インドネシアのラウンドアバウトはオランダ統治時代の名残と言われており、これがジャカルタの渋滞の要因になっているのか、信号交差点だったらもっと酷いことになっているのかは不明ですが、効果を発揮する条件は交通量が比較的少なく運転者のマナーが高い環境です。 インドネシアの生活 ネットで何でも情報は収集できる時代ですが、他人からの情報は基本的に点でしかなく、点と点を繋げることは自分の頭の中でしかできません。また新しいアイデアを生み出したり複雑なことを考えるためには、過去の経験に基づく知識が頭に記憶されている必要があります。 続きを見る
ロータリー交差点と環状交差点(ラウンドアバウト)
自分はインドネシアの道路でよく見かけるロータリー(bundaran lalu lintas)で車がぐるぐる回りながら流れている様子を見るのが好きで、Thamrin通り裏のアパートに住んでいた頃には、日が暮れてから意味もなくBundaran HI(ホテルインドネシア前広場)まで散歩して、渋滞の波が詰まっては流れる、排水溝のような動きを眺めて楽しんでいました。
自分が運転する場合、ロータリーの1番目の出口から出たいときには、最初から左に寄ったままロータリーに侵入し大外から出口を目指します。しかし2番目以降の出口から出たいときは、あらかじめ右に寄せておいて、時計回りに流れている車列に自然に溶け込むように、中央島に向かって斜め60度くらいに進み、ゆっくりと左にハンドルを切りながら、1番目出口から出ようとする車列の邪魔にならないように、2番目出口手前まで徐々に左に寄せて、最後は緩やかな放物線を描くように、時計回りの流れに押し出されるように出るのが理想です。まあ言葉で説明しても分かりにくいけど。
ジャカルタのBundaran HIはPullman Hotel方面への出口手前とPullman Hotel横からロータリーに入り込む手前に信号と横断歩道があるので、厳密にはロータリー交差点とか円形交差点に分類されるようですが、英語の旅行ガイドブック等にはRoundaboutとかTraffic Circleとか環状交差点を意味する言葉で記載されています。
中央島にそびえ立つ歓迎の塔(Patung Selamat Datang)は1962年の第四回アジア大会開催時にスカルノ大統領によって建設された銅像であり、在住日本人にもなじみ深いジャカルタのアイコン的存在です。
ロータリー交差点と環状交差点の違いは、入り口と出口の信号や一旦停止ラインの有無と言われますが、これらを明確に分ける意味はありません。ちなみに本来の完全なるラウンドアバウトの例として、西ブカシのうちの近所の Summareconにあるロータリーが挙げられますが、ブカシのバイクの運転マナーは最悪なので、目的の出口に向かう際に環道を斜めに横断する際に道を譲るどころか加速して突っ込んでくるので、1年以上毎日運転している今でも通るたびに若干緊張します。
インドネシアの道路にロータリーが多い理由として、350年間続いたオランダ統治時代の街の景観を重視する道路建設の名残と言われており、利便性を追求する日本の道路においてロータリー交差点を見ることはほとんどありません。
このロータリーこそが、世界最悪と言われるジャカルタ渋滞の要因になっているという意見があれば、逆にこれが普通の信号交差点だったらもっと酷いことになっているという意見もあり、将来も増えていくのか廃止の方向で進むのか分かりませんが、インドネシアの都市景観の大きな特徴の一つとなっていることは確かであり、Polisi Tidur(スピードバンプ)と伴にジャカルタの道路のアクセントとして是非とも後世に残していって欲しいものです。
首都移転先の最有力候補であるカリマンタン島のパランカラヤ(Palangka Raya)にある大環状交差点(Bundaran Besar)は、インドネシアの8大島であるジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島、カリマンタン島、バリ島、ヌサ・トゥンガラ諸島、ニューギニア島を表す8本の道路が交差しています。
ロータリーが威力を発揮する環境
一般的にはロータリーは、信号のある交差点でありがちな出会いがしらの衝突事故のリスクが小さく、信号がいらないので低コストで作ることができる一方で、一切の規制のないロータリーで運転手同士の紳士協定による自然の流れが形成されるため、初心者には運転が難しく減速による渋滞が発生しやすいと言われています。
ロータリーの運転で難しいのは、入り口から環道に侵入する際に1番目の出口に向かう車やバイクとの間合いの取り方と、2番目の出口から出る際に環道を斜めに横断する際に3番目の出口以降を目指す車との間合いの取り方です。日本ほど絶対的なルールがあるわけではありませんが、インドネシアでも基本は直進優先なので、環道を流れる車列に入る時も、環道を流れる車列を横切る際も、相手の優先度が高いわけで、とどのつまり相手の譲り合いの精神に依存するところが大きいのです。
経済成長著しいインドネシアで長く生活していると、昔に比べて行列横入りが少なくなったとか、ゴミのポイ捨てが減ったとか、明らかに公衆マナーの向上が上がっており、逆に長期デフレで所得水準がダダ下がりの日本から伝わってくる捨て猫とかインコ虐待とかのニュースを聞くと、相対的な民度の差はなくなりつつあるんじゃないかと心配になるくらいです。
それでも残念ながら現在のところはインドネシアの車やバイクの運転マナーは決して良いとは言えないため、ロータリーでの譲り合いのマナーがそれほど期待できない以上、インドネシアのロータリーでの運転の難易度は高いと思います。ロータリーが信号交差点よりもメリットがある条件とは、交通量が比較的少なく、運転者のマナーが高いこと。これに該当するのはヨーロッパや日本などの先進国の地方都市が考えられ、渋滞都市ジャカルタでの導入のメリットは、景観をよくするというプラスの面だけであるかもしれません。
ちなみにこのSudirman通り南端のロータリーにはSenayan方面への出口前に信号があるので、ラウンドアバウトではなくロータリー交差点に分類され、中央島に立つ青年の像(Patung Pemuda)は1972年に若者の精神充実を啓発する目的で建てられた銅像で、在住日本人の間では別名「あっちっちの像」として親しまれています。