ムラピ火山は今年2018年5月に水蒸気爆発による噴煙を山頂から5,500mもの高さに上げたばかりの活火山ですが、2010年の大噴火による火砕流では死者322人、避難者13万人という大惨事を引き起こしました。 インドネシアの生活 ネットで何でも情報は収集できる時代ですが、他人からの情報は基本的に点でしかなく、点と点を繋げることは自分の頭の中でしかできません。また新しいアイデアを生み出したり複雑なことを考えるためには、過去の経験に基づく知識が頭に記憶されている必要があります。 続きを見る
2010年のムラピ火山の大噴火の犠牲となった番人マリジャン氏
今回、ボロブドゥール遺跡のあるマゲラン(Magelang)に行くために、中部ジャワの古都ソロ(Solo)からメルバブ山(Gunung Merbabu 標高3,142m)と今年5月に噴火(meletus)したばかりのムラピ山(Merapi 標高2,914m)の間の山道を抜けるルートを選択しましたが、この山道は細いし急カーブはあるし、とんでもない急勾配の橋があったり、日が暮れてから通るには危険極まりないルートであり、インドネシアを代表する世界遺産の寺院まで、観光気分でドライブするつもりで来たら、とんでもない恐怖体験を味わいました
現在のところGoogle Mapのナビは最短経路(Jalan Pintas)を選択しますが、将来的にはAI技術(Artificial Intelligence)の発達により、走る時間帯とか乗っている車の種類とか運転手の技量とかの制約条件を考慮した上で、適切な難易度のルートを指示してくれるようになることを希望します。
ムラピ火山は今年2018年5月に水蒸気爆発による噴煙を山頂から5,500mもの高さに上げたばかりの活火山ですが、2010年の大噴火による火砕流では死者322人、避難者13万人という大惨事を引き起こし、その犠牲者の中にインドネシアで最も有名なスタミナドリンクの一つ、Kuku Bima ENER-Gの広告にも登場していた、ムラピ山の番人であるマリジャン氏(Mmbah Marijan:Mbahはジャワ人のイスラム教徒のおじいさんへの敬称)が含まれていたことが、インドネシアのワイドショーで連日取り上げられました。
当時はスタミナドリンクの広告には、随分不釣合いなじいさんだなぁと思っていましたが、マリジャン氏はジョクジャカルタの王様、ハムンクブォノ9世(Sri Sultan Hamengkubuwana IX)からムラピ火山の番人(Juru kunci Merapi)として直々に任命され、噴火のタイミングを事前に察知し、周辺住民に避難勧告を出すという重要な任務を担っていました。インドネシアを代表するボディビルダーであるアデ・ライ(Ade Rai)やインドネシアのボクシング界の英雄クリス・ジョン(Kris John)と一緒に、Kuku Bima ENER-Gの広告塔として起用されるほどのスタミナの持ち主だったのかどうかは、亡くなった今となっては知る由もありませんが、本名はラデン・ンガベイ・スラソ・ハルゴ(Raden Ngabehi Surakso Hargo)という立派な王系の家柄の名前を持つ人物であり、何か知られざるパワーを持っているのではないかと思わせる風格がありました。
(2021年1月27日追記)
2021年1月27日にムラピ山が噴火し、火砕流は南西方面のクラサック川とボヨン川の上流方面へ2,000mに渡って流れ落ちましたことにより、付近5km以内への観光客の立ち入りが制限されています。
火山列島インドネシアの活火山
ユーラシアプレートとオーストラリアプレートの境界線に沿って列島が延びるインドネシアは、ユーラシアプレートが太平洋プレートとフィリピン海プレートに接する線上に伸びる日本列島と同じく地震国かつ火山国であり、中部ジャワのムラピ火山以外にも活火山が多数存在します。
アグン山(Gunung Agung 標高3,031m バリ島)
2017年11月に54年ぶりに噴火したバリ島のアグン山(Gunung Agung 標高3,031m)の噴煙の影響で、デンパサール国際空港が一時閉鎖され、航空便が欠航になった影響で、楽しみにしていたバリ島旅行の延期を余儀なくされたインドネシア在住日本人も多く出ました。
2018年9月現在もアグン山は断続的に噴火を繰り返しており、バリ島の東50kmに位置するロンボク島では、8月のマグニチュード7の本震発生以来、いまだにマグニチュード5以上の余震が続き、避難生活を送る人々が多数存在するなど、バリ州から西ヌサ・トゥンガラ州(Nusa Tenggara Barat)にかけての小スンダ列島(Kepulauan Sunda Kecil)の東端で、地殻変動が活発化しています。
シナブン火山(Gunung Sinabung 標高2,460m 北スマトラ)
北スマトラのシナブン火山は、世界最大のカルデラ湖であるトバ湖の北40kmにあり、今年2018年2月に大規模な噴火を起こした際のTVニュースでは、制服を着た大勢の小学生の子供達が、湧き上がる巨大な噴煙を呆然と眺める映像がインドネシア中に放映されました。2004年のスマトラ島沖地震など、スマトラ島北部は地震が多く、火山活動への関連性も考えられ、インドネシアで最も自然災害が発生しやすい地域の一つです。
クラカタウ(Krakatau 標高600m スンダ海峡)
ジャカルタの西120km、ジャワ島西端のメラク(Merak)の港からフェリーで2時間ほどで、スマトラ島東端のランプン州のバカウヘニ港(Bakauheni)に着きますが、スマトラ島とジャワ島に挟まれるスンダ海峡にはクラカタウという成層火山(一つの火口からの複数回の噴火により溶岩や火山砕屑物などが積み重なり形成された円錐状の火山)の島があります。
1883年の大噴火では大気中に灰やすすが撒き散らされたために、世界中で鮮やかな夕焼けが見られたというスケールの大きな逸話が残っています。1927年の噴火でアナック・クラカタウ(Anak Kerakatau)が誕生しました。
ガルングン火山(Galunggung 標高:2,168m 西ジャワ)
ジャカルタの東160km、西ジャワのタシクマラヤにあるガルングン火山は、1982年の大噴火による噴煙が、ロンドン発クアラルンプール経由オーストラリアのパース行きのブリティッシュ・エアウェイズ9便エンジン故障事故を引き起こし、墜落直前の危機一髪のところエンジンが回復しジャカルタのハリム空港に不時着したことで、火山灰が及ぼす飛行機への悪影響が初めて認識されたことで有名な火山となりました。
この噴火を最後に現在までガルングン火山は活動を休止しているようですが、何度も山頂付近から噴火を繰り返してきた成層火山だけあって長年に渡って蓄積されてきた火山灰層がコーヒー栽培に適した土壌を作り上げ、ジャワ島では珍しい良質なアラビカ種のコーヒーの生産地になっています。
ブロモ火山(Gunung Bromo 標高2,329m)東ジャワ
ブロモ山(Gunung Bromo 標高2,329m)とは、ブロモ・テンガー・スメル国立公園(Bromo Tengger Semeru National Park)内にある活火山であり、巨大なテンガー・カルデラ(Tengger Caldera)内部の火山灰の砂浜(Tengger Sand Sea)の中にそびえた立ち、古代カルデラ(火山の活動によってできた大きな凹地)の中の新しいカルデラという複合カルデラを形成しています。
(2021年1月17日追記)
ジャワ島で最も高い火山であるスメル山は1月16日に大規模噴火を起こし、火口から噴き出た高温の火砕流が3kmにわたり川沿いの斜面に流出しました。
(2021年12月6日追記)
12月4日に噴火したスメル山の噴火により現在までに14名が死亡、35人が重傷、9人が行方不明で、少なくとも5,205人が被害を受けました。国家防災庁(BNPB)はこのうち約1,300人が避難生活を余儀なくされており、火山灰に埋もれた東麓の村ではいまだ大勢の行方不明者がいる模様です。
実家がスメル山近くと言っていた客先のインドネシア人に家族の安否を聞いたら、今回大きな被害を受けたのが東麓で、彼の家は南麓なので難を逃れたとのこと。