ブランド力や信用などの無形のオフバランス資産が評価される信用経済

2017/12/29

スカルノ大統領

IFRSの時価評価会計では株価によって測られる時価評価総額はオンバランス化されますが、ブランド力や信用力、ノウハウなど目に見えない価値は依然としてオフバランス上に存在し、信用経済(評価経済)にはこれらの無形固定資産を積極的に評価して市場経済にのせようという特徴があります。

目に見える資本に対する投資の収益性・効率性・安全性を測る指標

インドネシアはリッポーグループによるCikarangのMeikartaプロジェクトを筆頭に、Summarecon やAPLN(Agung Podomoro)グループなどによる都市開発、クラスター開発、アパート建築が進み、週末にショッピングモールの不動産販売ブースの前を通るたびに、パンフを進められて物件と価格表の説明を受けた後に携帯番号を聞かれるので、自分のスマホのWhatsAppには不動産屋の営業マンからの営業メッセージが頻繁に入ります。

投資物件としてのアパートやヴィラの場合、パンフに必ず載っているのがROI(Return Of Investment=投資利益率)という言葉であり、文字通り投資金額(自己資本+借入金)に対してどれだけの収益(当期純利益)が見込まれるかという指標です。

2017年12月現在のインドネシアの定期預金の利子が5%前後を上下していますので、不動産投資のROIとしては最低でも8%はないと魅力がありませんが、例えば1Milyarの物件を手持ちのキャッシュ100jutaとKPA(Kredit Pemilikan Apartemen アパートローン)やKPR(Kredit Pemilikan Rumah 住宅ローン)を利用した銀行借り入れ900jutaで購入し、毎年100jutaで賃貸できたとしたらROIは10%になりますので、十分投資回収率の高い投資と言えると思います。

ただこの例のように投資金額の9割も借入金でまかなっていると、会社をクビになったり商売が立ち行かなくなったときに支払いが滞ってしまうリスクが大きく、ROIは安全性という基準が抜けてしまうので、借入金を除いた投資金額(自己資金)に対してどれだけ収益が見込まれるかというROE(Return Of Equity=資本利益率)という指標があり、10%のROEを得るためには手持ちキャッシュ1Milyarでアパートを購入し、毎年100jutaで貸す必要があります。

  • ROE=当期純利益/自己資本
    =[当期純利益/売上高]x[売上高/資産]x[資産/自己資本]

つまりROEは「収益性x効率性x安全性」のバランスを測る指標と言えます

オフバランス要素を財務三表にオンバランス化する流れ

資産の調達方法は大きく分けて、銀行から借りるか、株式を売って自社の未来を評価してキャピタルゲインを期待してくれる人から調達するか、営業活動から生み出す利益の蓄積である利益剰余金として内部留保するかの3通りです。

  1. 銀行から借入金として調達
  2. 株主から調達
  3. 営業利益の蓄積としての利益剰余金

法定資本金は会社設立時に決める資本金の額であり、Kementerian Hukum(法務省)に報告することで取得が義務付けられているSK(Surat Kepetusan) Kehakiman(法務省からの決定書)に記載されている金額ですが、インドネシアでは法定資本金の20%を資本準備金としてB/S(貸借対照表)上の純資産の部に積み上げる必要があります。

利益準備金は当期純利益を源泉とした利益剰余金から配当に回されるためにプールされているお金であり、資本準備金は自己資本や株式発行による、営業活動以外で調達されたお金ですが、基本は「利益」がつくものは一回P/L(損益計算書)を経由したもの、「資本」がつくものは株主から調達した経営と無関係のものであると区別されます。

営業活動で発生する費用と収益はP/Lに記載されますが、基本発生主義ベースの計上日で記載されるので、支払いと入金は計上日から30日後または60日後に発生するため、必要なときに必要な現預金があるかどうかを確認するためにC/F(キャッシュフロー計算書)を作成します。

P/Lの当期純利益をB/Sの純資産の欄にスライドさせ、P/L上の発生主義に基づく損益を現金主義ベースに組み替えるという財務三表の流れは、具体的な営業活動を支える目に見える資産とその内訳をオンバランス(簿内取引)で見ているものであり、現在のIFRS(国際会計基準)に基づく時価評価主義の流れの中では、市場での価値をもっと重視したオフバランス(簿外取引)要素のオンバランス化が重視されます。

信用経済(評価経済)が注目される理由

2017年7月にYoutuberヒカルの売り逃げ事件で一躍脚光を浴びたVALUは、個人のブランド価値をVAという単位で株式化し、BTC(ビットコイン)で資金調達するものですが、この事件では株主優待にあたるVALU保有者の特典をエサに買い注文を集めるだけ集めて、自分保有の自社株(VA)をまとめて売り逃げると同時に、特典についての記載を削除するという、株価操作と終値関与まがいの行為で、Youtuberヒカルは無期限活動停止に追い込まれてしまいました。

企業価値を測る指標として、上記の自己資本がどれだけ利益を生んだかという自己資本利益率であるROEに、さらに利益がどれだけ時価評価を生んだかという利益時価評価率=株価純資産倍率PBR(Price Book-value Ratio)があります。

  • PBR=時価総額/自己資本
    =[時価総額/当期純利益]x[当期純利益/自己資本]

IFRSの時価評価主義の流れでは、株価によって測られる時価評価総額はオンバランス化されますが、ブランド力や信用力、ノウハウなどの目に見えない無形固定資産は依然としてオフバランス上に存在し、これらを市場経済に乗せる動きが上記のVALUや新規仮想通貨公開(ICO=Initial Coin Offering)時のトークンであり、これが信用経済(評価経済)が現在注目されている理由です。

  • 勇気は最大の武器
  • 信用は最大の財産

手前味噌になりますが、この2つは自分がインドネシアでビジネスを行う上で最も大事にしている考えであり、勇気をもって恐れずひるまず行動し、地道に信用を積み重ねていく作業によって企業は成長していくものと信じるものです。