メイカルタプロジェクトは事業許認可の過程で贈収賄が発覚し逮捕者が出るなど進捗が遅れていましたが、開始当初のオレンジカウンティやDistrict1部分は完成の目途がたっています。ただコロナ禍による不動産市場の冷え込みの影響で第二期工事以降の話が不明瞭です。
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インドネシアの政治・経済・社会
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Tol Jakarta-Cikampek(高速道路)の34km地点Cibatu出口を降りてすぐに左折して道なりに進んでいくと、建設中のメイカルタ(Meikarta)のビル群が見えます。
2016年頃オレンジカウンティ(Orange County)という名前で建設プロジェクトが始まってから、三菱商事の資本参加の下で日本の幼稚園や日本の学校も建設されるという立看板で告知されていたと思いきや、いつの間にか名前がメイカルタに変わってから、ジャカルタやチカランのモールで盛大に、アパートのユニット販売が展開されていきました。
オレンジカウンティは現在メイカルタプロジェクトの中に組み込まれてしまいましたが、そもそもメイカルタという名前は、リッポーグループCEOであるジェームズ・リアディ(James Riady)の母スリヤワティ・リディア(Lippo創設者のモフタル・リアディの妻Suryawati Lidya)の名前の一部にあるメイ(梅)とジャカルタを繋げた造語です。
当初から事業許可を取得しないまま工事を進めているのではないかという指摘はありましたが、案の定汚職撲滅委員会(KPK)は事業許可を出す見返りとして現金の授受があったとして、ブカシ県知事ネネン・ハサナ・ヤシン(Neneng Hasanah Yasin)、リッポーグループ総裁ビリー・シンドロ(Billy Sindoro)その他数名を逮捕し、ビリー氏には2019年3月に禁固3年6か月、ネネン県知事には2019年6月に禁固6年の判決が出ています。
大学や高級ホテルの誘致、ITインテリジェンスパークなど、アメリカのカリフォルニア州のシリコンバレーをイメージしたような「東南アジアで一番美しい街」を標榜して始まった事業費は278兆ルピア(約2兆3000億円)というLippoグループ最大の都市開発事業となりました。
Jababeka工業団地やGIIC工業団地などの今後拡大していくであろう周辺の工業団地の日本からの駐在員やマネージャークラスの人間に対する投資物件として、2ベッドルームのユニットを、Lippoグループメンバー特別割引で400juta程度で購入したインドネシア人の友人が居ましたが、当時の僕は「本当に建つのかなあ」というのが正直な感想でした。
低価格の床面積の狭いユニットの需要がどれだけあるのか、56棟22,500ユニットというのは供給過多ではないかとかいう問題以前に、個人的にはどうもLippoグループの過去のプロジェクトであるLippo KemangやLippo Karawaciの中途半端な感じが気になっていたのが理由ですが、とりあえずは最初に着手されたオレンジカウンティの名が残るアパートと商業施設、現在7割がた完成しているDistrict1の第一期工事は2021年第一四半期までに完了する予定です。
今後の不安点として、2021年以降の第二期工事の話が全く見えていないこと、Lippoグループの資金が十分かどうかという疑念、コロナ禍後の経済の落ち込みにより不動産市場が冷え込むこと、事業許認可はどうなったのかなどですが、長期的視点で見れば西ジャワのスバン(Subang)に自動車輸出拠点となるパティンバン港(Patimban)が2023年に開港し、ジャカルタの東へxEV生産を中核とした北部ジャワ自動車産業ベルトが伸びていき、インドネシア経済の中核を担うことになれば、ジャカルタ首都圏の住宅難の解消のための都市開発という意味でもメイカルタの重要性は益々高まるはずです。