ギャップにキュンとするというのは人間の本能みたいなもので、ジョコウィ氏の『私利私欲のない素朴なおじさん像』と、その実強力なリーダーシップを発揮する実務派という内面が、一見普通の人だが実はスゴイというギャップ好きのインドネシア人に大ウケして、大衆は一種の集団催眠状態にあったのだと思います。 インドネシアの政治・経済・社会 日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しています。 続きを見る
圧倒的なジョコウィ氏人気
2014年7月22日は選挙委員会(KPU)からの大統領選挙結果について公式発表があったことで、当時私の朝の通勤路であったKPU前は通行止めになり、近くを通りがかったときたくさんのTV局の中継車が確認できました。
昼に客先に向かう車中で運転手からは、ジョコウィ氏が如何にすばらしいかとか、プラボウォ氏如何に邪悪かを小一時間聞かされて疲れました。車中では寝たいのですけどね。
あんまりジョコウィ氏を押すのでちょっと辟易して「メガワティ氏の傀儡政権になるんじゃないの?」「プラボウォ氏陣営は強力だから野党に回られると厄介なので懐柔しておいたほうがいいんじゃないの?」とか突いてみましたが、もう待ってましたとばかりに3倍返しで反撃されました。
断食中で口の中カラカラにも関わらず、唾を飛ばしながら熱弁を振るってくれましたが、要約すると『ジョコウィ氏の支持者は政党にあらず民衆にあり』ということのようです。ジョコウィ氏は閣僚には実務派のみを招聘し党利党略は一切関せず、ということのようですが、そんなに信じちゃってもいいんですかねえ?小泉純一郎総理は「政治は権力闘争だ」って言ってましたけど。。。
ちなみに私が当時足掛け8年住んでいたTaman Rasunaアパートはバークリー系ですし、会社のオフィスビルはゴルカル系なので、ジョコウィ大統領になったら一応私は公私共々完全に抵抗勢力側の施設に身を委ねた(おおげさ)状態になります。
プラボウォ氏陣営は当時の選挙でかなりお金を使ったように聞きましたので、選挙に勝ったらバークリー側もあの手この手でBalik modal(元手の回収)して不動産開発事業の中核であるKuninganのRasuna Epicentrum Superblockへの投資を活発化することが予測されましたが、負けたら管理サービスの質が落ちるんじゃなかろうか、などとジョコウィ大統領待望論一色の中、一人下衆な心配をしていました。
アパートに隣接するEpicentrum Walkは、当時マネージメントオフィスの不手際でテナントがなかなか入らず閑散とした状態でしたが、選挙結果が更なる痛手になることを心配しておりました。
ジョコウィ氏人気の本質はギャップにあり
当時、ジョコウィ氏の地元である中部ジャワのSoloを、システム導入プロジェクトのため定期訪問する機会があったのですが、この人にまつわる悪い噂を本当に聞くことはなく、いろいろな評判を総合すると以下の2点に集約されました。
- 私利私欲のない素朴なおじさん
- その実強力なリーダーシップを発揮する実務派
日本人もそうかもしれませんが、インドネシア人もこの「一見普通の人だが実はスゴイ」というギャップが好きです。2014年当時のジョコウィ氏評として真っ先に取り上げられたのは「汚職に無縁の精錬潔白さ」でしたが、私が思うに「実はスゴイ人」というギャップこそが一般大衆を魅了し、誤解を恐れず言えば一種の集団催眠状態にしていたんじゃないかと思っています。
「脱いだらスゴイ」「ちょいワル親父」とかギャップにキュンとするというのは人間の本能みたいなもので、これこそが当時のジョコウィ氏人気の本質だったのではないかと思います