インドネシアで一般的なマニュアルブリューイングの方法としてペーパードリップ式(Paper Drip)、サイフォン式(Syphon)、ベトナムドリップ式(Vitnam Drip)、フレンチプレス式(French Press)、エアロプレス式(Aeropress)があります。 インドネシアのコーヒー 「インドネシアのコーヒー」と聞いて思い浮かぶのはオランダ植民地時代に持ち込まれたコーヒーノキを起源とするプランテーション、北回帰線と南回帰線の間に東西に連なるコーヒー栽培に適した地理的風土、多数の高原地帯で栽培され風味も味わいも異なるご当地コーヒーなどです。 続きを見る
コーヒーグラインダーで豆を挽く
コーヒーグラインダー(コーヒーミル)はカッター式と臼(うす)式に分かれ、カッター式は小型で安価ですが、粒にムラが出やすくなり、臼式はカッター式よりも若干価格が高めですが、粒のムラは少なくなります。
カッター式ならほぼ電動式の一択になりますが、臼式であればレバーを回して手動でゴリゴリ挽くタイプのものもあり、コーヒー通の人なら手動式を推奨するのかもしれませんが、正直「疲れる、豆がひっかかる、手が痛くなる」といいことがないので電動式をお勧めします。
自分が使っているKRUPS(クラプス)というドイツメーカーの中国製のコーヒーグラインダーは、Grand Indonesiaのベスト電器でRp1,250,000という廉価ながらも、電動石臼式の設置型で粒度がかなり細かく調整できます。
電動式ですがコーヒー豆(インドネシア語ではBeanまたはBiji kopiでありKacangと言うと笑われます)を挽くこと自体が楽しいので、産地ごとの豆の味が混ざらないように容器を洗浄したり、内壁にくっついたコーヒーパウダーを刷毛で掃除したりと、もしかすると出来上がったコーヒーを飲むよりも機械のメンテナンスのほうが楽しいくらいです。
缶コーヒーのキャッチコピーからコーヒーを淹れるまでのプロセスを考える。
コーヒーを飲むには①煎る②挽く③濾すの3ステップが必要ですが、缶コーヒーに謳ってあるいかにも美味しそうなネーミングや宣伝文句は、この3つのどれかの過程についての「こだわり」を強調したものです。
ジャカルタでもパパヤなどの日本食スーパーや系列のコンビニで、日本の缶コーヒーが日本の倍くらいの値段で買えますが、いかしたネーミングで缶のデザインや色にまでこだわった製品はだいたい甘いので、自分はUCC上島珈琲無糖ブラックしか買いません。
- 煎る(焼く)
焙煎方法(ロースト)は直火式で風味に変化をつけるか、炭焼式(熱風式)で均一にムラなく焼くかに分かれますが、一般的には浅煎りほど酸味が強く深煎りほど苦く、8段階に分かれます。
炭火による間接加熱で焙煎されるいわゆる「炭焼コーヒー」は、炭火焙煎らしい香ばしさを売りにしており、炭焼という言葉に弱い日本人の心に響きやすいと思います。 - 挽く
粗挽きから極細挽きまで、細かいほど苦味が出ますので「苦いのにスッキリ」と言われると、逆に美味そうに感じます。 - 濾す(抽出)コーヒーの抽出方法はペーパードリップ、コーヒーメーカー、サイフォン、コーヒープレス、高圧蒸気で数十秒で一気に抽出するエスプレッソマシン、とかあります。
抽出にこだわったコピーとしてよくあるのがアイスコーヒー用の「長時間水出しコーヒー」とかいうパターンがあり、要はお湯ではなく水でじっくりと抽出して、手間暇かけて苦味を抑えたまろやかな味に仕上げました、と言いたいわけでダッチコーヒーとも呼ばれます。
逆にホット用の場合だと「煎ってから18時間以内に抽出」という新鮮さをアピールしたものがあります。
マニュアルブリューイングとマシンブリューイング
今月4月は地球環境保全活動月間アースマンス(Earth Month)ということで、スタバメンバーカード保有者がタンブラー持参すると30%引きでコーヒーが飲めます。
仕事帰りにGrand Indonesia西館GFのいつものスタバでBrew Coffee頼んだら、以前東館のスタバに居たなじみの店員のお姉さんがいました。
- 今日はグアテマラかエチオピアの豆どう?
珍しく特定産地の豆を勧められたので、せっかくなのでグアテマラ産をマニュアルブリューイング(ハンドドリップとも言う)で頼んでみました。
価格はTallサイズでRp.33,500しますが、滅多に飲まないグアテマラの豆を挽きたてで、黒エプロンのバリスタによるペーパードリップによる淹れたてで飲めるのなら安いもんです。
バリスタの兄ちゃんによるグアテマラ産豆の説明はおおよそこんな感じ。
- Floral aromas, toffee notes and a creamy chocolate mouthfeel
花の香り、トフィー(キャラメルのお菓子)風味、クリーミーなチョコレートの口当たり
コーヒーはキャッチコピーで売る商品であり、違いが判る人がどれだけいるのか知りませんが、言われてみればなんとなくそんな味がするかも、と思ってしまうところがストレート(産地や品質などの単品)で飲む醍醐味です。
ちなみにここではコーヒーメーカーで淹れるマシンブリューイングも選べますが、ここはカウンター席でバリスタと世間話しながらドリップポット(ケトル)でお湯を注いで淹れてもらうほうが楽しいです。
ペーパードリップ式(Paper Drip)
今回バリスタのお兄さんがやってくれるペーパードリップ式はポアオーバー式(Pour Over)とも呼ばれ、始めに紙のフィルタに水を直接注いで紙の匂いを流してサーバーに溜まったお湯は捨ててしまい、次に挽きたてのコーヒー粉をフィルタに入れてから、ドリップポットで熱湯を一定量ずつ均等に少しずつ注いでいきます。
このバリスタ兄ちゃんに直々に淹れてもらう価値を評価するにはグアテマラパックRp.95,000/250gから逆算すると判りやすく、今回一杯Rp.33,500なので直接材料費だけで考えると2.8杯分で250gパックの豆が買えてしまいます。
自宅で淹れればTallサイズであれば豆は10g使うとして25杯分、ざっとRp.33,500x25杯=Rp.837,500、この差額Rp.837,500-Rp.95,000=Rp.742,500がバリスタ兄ちゃんに2.8杯分のコーヒーを直々に淹れてもらう潜在的価値ですから、一杯当たりのサービス料の潜在的価値はRp.265,178、この黒エプロンの兄ちゃんがいかに価値が高いか判るというものです。
サイフォン式(Syphon)
Grand Indonesia西館3A階のExcelso Coffee(2019年12月現在閉店)で幻のコーヒー、コーヒー界の松茸的存在であるルワック(luwak)コーヒーを一杯Rp.115,000でサイフォン式で飲めます。
インドネシアではWifiを「ウィーフィー」、ウルトラマンを「ウルトラメーン」とローマ字読みで発音するのと同じ理屈で、このお兄さんはSyphonを「シーホン」と発音していました。
フラスコに水を入れてアルコールランプで沸騰させると、蒸気圧で水がコーヒーが入っている上のフラスコに上っていく光景がサイフォン式で淹れる醍醐味です。そしてアルコールランプの火を消すと今度は気圧が下がって、地球の重力に抗うことなく水は下のフラスコに落ちていきますので、このときコーヒーが濾過(ろか)され、最後は下のフラスコに溜まったコーヒーを自分で注いで飲むという、エンターテイメント性の高い理科の実験っぽい手法です。
ところで何で水が気圧の高いところから低いところに流れるのかですが、アルコールランプで熱した下の高圧状態のフラスコ内では水の粒子が凝縮されるので、上の低圧のフラスコのほうに逃げることで粒子を均一化しようとする、高校の化学で習ったエントロピー増大の法則を利用しています。
ベトナムドリップ式(Vitnam Drip)
ベトナムドリップコーヒーと言えば、眼前に広がるアジア的田園風景を前にして金属製の専用フィルターから一滴ずつ下のグラスにしたたり落ちるコーヒーの滴を眺めている光景が浮かんできます。
グラスにコンデンスミルク(Susu Kental Manis)が分厚く堆積しているのは、コーヒー生産量世界第二のベトナムでは冷蔵庫が少なくミルクの保存が効かなかったので、缶詰状態で常温保存できるコンデンスミルクが普及したかららしいです。
ただ自分の場合は、疲れてよっぽど甘いものが飲みたくなったときくらいしか、下のコンデンスミルクの層とコーヒーを混ぜることはありません。
Grand Indonesiaでベトナムコーヒーと言えば、インドネシア人なら誰でもOlivier(オリビエ)というカフェの名前が思い浮かぶくらい、2016年1月に発生したコーヒー毒殺事件は衝撃的であり、被害者であるミルナが飲んだベトナムコーヒーからシアン化合物(青酸カリ)が検出され、CCTVカメラの映像を証拠として、友人のジェシカが殺人の容疑で逮捕され、現在も公判中です。(2020年のコロナ禍の影響で閉店しました。)
Olivierは分煙が中途半端で禁煙席ですらニコチン臭がプンプンするし、サービス料10%+レストラン税(PB1)10%で合計21%というホテルと同じ税金がかかるのであまり行かないのですが、今回はじめて噂のベトナムコーヒーを頼んでみたら、なんとペーパードリップ式できました。
フレンチプレス式(French Press)
上のExcelso Coffeeでコーヒー界の椎茸か舞茸的存在である税込Rp.40,000のKalosi Torajaを注文すると、お手軽なフレンチプレス式で出てきます。
上のレバーをギュっと下に押すとコーヒーが凝縮されて下からムニュッっと液体が湧き上がってくるので、感覚的にコーヒーの濃厚な味わいが感じられます。
このフレンチプレス式は日本でもそうだと思いますが、インドネシアのカフェでもTeaで使われることが多く、粗挽きにした豆を金網フィルターで抽出するということは、ペーパードリップでは除去されてしまうコーヒーオイルが一緒に取れるので、何分寝かせるかで風味が大分変わってくると思います。
今回のKalosi Trajaは多少舌に絡むようなザラつき感がいいのですが、逆に品質の悪いコーヒー豆の場合は変な苦味のあるカスや油が紛れ込んでくるので、いい豆を素材の風味そのままにお手軽に味わいたいときには、フレンチプレス式が適していると思います。
エアロプレス式(Aeropress)
この外観が注射器のようなエアロプレス式は、サイフォン式と同様に器具が凝っており理科の実験的要素が強く、マニュアルブリューイングの抽出方法の中では最も知名度が低いと思われますが、需要が少ないのか近所のGrand Indonesiaのスタバで割引販売されていたので、60万ルピアという価格がお得なのかどうか判らないまま思わず衝動買いしてしまいました。
エアロプレスは豆の挽き方やプレスのスピードなどでコーヒーの味わいがいかようにも変えられるというユニークな抽出法であり、よく言えばさらっとしたスッキリ味、悪く言えば若干薄い日本のアメリカンコーヒー的な仕上がりになるのですが、何と言ってもこの器具自体を触ったり組み付けたりするだけでも胸の高鳴りが押さえ切れません。