インドネシア人の感受性が強いという民族的特徴が催眠術にかかりやすい要因だと考えられ、日本人は相手とのパーソナルスペースが広く、挨拶は握手なしのお辞儀で済ますため、他人からボディタッチされれば好奇心より警戒心が上回り、催眠術による犯罪が成立しにくいのです。 インドネシアの生活 ネットで何でも情報は収集できる時代ですが、他人からの情報は基本的に点でしかなく、点と点を繋げることは自分の頭の中でしかできません。また新しいアイデアを生み出したり複雑なことを考えるためには、過去の経験に基づく知識が頭に記憶されている必要があります。 続きを見る
思い込みの強さを利用した催眠術詐欺
2008年にバリ島からジャカルタに引っ越す際に「自宅売却します」という広告をBali Postに掲載すると、すぐに複数の人から「家の買い手が見つかったのでこの番号に電話して欲しい」という内容のSMSが送られてきたのですが、普通に考えて自宅の内覧もせずにいきなり家を買う人なんかいるわけないのに、相手はとにかく急いでいるということで「ラストプライスはいくらだ」と畳み掛けて、最後は「とにかく物件を押さえたいので契約金(Tanda Jadi)または頭金(Uang Muka)を送金する」と言ってからこちらの口座番号を聞いてきます。
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バリ島自宅売却日記 【インドネシアでも不動産の売却は大変】
2003年にバリ島に土地を購入し住宅を建築したものの、家具や雑貨を輸出する仕事に将来性が期待できず、ジャカルタで人生の再スタートを切るために、思い切って売却することに決めました。ただバリ島の景気が上向かず不動産市場は完全な買い手市場であり、売却するのに1年以上かかりました。
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そしてわずか5分後には「今振り込んだからATMで確認してくれ、どこのATMが近いんだ?」と何故かATMの場所まで聞いてくるのですが、要は相手にしてみればこちらをATMの前に立たせれば、後ろから肩をポンと叩くだけでHipnotis(催眠術)にかかり、言うがままにお金を送金させるという、日本人からすると若干信じがたい手口です。
個人的な意見ですが、インドネシアには感受性が強い、というか思い込みが激しい人が多く、突然Setan(悪魔)に取りつかれたり、驚いたときに意味不明な言葉を発するLatahという反応をしたり、Pocong(幽霊)を極端に怖がったり、要はこの民族的特徴があるため、催眠術による犯罪が成立するのだと思っています。
日本人は相手との距離であるパーソナルスペースが広く、インドネシアのように握手の習慣もなく、挨拶はお辞儀で済ますことが多いため、突然肩を叩かれれば「おっ、友達か?」という好奇心よりも、見ず知らずのインドネシア人からボディタッチされたことによる警戒心のほうが勝つと思うので、あの時僕が指定のATMに行ったとしても、果たして催眠術に引っ掛かっていたかどうかは微妙です。
他人に対する警戒心の低さを利用した親切詐欺
また日本人がインドネシアを好きな理由を聞かれたときに「インドネシア人の気さくな性格」が最初に挙がることが多いように、インドネシア人は他人から話しかけられたときの警戒心のレベルが日本人に比べて明らかに低いと感じます。
電話の対応に手間を取られる煩わずらわしさよりも、電話口の営業担当者はどの下りまで説明できたら幾らもらえるというインセンティブがあるので無下に切ってしまっては可哀そうという優しさが勝るというのは、日本人が完全に忘れてしまった人間味溢れる感覚であるようにも思えますが、もともとジャワ人は幸福と調和を重視する思考が気質や行動に表れると言われ、僕の周りでは中国系の方も同様の対応をしているようです。
在住日本人のSMSにも「金はこの口座に振り込んでね」という言葉とともに銀行口座番号が頻繁に送られてきていると思いますが、相手のことを思いやる優しさを巧みに利用したなりすまし詐欺やオレオレ詐欺が非常に多く、ATMで現金を引き出そうとしたところエラーが出てパニックに陥っている状況で、横から「どうしました?手伝いましょうか?」と言われると、他人に対する警戒心の低さから、つい頼ってしまう人がいるのだと思います。
1.ATMを細工してカード使用時に問題発生。
2.パニックになった利用者を助けるフリしてカードを借りた隙にすり替え。
3.利用者がPIN入力する様子を覗き見しPINを記憶。
4.後ですり替えたカードでお金を引き出す。ATMでカードが吸い込まれやすい理由の一つがこれ。
カードが完全にATMに吸い込まれてしまった場合でも、ATMの前に偽のコールセンター番号を張り付けておき、すがる思いでヘルプを求めてきた人を電話口で巧みに誘導して、モバイルバンキングから送金させるという手の込んだ手口もあるようですが、もともとスキミングされやすいというカードの弱点を根本的に解消するための最終手段が、スマホ決済の普及になるのだと思います。
銀行口座から直接引き落とされる、QRコード読み取り型のスマホ決済は日本でもゆうちょ銀行くらいしか対応していないと思うのですが、インドネシアでは日本よりも先にATMカードを見なくなる日が来るかもしれません。