業務システム導入時に知っていると得するインドネシア税法の知識

インドネシア税法

業務システム導入時に知っていると得するインドネシア税法の知識 【インドネシアの税制の特徴は所得税PPH体系の複雑であること】


会計システムから見たインドネシアの税制

インドネシアでの会計システム導入時には、好む好まないによらず多少の税務の知識が必要になってきます。

  1. 給与計算システムに関連するのが所得税PPH21
  2. インボイス発行または受領に関係してくるのがVAT(PPN)
  3. 会計システムのAP決済に関係してくるのがPPH23
  4. 関税BMやPPH22は会計システムのGLからマニュアル仕訳
  5. その他はシステムになじみ薄(PPH25, PPH24, PPH4(2), PPH26, PPH29)

いきなり大雑把ですが僕の場合はこんな感じでくくっています。

会計システムから見たインドネシアの税制

まずは所得税

法人税(PPH25 bulanan)

インドネシアは日本と同様に自由主義経済ですから国のメインの税収は所得税(PPH=Pajak Penghasilan)であり、そのうち会社の所得税である法人税が課税所得に対して一律25%かかります。

但し年度末の当期課税所得(13月調整後の税引前利益)が翌期の3月に確定してから一括納税というのはNGで、前年度課税所得x25%=前年度法人税額から前期の前払PPH22(輸入時に売上計上時の税金を前払い)と前年度に源泉されたPPH23(国内サービス販売時にお客から回収した源泉徴収票に基づく)とPPH24(日本からの収入のうち日本で源泉された源泉徴収票に基づく)を控除したみなし税額を12等分して毎月の予定納付額(PPH25)として前払いし、年度末に当期課税所得を元に算出した確定法人税額から12ヶ月分の累積額と当期のPPH22、PPH23、PPH24を控除し、差額をPPH29として納税します。

PPH25の月額は税務上の課税所得が前年度末から当期3月末までの間の「13月」に税務調整がなされた上で確定する関係上、毎月の予定納付額が更新されるのは4月からになります。

サービス源泉税(PPH23, PPH4(2), PPH26 bulanan)

上記の法人税は申告(自社の税額)して支払うものですが、国内サービスに関してはサービス提供者側の税金2%を決済時に源泉(他社の税額)した上で翌月10日までに納税する義務PPH23があり、サービス提供者側にBukti potong pajak(源泉徴収票)を発行してあげます。

逆に売りの場合はお客から源泉徴収票を発行してもらい、年度末の当期確定課税所得の25%から控除(PPH25の12ヶ月累計額、PPH22、PPH24も合わせて控除)し差額をPPH29として納付します。これさっきも書いたな。。。

ERPシステムでPPH23を処理するのは売り買いともにインボイスの決済時であり、インボイスの明細単位で源泉対象(サービス)かそうでないかを判断する必要があるため、品目マスタに識別フラグがない限り選別計算が難しく、会計システムのみの場合は品目マスタすら存在しないので更に難しいです。

よって必然的にAP決済画面からマニュアルで税金仕訳を追加することになります。

(売り決済)
Dr. Bank 98      Cr. AR 100
Dr. Prepaid PPH23 2

(買い決済)
Dr. AP 100      Cr. Bank 98
            Cr. W/H PPH23 2

同じく国内サービスのうちオフィスの賃貸料(他社の収入から自社が源泉)の場合、支払うときPPH4(2)分10%を源泉し翌月納税する義務がありますが、PPH23がまとめてポンの総合課税(Non-Final)であるのに対し、PPH4(2)は取引単位で課せられる源泉分離課税(Final)です。

銀行利子(自社の収入から銀行が源泉)も同じくPPH4(2)のFinalであり、口座に入金されるときに銀行側に20%源泉されています。ですから1M(約1千万円)をBCA銀行で年利6.25%(2015年5月現在)の定期預金を作る場合

Rp.1,000,000,000x0.0625x0.8÷12=Rp. 4,666,000(約4万5千円)

これが毎月Netで利子として入ってきます。日本の超低金利に比べると夢のような話ですが、インフレとルピアの為替リスクは定期預金の利子くらい軽くふっ飛ばしますので、安易に円をルピアに両替するのではなく円とルピアをバランス良く保持してリスク分散したほうがよいと思います。何のこっちゃ。

上記は国内サービスに対する源泉でしたが、海外サービスに対する源泉はPPH26で支払い時に源泉の上、海外のサービス提供者が自国で二重課税されないよう源泉徴収票を発行してあげます。

実はこのPPH26がインドネシア子会社の日本へのロイヤルティ支払い、つまり日本の親会社の投資回収の源泉に対してかかる源泉徴収であり、インドネシア法人側で20%きっちり源泉の上、インドネシアにて納税する必要があります。

輸入時の前払法人税(PPH22)

輸入時に関税(Bea Masuk)の他に、「将来の販売時の法人税を前払いしろ」というがめついPPH22があります。当然PPN(Pajak Pertambahan Nilai)もしっかり徴収されますので輸入時にはトリプルで税金がかかることになります。ただ下にも書きますがBM、PPH22、PPNは目的や負担者がそれぞれ異なります。

例えばFOB価格1,000に対して送料200と保険10がかかった場合のBM、PPN、PPH22は以下のように計算できると思います。たぶん。

BM : (1,000+200+10)x15%=181
PPN : (1,000+200+10+181)x10%=139
PPH22 : (1,000+200+10+181)x2.5%=347

この場合の輸入に関わる仕訳は以下のようになります。

Dr.Freight fee 1,000      Cr. AP Forwarder 1,667
Dr.BM 181
Dr.Prepaid PPN 139
Dr.Prepaid PPH22 347

PPH22は経過勘定(資産)に計上し、年度末の当期課税所得x25%の税額とre-classします。

海外所得に対する所得税(PPH24)

インドネシアで年間183日ルールを満たすインドネシア居住者が日本から給料その他の収入がある場合、インドネシアだけでなく日本の収入に対しても所得税が課されます。

その場合の2重課税を防ぐためには日本で源泉されたときの源泉徴収票でもってインドネシアで控除を受けることになるらしいですが、そもそもどこまで日本の収入をインドネシアの税務署に報告するかという「それ以前問題」があります。

但しリタイアメントビザと呼ばれる319ビザでインドネシアに居住する場合は日本での年金収入などがあることを前提としているので、このPPH24の控除手続きが必要になるのだと思います。経験のある方、是非教えてください。

個人所得税(PPH21 bulanan)

個人の所得税PPH21(源泉なので正確には所得税控除)は日本と同じく「超えた分のみ税率が上がる」超過累進課税です。基本給(Gaji Pokok)と手当(Tunjangan)を足した金額(Gross)から各種控除(Potongan/Subsidi pajak)を差し引いた金額が課税所得です。

  • 50jutaまで:5%
  • 50jutaから250jutaまでの間:15%
  • 250jutaから500jutaまでの間:25%
  • 500juta以上:30%

毎月のGross給料(控除なしと仮定)が10juta/月の人の年間課税所得額は120jutaなのでPPH21の年間総額は50jutax0.05 + 70jutax0.15=13jutaになりますので、毎月の所得税は13juta÷12ヶ月=1.083jutaになり、手取りは10juta-1.083juta=8.917jutaになり、1.083jutaが会社によってPPH21として納税されます。

給料が手取り金額(Net)の場合はNet給料10juta/月に所得税手当(Tunjangan PPH21)1juta(本来は正確に計算する必要あり)を追加した11jutaをGross給料(控除なしと仮定)とします。

この場合の年間課税所得額は132jutaなのでPPH21の年間総額は50jutax0.05 + 82jutax0.15=14.8jutaになりますので、毎月の所得税は14.8juta÷12ヶ月=1.233jutaになり、手取りは10jutaのままで、1.233jutaが会社によってPPH21として納税されます。

これは下手な例なのでTunjangan PPH21(1juta)とPPH21(1.233juta)の間に差額0.233jutaがありますが、この差額がないようにビシッと逆算することをGross-up方式と言います。この説明、はっきり言って自信ないので間違っていたらご指摘ください。

PPN(Pajak Pertambahan Nilai)

PPHの説明で疲れましたのでPPNは軽く流したいところですが、インドネシアで生活する上で一番なじみ深いのはPPN(付加価値税)10%ではないでしょうか?Invoice発行時にOut10%、Invoice受領時にIn10%でFaktur Pajakを証拠としてプラスなら翌月末までに納税、マイナスなら年度末に還付請求または翌事業年度に繰越します。

PPNを考える上で製造業が材料を輸入して製品を生産し商品として小売店に並ぶプロセスを考えると分かりやすいと思います。

材料購入時のBea Masuk(関税)は輸入品の消費(材料を購入)への課税を製造業が負担するものであり、同時に課せられるPPH22は販売時の利益に対する課税の前払いという意味で製造業が負担するものであり、PPNは工場から一次卸、二次卸、小売店というサプライチェーンの中で生じる付加価値への課税を事業主が負担するものです。

ただし消費者が小売店から商品を購入する時のVATは税額控除できないため、PPNを負担するのは消費者ということになります。そういう意味でPPNは日本の消費税(酒税・たばこ税)に近いと言えると思います。

  • BM(事業者負担)→PPH22(売上時の税金前払い)→PPN(消費者負担)

納税方法(まとめ)

毎月のSPT(Surat Pemberitahuan)はPPN, PPH21, PPH23, PPH25, PPH4(2)の5枚あり、銀行への払い込みはまとめて一括OK。PPH23が売りの場合には年度末の当期課税所得に基づいて計算された法人税からの控除になります。

年度末に当期課税所得に基づく25%法人税額確定後に、毎月前払いしてきたPPH25(予定前払い)、PPH23(客に源泉された源泉徴収票分)、PPH22(輸入時に販売時の前払い)、PPH24(インドネシア居住者が日本で得た収入のうち日本で源泉されたもの)を控除した差額をPPH29として払い込みます。これ書くの3回目。





おすすめ記事一覧

大統領選挙で考えたギャップにハマるということ 1

ギャップにキュンとするというのは人間の本能みたいなもので、ジョコウィの私利私欲のない素朴なおじさん像と、その実強力なリーダーシップを発揮する実務派という内面が、一見普通の人だが実はスゴイというギャップ好きのインドネシア人に大ウケして、大衆は一種の集団催眠状態にあるようです。

情報の質のレベル 2

見える化された結果を共有化することで問題点が共通認識されますが、共有化が進むことで情報の持つ希少価値が薄れて困る人間がいる場合、有益な情報を独占することでポジションを高めようという政治力が働きます。

3

日本人がインドネシアに来ると、インドネシア人ののんびり加減にイライラするというのは昔からよく聞く話で、インドネシア在住日本人にとってのバイブル的小説である深田祐介著「ガルーダ商人」の中でも、インドネシア宗教省の高官が日本人とインドネシア人を自宅に招待する際に、インドネシア人向けの招待状には、遅刻することを前提にパーティ開始時間を三十分早く書いておくという記述があるほどです。

宗教によって異なる「死んだらどうなる」の考え方 4

キリスト教もイスラム教もともにユダヤ教から派生した宗教であり、それぞれイエス・キリスト(本人が神)またはアッラーという唯一無二の神を信じます。

株価操作なんてインドネシア株では当たり前 5

株価は売り注文と買い注文により変動し、大量の売り注文を買う注文がたくさん入れば、他の投資家達は「俺も俺も」と続くことで株価が上がります。

心臓に毛が生えたインドネシア人のずうずうしい転職活動を応援してみた 6

インドネシア人は秘密の話は誰かに暴露しないと精神の安定を保てない人が多いため、内緒の話に情報の希少性は少なく信憑性も低いことが多いので、「ここだけの話」という枕詞付きで聞かされる話は話半分に聞いておいたほうがいいかもしれません。

日系企業のインドネシアでの存在意義 7

今のまま日本の人口減が続けば、内需は縮小の一途をたどるわけで、そうなると日本国内市場だけで生き残るのは難しいと判断する国内企業が、海外市場に活路を見出そうとするのは必然です。

チャンスはあるが勝てる分野を見つけるのが難しい 8

実際にインドネシアに住んでみて、自分で動いて人と話しをして、現地の事情を少しずつ理解していくにつれて、インドネシアで起業することが意外と手強いことに気づき、その難しさの原因は、高い送料と関税であったりローカル企業との競争であったり、就労ビザ(IMTA)や外国人技能開発基金(DPKK)などのランニングコストの高さであったりします。

インドネシアのシステムインテグレーション業界 9

先日JETRO(日本貿易振興機構)さんと、インドネシアの中小企業のIT投資について意見交換させていただく機会をいただいたのですが、そこで「システム投資のコストメリットはどのように説明できるのか」という、システムインテグレーターの存在価値にも関わる重要な問題提起がありました。

肉体と精神と心と魂 10

「Body and Soul」といえば、昨日の内閣改造に伴う人事で内閣府政務官に内定した自民党の今井絵理子参議院員がメンバーだったSPEEDのデビュー曲であり、インドネシアの老舗女性ファッションブランド名でもあります。

ジャカルタのラーメン市場 11

僕がインドネシアに初めて来たのが1997年10月、インドネシア語は分からないし、仕事は辛いし、周囲の人間は理不尽だし、一時期日本に帰りたくて仕方がない時期がありましたが、当時自分をかろうじてインドネシアに繋ぎ止める心の支えとなっていたのが、協栄プリンスビル(今のWisma Keiai)の日本食レストラン「五右衛門」であり、ここでキムチラーメンを食べることが唯一の楽しみと言っても過言ではありませんでした。

ブランド力、技術力、資金力の3要素 12

1998年のジャカルタ暴動後、ルピアが暴落し海外からのドル建て債務を抱えた国内企業が利子の支払いに苦しんでいた頃、僕は外貨が獲得できるインドネシアでの新しいビジネスを探していました。

日本とインドネシアの間でのタイムマシン経営が通じなくなっている件 13

先進国と後進国との間にある流行のタイムラグを利用して、先進国での成功例を後進国で実践するビジネスモデルをタイムマシン経営といいますが、インターネットの普及に伴い情報がフラット化してしまい、モノと情報のタイムラグが限りなく小さくなった今、先駆者である中小零細同業他社が乱立し市場が出来上がったところに、後発の大手が参入し先発零細を駆逐していく、という典型的な負けパターンにはまります。

サリナデパートとマクドナルド 14

本日5月10日を最後にインドネシアのマクドナルド第1号店であるサリナデパート店(Sarinah)が閉店になりますが、ジャカルタのショッピングモールが新しいコンセプトでモダンにリニューアルされ続ける中で、僕がインドネシアに来たばかりの20数年前には、若者の待ち合わせ場所の定番でもあったサリナデパートやブロックMのパサラヤ(Pasaraya)などは完全に時代に取り残されてしまいました。

不景気の歴史 15

僕がインドネシアに来てからこれまで何度か経済不況を見てきましたが、今回の新型コロナウィルスの感染拡大により、間違いなく景気後退しますので、数年後にはこれがコロナショックとかコロナ不況とか呼ばれるようになるのかもしれません。

日本のバブル経済崩壊後とインドネシアの通貨危機後 16

自分が大学に入学したのがバブル経済末期の1991年、土地も株価もMAX爆上げして、三菱地所がアメリカの象徴であるロックフェラーセンタービルを買収し、ジュリアナ東京でワンレンボディコン(登美丘高校ダンス部のバブリーダンスみたいなやつ)のお姉さん達が扇子振って踊っている時期でした。

内需と外需の自国経済に及ぼす影響 17

公共事業投資を行っても、お金が企業内や個人の貯蓄に滞留してしまい国内消費が増えないのが日本の状況であり、国内消費は増えても消費材の輸入品比率が高く、国内資産が海外に流出しているのがインドネシアの状況です。

2019年の総選挙を前にインドネシア政治史のおさらい 18

来年の大統領選挙(Pemilu Pilpres Pileg Indonesia 2019)に向けての選挙運動(Kampanye)を解禁するにあたり、投票用紙に印字される順番はジョコウィ現職大統領・マフル副大統領候補組が1番、プラボウォ大統領候補・サンディアガウノ副大統領候補組が2番と決まりました。

コーヒーをもっと楽しくもっと美味しく 19

インドネシアは北回帰線と南回帰線をはさむコーヒーベルトに位置するコーヒー栽培に適した国で、1602年の東インド会社の進出を契機にオランダの植民地支配が300年以上続き、その間アラビカ種のコーヒーが持ち込まれ、気候のいい高原地帯で栽培が開始されました。

インドネシア人の悪魔祓い 20

人間誰しも自分の中に悪魔が潜んでおり、それが何らかのきっかけで表面に出て来るという考え方自体には、背景に宗教が有るか無いかの違いだけで、基本的に理解できる話であり、それを信じるか信じないかは別として、そういう考えがあることを認めることは大切なことだと思います。

-インドネシア税法

© 2020 バテラハイシステム Powered by STINGER