レバラン最終週を日本で充電中。あの大音響のモスクからの拡声器音から開放され、心身共にすっかり健康になりました。日本ってなんでこんなに静かなんでしょうか。
日本では消費税増税法が国会で成立し、消費税が5%から8%にアップする準備完了といったところ。現在消費税アップ前の駆け込み需要でマンションが飛ぶように売れているらしいですね。
付加価値税PPN(Pajak Penambahan Nilai)
インドネシアの場合、日本の消費税に相当するのがPPN(VAT=付加価値税)ですが、インドネシアは帳簿方式(消費税の計算のように帳簿に基づいて税額を決定)ではなくインボイス方式(Tax Invoiceに基づいて税額を決定)なので、Faktur Pajak (Tax Invoice)に基づいてPPNの支払い、または還付の額を計算しています。
売上の際に課したPPN(Output)と購入の際に課されたPPN(Input)とを相殺して、売上PPNの方が多ければ翌月末までに納税、購入PPNの方が多ければ年度末に還付請求(還付=元の所有者に返すこと)または翌事業年度繰越する「往って来い」の税金です。
非居住者は一定額を超えた場合は払わなくてもいいもので、ジャカルタでもショッピングモールの中の土産物屋などの20店舗くらいがPPNのリファンド可能店(同一店舗でRp.500,000以上)に指定されています。
ただシンガポールみたいにGST(Goods and Services Tax)のリファンド(同一店舗でS$100以上)が確立されている国には遠く及ばないし、日本にいたっては消費税8%払い戻しが空港でなくドラッグストアですら可能になりました。
うちは年に一度の一時帰国時にビッグカメラとマツモトキヨシで爆買いしますので、払い戻し分だけで結構な額になります。
所得税PPh(Pajak Penghasilan)
PPNが日本の消費税に相当(但し消費税が消費財にのみかかる一方、PPNは付加価値税なのでサービスや土地などの生産財にもかかる)しますが、インドネシアの税法でややこしいのが所得税(PPh)です。
生産される財・サービスは,その経済的用途に応じて,消費財と生産財に大別されるが,消費を目的として家計(あるいは消費者)により需要される財・サービスを消費財と呼ぶ。これに対し,生産を目的として企業(あるいは生産者)により需要される財・サービスを生産財と呼ぶ。同じ財であっても,家庭用暖房に用いられるときには灯油は消費財であるが,工場や商店で営業用に用いられるときには生産財とみなされる。(「コトバンク」より)
給与から源泉徴収される個人所得税がPPh21(所得税法である法律No.10/1994の21条=Pasal 21)であり、法人所得税が前年度所得から計算したみなし税額を月納するPPh25(Bulanan)と年度末に源泉控除して差額を収めるPPh29(Tahunan)です。
ここまでは日本の税制と重なる部分なので覚えやすいですが、これ以外にインドネシア国内居住者が取得するサービス所得に対する源泉徴収であるPPh23、オフィス賃貸料などにかかるPPh4(2)、インドネシア非居住者が取得するサービス所得(配当金など)に対する源泉徴収税であるPPh26があり、日本人管理者ならこれだけ知っておけば十分すぎるくらいです。
日本の場合 インドネシアの場合 特徴 ERP
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法人所得税 PPh25, 29
個人所得税 PPh 21 給与に対する源泉所得税 Payrollシステムで自動計算
サービス所得税 PPh 23 源泉所得税(居住者) 決済時に自動計算
サービス所得税 PPh 26 源泉所得税(非居住者)
取引事例(売りと買い)
システム会社がパソコン本体Rp.1,000,000+インストール料金Rp.500,000で販売する場合、合計金額はRp.1,500,000ですが、11%のPPN込みでインボイス金額としてRp.1,665,000を請求します。
ところがお客はインストール料金Rp.500,000に関してPPh23の2%であるRp.10,000を差し引いてRp.1,655,000を支払い、翌月10日までにRp.10,000を税務署(Kantor Pajak)に納付する義務(Payable)が発生します。
売った側は源泉という形で所得税を前払い(Prepaid)したことになります。
お客はシステム会社に源泉徴収票(Bukti potong PPh pasal 23)を発行し、システム会社は年度末にその分を控除できるという、PPNと同じく「往って来い」の性質を持ちます。
PPh23のように他の所得税と合算プラスマイナスして課税することを総合課税(PPh Non-Final Tax)といい、これはまだ決定していない所得税の前払いなります。
一方、PPh4(2)のように支払い側での源泉徴収で税額が確定してしまうものを分離課税(PPh FinalTax)といいます。
システム会社の仕訳
インボイス発行時:Tax payable - PPN outは負債(Outputを計上する義務)
- Dr. A/R 1,650,000 Cr. Sales 1,500,000
- Cr. Tax payable - PPN out 150,000
決済時:Tax payable - PPh23は資産(前払い所得税)
- Dr. Bank 1,640,000 Cr. A/R 1,650,000
- Dr. Prepaid tax - PPh ART23 10,000
お客の仕訳
インボイス到着時:Prepaid tax - PPN inは資産(Outputから控除できる権利)
- Dr. Purchase 1,500,000 Cr. A/P 1,650,000
- Dr. Prepaid tax - PPN input 150,000
決済時:Tax payable - PPh23は負債(システム会社の所得税を源泉徴収して払う義務)
- Dr. A/P 1,650,000 Cr. Bank 1,640,000
- Cr. Tax payable - PPh ART23 10,000
その他の所得税
Fiscalは「出国税」とか「所得税の前払い」とか言われていましたが、結局は居住者の海外旅行意欲を低めて外貨流出を小さくするのが目的という時代遅れの税制だとも言われていました。
当初は「海外出国する居住者全員が有無を言わせず100万ルピア」でしたが「NPWP取得者は必要なし、未取得者のみ250万ルピア」に変更されました。
これは納税意識を高めるためNPWP未取得者を掘り起こしNPWP を取得させるという名目で、「所得税の仮納付」という位置づけも持っていましたがが、ついに廃止されてしまいました。
外国人税はIKTA(Ijin Kerja Tenaga Asing)を取得するためにUS $ 1,200を技能開発基金(DPKK=Dana Pengembangan Keahilan Keterampilan)として国の指定銀行に振込み、その後納付証明を持って労働許可証の手続きを行うものです。
(IKTAは現在のIMTA(Izin Mempekerjakan Tenaga Asing)の前身です。)
IKTAついでに余談ですが・・・
IKTAを取得する前提としてKITAS(Kartu Ijin Tinggal Terbatas)滞在許可書を取得する必要があります。これを取得すればインドネシア居住者となるため、出国時はKartu Imigrasi(出入国カード)を航空会社のチェックインカウンターでチェックイン時にもらい、出国時のイミグレーションに提出する必要があります。
このとき出国カードが回収されますが、半券の入国カードは失くさず帰国時にイミグレーションで返却する必要があります。
(イミグレカードは2015年3月に廃止になりました。)
ちなみに昔はKITASを同じ会社で5回延長すればKITAP(Kartu Ijin Tinggal Tetap=永久滞在許可証)にアップグレードできたのですが、今はどうなっているのかな?
居住者のインドネシアからの出国方法は3通りあり、KITASホルダーがKITASホルダーとして再入国を前提に出国する場合には、事前にMERP(Multiple Exit/Re-entry Permit)またはSingle Re-entry Permitを取得する必要があり、KITASを放棄する場合は事前にEPO(Exit Permit Only)を取得する必要があります。
(2015年9月現在Multipleのみ取得可能です。)
EPO発行後に2週間以内にインドネシア国外に出国する必要がありますが、このときは入出国カードは両方とも取られるので、シンガポールに着いてから「カード半券無くしたぁぁぁ」とパニくらないように。
再入国時にはVOA(Visa On Arrival)での入国になるため、入出国カードに必要事項を記入し、次の出国時のチケット(新しいKITASのためのTelex Visa後の出国用)をあらかじめ準備しておいたほうがいいです。そうでないと入国審査のためだけにシンガポールまでの出国チケットを購入して捨てることになります。
またイミグレにTelex Visaの許可が下りて次の出国時までの間は出国カードの半券を無くさないようにしないと出国時に面倒なことになります。この期間中あくまでも旅行者という立場であることを忘れずに。
(再三ですがイミグレカードは2015年3月より廃止されましたのでもう必要ありません。「昔はこんな制度があった」という記憶遺産wwとしてそのまま載せています。)
外貨取引と税務仕訳
Taxレートは外貨取引の課税金額を企業が勝手に低く操作しないために税務署が公的に決定するものなので、ルピア建て取引ではTaxレートは登場しません。
また取引仕訳は取引通貨(Original currency)で書くのが原則です。
例えば機能通貨(Base Currency)がUS$で修理費A/Pのインボイスがルピア建てRp.900,000の取引発生の場合、取引レートRp9,500/$, TaxレートRp.10,000/$とすると・・・
取引仕訳
- Dr. Repair fee Rp. 900,000 Cr. A/P Rp. 900,000
(Base Rp.900,000÷9,500=$94.74)
税金仕訳
- Dr. Prepaid PPN input Rp. 90,000 Cr. A/P Rp. 90,000
(Base 90,000÷9,500=$ 9.47)
ルピア建て取引なので税務署に支払う金額はルピアで確定するのでTaxレートは登場しません。
会計処理上機能通貨に換算するための取引レートはインドネシア銀行のBI(Bank Indonesia)レートを使用します。
次に修理費A/Pのインボイスがドル建て$90の場合ですが、PPN仕訳はIDRで行なわれます。ただしこの場合、取引通貨がドルでも税額計算ではルピアのA/Pが計上されてしまうがこれは仕方のないことらしいです。
取引仕訳
- Dr. Purchase $90 Cr. A/P $90
税金仕訳
- Dr. Prepaid PPN input Rp.99,000 Cr. A/P Rp.99,000
($90x11%x10,000=99,000)
但し会計システムの制約として、取引画面から為替レートマスタの複数のレート(BIレートとTaxレート)を参照出来ない場合、機能通貨への換算方法は
- 取引部分は為替レートマスタから取得し、PPN部分は手計算結果で修正
- 取引部分と税金部分を別画面に分けて入力
するかのどちらかの運用になります。
いずれも運用負荷が高いので、月中の外貨取引発生時は取引部分も税金部分も為替レートマスタのBIレートで自動計算させて、PPN11%分はTemporary勘定に集約させ、月末にTaxレートで別途計算したルピア建てのPPN Payableで相殺(Re-class)することもできます。
取引仕訳
- Dr. Purchase $90 Cr. A/P $99.9
- Dr. PPN clearing $9.9
Faktur Pajakの金額を月単位で集計し一括相殺する。
月末相殺
- Dr. Prepaid PPN input Rp.90,000 Cr. PPN clearing $9