南米原産のフランジパニ(プルメリア)のミニチュア版と勘違いされるアデニウムですが、アフリカやアラビア半島の乾燥地帯を原産としており、乾燥気候に耐えるための水分を貯える塊茎が特徴です。 インドネシアの植物 「インドネシアの植物」と聞いて思い浮かぶのはバリ島を象徴する花でもありお供えものチャナンに添えてあるフランジパニ、灼熱の熱帯気候を体現するようなハイビスカス、傘替わりに使えそうな大きな葉っぱで有名なアロカシアなどです。 続きを見る
フランジパニとアデニウムは似て非なる植物
フランジパニ(Frangipani)はバリ島のヒンドゥー教のお供え物であるチャナン(canang)に添えられることが多いため、バリ島を象徴する花と考えられていますが、プルメリア属(Plumeria)の植物なので日本人はプルメリアと呼ぶ人も多く、インドネシアではカンボジアの花(Bunga Kamboja)と呼ばれます。
ただしジャワ島で白い花と厚めの深緑の葉が特徴的なBunga Kambojaは墓場に生えていることが多いため「死者の花(Bunga Orang Mati)」と呼ばれることすらあり、あまり縁起のよいイメージはないようです。
フランジパニ(プルメリア)は南米原産の植物であり別にカンボジア発祥のものではないのですが、高く成長して日陰を作るため昔の人は墓地の周りに植えることが多く、墓に落ちる花は魔法や神秘的なエネルギーを持つようになると信じられているようです。
この逸話を聞くたびに思い出すのは梶井基次郎の「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」という散文詩で、桜の花があんなにも見事に綺麗に咲くのは屍体の養分を吸っているからに違いないという発想が、死に対して神秘性を求めようとする点でアジア独特のものなのかと思います。
そして見た目がフランジパニのミニサイズで、盆栽のように植えられる植物を英語ではJapanese frangipaniと呼びますが、インドネシアではkamboja Jepang(日本のカンボジア)と呼ばれ、アデニウム(adenium)属に分類されるのでそのままアデニウムと呼ばれます。
アデニウムは名前はイエメンの港湾都市アデン(Aden)に由来し、アフリカやアラビア半島の乾燥地帯を原産としているため、塊茎に水を貯える機能があり、「フランジパニのミニチュア版」というのは間違いであり、プルメリア属であるフランジパニとは全く異なる性質を持つ植物です。
インドネシアでは大きいものにBangkok(バンコク)、小さいものにJepang(日本)と名付けるステレオタイプな考え方があり、例えば大きなドリアンはDurian Bangkok、闘鶏用のデカくて気性の荒い鶏はayam Bangkokと呼ばれ、フランジパニのミニチュア版みたいなアデニウムがkamboja Jepang、女性用生理ナプキンのことをroti Jepang(日本のパン)と呼んだりします。
アデニウムには害虫がつきやすい
うちで栽培する数ある植物の中でもトップ3に入るほどのハダニが付きやすいのがアデニウムで、葉が黄色く元気がなくなっていると感じてチェックすると、葉の根元付近にクモの糸状のものがへばりついており、葉の裏側には黒い斑点のようなダニがいますので、殺虫剤(anti hama)を患部にスプレーして指でこそぎ落としてから、ウェットティッシュで拭き取っています。
アデニウムは「砂漠の薔薇」と呼ばれるように元来乾燥地帯の植物なので、昼間に直射日光で灼熱の環境になる日当たりのよいベランダやプールサイドに置かれることが多いのですが、塊茎に水分や栄養素を貯えようとする習性があるため、乾燥しているからといって水や肥料をやりすぎると、塊茎自体が腐って柔らかくなってしまいます。