インドネシアの日系企業ガラパゴス市場での事業展開

2020/01/15

ジャカルタの渋滞

日本の特殊な商慣習で守られ独特の進化や発展を遂げた日本市場はガラパゴスと呼ばれます。インドネシア国内にも日系ガラパゴス市場があり、日本人が日本語で対応するという参入障壁がありましたが、近年のローカル企業や他国企業の台頭でこの原則が崩れてきています。

内需縮小により日系企業の海外進出が加速せざるを得ない状況

令和の今、このまま日本の人口減が続けば、内需は縮小の一途をたどるわけで、そうなると日本国内市場だけで生き残るのは難しいと判断する国内企業が、海外市場に活路を見出そうとするのは必然です。

最近は日本の若者の内向き志向が問題になっていますが、企業としては生き残るためには海外市場を目指すしかないわけで、その場合には世界中の同業企業や進出先のローカルの地場企業との競争が避けられません。

日本の家電製品の世界市場での地位が凋落して久しい昨今、インドネシアでは日本の製造業の最後の砦とも言える、二輪四輪市場での中国車メーカーの存在感が増しています。

二輪四輪車の売れ行きは、中古市場での再販価格が購入時の判断材料として重要ですが、これまでインドネシアで販売された中国製や台湾製の車やバイクは、市場での流通期間が短く、中古市場での価格下落率が高いため、シェアを広げることができませんでした。

しかし現在積極的に国内展開するWuling(上汽通用五菱汽車)車などが市場に流通し、中古車価格が安定するようになると、他の中国車の存在感が増してくることが予想され、この傾向は電気自動車の普及とともに顕著になってくるはずです。

インドネシア国内の日系ガラパゴス市場も縮小傾向

日本の特殊な商慣習や日本語の言葉の壁で守られ、独特の進化や発展を遂げた日本の国内市場はガラパゴスと呼ばれますが、インドネシア国内での日系企業間市場についても、地場企業や他国企業が入り込みにくいという意味で「日系ガラパゴス市場」と言えると思います。

この場合の参入障壁は「日本人担当者が日本語で対応しないとダメ」という、結局のところ日本語という言葉に帰結するわけですが、近年の海外企業の台頭でこの原則が崩れてきています。

日本の原材料メーカーや部品メーカーは、海外進出の意思決定が遅いと言われ、そのため先発進出企業は原材料を輸入に頼る傾向が強く、日系企業の現地調達率が低くなるという特徴がありましたが、この調達ルートを地場企業や他のアジア企業へシフトして現地調達率を上げようという動きがあります。

この背景には非日系企業が設備投資や品質改善の努力を続けた結果、生産性と品質が向上し市場での競争力が上がっているという事実と、商機を得るためなら日本のガラパゴス的商習慣にも適応していこうという企業努力があります。

某日系大手家電メーカーを大口顧客とするチカランの某日系部品メーカーは、トップ交代を機会に従来型の「お客様は神様」的対応から「言うべきことははっきりモノ申す」下請け工場への脱却を図ったそうです。

その結果、巨大な資金力で設備投資をはかり生産性向上と生産コスト削減を実現した同業の中国部品メーカーによる、日系企業顔負けの「お客様は神様」的営業努力により、部品の発注が中国系企業にシフトしました。

この事実はインドネシアの日系ガラパゴス市場が縮小傾向にあることを意味するわけですが、これに危機感を感じてローカル市場に事業展開しようとすれば、当然ながらローカル企業や海外企業とのアウェイでの戦いになります。

しかしながら某日系四輪部品メーカーさんから聞いた話ですが、上述の中国車メーカーWuling社などは、日本のガラパゴスを凌ぐほどの中華企業による鉄のカーテンが存在し、日系企業にとっては蟻のはい入る隙間もないほど参入するきっかけがつかめないそうです。

さらに商習慣の違いや検収の難しさ、売掛回収の難しさという壁にぶつかると、こんな苦労するくらいなら日系企業相手の事業をしていたほうが楽ということになり、縮小傾向のガラパゴス市場に回帰するという結果になりかねません。

日本人であることの優位性をいかに発揮するか

近年日本からインドネシアに進出するスタートアップ企業は、自社プロダクトの競争力を売りに勝負を賭けると思いますが、よくあるリスクとしては大資本のバックアップを受けた後発のローカル企業にシェアをかっさらわれることです。

インドネシアは直近のビジネス環境ランキングで世界第73位(日本は29位)であり、複雑と言われる規制や税法、高い関税などの影響でビジネス難度は高く、結局のところ日本人としての優位性をいかに発揮するかという観点から事業展開するのが、今のところ一番の近道であると考えます。

ジャカルタ

チャンスはあるが勝てる分野を見つけるのが難しいインドネシア市場

インターネットにより情報がフラット化され、誰もが平等にチャンスが得られるようになったことは、インドネシアでは勝てる分野を探すのが難しくなったことを意味します。日本人の優位性を生かしながらライバル会社がコスト的に再現できない分野を探すのが現実的だと考えます。

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近年は家電業界でもエンタメ業界でも、ジャパニーズブランドが韓国や中国などに駆逐される状況が続いていますが、残念ながら日本には現状を打開するためにアメリカのような革新的なアイデアを生み出す人材を育成する教育環境もなかったため、真っ向勝負で勝ち残るのは難しい。

将来世界で戦える人材を育成するという方向で、日本国内の教育環境をアップデートすることが急務です。

なによりも技術力と英語力のある人材が圧倒的に不足する現在では、JETRO(日本貿易振興機構)や地方自治体の機関などの支援を受けながら、従来どおりのジャパニーズブランドを前面に出したローカル市場への展開を行っていかざるを得ないという苦しい状況にあります。