収益費用アプローチによる損益法と資産負債アプローチによる財産法

2015/12/03

ジャカルタの夜景

損益法での当月利益は「月末の収益-月末の費用」ですが、財産法での当月利益は「(月初の資産-月初の負債)-(月末の資産-月末の負債)」という資本の増分であり、両方とも同額になります。

利益を損益から算出するか資産と負債から算出するかの違い

1か月の利益を計算するとき、普通は収益(貸方)が費用(借方)に対して月末時点でどれだけ多かったかを見ます。

  • 利益=月末の収益-月末の費用

一方で利益は、資産(借方)と負債(貸方)の差額が、月初から月末の間にどれだけ増えたかという考え方もできます。

  • 利益=(月初の資産-月初の負債)-(月末の資産-月末の負債)

利益を損益から算出するか資産と負債から算出するかの違い

両方とも同じ数字になるのですが、要は1ヶ月で資本(貸方)がどれだけ増えたかということであり、「月末の収益-月末の費用」分が資本の増えた分、つまり当月利益になります。

利益を損益から考えることを損益法、資産と負債から考えることを財産法といいます。

損益法は当月の損益科目を集計するだけで利益の計算ができますが、財産法では当月の資産と負債の動きを集計すると同時に月初残高が必要になります。

月末の資産負債(B/S)科目残高は翌月に繰り越しますが、損益(P/L)科目残高は繰り越さずに、B/Sの資本の部に繰り入れることで、P/LとB/Sの借方貸方合計をバランスさせます。

月末時点の資産負債科目の残高を部門別に集計する方法

P/L上の損益科目は元帳(G/L)上で部門コードが付いているのが普通なので、月末に当月発生額を部門別に集計できます。

一方でB/S上の資産負債科目はG/L上で部門コードがついていないのが普通で、月初の前月繰越残高も部門別に分かれておらず、部門コードがついている場合でも「会社全体」などという代表部門であるケースがほとんどです。

よって会計システム稼動後に、資産負債の部門別集計を行なうためには、あるタイミングをカットオフと定めて、月末残高を同一科目間で「借方が部門別、貸方が代表部門」という部門別に振替える相殺仕訳をおこす必要があります。

  • Dr. Cash/Bank(部門コードA) 10    Cr. Cash/Bank(部門コードなし) 30
  • Dr. Cash/Bank(部門コードB) 10
  • Dr. Cash/Bank(部門コードC) 10

これにより翌月からG/L上で資産負債科目を部門コードで集計することが可能になります。

収益費用アプローチ

前回、JSOXが求める内部統制とITコンプライアンスの関係を俯瞰したが、今回はJSOXとは別のもう一つの流れ、IFRSとシステム対応について考察する。システム導入のトレンドとしてJSOXとIFRSに気を配るのはもはや必然の流れである。

日本の会計基準はP/L(損益計算書)重視であり、これは高度成長期の右肩上がりの経済を前提とし、当期の期間損益だけで容易に将来予測が立てられたことに起因している。要はP/Lを作成した後に次期以降の収益・費用の源泉となる資産・負債・資本項目を補足的にB/S(貸借対照表)として計上する発想となっており、B/S項目を検証・再評価して実情にあったものにして報告する、というより税法上の評価額をそのまま会計上の評価額として、償却が完了する時点で特別損益で処理するという傾向が強い。

資産負債アプローチ

一方でIFRSの会計基準は、投資家や債権者に対して企業価値評価のために必要とする情報を提供することを目的としており、そのためには固定資産の減損・再評価、売却可能な金融資産などを時価評価してB/Sを正確に作成するというB/S重視であり、将来的にキャッシュフローを生み出せる資産状況にあるかどうかが分かるようにする。連結ではIFRSに基づく財務報告が必須になる一方で、税務については引き続き各国独自の基準で財務報告を作成する必要がある。

システムのIFRS対応とは?

システム修正で対応するケースと、オペレーション変更で対応するケースの2つに分かれるが、システム導入時にお客様に提案している事項はおおよそ以下のとおりである。

  1. 実現主義での売上計上
    出荷基準(発生主義)による売上計上している場合には、顧客が検収したタイミングInvoiceを発行しA/Rと売上を計上したほうがよい。
  2. 在庫評価方法の統一連結会社内で在庫評価方法を統一する必要があるので、日本本社の方式にあわせるほうがよい。IFRSで認められている先入先出法、移動平均法、標準原価法(標準単価法)、総平均法で行い、後入先出法は認められない。
  3. 実在庫と経理在庫の別管理月末棚卸によって売上原価を確定する場合がほとんどだが、月中の在庫と会計のアンマッチを補助帳票で未実現売上分の資産として管理する。
  4. 有形固定資産の再評価有形固定資産には税法基準を会計上も採用するのではなく、事業年度ごとに再評価し減価償却方法や耐用年数を見直す。
  5. キャッシュフロー計算書(直接法)インドネシアではキャッシュフロー計算書は必須ではなく作成しない場合が多いが、名目上これが必要になる。
  6. 複数基準元帳税務は各国独自基準のままでも連結財務諸表はIFRS対応(B/S重視)で行う。会計上は投資家・債権者に対してIFRS対応が義務付けられるが、税務署がこれに対応できるとは限らない。だから会計システムで複数基準元帳機能を実装していることが理想である。具体的には会計仕訳データを分別管理し、出力時に合算有無を任意に選択できることである。