椰子の実液の電解質と血漿のバランスは血液とほぼ同じであり、含有されるラウリン酸とサイトカインには皮膚組織の維持効果や抗発癌性、抗血栓性(血液を凝固させない力)という効果があります。 インドネシアの生活 ネットで何でも情報は収集できる時代ですが、他人からの情報は基本的に点でしかなく、点と点を繋げることは自分の頭の中でしかできません。また新しいアイデアを生み出したり複雑なことを考えるためには、過去の経験に基づく知識が頭に記憶されている必要があります。 続きを見る
椰子の実ジュースが飲めるというだけでインドネシアに住む価値がある。
自分はkelapa mudah(若い椰子の実)が大好物で、アパート下のワルン(warung 食堂)で椰子の実を買ってから自宅アパートに帰るというのが日常ルーチンとなっているので、たまに帰りが遅くなってワルンに立ち寄れないと、病気でもしたんじゃなかろうかと店番のお姉さんが心配してくれます。
椰子の実はジャカルタの道端の屋台(kaki lima)でも、スーパーマーケットの果物売り場でも売っていますが、必ずしも美味しい椰子の実に当たるとは限らず、場所によって価格も品質もばらばら、同じ店で昨日飲んだ椰子の実が、今日は若干甘みが足りず新鮮さが感じられないといったことが起こりえます。
うちのアパートの下の店では、価格は1個1万9千ルピアで同じでも、日によって品質に若干のバラツキばあります。
- 大きさ
- 甘さ
- 皮の内側にくっついている果肉(buah kelapa mudah)の柔らかさ
この品質の許容値の上限と下限の幅が狭いほど、美味しい椰子の実を安定して供給できているということになります。
果物全般に言えることですが、同じ椰子の木に成る実は遺伝の法則で同じような品質の実になりますので、おいしい椰子の実を継続的に供給しようとすれば、おいしい椰子の実が成る椰子の木のオーナー、もしくは元締めから安定して仕入れるルートを確保する必要があります。
椰子の実の中に、なみなみと溜まっているジュースの中で、内皮のゼリー状の果肉をスプーンでこそぎ落して、ジュースとゼリーを一緒にストローで吸い込むときの舌触りと喉越しは、1年間毎日365日飲んでいても飽きるものではありません。
もし「あなたにとっての最後の晩餐は何がいいか」と聞かれたら、自分は迷うことなく「新鮮な椰子の実」と答えますし、インドネシアに住んでいる理由の一つが椰子の実ジュースを安く飲めることだと言っても過言ではありません。
椰子の実の解毒効果と抗菌効果
自分の「椰子の実愛」は言葉で表現してもし尽くしきれないものがありますが、インドネシアでは椰子の実は食中毒や下痢などで体調を壊したときの解毒作用と脱水症状の回復効果があるものとして広く知られています。
実際、椰子の実液の電解質(elektrolit)と血漿(plasma darah 血液の液体成分 )のバランスは血液とほぼ同じであり、食中毒で体内の体液が減少し脱水状態になった場合、点滴で注入する輸液の代わりに椰子の実液が使えるとまで言われています。
また椰子の実液には、抗菌活性を持つラウリン酸(lauric acid)と、免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質であるサイトカイン(cytokine)が含まれているため、体液のpH値(水溶液中の水素イオン濃度を表す指数)をバランスさせることで皮膚組織の維持、つまりアンチエージング効果や抗発癌性、抗血栓性(血液を凝固させない力)という効果があります。
若い緑色の椰子の実と古い茶色の椰子の実
ジュースとして飲むのはまだ未熟な若い緑色の椰子の実ですが、インドネシア料理に欠かせないサンタン(santan ココナッツミルク)は熟して硬くなった茶色の椰子の実の果肉を漉して抽出したものであり、特にパダン料理(masakan Padang)には大量のサンタンが使われることで、インドネシア語で言うrasa gurih(コクがあって美味しい)と表現される独特の味を生み出します。
ただしこのサンタンは100gあたり約150kcalのカロリー(1Lの水の温度を1℃上げるために必要なエネルギーが1kcal)で牛乳の約2倍(100gあたり67カロリー)の高カロリー食品として知られており「肥満や心筋梗塞など成人病にならないためにパダン料理を食べるのは最大週2回にしとけ」とよく言われますが、当然ながら毎日パダン料理を食べているパダン人の平均寿命が他の地域に比べて短いと言う話は聞いたことがありません。
実際のところサンタンにはラウリン酸やサイトカインが含まれておりプラスの側面も大きく、またカロリーは高くともコレステロール値は低いため、成人病になったとしたらそれはカロリーの一方的摂取でカロリーを消化するための運動不足が原因であって、全責任を椰子の実に押し付けるのは不公平だと思います。