パダン料理で有名なインドネシアの西スマトラ州ソロックのコーヒー

2017/05/24

パダン料理

ミナンカバウ人(ミナン人・パダン人)の伝統家屋であるルマ・ガダン様式やパダン料理で有名なインドネシアの西スマトラ州ですが、ソロック(Solok)のコーヒーはマイルドでフルーティーなアロマが特徴的で、近年のスペシャリティコーヒーブームで注目されています。

最もメジャーなインドネシア料理と言えるパダン料理を生んだ土地

西スマトラ州の州都パダン(Padang)と言えばパダン料理が有名ですが、2011年のCNNトラベル(CNN Travel)の「世界でもっとも美味しい料理TOP50(World's 50 best foods)」の1位に選ばれたのが、パダン料理の代表格ルンダン(Rendang)であり、インドネシア在住日本人でインドネシア料理が苦手だという人でも、このルンダンが嫌いな人は皆無だと思われます。

私はインドネシアに来た初日にジャカルタの安宿街ジャクサ通り(Jalan Jaksa)のホテルに泊まり、右も左もわからないまま適当に入ったパダン料理のワルン(Warung 食堂)で、テーブル席に座るやいなや、大量の小皿に入った料理が目の前に積み上げられて(パダン語でtatiangというシステム)、唖然とした思い出があります。

食べた分だけ課金され、半分食べたら半分課金されるというシステムなんですが、残った半分はどうなるかと言えば当然のように使いまわしされ、2007年10月に発覚した高級料亭の船場吉兆『料理使いまわし事件』で大騒ぎした人なんかには到底受け入れられないシステムになっています。

パダン料理はココナッツミルクを多用しているので、具材を煮込んだタレやスープはまろやかでコク深く、肉や野菜料理が盛ってある皿を斜めに傾けて汁かけご飯にして白ごはんの代金だけ払うという図々しいテレビCMがあったくらいですが、あからさまにやっている人をこれまで見たことがありません。

パダン人は気性が荒い(スマトラ島の人種全般に言える)とはよく言われますが、私のビジネスパートナーのパダン人(正確にはミナンカバウ人)はずいぶんと温和で人間的にも出来た奴です。

Cikarangのパダン食堂Dua SepakatはEJIPやHyundaiなど近隣の工業団地で働くインドネシア人の間でも安くて美味い店として非常に人気が高く、お昼時には大変混みあっていますが、パダン出身のインドネシア人ビジネスパートナー曰く、味付けはジャワテイストに調整されており、従業員もすべてジャワ人だとのことです。個人的にはDua Sepakatのpeyek udang(海老)は多くの人に味わって貰いたいと思っています。

Padang=Pandai Dagang(商売上手)と文字られるように、彼自身もパダン料理のワルンを経営しており、パダン料理に関してはかなりこだわりがあるようで、仕事先の工業団地近辺にあるパダン料理屋で一緒に昼飯を食べると「辛さが足りない」だの「この店はジャワ人がやっているパダン料理屋だから正式のパダン料理とは言えない」だの、仕事では見せない偏屈な一面を垣間見せます。

またパダンはインドネシアでは珍しい母系社会であり、土地や家などの遺産相続は基本は母親から娘に相続され、かくいうパダン料理を作るのはもっぱら男で、パダン出身のビジネスパートナーも奥さんよりも自分のほうがパダン料理の腕はいいと豪語しています。

上品なまろやかさがありフルーティな風味

美味しいのはパダン料理だけじゃなかったインドネシア西スマトラのソロック(SOLOK)のコーヒー

ミナン・ソロック(Minang Solok)産コーヒーの風味の傾向として、同じスマトラ産のアチェ・ガヨコーヒーよりもアロマティックであるとよく言われ、ラテンアメリカのホンジュラスやコスタリカ産に近いものがあり、個人的にはアイスコーヒー用にも適していると思います。

風味の傾向

  1. 香り ★★★
  2. 苦み ★
  3. 酸み ★★
  4. コク ★★
  5. 甘み ★★★

パダンという無骨で荒々しい土地柄とは正反対に、西スマトラ州ソロックのコーヒーは非常にマイルドでフルーティな口当たりがして、香りも芳醇であるため朝の目覚めのコーヒーにぴったりだと思います。

私の場合は毎週日曜日の朝は西ジャカルタの裏寂れたモールSeasons City横のKedai Kopi AcehでSolokのシングルオリジンを飲むのが楽しみで、ここのSolokのマニュアルブリューで淹れたスペシャリティコーヒーに出会ったことで、コーヒー生産地の歴史や地理に興味を持つようになったといっても過言ではありません。

左が西スマトラSolok産、右が北スマトラAche Gayo産

インドネシア国内でも、アチェ・ガヨやトラジャに比べてそれほどメジャーな産地銘柄ではありませんが、経済発展まっしぐらの過程の中で中間層が厚くなり、カフェでコーヒーを飲むクラスタが増加し、これまで輸出向けが優先で国内には流通しなかった良質な豆が国内でも流通するとともに、注目を浴びてくる銘柄だと思います。

実際多くのインドネシア語のコーヒー関連サイトで、注目度NO1の扱いを受けているのがソロック産の豆をハニー製法(Honey Process)したものです。

コーヒーチェリーをそのまま乾かして最後にまとめてパルピング(Pulping コーヒーチェリーの果肉を除去)するナチュラル製法(乾燥式)でもなく、最初にパルピングして水洗いしてから乾かすウォッシュド製法(水洗式)とも異なり、一番表面の皮だけパルピングしてヌメヌメのスライム状のもの(これがハニーの由来)がついたまま乾かします。

ハニー製法は糖質の高いヌメヌメのスライムがついたまま乾かすので、乾燥中にアリの被害にあったり、途中で発酵してしまったりと歩留まり率が低くなりがちですが、ジャカルタのカフェでは他の製法とは差別化して付加価値を出すために、POP(商品説明カード)上で必ずハニー製法であることを強調して販売しています。