インドネシアは2億6千万人の人口のうち4割がジャワ島に集中しており、300あると言われる民族の中でジャワ人が45%、スンダ人が15%を占め、総人口の9割がイスラム教徒です。
インドネシアで仕事をする上で多民族の人々と出会うことになりますが、インドネシア人といってもジャワ人は「幸福と調和を重視する思考が気質や行動に表れる」と言われるほど、何事にも悠然と構えている人が多く、一方でバタック人、マドゥーラ人、アンボン人のように気性が激しいとされる代表的な3民族もおり、一括りにインドネシア人の性格を民族を横断して評するのは無理があります。
それでも総じて気さくで明るく楽天的な人が多いのは、1年を通して温暖な気候がインドネシア人の性格形成に影響したのではないかと考えます。
多民族国家の中にあってイスラム教徒が圧倒的多数占めるにもかかわらず、ヒンドゥ教徒が大多数を占めるバリ島やキリスト教徒が多い北スマトラなど、広大な国土に点在する他宗教を飲み込むことなく、政宗分離のバランスが取れているのは、建国五原則パンチャシラの一つ「唯一神への信仰」という原則が大きく貢献しており、インドネシア人の中に「多様性の中の統一」という国是がイデオロギーとして生き続けてきたものと考えます。
民族や宗教の多様性が当たり前の環境で育ったインドネシア人は、必然的に外国語や海外の文化も柔軟に受け入れやすく、インドネシア人同士でも日常会話の中に時折英語を混ぜたり、英語能力を維持するために敢えて英語で会話をしたり、日本人がやったら「欧米かぶれ」と陰口を叩かれそうなことも普通に行われる環境があることが、インドネシア人の語学能力の高さの秘訣なのだと思います。
当ブログでは僕と同じようにインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、日常生活やビジネスの現場で出会うさまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるようなインドネシア人の特徴についての記事を書いています。
インドネシアの民族
民族は必ずしもDNA型の違いに由来する身体的特徴による遠い血縁関係の集団ではなく、同じ生活環境を共有する中で生まれた家族観や社会制度、歴史的背景によって思考様式や行動様式であるアダット(Adat)であり、例えばジャワ人とスンダ人はDNAは同じだがアダットが異なると言えます。
「スンダ人は色白が多い」というのは事実かもしれませんが、これは日本の東北地方の人々が色白と言われるのと同じく、涼しい地域に住んでいた祖先をルーツにすると、もち肌の美人が多くなる傾向を言っているだけであり、日本では東北人だけで民族カテゴリを形成することはありません。
インドネシア人全体の中では、中華系(漢民族)やパプア人(オーストラロイド)のように、DNA型の違いに由来する身体的特徴が顕著な民族以外は、地域の生活環境の中で育まれた行動様式を基準として区分けされており、比較的緩やかです。
ジャワ人の気質として言われる言葉が「幸福と調和を重視する思考が気質や行動に表れる」というもので、優柔不断でお世辞(basa-basi)が多く本音と建前を使い分ける、見栄っ張り(gengsi)、合議制(Musyawarah)や相互扶助(Gotong Royong)などの村社会の不文律の存在など、日本の村社会によく似ています。
スンダ人男子の場合は結婚しても親元から離れることを嫌い、それが原因となって「あなたは私とお義母さんのどっちの味方なの?」というドラマのシーンのような口論が発生しやすいとすれば、スンダ人は他民族に比べて離婚となる要因が多いと言えるのかもしれません。
真逆の立場にあるのが母系相続社会のミナンカバウ人(ミナン人)の男性であり、親の資産(土地)はすべて女兄弟に相続されるので、何も貰えない男は一定の年齢に達すると家を出てお金を稼ぐ方法を考えざるを得なくなり、故郷を離れて商売を始めるようになります。
この出稼ぎの風習はムランタウ(merantau)と呼ばれ、ミナンカバウ人の独立自尊の精神を養う上で大きな影響を及ぼしていると考えられますが、気概だけでは必ず成功するとは限らない世知辛い世の中で、華々しく故郷に錦を飾ることが出来る人ばかりではないようです。
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日常生活で感じるインドネシアの民族の行動様式や思考様式の違い
民族とは言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団であり、歴史的運命とか同族意識とか、解釈でどうにでもなる主観的基準でグループ化されたものに過ぎません。
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インドネシアでは国民の幸福感が高く社会的弱者に対する寄付文化が根付いていると言われる理由
インドネシアには『Hidup mati di tangan Tuhan』という言葉があるように、この世の幸不幸もやがて訪れる死さえも、すべてが神の意向によるという考え方があり、金銭的な裕福度合いに関わらず、今現在の環境に感謝し幸せを感じることが普通のことあり、社会的弱者を救済するために寄付をすることが倫理的に正しい行いである、ということを子供の頃から教育されている点は、日本人も見習ったほうが良いのではないでしょうか? インドネシアで国民の幸福感が高く社会的弱者に対する寄付文化が根付いている理由 神の存在を信じることで与えられた今の環境に感謝し幸せを感じること、寄付によって社会的弱者を救済することが倫理的に正しい行いである、ということを子供の頃から教育される点で、宗教には大きな意味があります。 続きを見る
インドネシア人に見習いたいところ
インドネシア人に見習い点は、人前で話すのが上手い、英語が上手、目を見て微笑む、政治に関心が高いところ、姿勢がいい、気さく、国に誇りを持っているなどです。
インドネシア人が日本人よりも英語が上手な理由としては、子供の頃からテレビや本で英語に触れる機会が多い、日本人のように気後れすることなく外国人に積極的に英語でコミュニケーションをとろうとする、言語構造としてインドネシア語は英語に近いなどがあります。
かつてはインドネシア人から見て日本人は、英語は下手だがお金と技術を持っているということで一定の評価を受けていましたが、日本は長期デフレで経済成長が止まってしまった一方で、インドネシアは右肩上がりで経済成長を続けており、10年後にはお金も技術も逆転されてしまう可能性が十分高いと考えられ、そのときインドネシア人の目に日本人はどのように映るのでしょうか。
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インドネシア人に見習いたいところ【2030年にはGDPで日本を追い抜くといわれているインドネシアに住む人々の特徴】
2030年にはGDPで日本を追い抜くといわれているインドネシアに住む人々は総じて陽気で明るい性格の人が多いのですが、僕の経験の範囲で「これは見習いたい」と思う点を挙げてみました。
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日本人がインドネシアに持つ「得体のしれない期待感」
23年前、日本とインドネシアの1人あたり名目GDPの差が32分の1だった頃は、世界におけるインドネシアの注目度も低いものの、人口が2億人を超える赤道直下の自然豊かな国ということで何か「得体の知れない期待感」を持てましたが、インドネシアの知名度が上がり名目GDPの差がら5分の1にまで縮まった現在ではその期待感の中に含まれる「来れば何かチャンスがあるはずだ」というギャンブル性の要素が小さくなっていると思います。
同時にインドネシアでの日本人の置かれる立場も相対的に低下し、昔のように日本人というだけでモテるという時代ではなくなり、かといって近年大人気のK-POP発祥の国から来た韓国人がモテるようになったという話でもなく、要はインドネシアの国力が上がり自国に対する自負と誇りを持った今、外国人に対する期待度が低下し、必ずしも憧れの対象ではなくなったということかと思います。 自国への自負心が向上したインドネシア人の日本人への期待感の変化 日本とインドネシアの1人あたり名目GDPの差が縮まり、経済成長によりインドネシア人の自国に対する自負心が強まった今、日本人もインドネシア人もお互いに得体の知れない期待感を抱かなくなり、これはビジネスにおいて対等な共存共栄の関係になったことを表しています。 続きを見る
Masuk anginというインドネシアならではの病気
読んで字のごとく「空気が入る」ことにより吐き気や頭痛、倦怠感を引き起こす病気であり、夜風に当たった後や、お通じが良くて大量に放出した後に腸の中が空っぽになった時、クーラーの風がまともに当たる席で授業を受けた後などに発症します。
症状としては体が冷えて倦怠感が感じられる風邪の一歩手前みたいな感じで、時には吐き気がする(実際に吐く人もいます)ので、治すにはインドネシアの伝統生薬ジャムウをベースとしたシロップであるAntanginとかTolak anginを飲んで体を温めてオナラとして放出するのが一番いいらしいです。
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Masuk anginというインドネシアで未だに理解できない体調不良の症状
Masuk anginだけなら体を温めて体内の空気をゲップやオナラで排出するか、コインで背中をこするKerokanをやれば治りますが、居座られてAngin dudukになると危険です。
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インドネシア人は日本人よりも生活力が高い
日本でも長期デフレで企業が社員の安定雇用を保証できなくなりつつあるため、最近になって副業解禁を出す企業が増えていますが、インドネシア人の場合は本業以外に副業を持っているのが当たり前で、インドネシア人社員が給料の額に見合わない車に乗っていたり、豪邸に住んでいたりする場合、副業がメインで本業は保険というケースが多々あります。
2024年に私はブカシの中でも最もローカル色の強い北ブカシに引っ越してきましたが、北ブカシは飲食店・アパレル(服屋)・スマホ・洗車屋・自動車教習サービス・Biro Jasaという免許や許認可の手続きを行う代理店など、ありとあらゆるビジネスを行う小規模店舗が密集しており、生業を営むインドネシア人の強靭な生活力エネルギーを体感することが出来ます。
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インドネシア人は日本人より生活力が高いと言える理由
インドネシア人は会社以外の副業からの収入があるのが普通であり、車や不動産といった高額な資産に対する購買意欲は益々高まっています。コロナ禍でも日銭を稼いで生き延びようというインドネシア人の生活力の強さは、日本人が真摯に見習うべき点だと思います。
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インドネシアでの噂話の信憑性
主観ですがインドネシアでは噂話の信ぴょう性が低い上に、周囲に拡散しないと気が済まない体質の人が多いことが、FacebookやTwitterなどの情報拡散のためのSNSが初期の頃からインドネシアで流行った理由なのだと考えます。
インドネシア人は「誰にも言うなよ、絶対に言うなよ」とダチョウ倶楽部のコント並みに念を押せば推すほど誰かに話したがる人が多い傾向があると感じるのは私の偏見かもしれませんが、ある意味民族的に自由でオープンで素直な気質が、年中温暖な国土で育まれた結果ではないかと考えています。
インドネシア人に限らず人間は秘密の話は誰かに暴露しないと精神の安定を保てない生き物であり、内緒の話に情報の希少性は少なく信憑性も低いことが多いので、「ここだけの話」という枕詞付きで聞かされる話は話半分に聞いておいたほうがいいかもしれません。
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インドネシアでの噂話の信憑性
インドネシアでの噂話の信憑性は非常に低く、狭い日本人社会の中での情報でもガセネタ率が非常に高いのは、日本人がインドネシア人から精度の低い噂話を、間違った理解に元づいて論評を加え、推論まで立てて次に流すことが多いからです。
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インドネシアでは嫁をダシに使うのが効果的であること
フェミニストからぶっ叩かれる覚悟で言わせてもらえば、少なくとも私の嫁はんも含めて過去にお付き合いしてきた女性全員が、感情論が論理的思考を凌駕し、理屈で自分の非を諭されることを良しとしない他責型思考の『無敵の人』だったわけですが、インドネシアでも家庭では奥さんの尻に敷かれる人が意外と多いので、断りにくいお願いごとをされた場合には、奥さんの許可が必要であることを伝えると相手は納得してくれます。 インドネシアでは嫁をダシに使うのが効果的であること インドネシアで断りにくい頼み事をうまく断る方法として、嫁さんをダシに使うのが効果的であるのは、相手も理性で動く男より感性で動く女のほうがやっかいだということを理解しているからです。 続きを見る
ショックを受けた際のLatahという異常行動
突然のショックを受けることで異常行動を起こす状態で、驚いたときの典型的な症状としては叫んだり、奇声を上げたり踊りだしたり、笑いだしたりする行動をとり、周囲の人に伝染しますが、病気ではなく単なる個人差と言われています。
インドネシアでは大きな会社や工場には、必ず1人か2人は霊に取り付かれて悩んでいる人がいることに最初は驚きましたが、これは感受性が強く思い込みが激しい人が多いというだけの話であり、肩をポンと叩いて催眠術を掛ける泥棒が横行していることと通じる話だと個人的には思っています。 インドネシア人が驚いたときの条件反射的なLatah(ラタ)という現象 ショックを受けた際に奇声を発したり、体が勝手に踊りだしたりする東南アジア特有の現象がラタ(Latah)であり、一般的には感受性の高いオネエ系の人がなりやすい一種の自己催眠のようなものだと思います。 続きを見る
インドネシア人の生活様式の日本化
「自宅と会社の往復だけの生活だから異性で出会う機会がない」とか「自宅に居場所がないので出社したい」とか日本だけの話かと思ったら「心が豊かでキラキラした目をした人々」で溢れると称されるインドネシアでもある話です。そう考えればどこに住んでいても自分の人生に悲観せず堂々と生きていけるんじゃないでしょうか?
生産年齢人口が従属人口の2倍以上ある人口ボーナス状態が2030年まで続くと言われるインドネシアですら、都市部では日本と同じような先進国特有の社会問題が顕在化しており、「インドネシアは金銭的に豊かではないが社会生活をする上で人間同士の絆が強いため心は豊かだ」みたいな純粋ステレオタイプの価値観はアップデートすべき時代にきているのかもしれません。 在宅勤務で浮き彫りになったインドネシア人の生活様式の日本化 「インドネシア人は金銭的に恵まれていないが心は豊でキラキラした目をしている」といった表現は20年以上前によく目にしたものの、経済発展を遂げ都市部で高収入を得るインドネシア人の生活様式は日本とさほど変わらないことから、同じような先進国特有の社会問題も顕在化しています。 続きを見る