「インドネシアの植物」と聞いて思い浮かぶのはカリマンタン島の熱帯雨林の中で発見される世界最大の花ラフレシア、バリ島を象徴する花でもありお供えものチャナンに添えてあったりホテルのレセプションで歓迎の意味を込めて耳に挿してもらったりするフランジパニ(プルメリア)、灼熱の熱帯気候を体現するようなハイビスカス、傘替わりに使えそうな大きな葉っぱで有名なアロカシア(クワズイモ)などです。
コロナ禍により都市部の上流層の人々が自宅に引き籠る時間が増えたことで観葉植物栽培ブームが発生し、地方の既存栽培事業者だけでなく、趣味として植物の栽培を行っていた人達が、ECサイトを通して販売するようになりましたが、そもそも零細事業者をオンライン上に乗せるというのはインドネシアの国家戦略にかなっており、植物自体がエコに訴えやすく時代に合ったビジネスと言えるでしょう。
当ブログでは僕と同じようにインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、日常生活やビジネスの現場で出会うさまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるような植物についての記事を書いています。
モンステラ(Monstera)
Monstera(モンステラ)は、アメリカ大陸の熱帯地方に自生するウコギ科ウコギ属の草花植物45種の属名で、名前の語源はラテン語で奇怪を意味する「monstrum」で、その名のとおりモンスターが手を広げたように見えますが、極めて縁起の良い植物で玄関に置いて金運をもたらすと言われています。
常緑のつる性植物で、木の上に20メートルの高さまで成長し、空中に張った根をフックに使いながら上に登っていき、濃緑色で非常に大きく葉は長さは25~90cm、幅は15~75cmに達し、葉身に穴が開いていることが多いです。
コロナ禍中に海外で高額取引された事例が影響し、インドネシア国内での取引価格も上昇しました。
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葉の切れ目や穴から幸運の光を通すと言われるモンステラ
モンステラは中南米原産のサトイモ科のツル性の植物で、葉の切れ目や穴から幸運の光を通すと言われます。花言葉は「うれしい便り」「壮大な計画」「深い関係」など極めて縁起の良いもので、風水的にも幸運や金運をもたらすものと言われています。
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アデニウム(Adenium)
フランジパニ(frangipani)はプルメリアはメキシコや中米、カリブ海地域の固有種であるインドソケイ属の花であり、南ブラジルと北フロリダ州などの暖かい地域でも栽培されており、属内の植物の一般的な名前は広く地域や品種応じて異なりますが、フランジパニまたはプルメリア(Plumeria)と呼ばれることが一般的です。
インドネシアではバリ島を象徴する花であり、寺院の庭やホテルのプールサイドにバリ風庭園を造るには欠かせない存在であり、スパのフラワーバスで湯舟に敷き詰められたりマッサージオイルの香り付けとして使用されます。 フランジパニのミニチュア版と勘違いされるアデニウム 南米原産のフランジパニ(プルメリア)のミニチュア版と勘違いされるアデニウムですが、アフリカやアラビア半島の乾燥地帯を原産としており、乾燥気候に耐えるための水分を貯える塊茎が特徴です。 続きを見る
ハイビスカス(Hibiscus)
ハイビスカスはアオイ科アオイ属の草花植物で、世界各地の温帯・亜熱帯・熱帯地域に自生している数百種からなる属の中では、大輪で派手な花を咲かせることで知られています。
ギリシャ語のhibiskos(ヒビスコス)に由来して名付けられたという説が有力であり、このhibiskosは美を司る女神(hibis)に由来するという説もありますが、実際のところよくわかっていません。
ハイビスカスはインドネシアではbunga sepatu(靴の花)と呼ばれ、交配によって生み出された色とりどりのハイブリッド種の花が栽培されています。 インドネシアで「靴の花」と呼ばれるハイビスカス ハイビスカスがインドネシア語でbunga sepatuと呼ばれるのは、花の形が靴に似ているからではなく、昔インドで花が靴磨きのワックスとして使われていたからです。ハイブリッドの交配種はつぼみのまま落下するケースが多く、適度な日当たりと水を撒くタイミング、風通しなどに気を使います。 続きを見る
ブロメリア(Bromelia)
ブロメリア科(ブロメリア属)は、主に熱帯アメリカ大陸に自生する75の属と約3590種の単子植物のひとつで、アメリカの亜熱帯と熱帯西アフリカにも数種が見られます。
なかなか花が咲かないブロメリアは一生に一度だけ花を咲かせる一回結実性植物で、花を咲かせた親株は子株を出して世代交代し、花を咲かせた後は根元あたりから子株が生えてきて枯れていく運命にあるらしく、これが人間の理想の夫婦と重ね合わせて花言葉が考えられたのだと思います。 生育環境に合わせて水分補給手段が異なるブロメリア パイナップルのインドネシア語はNanasであり、パイナップル科は別名アナナス科とかブロメリア科と言いますので、ブロメリアと呼ばれる植物はパイナップルの一種にあたり、種別ごとに生育環境に合わせて水分補給手段が異なるのが特徴です。 続きを見る
サボテン(Kaktus)
サボテン(Kaktus)は葉、茎または根の内部の柔組織に水を貯蔵している植物の総称である多肉植物の一種であり、砂漠や海岸のような乾燥地帯に生育するものが多く、一般に園芸業界ではサボテンとそれ以外のSukulen(多肉植物)とに分けて呼ばれることが多いです。
西ジャワ州のレンバン(Lembang)には、涼しい気候を生かして多くのKaktusやSukulenを栽培するハウスが存在します。 乾燥地帯で生き残るために進化したサボテン サボテンのトゲは、乾燥地帯の過酷な環境に適応するために葉から進化したものであり、動物に食べられるのを防ぐ、温度調節をする、繁殖しやすくする、水分を吸収しやすくするなどの機能がありますが、栽培する上で水のやりすぎによる根腐れを起こさないように注意が必要です。 続きを見る
カラジウム(Caladium)
カラディウム(Caladium)は、南アメリカや中央アメリカが原産の草花植物の一種で、主に森林の開けた場所や河川敷に生育し乾季には休眠します。
インドネシアでは一般的に「クラディ」と呼ばれる非常に人気の高い植物であり、交配を重ねることによって葉脈が透けて見えるような薄色の鮮やかな色合いのハイブリッドの葉っぱが特徴的です。 交配で多彩な葉模様の新種が生み出されるインドネシアのカラジウム カラジウム(Caladium)はアマゾン川流域の南米を原産とするサトイモ科カラジウム属の球根植物であり、インドネシアでも交配(silang)により多彩な葉模様の新種が生み出される人気の観葉植物です。 続きを見る
アンスリウム(Anthurium)
アンスリウム(Anthurium)は、約1000種の草花植物の属で、アルム目アルム属(Araceae)の中では最大の属であり、一般的な通称としてアンスリウム、テールフラワー、フラミンゴフラワー、レースリーフなどと呼ばれ、アメリカ大陸原産で、メキシコ北部からアルゼンチン北部、カリブ海の一部に分布しています。
Kuping Gajah(象の耳)やLidah Gajah(象の舌)と呼ばれる巨大な葉っぱを持つ種類はインドネシアでも非常に人気が高いです。 仏炎苞から伸びる肉穂花序が特徴的なインドネシアのアンスリウム 仏炎苞(ぶつえんほう)から伸びる肉穂花序(にくすいかじょ)が特徴的なアンスリウムですが、インドネシアで人気が高い品種はKuping Gajah(象の耳)やLidah Gajah(象の舌)と呼ばれる大きな葉っぱの種類です。 続きを見る
アロカシア(Alocasia)
アロカシア属(Alocasia)は、Araceae(アレクサ科)の属の広葉性の根茎性または塊茎性の多年草で、熱帯・亜熱帯アジアからオーストラリア東部に原産で、その他の地域では広く栽培されています。
インドネシアの道路のラウンドアバウトや中央分離帯等に植えられている光景をよく見かけますが、アロカシアの濃緑の巨大な葉の存在感によって熱帯地域の雰囲気が演出されます。
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大きな葉に熱帯特有の生命力が感じられるインドネシアのアロカシア
大きな葉っぱが空気を浄化し運気をアップする東南アジアの代表的植物であるアロカシアは、道路脇や公園などに熱帯気候の景観を作る上で欠かせない植物です。
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アグラオネマ(Aglaonema)
Aglaonema(アグラオネマ)は、ウコギ科ウコギ属の花き植物で、アジア・ニューギニアの熱帯・亜熱帯地域に自生しており、インドネシアではコロナ禍での観葉植物ブームによって最も注目されるようになった植物の一つです。
日本での人気も高いためインドネシアから輸出もされますが、山中で自生するアグラオネマの乱獲により自然が荒らされているという指摘も出ています。
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ジャカルタのアパート住まいにお勧めの観葉植物アグラオネマの栽培
アグラオネマは直射日光に弱いサトイモ科の観葉植物であり、高温多湿を好みますが寒さには弱く適温は15度以上で、ジャカルタのアパートの室内環境でも栽培できます。樹液にはシュウ酸カルシウムが含まれているため、体質によっては皮膚がかぶれてしまう場合があります。
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植物栽培から学ぶ人生の教訓
宮本武蔵が「一乗寺下り松の決闘」で吉岡剣法の清十郎と伝七郎の兄弟を倒した後、突然富士山の麓の坂東平野で農業を始めたのは、剣で人に勝つことだけを考えてきたものの、おのれに勝ち人生に勝ち抜くという方向に心が傾き、それだけではなく剣から得た悟りを持って人を生かすことが出来ない筈はないと考えるようになったからでした。
剣で人に勝って、自分に勝って、さらに人を生かすという理念の実践としての、この地味に続く農業のくだりはその後の「巌流島での戦い」で、絶対的な武芸の天才である佐々木小次郎に勝つことが出来た理由として重要な描写であると考えます。
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インドネシアで植物栽培から学ぶ宮本武蔵の人生の教訓
宮本武蔵が剣を置いて農業を始めた目的は、自分の存在への固執を捨て己に勝ち、剣から得た悟りで人を生かすことでした。同様に在宅勤務の中で自然界の植物に対して自分が出来ることの限界を知り、感情をコントロールできない自分の弱さを思い知ることには意味があるはずです。
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