルック)という飲み方です。
風味の傾向
- 香り ★★
- 苦み ★★
- 酸み ★★★
- コク ★
- 甘み ★
これが沈殿しきれないで中層あたりを回遊しているコーヒーの粉が喉にひっかかってむせかえってしまい、これがトラウマになって「バリ島のコーヒーは粉っぽいから嫌だ」と誤解されることがあるのですが、これは単にバリ島の地元の人がフィルタを使わないで飲んでいる飲み方を総称しているのであって、本来バリ島の高原地帯には、コーヒー栽培に適した土壌と気候があるため、品質の高いアラビカ種のコーヒーが生産されています。
コーヒーは焙煎具合によって風味の傾向が変わるとはいえ、バリ・キンタマーニのコーヒーの風味はスマトラのアチェ・ガヨやミナン・ソロックのようなフルーティーさに、若干スパイシーなアクセントを加えたようなさらっとした飲みやすいコーヒーです。
意外にもジャカルタのカフェでキンタマーニ高原のバリコーヒーを出すところは少ないのですが、PCやネットワーク機器、スマホにカメラに海賊版ソフトまで、何でもありありな、クニンガンのMall Ambassadorの4階にあるAroma Nusantaraでは、シングルオリジン(産地農園単位)のバリ・キンタマーニ産コーヒーをマニュアルブリューで淹れてくれます。