インドネシアは日本と同じく超過累進課税制度であり、多くの会社は雇用契約時の給料は手取り金額で締結し、個人所得税分は税額控除として会社が負担するグロスアップ方式を採用していますので、所得税の計算に当たっては控除額は収入とみなして総収入で計算します。 インドネシアの税金 C312就労ビザには6か月間と12か月間の2種類あり、イミグレーションと税務署のデータベースは繋がっていないとはいえ、インドネシアに183日以上滞在する場合はNPWP(納税者番号)を取得し個人所得税PPh21を納税しないと脱税の嫌疑をかけられかねません。 続きを見る
NET金額で就労契約を結びGROSS-UP方式で給与額を計算
インドネシアは就労契約時の給与は手取り金額(NET)で契約するのが一般的です。
例えば月給10jutaで契約し、その内訳が基本給(Gaji Pokok)8jutaと各種手当(Allowance=Tunjangan)2jutaである場合、会社にとっての労務費は大きく分けて以下の3つが発生します。
- NETの月給10juta(基本給8juta+手当2juta)
- 個人所得税源泉分(PPh21)
- 課税所得=Net金額10juta-各種控除(Potongan/Subsidi pajak)1juta=9juta
- 課税所得9jutax15%=1.35juta
- BPJS Kesehatan 0.08juta
社員に対しては個人所得税源泉分1.35jutaは個人所得税手当(Tunjangan PPh21)とするため、会計処理上の労務費合計は「10juta+1.35juta+0.08juta=11.43juta」になります。
1年分の個人所得税源泉について、会社は1721 A1(民間企業従業員用フォーム 通称A1)に必要事項記入の上、翌年1月末までに最寄の税務署(KPP=Kantor Pelayanan Pajak)にまとめて申告を行う義務があります。
インドネシアの個人所得税PPh21は日本と同じく超過累進課税(Progresif)であり、税率は課税所得に応じて変わります。
- 50jutaまで:5%
- 50jutaから250jutaまでの間:15%
- 250jutaから500jutaまでの間:25%
- 500juta以上:30%
A1フォームによるPPh21の申請は、社員にとっては会社に源泉されることで納税の義務を果たした証拠となります。
- 1721 A1は正社員のみに提供され、契約社員は対象外。
- 1721 A1は1課税年度の第21条所得税の源泉徴収または当該課税年度中の雇用者の正社員の源泉徴収の証拠となる。
- 1721 A1は正社員が個人所得の年間所得税を報告する際に使用する。
- 税務総局規制(Peraturan Direktur Jenderal Pajak nomor PER-32/PJ/2015)に基づいて、雇用主は翌年の1月までに1721 A1を提出する必要がある。
総収入(Penghasilan Bruto グロスインカム)が60juta以上の一般的なサラリーマンは、3月末までに行う所得税申告SPT-Tahunanにおいて1770Sフォームを提出する際の個人所得税納税済みの証拠として源泉徴収証明書1721 A1を提出します。
毎年3月になるとインドネシア人が半休を取って税務署に行く
毎年この時期になると、会社のスタッフがKantor pajak(税務署)に所得税申告(Pelaporan SPT Tahunan)のために有給とったり半休とったり慌しくなります。
毎年3月に前年度1年分の所得税(PPh21)の源泉徴収票(Bukti potong pajak PPh21)を持って税務署にいく必要があるのですが、大企業ならともかく中小企業で経理がおばちゃん一人の会社なんかはこの源泉徴収票の発行が遅れて、3月末ぎりぎり滑り込みで申告ということになります。
インドネシアで人材採用する場合、基本は給料の額はNETで提示して合意し、会社側で所得税手当(Tunjangan PPh21)を足してGrossの金額にしてから所得税を差し引いた後にきっちりと合意時のNET金額に合わせるというGross-up方式がとられますので、日本人が相手の年収から所得税や住民税や雇用保険を差し引いてだいたい手取りはいくらだね、と計算する煩わしさはインドネシアにはなく、逆に高給取りのインドネシア人の給料額を見て「手取りでこの金額なら日本よりいいじゃん」と驚くケースがよくあります。
個人所得税申告を適当にしているとローンが組めなくなる?
所得のない失業者や専業主婦は申告の必要はないので、対象となるのは個人事業主か会社員になるわけですが、所得税支払い額を押さえるために、中小企業なんかは最低賃金Upah Minimum Propinsi (UMP)を下回って源泉徴収票を発行したりするわけですが、税務署職員もこの辺の事情はだいたいわかっているようですが、大勢のSPTをさばくために忙しいのでいちいち追求していられないようです。
ただし運の悪い人には、SPTの不備として事後に警告書が送られるようで、そもそも最低賃金下回って所得税申告していると、車のローン組んだり銀行のKPR(Kredit Pemilikan Rumah)利用して家買うときに邪険に扱われるリスクがあるようです。
なんせこのSPTフォーム記載方法が複雑で普通の人には難しすぎる、税務署に人が殺到するので順番待ちで半日潰れる、など問題があるようですが、近年インドネシアの税務署もオンライン化が進み、2015年は企業のPPN(付加価値税)申告がe-Faktur使用を義務付けられたように、個人所得税についてもe-Filingというオンラインの申請システムに移行しようとしています。
インドネシアは税体系が複雑な上に、納税分のうちどれだけ国庫にきちんと入っているのか怪しい面もありましたが、アホック州知事の下、KPK(Komisi Pemberantasan Korupsi)による取締りが厳しくなっており、かつて大規模自然災害が発生するたびに、外国からの義捐金で財政赤字を立て直すと揶揄されていたくらい国の歳入が不安定な時代から、少しずつ資本主義国家らしく所得税をきっちり徴収するシステムが整備されつつあります。
(2021年3月追記)
今ではe-FilingシステムでSPT Tahunanの報告がオンラインで出来ますので、コロナ禍の今、税務署に報告フォームとA1フォームを持って長時間並ぶ必要はなくなりました。
申告はe-Filingで行い、支払いのためのコード(CODE BillingまたはID Billing)をe-Billingで取得し、インターネットバンキングの支払いメニューから納税するというオンラインでの手続きが整っています。
KTP(住民登録書)とNPWP(納税者番号)の住所の問題
2012年から4年間放ったらかしにしていた嫁さんの個人所得税申告 SPT tahunan PPh OP(Surat Pemberitahuan Tahunan Pajak Penghasilan Orang Pribadi )を清算するために、クニンガンの税務署 KPP(Kantor Pelayanan Pajak)に行ってきましたが、納税者番号 NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak )のカードに記載されている住所が、前のアパートの住所になっていたので、カードの再発行手続きからやり直しです。
インドネシア人の住民登録証 KTP(Kartu Tanda Penduduk)は、以前は有効期限が5年でしたが、2016年現在のe-KTPの有効期限(Berlaku Hingga)の欄には「SEUMUR HIDUP(生きてる限り)」と記載され、完全に人口識別番号 NIK(Nomor Induk Kependudukan)ベースで管理されています。
本来KTPは「住民登録証」なので、カードに住所が記載してある以上、引っ越したら新住所のKantor Kelurahan(町役場)で再発行してもらうのが筋だと思うのですが、実際には引っ越すたびにいちいち面倒くさい再発行の手続きをする人は稀のようです。
だったらなおさらNPWPカードも納税者番号で管理されているので、住所変更も何もないだろうとは思うのですが、税務署からのお知らせ等はこのNPWPカード記載の住所に送られるため、再発行が必要とのこと。
嫁さんのNPWPカードは来週出来上がるようなので、来週までに2012年から2015年分のSPTフォーム1770(1年分が14枚つづり)を記載して持参し、手続きを完了させることになりますが、2016年度分の申告、つまり2017年3月に行う申告時にはe-Filingで申告して、e-BillingでID Billingを取得し、インターネットバンキングで支払いを済ませることができそうです。
e-Filingを利用するための識別番号であるEFIN
間違いやすい言葉でe-SPT(elektronik Surat Pemberitahuan)がありますが、これはDJP(Direktorat Jenderal Pajak インドネシア国税総局)が提供する所得税申請書作成アプリで、これまで紙のSPTの専用フォームに記載していたものが、e-SPTで生成したファイル形式で提出できるものであり、オンラインシステムであるE-Filingとは別物です。
EFIN(Electronic Filing Identification Number)は納税者WP(Wajib Pajak)がe-Filingを利用するためにDJPから発行してもらう識別番号であり、残念ながらこれはオンラインでは取得できないので所轄のKPPにて申請することになり、これをもってe-Filing(DJP Onlineの中のメニューからリンク)を利用することができます。
このEFINは税務署から納税者の登録住所に郵送されるのですが、前に住んでいたクニンガンのアパートの19階から28階に引っ越したタイミングに重なったドサクサで、郵送されたはずのEFIN通知が届かず、うちの嫁さんはEFINの存在を知らずにDJP Onlineにアクセスしようとしてここでつまづいたようです。
e-Filing(所得税申告システム)とe-Billing(支払いコード生成システム)
e-FilingはNPWPとEFINでもってDJP Onlineのサイトにてのログイン用パスワードを生成し、NPWPとパスワードにてログインします。
ログインすると1770(Pengusaha/wiraswasta 自営業者用)、1770S(penghasilan bruto グロスインカムが60juta以上の一般的なサラリーマン用)、1770SS(penghasilan brutoが60juta以下の人用)にメニューが分かれますが、基本は紙の専用フォームで行うSPT tahunan PPhと同じ内容です。
うちの嫁さんは専業主婦なので1770SS、と思いきや1770に該当するようで、この理由はまだよく判っていませんが、Pisah Harta(財産分離所有)に該当する場合には、無条件で1770が適用されるのかもしれません。
e-Billingは15桁の支払いコード(ID BillingまたはCODE Billing)を生成するシステムであり、SSE(Surat Setoran Elektronik)のサイト(DJP Onlineの中のメニューからリンク)で生成したID BillingでもってATMやインターネットバンキングから所得税の支払いを行うことになります。
専門用語がごちゃごちゃしてややこしいですが、まとめると「税務署(KPP)でEFINを申請して、郵送されてきたEFINとNPWPにてDJP Online利用のパスワードを生成して、はじめてe-Filingで所得税申告が利用できる。税務署から送られてきた請求書の支払いは、SSEやDJP Online上のe-BillingにてID Billingを取得したのちに、ATMやインターネットバンキングで支払い可能」といったところでしょうか。
日本もインドネシアも超過累進課税
ほとんどの国は超過累進課税(Excessive progressive taxation)を採用しており、例えばインドネシアで課税所得240jutaの場合に「50jutaに対して5%」「50jutaを超える残り190jutaに対して15%」の税率で所得税が計算されます。
インドネシア
- 50juta以下分に対して5%(つまり課税所得が50juta以上なら一律2.5juta)
- 50jutaを超える250juta以下分に対して15%
- 250jutaを超える500juta以下分に対して25%
- 500jutaを超える分に対して30%
日本
- 195万円以下分に対して5%
- 195万円を超える330万円以下分に対して10%
- 330万円を超える695万円以下分に対して20%
- 695万円を超える900万円以下分に対して23%
- 900万円を超える1800万円以下分に対して33%
- 1,800万円を超える4000万円以下分に対して40%
- 4,000万円を超える分に対して45%
個人所得税だけで見た場合、インドネシアは最高税率が30%と日本の45%に比べて低く、高額所得者ほど有利な税制になっています。
さらに日本では個人所得税に加えて住民税が10%(市区町民税6%+都道府県税4%)かかりますが、インドネシアに住民税はありません。
日本で年間の課税所得4,000万円を超える高額所得者の場合、所得税率最高45%が適用された上で住民税10%がかりますが、超過累進課税において実際に45%がかかるのは4,000万円を超える部分のみです。
プロ野球選手がシーズンオフの年俸交渉後に「どうせ年俸の半分は税金で持っていかれるから」と自虐的に発言するのをニュースで見ますが、本当に半分以上もっていかれる選手は、個人所得税と住民税の課税金額を計算してみると、おおよそ年俸1億5千万円以上のスター選手クラスのみであることが分かります。
自営業者が節税のために会社からの所得を減らす意味
自営業者が「会社からの給料は年収900万円以下に抑えたほうが得」とか言われるのは、個人所得税を減らして、個人の支出は極力会社の経費として落とせば、会社の課税所得が減って法人税を節約できるという意味です。
ただしインドネシアの場合、起業間もない会社の売上が4.8Milyarに満たない場合には、3年間に限って売上に対する0.5%を分離課税(PPh4(2)というFinal Tax)として納税することができるPP23 Tahun2018という税制度があるため、このスキームを選択している会社では節税のために「経費で落とす」ことに意味はありません。
日本では個人事業者の場合は、個人所得税と住民税に比べて個人事業税がかかりますので、法人化したほうが税制上有利になることが多いですが、インドネシアでは残念ながら外国人は個人事業主としてビジネスをすることはできません。
個人所得税PPh21の月額をグロスアップ方式で計算
例えば手取り月給17juta(13万円ほど)の中堅SE(システムエンジニア)の個人所得税PPh21の月額を計算してみます。2019年2月現在、インドネシアで手取り17jutaをもらうSEであればコーディングだけでなく業務コンサルも出来る業界経験最低5年以上のレベルです。
インドネシアの会社の多くは雇用契約時の給料は手取り金額で締結し、個人所得税分は税額控除(Tunjangan Pajak=Tax Allowance)として会社が負担するグロスアップ(Gross Up)方式を採用していますので、所得税の計算に当たっては控除額は収入とみなして総収入で計算します。
- 課税所得=( 手取り17juta+税額控除 )x12ヶ月ー非課税金額58.5juta
グロスアップ方式での総収入は、PPh21が税額控除されている分を手取りにプラスし、12ヶ月分の総所得を計算します。ここでは話を簡単にするためにBPJS(健康保険BPJS-Kesehatanと労働保険BPJS-Ketenagakerjaanからなる雇用保険制度)は省略していますが、本来はBPJSも収入とみなしてプラスする必要があります。
非課税所得(Penghasilan Tidak Kena Pajak=PTKP)は年間54jutaで、扶養家族があれば4.5juta上乗せされますので総所得からマイナスし、課税所得を計算します。
cermati.com/artikel/pengha…
総所得に対するPPh21の計算は、50juta以下は5%なので50jutax5%=2.5juta、50jutaを超える250juta以下が( 課税所得-50juta )x15%で計算され、PPh21(税額控除)の月額は以下のように計算されます。
- PPh21(税額控除)={ 2.5juta+( 課税所得-50juta )x15% }÷12
この連立方程式から課税所得 (X)と税額控除 (Y)を計算します。
- 課税所得=( 手取り17juta+税額控除 )x12ヶ月ー非課税金額58.5juta
- 税額控除={ 2.5juta+( 課税所得-50juta )x15% }÷12
この場合課税所得がRp.165,294,120、税額控除(PPh21)がRp.1,649,510になります。
Gross Up方式のための簡易的な税額控除計算方法(2019年8月追記)
Gross Up方式のポイントはPPh21と同額の税額控除(PPh21手当)を手取り額に加算し、PPh21の計算結果が税額控除と同額になることです。
これを税額控除を計算するための簡易的な計算式があります。
課税所得 (PPh21手当計算用) | 税額控除 (Tunjangan PPh21) | |
1 | Rp 0 - Rp 47,500,000 | (年間PKP - 0) x 5/95 + 0 |
2 | Rp 47,500,000 - Rp 217,500,000 | (年間PKP - Rp 47,500,000) x 15/85 + Rp. 2,500,000 |
3 | Rp 217,500,000 - Rp 405,000,000 | (年間PKP - Rp 217,500,000) x 25/75 + Rp. 32,500,000 |
4 | Rp 405,000,000より大きい | (年間PKP - Rp 405,000,000) x 30/70 + Rp. 95,000,000 |
この場合課税所得(PPh21計算用)が145.5jutaになりますので、上記の2の計算式を適用します。
- 年間手取: Rp.17,000,000 x 12ヶ月 = Rp. 204,000,000
- 非課税: Rp. 58,500,000
- 課税所得:(PPh21手当計算用)Rp. 204,000,000 - Rp. 58,500,000 = Rp. 145,500,000
- 年間税額控除(計算式2):(Rp. 145,500,000 -? Rp. 47,500,000) x 15/85 + 2.5 = Rp. 19,794,000
- 月当たり税額控除:Rp. 19,794,000 /12か月=Rp. 1,649,510 (Y)
先の連立方程式を使った税額控除と同じ結果になります。
税金はその国の居住者が公共サービスを受けるための会費のようなもの
先週Karawangの客先の工場で妊娠6ヶ月の生産管理部のおばちゃんが大きなお腹をさすりながら税金についてぼやいていました。
個人、フリーランス(個人事業主)、法人問わず、収入(収益)に対しては所得税(Pajak Penghasilan)がかかり、バイクや車など公道を走る乗り物には横断歩道やガードレール、中央分離帯などの整備にかかる費用を負担させる車両税(Pajak Kendaraan Bermotor)がかかるとはいえ、何かと税金ばっかりかかるとため息が出るのは普通の感覚だと思います。
売上時に対してかかる11%分から仕入時にかかる11%分を控除して付加価値税(Pajak Pertambahan Nilai)として払い、サービス売上を計上すれば客先から2%をサービス源泉税(PPh23)として引かれる。
日本からの出張者への支援費用や本社へのロイヤルティを払おうものなら移転価格の疑いをかけられ20%のPPh26を徴収され、日本から原材料を輸入すればフォワーダーからの輸入申告書(Pemberitahuan Impor Barang)には輸入関税(Bea Masuk)だけでなく将来の売上計上時の税金前払いという訳の判らない理由でPPh22が上乗せされ、会社のオフィス賃料にはオーナーの賃貸収入に対してかかる10%の分離課税PPh4(2)を負担させられ、定期預金の利子にも20%の分離課税PPh4-2が源泉される・・・・
※PPh pasal 26(非居住者への支払いに対する源泉税)については、日イ租税条約に基づいた二重課税防止のための規則を適用する際に必要となる居住者証明書(DGT)を税務署に提出することで、インドネシア側で免税または減免を受けることができます。
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業務システム導入時に知っていると得するインドネシア税法の知識
業務システム導入時に知っていると得する税法の知識としては付加価値税であるPPNと所得税PPHであり、特にインドネシアの税制の特徴は所得税PPh体系が複雑であることです。
続きを見る
税金というのはその国の居住者が公共サービスを受けるための会費のようなもののであり、活動内容に応じて税率も変わり、個人や法人の所得や資産、納税の状況などを一元的に把握するために納税者番号(Nomor Pokok Wajib Pajak=NPWP)を取得しなければなりません。
外国人であればインドネシアで年間183日以上滞在する場合が居住者と定義(183日ルール)されており、インドネシアで全世界所得に対して納税義務が発生します。
NPWPを夫婦で分けるか家族で一つにまとめるか
インドネシアは夫婦共有財産制(Harta bersama)が基本にあり、インドネシア人夫婦が旦那さん名義で不動産を購入して売却する場合にも奥さんの承認が必要になります。
ましてや不動産の名義人になれない外国人配偶者を持つインドネシア人は、Harta bersamaの原則から外れるので不動産の購入はできませんが、結婚前にPerjanjian Perkawinan(婚姻前の契約)を作成し、その中に財産分離(pisah harta)について明記しておけば可能になります。
このように財産を夫婦で別管理することを前提としている場合は、NPWPも別々に取得する必要がありますが、そうでない場合はNPWPを分けることは税務署の管理を煩わしくし、所得税の計算上も不利になります。
このツイートでは140字以内に抑えるために簡潔に書いてますが、とても伝えきれないので以下に具体例で計算してみます。
NPWPを分ける場合と1つにまとめる場合の所得税の計算
夫婦でNPWPが別々場合
夫と妻のグロスインカム(Penghasilan Bruto)が120jutaと95jutaで、職業経費(Biaya Jabatan)、年金掛け金(Iuran Pensium)を差し引いたネットインカム(Penghasilan Neto)が100jutaと80jutaの場合、夫婦それぞれ毎月の給料から所得税PPh21が源泉されます。
- +夫のネットインカム 100juta
- -非課税所得(K/2) 67.5juta
- --------------------------------
- 課税所得(PKP) 32.5juta
- --------------------------------
- 年間所得税源泉額 32.5juta x 5% = 1.625juta
- +妻のネットインカム 80juta
- -非課税所得(TK/0) 54juta
- --------------------------------
- 課税所得(PKP) 26juta
- --------------------------------
- 年間所得税源泉額 26juta x 5% = 1.3juta
1年間で夫婦で会社にて源泉徴収済みの所得税合計は2.925jutaですが、夫婦の合計ネットインカムを元に年度末の所得税申告(Pelaporan SPT Tahunan)を行い、所得税を再計算した上で不足分を納税する必要があります。
この場合ネットインカム合計180jutaから非課税所得(Penghasilan Tidak Kena Pajak)を差し引いた課税所得が58.5jutaになり、超過累進課税(Excessive progressive taxation)で50jutaまでを5%、残り8.5jutaを15%で所得税額を計算すると3.775jutaになります。
- +夫婦のネットインカム合計 180juta
- -非課税所得(K/I/2)合計 121.5juta
- --------------------------------
- 課税所得(PKP)合計 58.5juta
- --------------------------------
- 所得税1 50juta x 5% = 2.5juta
- 所得税2 8.5juta x 15% = 1.275juta
- --------------------------------
- 所得税合計 3.775juta
この所得税合計3.775jutaをネットインカム金額で按分すると夫2.097juta、妻1.678jutaになりますので、それぞれのNPWPで年度末に支払う税額は以下のとおりになります。
- 夫の所得税額:3.775juta x 100/180=2.097juta
2.097juta-源泉済額1.625juta=0.472juta - 妻の所得税額:3.775juta x 80/180=1.678juta
1.678juta-源泉済額1.3juta=0.378juta
ちなみに非課税所得PTKPは既婚(Kawin=K)未婚(Tidak Kawin=TK)、妻が働いている(Istri bekerja=I)扶養家族数(Tanggungan 数字の数)によって金額が変わっています。
- Tidak Kawin / memiliki 0 Tanggungan : 54juta
- Tidak Kawin / memiliki 1 Tanggungan : 58.5juta
- Tidak Kawin / memiliki 2 Tanggungan : 63juta
- Tidak Kawin / memiliki 3 Tanggungan : 67.5juta
- Kawin / memiliki 0 Tanggungan : 58.5juta
- Kawin / memiliki 1 Tanggungan : 63juta
- Kawin / memiliki 3 Tanggungan : 72juta
- Kawin /Istri bekerja/ memiliki 0 Tanggungan : 112.5juta
- Kawin /Istri bekerja/ memiliki 1 Tanggungan : 117juta
- Kawin /Istri bekerja/ memiliki 2 Tanggungan : 121.5juta
- Kawin /Istri bekerja/ memiliki 3 Tanggungan : 126juta
夫婦でNPWPが1つの場合
インドネシアでは家長(Kepala Keluarga)である夫のNPWPに妻が入ることになりますので、妻の収入は超過累進課税計算の対象外となり、夫の所得税のみ計算されます。
- +夫のネットインカム 100juta
- -非課税所得(K/2) 67.5juta
- --------------------------------
- 課税所得(PKP) 32.5juta
- --------------------------------
- 所得税源泉額 32.5juta x 5% = 1.625juta
そして夫の年度末の所得税再計算時に、妻のグロスインカムを所得税計算対象外として不足分の計算をし納税します。
- 夫の累進課税計算対象外の収入(妻のグロスインカム) 95juta
- -非課税所得(K/2) 67.5juta
- --------------------------------
- 課税所得(PKP) 27.5juta
- --------------------------------
- 所得税 27.5juta x 5% = 1.375juta
以上をまとめますとNPWPをまとめたほうが、所得税PPh21納税額は0.775juta少なくて済むことになります。
- NPWPを夫婦で分けた場合
- 会社による源泉徴収分:2.925juta
- 年度末の追加納税分:0.85juta
- NPWPを夫婦で1つにまとめた場合
- 会社による源泉徴収分:1.625juta
- 年度末の追加納税分:1.375juta