インドネシアでの情報収集と要因分析のための言語化の重要性

2021/04/11

ジャカルタ

現状把握を目的として情報収集を行い、過去の事例に基づき要因分析を行う場合の視点は、トレンド、セグメント、ベンチマークという定量的なデータ分析の視点と同じです。また思考過程を言語化することで、仮にモチベーションが下がっても後で読み返すことで思い出し、スランプから脱出できます。

インドネシアの現状把握のための情報収集

2020年4月に発令された新型コロナ感染拡大を防止するためのPSBB(大規模社会制限)中、有り余る時間中にyoutubeばかり見ていたら絶対バカになるという危機感を覚え、インドネシア語で情報収集できるくらいにインドネシア語のレベルを上げようと、KompasやCNN Indonesiaなどのネットニュースをひたすら読んでいた時期がありました。

おそらく海外に住む日本人であれば、情報収集と語学勉強を一石二鳥でやりたいという目的で、敢えて日本語以外の情報源に挑むということは誰しも経験済みかと思います。例えばインドネシア駐在員であれば、今後のキャリアアップも考慮してJakarta PostやAntara Newsなどの英語サイトを読む、みたいな感じです。

しかし僕のように語学学習を目的としていない人間が、重い腰を上げてインドネシア語の新聞に挑んで気力体力を消耗することが、とても理にかなった方法だと思えなくなり、結局日本語でインドネシアの現状を理解するのにキーとなる情報を、日本語で要点だけピックアップしてくれるサイトから入るようになりました。

インドネシア関連ニュースの日本語サイト(じゃか新・NNA・Pagi2Postとか)が多いのですっかりインドネシア語を読まなくなり、益々インドネシア語が下手になっていく。日本で洋書や洋画が日本語翻訳されているので英語を読む必要性がなく、英語力が上がらないのと同じ現象がここでも起きている。

情報収集で一番大事なのは重要な情報をピックアップする選別力だと思うのですが、この能力はメディアサイトを更新してくださるプロの方にはかなわないので、今では日本語サイトで概要を把握して、必要に応じてインドネシア語のソースを確認するようにしています。

政治・経済・社会の時事問題に関する情報を収集する目的が、語学学習ではなくてインドネシアという国の【現状把握】することであれば、最も自然で無理のないやり方かもしれません。

将来発生する事象を正しく理解するための要因分析

ニュース記事はあくまで事実の報道であり、ちまたに溢れる情報という点の集合を整理して、関連する点同士を繋げて線にすることで、はじめて事象のコンテキスト(背景・文脈)が見えてきます。

ラーマヤナ

インドネシアで問題意識を持って意識高めに生きる方法

問題意識を持つためには世の中の事象が「こうあるはず」という前提認識が必要であり、そのためには点としての知識と、点と点の繋がりである事象のコンテキストの理解が不可欠です。意識が高いというのは自分の経験に裏付けられた問題意識があるということです。

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情報収集の目的であった現状把握の先にも必ず目的があるわけですが、単に好奇心を満たしたいという場合でも、仕事上での決断の判断材料としたいという場合でも、インドネシアという不確実性の高い国に住んでいる人にとって、現状把握をする共通の目的は、将来発生する事象を正しく読み解けるようにする準備、心構えではないかと思うのです。

将来発生する類似の事例を正しく理解し適切な対応ができるようにするため

PDCAという観点から言えば、どのような行動に繋げるかをシミュレーションするには、【現状把握】に基づいた【要因分析】が必ず必要になるわけで、事象は様々な要因が絡み合って発生するとはいえ、過去に発生した数多くの事象を分析するための視点は、統計データを定量的に分析する視点と基本的には同じだと考えています。

  1. トレンド:時間軸の中で動きを見る
    ⇒日単位・月単位・四半期・通年
  2. セグメント:多軸的に切り口を変える
    ⇒州別・財(生産財/消費財)別・市場別・年齢別・男女別
  3. ベンチマーク:過去の基準データと比較する
    ⇒前年比・前年同月比

例えば明日4月12(月)にインドネシア労働組合総連合(KSPI)が、業種セクター別の最低賃金の適用、宗教手当(THR)の一括での全額支払いの保証を求め、1,000社以上の労働者が参加し全国20州、150以上の県/市で、オムニバス法反対デモを行うと発表しています。

オムニバス法には退職金の減額(現行最大32カ月分⇒ 最大25カ月分)と、経営側の裁量による最低賃金の設定(国の実質経済成長率とインフレ率の和 ⇒ 経営側が各州の経済成長率またはインフレ率に沿った最低賃金を設定)が盛り込まれていますが、労働組合のナショナルセンターが20年近く死守してきた2003年労働法の2大聖域が侵害されようとしているわけです。

巨大地震の余震のように10年単位という長い世代軸の中に位置付けされる事象であること、昨年10月の大規模なデモから半年という準備期間があったこと、来月5月にTHR支払い期限が控えていること、政府によるコロナ対策に対して不満が高まっていること、コロナ禍でレイオフ、賃金カットされた労働者が増加していることなどからして大きな混乱が予想されるという、将来の事象に関する要因分析が、どのように行動するかというリスク管理に繋がるわけです。

※結局このデモは昨年10月のデモの規模と比較にならないほど小規模なもので、上述のようにドヤ顔で分析した結果はものの見事に外れました。

言語化することが大切である理由

現状把握のために情報収集を行い、適切な行動をとるために要因分析を行うという思考過程は、インドネシアでビジネスに携わる人であれば、おそらく誰もが無意識に実行していることであり、何も目新しい話ではありませんが、これをわざわざ言語化することが役に立つ状況が必ずあり、それがスランプに陥ったときです。

野球選手のスランプはヒットが打てなくなったとき、水泳選手のスランプであればフォームが崩れてタイムが伸びないときかもしれませんが、僕の場合のスランプとは頭に思っていることを行動に移せなくなったとき、必要なときにスイッチをONにできない状態であり、いずれも過去には出来ていたことが今は出来ない、やり方を忘れてしまった状態にあるわけです。

人間の記憶の忘却率は等比級数的に上昇し、1時間後には50%以上を忘れ、1日後には75%を忘れ、1か月後には80%を忘れると言われています。

仕事が忙しくなったことを理由に時事問題をチェックすることを怠った結果、ニュースを見ても前後の事象との繋がりが見えず、話の流れに入り込めず理解が浅くなってしまう。それにもかかわらず、より深く理解しようというモチベーションが上がらない。しまいにはどうやって情報収集したらいいのかわからなくなってしまう、といった悪循環に陥った経験は誰しも持っているはずです。

川をさかのぼれ、そして海を渡れ

元財務官僚の村尾信尚さんが、過去の先例や海外の事例から学ぶことを表現した言葉ですが、このように自分の中でスランプに陥ったとしても、過去に自分がどう苦しんで悩んで、最終的にどのように結論を絞り出したかの過程が言語化されていれば、それを読み返すことでスランプから抜け出し、素早くモチベーションを回復させることができる。

要因分析を行い、事象のコンテキストを理解するために、点と点の情報を繋げていく際には必ず言語化という作業が発生し、他人に論理的に事象の現状と要因を説明するためにも必要な作業だと考えます。