タックスアムネスティで海外資産がインドネシアに還流

インドネシア税法

タックスアムネスティで海外資産がインドネシアに還流 【簿外取引で購入された海外資産】


合法的な節税であるタックスヘイブンへの利益移転が違法になる?

租税特赦法はタックスアムネスティとかボランタリーディスクロージャーとかいう表現で世界的に実施されていますが、インドネシアの場合は国内総生産(GDP)を超える8,770億ドルという桁違いの海外隠しがあると言われるだけあって、その成果である海外資産の自国への還流額は97.2 triliunルピア(97.2兆ルピア)で世界一だそうです。

ビジネスでは売上を上げた国で納税するのがフェアだと思うのですが、その前提だと大した節税方法がないので、もっと大きな節税をするために、売上を上げた国以外の税率の低い国に、移転価格税制で訴追されない方法で利益を還流させようとします。

僕は新卒入社した長期信用銀行系システム会社で海外システム部に配属されたのですが、ロンドンやニューヨークといったメジャーな支店に混じって、一際浮いていたのがケイマン支店という名前でした。

このケイマン諸島やパナマなどのタックスヘイブンに設立した現地法人は実質的にはペーパーカンパニーであり、そこで直接売上を計上するか、もしくは無形固定資産(商標権や知的財産権)を移転し、自国からロイヤルティとかセールスコミッションという科目を通して費用を支払うことで、自国の利益を圧縮することが可能であり、資本主義経済システムの抜け穴を賢く利用した合法的な節税と言われてきました。

ただこれが「合法であれば何をしてもよいわけではない」という世間の反発を食らうようになるのは、巨額な利益を上げている国に納税していないことは社会インフラへのタダ乗りでアンフェアと解釈されるからでしょう。

これが単なる嫌儲ではなく、タックスヘイブンに利益を溜め込むことによる社会への弊害として、以下の2点が挙げられることが多いようです。

  1. 自国の所得税収が減り国家財政を圧迫。
  2. 大資本の内部留保が肥大化し資金が市場に流入しないことによるデフレと格差拡大。

言ってみれば資本主義社会においても完全自由競争が果たして人類の平和にとって最善なものなのか、という大きな問題意識を投げかけている訳です。

また法的拘束力はないとしてもOECD(経済開発協力機構)加盟国間で、タックスヘイブンにある資産に対して本国から課税できるという共通ルールができるという流れにより「タックスヘイブンの終焉」などと言われますが、ヘイブン(天国)と言われるほど極端に無税とまではいかないまでも、国ごとの所得税率格差を利用して、多少でも自国よりも税率の低いオアシスくらいの国への資金流入は続くと思われます。

違法な海外資産とは何?

インドネシア国内企業が、国内ビジネスで得た利益から所得税を支払った後の税引き後純利益を、利益剰余金や資本準備金に回すのではなく、海外の現地法人に送金して海外資産を購入(要は国外投資)し、現地法人のB/Sにの資産として計上すれば何の文句も言われません。

タックスアムネスティでは海外の「隠し資産」という言葉が用いられますが、隠し資産とは「隠し利益」で簿外取引(オフバランス)として購入された資産であり、個人の場合はSPT tahunan PPHで申告していない資産であり、「隠し利益」とは一般的に所得税を納めていない利益隠しを指します。

先のパナマ文書問題で多くの個人名や企業名が「暴露」されたということは、タックスヘイブンがブラックボックス化することにより、そこに還流するお金の名義人も金額も源泉も秘密主義で隠されていたことにより「隠し利益なんじゃないの?」という疑念が持たれたからです。

そうであればタックスヘイブンに現地法人を設立しても、連結ベースでオンバランスにしておけば、利益と資産の妥当性が説明できるのですが、それだとタックスヘイブンに利益を移転する意味がない。

要はタックスヘイブンにおける「合法的な節税」という言葉は限りなく説得力を失っている訳です。

海外資金をインドネシアに送金

インドネシア在住日本人にとっての必読書?、深田祐介著「ガルーダ商人」の中で、東邦商事の小笠原社長が香港経由でスーツケースに1000万円ハンドキャリーでジャカルタに持ってきたという場面(上のP292)がありますが、戦後間もない頃の厳しい為替管理法の下にあった時代とは違って、今では海外送金は基本自由に行えます。

資金が流出する側の国にも諸事情があり、例えば今何かと話題のドイツ銀行が、アメリカへの巨額の罰金(サブプライムローンで不適格の債務者に金を貸し、それを安全な投資として他の投資者に転売した罪)の工面のため、中国の資金を引き出そうにも引き出せない状態が続いているのは、中国の外貨預金残高が激減しているからとも言われています。

ただインドネシア人の海外資産が一番集中しているのは金融先進国であるシンガポールなので、資金のインドネシアへの還流による影響はさほどないとは思われ、インドネシア政府もタックスアムネスティによる海外からの送金受入銀行数を18行に増やしてかき集める気満々です。

ちなみに日本では、100万円以上の海外銀行送金の場合は、銀行から口座名義人住所の所轄の税務署に連絡が行き、贈与税対象ではないか、マネーロンダリング資金ではないか、という税務調査の対象になりうるようですが、さすがに自分の口座からインドネシアの自分の口座への送金であれば、特に税金が課せられることはないと思います。





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