インドネシアの不動産

2024/04/06

西ジャカルタの高層アパート

「インドネシアの不動産」と聞いて思い浮かぶのは不動産価格暴騰を防止するために外国人名義での所有権を認めていないこと、国内中間層の拡大に伴う不動産需要の高まりによるジャカルタ周辺部の不動産価格の値上がり、外国人を配偶者に持つインドネシア人の土地所有に際して必要となる財産分離に関する手続きなどです。

所得水準が上がったインドネシア人中間層による住宅需要を満たすために、Agung PodomoroグループやLIPPOグループ、Summareconなど大手ディベロッパーがジャカルタの西のBSD(Bumi Serpong Damai)、南のデポック~ボゴール方面、東のブカシ~チカラン~カラワン方面に1,000万円から2,000万円のクラスターハウジングを次々に開発しており、コロナ禍で商業ビル需要が減少し価格が下落するる中でも、クラスターハウジングの一戸建て需要は堅調に伸びています。

不動産価格が高騰しているといえども、残念ながらインドネシアは外国人に対して不動産の所有権を認めていませんので、日本人が投資目的で不動産を所有権で購入することはできませんが、国内の個人と企業の需要と供給で価格が動いている水準であり、規制に守られたガラパゴス市場と言えるかもしれません。

外国人が個人名義で土地を購入する場合は、オーナーやビル管理会社と25年~30年の賃貸借契約を結ぶことで土地の上にある建物に対して設定された使用権(Hak atas tanah)を取得するしかなく、完全なるフリーホールド(Freehold)である所有権(Hak Milik)で所有することを認められておらず、賃貸権であるリースホールド(Leasehold)として、契約期間中は排他的に当該土地を占有し使用することができます。

インドネシアのアパートのほとんどが区分所有権(Strata title)または建築利用権(Hak Pakai)であり、今後建設される高級アパートは外国人への使用権設定を前提とした区分所有権での販売が増えていくのかもしれませんが、インドネシアの法律は草案のまま可決されて頻繁に法改正される傾向があるため、外国人にとって政治的要因に基づく投資リスクが高く、直ちに外国人によるアパート投資需要が期待できるとは考えにくいと思います。

当ブログでは私と同じようにインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、日常生活やビジネスの現場で出会うさまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるような不動産についての記事を書いています。

インドネシア(ブカシ)での一戸建て住宅購入

現在インドネシアの土地の管理形態として4種類の権利を定めています。

  1. Hak Milik(所有権)
    インドネシア国籍者のみ
  2. Hak Guna Bangunan(建築利用権)
    会社名義の不動産はほとんどがこれで有効期間30年+20年延長可能。
  3. Hak Pakai(使用権)
    定期借地権付き住宅で有効期間25年+20年延長可能であり、在住外国人名義(年間183日以上滞在のKITASホルダー)での不動産所有はこれしかない。
  4. Hak Guna Usaha(事業利用権)
    大型事業用地で可能であり、有効期限35年+25年延長可能。

Hak Milikは完全なるフリーホールド(Freehold)であり、Hak Guna BangunanやHak Pakaiは他人から借りた土地の上での権利を行使することができるリースホールド(Leasehold)に該当し、それぞれ日本の所有権と賃借権に相当するもので、フリーホールドの中でもアパートのような建物に構造上区分された専有部分の区分所有権はStrata titleと呼ばれています。

フリーホールドは、当該土地をあらゆる合法的な目的のために使用することができ、いつでもだれにでも譲渡することができる一方で、リースホールドは有効期限25年~30年の間賃貸人との間で締結される賃貸借契約に基づき、排他的に当該土地を占有し使用することができる権利です。

土地に住宅を建設する場合は住宅建設許可証IMB(Izin Mendirikan Bangunan) rumah tinggal、オフィス用の建物を建設する場合は非住宅建設許可証IMB untuk non rumah tinggalを取得する必要があります。

不動産開発会社が、クラスター住宅を建築利用権(HGB)で販売するのは、所有権(SHM)の名義になれるのが『インドネシア国籍を有する個人(warga negara Indonesia)』のみと法で定められているからであり、購入後にIMB(建築許可書)を個人名義に変更し、sertifikat tanah(土地権利書)を所有権に変更します。

クラスターハウジング

ジャカルタ近辺での不動産投資によるインカムゲインとキャピタルゲイン

インドネシアのアパート投資では購入価格の10分の1の年間賃料10年間貸してインカムゲインを享受した後で、売却によるキャピタルゲインを狙うのがよいとされてきましたが、不動産価格の高騰と価格上昇率の低下により、今では20分の1の賃料で15年間貸して売却するのが現実的ではないでしょうか。

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インドネシア(ブカシ)での住宅賃貸

私がインドネシアに来た1997年、東ジャカルタやその先のブカシは、いわゆる土着のインドネシア人プリブミ(pribumi)が非常に多く住む地区というイメージで、泥棒(maling)やすり(copet)、バイクによるひったくり(jambret)などの犯罪や、学校間による抗争(tawuran)が多く、2000年代初頭に頻繁に発生した爆弾テロに関わったテロリストが潜伏するなど、あまり良いイメージはありませんでした。

分譲住宅と言えばRumah Kompleks Perumahanであり、同じく大手ディベロッパーによる住宅地開発の一環として販売されますが、区画はkavlingという単位で切り売りされ、どんな家を建てようが基本自由であり、kavlingと外部とを仕切る塀を設置します。

最近の大手ディベロッパーの住宅地開発の主流はクラスター形態であり、入り口ゲートは一つにして区域全体がフェンスで囲まれ、公園やプールなどの公共施設を設置したセキュリティとアメニティを重視した設計になっており、区域内の通路や上下水道は、近隣住人との共用施設となり、維持費や修繕費はアパートメントと同じように管理費(Iuran Pengelolaan Lingkungan)がかかります。

Summarecon

インドネシア(ブカシ地区Summarecon)で家を借りるといくらかかるか?

アパートに比べて一戸建てはセキュリティの面で劣りますが、クラスターハウジングという集合住宅は、区画全体が高いフェンスで囲まれ入り口ゲートは1つしかなく、区画内を24時間セキュリティが巡回してくれるので、普通の一軒家に比べてセキュリティは高いといえます。

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インドネシア(バリ島)での一戸建て住宅建築

2003年から2004年にかけて、バリ島で土地探しから始まって建築士を雇ってプール付きの一戸建て住宅を建てるという非常に貴重な経験を積むことができました。

海外での不動産取引はリスクが高く、過去にバリ島でも多くの日本人が詐欺まがいの事件に巻き込まれた事案を耳にしますが、結局のところ誰に依頼するか、どこに依頼するかという出会いで上手くいくかどうかが決まると思います。

それでもプロジェクトにはトラブル発生は当たり前という前提で、想定の誤差内で物事が進んでいけば成功という柔軟な意識を持つことが、バリ島での幸せな住宅建築のポイントではないでしょうか。

インドネシア(バリ島)での一戸建て住宅売却

「不動産を買うなら売りやすい物件を買え」と言われるにもかかわらず売れやすい物件は得てして高い、これが不動産売買の難しさかと思います。

いくら20年以上ゆるやかなインフレを続けるインドネシアでも、不動産投資は余剰資金で行う長期投資であって、都市部のアパートを駐在員に貸して賃貸収入を得るとか、バリ島のヴィラを旅行者に貸してリターンを得るとか、提示される推定利回りがどんなに魅力的なものであっても、インカムゲインで中期で元本を回収して売却という筋書きどおりにいくことは難しいです。

バリ島のフィラ

インドネシアのバリ島でプール付き一軒家を売却するまで

2003年にバリ島に土地を購入し住宅を建築したものの、家具や雑貨を輸出する仕事に将来性が期待できず、ジャカルタで人生の再スタートを切るために、思い切って売却することに決めました。ただ当時はバリ島の景気が上向かず不動産市場は完全な買い手市場であり、売却するのに1年以上かかりました。

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財産分離所有(pisah harta)を明記した婚前契約書

インドネシアは夫婦共有財産制(Harta bersama)が基本にあり、例えばインドネシア人夫婦が旦那さん名義で不動産を購入して売却する場合にも、奥さんの承認が必要になります。

つまり不動産の名義人になれない外国人配偶者を持つインドネシア人は、Harta bersamaの原則から外れますので不動産の購入はできないことになりますが、結婚前に婚姻前の契約(Perjanjian Perkawinan)を作成し、その中に財産分離(Pisah Harta)について明記しておけば可能になります。

Perjanjian Perkawinanには動産(Brang-barang bergerak)と不動産(Brang-barang tidak bergerak)の種類によって所有に関する取り決めが規定されています。

ジャカルタのコタトゥア地区

インドネシアの財産分離所有(pisah harta)を明記した婚前契約書

インドネシアの土地所有形態のうち、Hak Milik(所有権)はインドネシア国籍者のみ、Hak Guna Bangunan(建築利用権)は会社名義の不動産で有効期間30年+20年延長可能、Hak Pakai(使用権)は定期借地権付き住宅で有効期間25年+20年延長可能です。

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インドネシアでの引渡しに伴う契約書

不動産取引の際に、法的に所有権が管理会社から購入者に移転する前に、ユニットが完成した時点でBerita Acara Serah Terima(引渡しの公式案内)と一緒に部屋の鍵を受け取ります。

  • Berita⇒news(ニュース)ではなくannouncement(案内)の意味
  • Acara⇒schedule(イベント・予定)ではなくkeresmian(公式)の意味ここまでで公式案内の意味
  • Serah⇒handover(引渡)
  • Terima⇒acceptance(受領)ただしserah terimaで「引渡」という熟語なので全体で「引渡の公式案内」という意味

不動産売買の手順は以下のとおりですが、売り手と買い手の間で取引が成立した時点で、買い手が売り手に契約金(Tanda Jadi)または頭金(Uang Muka)を払うと同時に予約契約書(Perjanjian Pengikatan Jual Beli=PPJB)を作成します。

  • 不動産売買ではSertifikat Tanah(土地証書)の名義変更する際に、Pejabat Pembuat Akta Tanah(PPAT 土地に関する契約書を作成する公証人)であるNotaris(公証人)に所有権の移転を証明するAkta Jual Beli(土地譲渡書証)を作成してもらう。
  • AJBの原本は2通作成され、1通はNotarisで保管、もう1通はKantor Pertanahan(土地管理局)に登記(土地や建物の「状況」と「権利関係」を 国の機関である法務局に届出し記録すること)または名義変更するために送られ、売り手と買い手にはSalinan Akta(土地譲渡証書のコピー=Copy of the Deed)が渡される。
  • 買い手にとって所有している証拠が大事であるのと同じように、売り手に取っても所有権を手放した証拠は、法的責任がないことを証明する書類であり、税務的にも必要になる可能性がある。
ジャカルタのコタ地区

インドネシアでの取引契約で作成される公式案内Berita Acara

インドネシアでの商品や不動産の引渡しに伴う契約書 で必ず作成されるのが引渡証書Berita Acara Serah Terima(BAST)であり、Beritaはニュースではなくannouncement(案内)の意味、Acaraはイベントや予定ではなくkeresmian(公式)の意味で使われ、日本人にはとまどう言葉です。

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