インドネシアのSDGs達成に貢献するオンラインビジネス

2020/09/25

ジャカルタ

SDGs(エスディージーズ)とは国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲットから構成されています。ASEANのSDGs達成への貢献が日本の国益に繋がるという観点からアジアDX(デジタルトランスフォーメーション)構想が推進されています。

スナヤン競技場(Gelora Bung Karno)

インドネシアの政治・経済・社会

日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しています。

続きを見る

インドネシア社会のデジタル化が目指すところ

インドネシアの電子マネーはE-Tollカードのようなチップベースの非接触ICカード型と、GoPayのようなスマホアプリ型のサーバーベースに分かれますが、サーバーベース型の電子マネーは、GoJekやGrabなどの配車アプリに紐づいて発展したインドネシアの特殊な事情があります。

MRT乗車のためにSuicaのような非接触ICカード型の電子マネーが使用される。

僕がインドネシアに来た20年以上前から、会議中にテーブルの上にノキアやエリクソンの携帯を2つも3つも並べて置くことがステータスで、金が無くても分割でスマホを買うくらいモバイルガジェット好きな国民性ですから、2014年に配車アプリの先駆けとなるUberが進出して以来、GrabやGojekなどの配車アプリが包括する各種サービスが日常生活に浸透するのはあっという間でした。

特にインドネシアを代表するデカコーン企業であるGojekは、ライドシェアから食品配達、バイク便、引っ越し、マッサージなど生活サービス全般に進化したGoLife、それらすべての決済手段としてのGoPayという「移動⇒サービス⇒決済」というワンストップサービスを提供する中で、インドネシアが抱えていた多くの社会問題解決のために貢献しました。

いまさらですが、昔そこらじゅうで暇していたオジェックをオンラインで繋いで時間とコストばかりかかって生産性の低い移動や配送という作業をスマホの操作だけで彼らに外注してしまうことで業務効率の向上と富の再配分をいっぺんに実現してしまったGOJEKって革命的ですな。

コロナ禍の中にあってはインドネシアの地方特産事業や限られた商圏で営業する屋台などをデジタルプラットフォーム上に載せることにより、零細事業主の支援、国産品の販売・消費の機会を創出すると同時に、付加価値産業が少なく輸出競争力が弱いという弱点を、インドネシアの国内消費を自給で賄うことで経済を回すカタリスト(触媒)的役割を果たしています。

イブの夜にBaksoの配達頼んだGOJEKは、新しい所得再配分の流れをIT技術によって構築すると同時に失業率下げることによる犯罪率低下という経済と社会の両面に貢献していた。ビジネスで重要なのはと結局そこに社会に貢献するプロダクトやサービスがあるかどうか、当たり前のようで忘れがちなこと。

増えた国内消費を国内産業で賄うことが雇用を創出し、生み出されるサービスは経済主体の生産性を向上させ、オンライン化が地域間格差を縮めるという経済効果を生み出しますが、一方で都市部だけが豊かになっているという意見もあり、それはジョコウィ政権が弱いとされる貧困対策、福祉政策として取り組むべき問題かと思います。

ジョコウィ大統領が公式に推進している#BanggaBuatanIndonesia。要は国産品に誇りを持とう、買おう、そのためにオフラインの零細自営業者をオンラインに乗せて国内付加価値が付いた製品の需要と供給を増やし皆でコロナを乗り切ろうという、輸出が弱いが故の自国製品優先運動。

インドネシア

インドネシアの中小零細業者のオンライン化促進と自国優先主義

国内中小零細企業をeコマースに乗せることで、インドネシア製品の販売機会を広げようとい政府による奨励は、外国製品を買って国富を流出させるのではなく、国内付加価値の付いた製品を買うことを奨励し、国内でのお金の循環を良くするという自国優先主義と言えます。

続きを見る

このように多くの社会問題を解決すると同時に、新しいイノベーションを促進することでインドネシアの発展に寄与するスタートアップ企業を輩出しようというのがGoJek創業者であるナディム・マカリム氏の企業理念であり、インドネシアのデジタル化が目指すところは経済成長促進と社会問題解決、そして次世代のインドネシアの繁栄を支える事業体の育成です。

GoLife内の6万のBPを効率化し売上を伸ばすビジネスエンハンスを担当する友人曰く、内部はマッキンゼーなど戦略系コンサルからの転職組が多く飽和状態、DoorToDoorで戦略からデリバリーまでできる人材が貴重。副業奨励、リクルートと同じくゴジェック卒業組が起業して社会で活躍することが会社の理念。

ASEANのSDGs達成への貢献と日本の改革を目的としたアジアDX(デジタルトランスフォーメーション)構想

今日ジェトロ主催のセミナーで経済産業省の担当者の方から話がありましたが、日本ASEAN間で経済産業協力の推進のため、2020年4月に「日ASEAN経済強靱性強化に関する共同イニシアティブ」、7月には「日ASEAN経済強靱化アクションプラン」が合意され、50を超える具体的なアクションプランが出されるという、世界でも例のない先駆的取り組みが進められています。

アクションプランの3つの枠

  1. 緊密な経済関係の維持(過去の連携の再確認)
    非関税障壁の撤廃や貿易手続きの簡素化
  2. 経済への悪影響の緩和(現在の危機対応の協力)
    経済活動を維持するための安定した物資供給やデジタル技術の社会実装推進
  3. 経済強靱化の推進(未来に向けた共創)
    サプライチェーン強化や産業界の人的交流

これらのアクションプランを実現していく中で、地域全体の経済成長が促進されていきますが、一方でデジタル化への対応、産業高度化、地域間格差是正、環境問題などの新しい経済・社会課題に直面することになることが予想され、2015年9月の国連サミットで採択された2030年までの持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals エスディージーズと読む)を達成するために「イノベーティブ&サステナブル成長対話(DISG=(Dialogue for Innovative and Sustainable Growth)」が創設されています。

SDGs(持続可能な開発目標)

そしてDISGの最大の特徴はこれらのSDGs達成のために、デジタルコネクティビティ、社会課題の解決に資するオープンイノベーション連携、スマートシティ促進、スマート製造などのデジタル技術の活用を前提としている点です。

DISGで議論されるテーマ

  1. サプライチェーンのアップグレード
    強靱なサプライチェーン構築
  2. グリーンイノベーション
    強靱なエネルギー構造の構築や環境制約と経済成長の両立
  3. 医療・ヘルスケア、農業・食糧問題
    医療アクセスの改善、農村部の生産性向上

インドネシアでデジタル技術を活用してSDGs達成のために課題解決を行うビジネスを行っているのがまさにGoJekであり、日本としてASEAN諸国に資金・人材・技術・ノウハウを戦略的に投入して、連携による新事業創出を図ろうというのがアジアDX(デジタルトランスフォーメーション)構想であり、これはSDGsへの貢献と同時に、日本自体の改革に繋げることも目標としています。

ジェトロさんのセミナーで経済産業省の方が話してましたが、ASEANのSDGs達成への貢献は日本にとって戦略的に重要で、デジタル技術を活用したビジネスの創出のために技術や出資を行うアジアDX構想を推進しているそうです。最もデジタル技術で日本がASEANより優位かどうかは微妙になりつつありますが。